失敗は成功の基?2017年01月17日 01:40

失敗は成功の基?


(「下町ロケット」影響? ネット上に擁護論相次ぐ「失敗は技術の発展にはつきもの」)
http://www.sankei.com/life/news/170116/lif1701160034-n1.html

「失敗は残念ですが技術の発展にはつきもの」

「新しい試みが失敗して原因調査して再挑戦して進んでくのは安心する」

「初めからそうそう上手くいくはずもないので次に期待」

「問題は『失敗は成功の母』という言葉が有る割には、『完全無欠』を求めたがるパンピー(一般の人たち)の気質」

「失敗に対するマイナス面しか報道しないから、新しい技術開発はこの先も海外に越されて当然だ」

まあ、それはそうなんですがねえ・・・。

たとえば、打ち上げを担ったロケットが、2段目までは従来通り成功して、新開発の3段目とか、民生品を使った衛星とかでコケたんなら、そういう話も説得力があるんだがな。

30機以上の打ち上げ実績があるSー520の燃焼中(発射20秒後)に通信が途絶えるという、前代未聞のトラブルに見舞われ、その通信装置は、これまたSS-520で実績のある2段目に搭載されていて、なんでこんなことになったのかワケワカの状態の中、通信を復活させることが出来ずに時間切れとなり、2段目の点火コマンドの送出を断念するという体たらく・・・。

しかも、生き残ったシーケンサによって自動的に(たぶん)分離された民生品をたっぷり使った(たぶん)衛星からは、ちゃあんと電波が届いていたというから、本末転倒ということだ。

原因究明はこれからだけど、なんか筋が悪いというか、情けないというか・・・。

そもそも、SS-520 4号機の構成自体が一発勝負の実験用で、今後の計画は何もなく、「再挑戦」もなければ「次」もない。

加えて、今回の装置の実装がどうだったかは分からないが、単段式のS-520の姿勢制御装置は、市販の高圧タンクやラジコン飛行機のジャイロ使ったりして、既に民生品が組み込まれている。

今更のように宇宙に民間の技術を導入しようなんていうのが、絵に描いた餅のように見えるのは、浮沈子だけなんだろうか?。

まあ、そのラムライン制御装置に不具合があって、その影響で通信機器が故障したということなら、まだ救いがあるかもしれない(そういうことかあ?)。

光学観測では、1段目の飛行は滞りなく行われたらしいから、S-520としては所期の性能を発揮したことになるんだろう。

JAXAの公式発表でも、殊更「正常」だったことが強調されているしな。

2段ロケットのSS-520としての性能には、懸念が残った。

2段式としては、今回が3度目の打ち上げ。

しかも、前回の打ち上げは、2000年だ。

実績としては、十分とは言えないのかもしれないし、間隔も16年空いている(単段式は、最近も上がっているようです)。

改修もいくつか行われている。

・1/2段継手
・ラムライン制御部

注意したいのは、2/3段分離部も同じ方式を取っているということ。

ここは、新規扱いだ(今まで、2段式だったからな)。

「マルマンバンドで締結 2箇所の分離ナットを火工品で切断し分離する方式」

従来の締結方式は未調査だが、改修された締結方式を、上段(第3段)との継ぎ手にも使ったということだ。

ラムライン制御装置は、S-520 30号機と構成が大きく違っているようには見えない。

採用される部品や、ソフトウエアなどは変わっているのかもしれない。

いずれにしても、故障は分離前に起こっているので、これら改修品がその機能において不具合を起こしたというのは考えづらい。

浮沈子は、ロシアのロケットが失敗したときのことを思い出している。

(プログレス補給船(59P)によるISSへの補給ミッション失敗の原因について)
http://iss.jaxa.jp/iss/flight/150603_59p/

そう、去年の暮れのじゃなくって、一昨年のヤツ。

「ソユーズ2.1Aロケット第3段とプログレス補給船(59P)の異常な分離の結果として引き起こされた59Pの損傷は、ロケットと59Pの組み合わせ時の構造特性によるもの」

今までとは、異なる組み合わせで異常振動を起こしたということになっている。

SS-520 1、2号機と、今回の4号機との違いは、ズバリ、第3段を搭載しているかどうか、その継ぎ手部分があるのかどうかだ。

一つの可能性に過ぎないが、その構成の違いが、異常振動を引き起こし、想定外の加速度によって通信機器に障害を与えたのではないか。

でもなあ、そういう動的特性とかは、事前にチェックしてるだろうしなあ。

光学観測でも、異常振動が見られたとかいう話は出てないようだしな。

まあいい。

実際に打ち上げてみなければ分からないことはあるわけだ。

今回の失敗は、何か釈然としないものが残る。

発射20秒以降のテレメトリが届いていないために、事故原因の解析は困難を極めるだろう(もっとも、何かあれば、その20秒間に起こっているわけだけどな)。

小型ロケットは、ギリギリの性能で飛ばしているところがあって、耐久性や冗長性にも一定の限界がある。

システムの健全性を確保するための手段は、限られているのだ。

重量、コスト、電力、人的資源、エトセエトセ・・・。

しかもだ、このタイミングで、ISSからキューブサットを6機も放出したというニュースが流れている。

(ISSから超小型衛星放出 開発した企業や大学見守る)
http://www.asahi.com/articles/ASK1J4G64K1JTIPE01G.html

「国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」から16日、超小型衛星6機が宇宙空間に順次放出された。」(ISSからは、12月にも1機放出されている)

選りにも選って・・・。

あーあ・・・。

あっちにしとけば良かったのに・・・。

まあ、どうでもいいんですが。

(失敗は成功の基)
http://kotowaza-allguide.com/si/shippaiseikounomoto.html

「・・・失敗してもその原因を追究しなかったり、やり方を改善しようとする姿勢がなければ、また同じような失敗をくり返すだろうということ。」

原因の追究は行うんだろうが、電柱ロケットによる衛星の打ち上げは、たぶん二度とない。

民生品の使用で、宇宙産業の活性化を目指した経産省の思惑は外れ、思いっきりケチが付いた。

今後は、本来の観測ロケットとして、その使命を果たしていくのがいいと、浮沈子は考えている。

(二兎を追う者は一兎をも得ず)
http://kotowaza-allguide.com/ni/nitowooumono.html

「If you run after two hares, you will catch neither.」

西洋のことわざだそうだが、洋の東西を問わず、普遍的な香りがするな・・・。

山っ気2017年01月17日 16:25

山っ気
山っ気


まずは、浮沈子が抱腹絶倒、しばし呼吸困難になったこの記事から・・・。

(再使用ロケット実験機第3次離着陸実験)
http://universe-s.com/past/2004/0217_j.html

「かなり脚色されていますのでご注意を。」

「ホントだな」
「あー、はい」
「間違ってないな絶対に」
「いーうー」
「もう忘れてることないか?」
「えー・・」
「さてと・・エンジン班いいですね。よーしもう1回行きますか」
「おー!」

ここは、返事だけ繋げると、「あいうえお」となっている。

リンク先も見てみた。

(再使用ロケット実験機第3次離着陸実験)
http://www.isas.ac.jp/ISASnews/No.273/isas.html#rvt

「実験は静的な飛行から動的な飛行へと順次進め,いずれも計画通りに行われました。」

公式には、こういう固い感じになるんだろう。

こんな記事もあった。

(「ロケットの次のゴール」または「詐欺師ペテン師の世界」)
http://www.isas.jaxa.jp/j/forefront/2005/inatani/index.shtml

「ある日の長友先生との会話。
「うーん,こういうロケットを作ったら年収1兆円か。金出す人が出てきたらどうしよう」
……
「先生,なかなか誰も何も言ってきませんね」
「そーか,こっちから金集めでもするか」
「集めてできなかったらどうします?」
「詐欺師ペテン師の仲間入りだな。おれはもう辞めるから,あとお前やれ……」」

この記事のあとに、ほぼ同じ内容で書かれた文章も読んだ。

(宇宙輸送の次のゴール)
http://ina-lab.isas.jaxa.jp/documents/the_next_goal_for_rockets.pdf

「世の中21世紀になったのはほんの6年程前です」

何かの講演の際の原稿と思われるが、宇宙利用の新しい形を提案して、ロケットの開発を進めるというスタイルだ(そうじゃないかも)。

黒四ダムとダンプカーの話が出てくるが、そんな感じがする。

遠いゴールを置いて、そこへのプロセスを考えるスタイルだが、有人火星探査よりも遠いゴールだ。

山っ気たっぷりだな・・・。

まあ、どうでもいいんですが。

浮沈子は、太陽電池発電や地球低軌道への宇宙旅行には、それ程抵抗はない。

機が熟せば、どんどんやったらいい。

再使用ロケットについても、好意的に見ている。

電柱ロケットの100分の1くらいの値段で、地球低軌道に打ち上げが可能になれば、宇宙利用のカタチが大きく変わるに違いない。

安全性を担保する仕掛けも重要だ。

ある意味では、それがキーポイントになる。

その上で、コストを削減する。

冗長化や代替手段、地上や洋上の態勢、社会経済的な補償。

有人飛行へのプロセスも、簡単ではない。

浮沈子には、遥かに遠いゴールに見える。

でも、そういう遠いゴールを見なければ、現在の一里塚を超えることは辛いだけの作業になる。

一歩進むごとに、超えるべき課題が次々と立ちはだかり、無限に思える道程は、より遠くなっていくようにも感じられる。

きっと、どこかに、ブレークスルーするポイントがあるのだろう。

それを信じて進んでいくしかない。

歩みを止めれば、そこで停滞するだけ。

辞めてしまえば、未来永劫、辿り着くことはなくなる。

「おれはもう辞めるから,あとお前やれ」

そうして、引き継がれていく遠い遠いゴール。

「イヤーはい。あのー、JAXAマークが重くて上がらなかったみたいです!」

詐欺師ペテン師の世界になるか、ロケットの次のゴールにたどり着くか。

まあ、どこのマークでも、それは同じだろう。

スペースXのマークは、失敗を乗り越えて、確実に前進を続けているように見える。

残念ながら、JAXAマークの電柱ロケットは上がらなかった。

異なる夢を追いながら、それぞれの道を歩む。

能代の空に浮かんだ再使用ロケットは、冒頭の引用記事を最後に、二度と空に上がることはなかった。

(再使用ロケット実験機 第3次離着陸実験(RVT-9)について:平成15年11月12日)
http://www.jaxa.jp/press/2003/11/20031112_rvt_j.html

「日時:高度:燃焼時間:飛行時間:結果
10月31日14時51分:42m:20秒:17秒:正常」

(再使用ロケット実験)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%8D%E4%BD%BF%E7%94%A8%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E5%AE%9F%E9%A8%93

「現行の実験観測用ロケットは、使い捨てで1機2-6億円であることから、本機の実用化により一桁以上のコストダウンとなる。」

電柱ロケットを代替することを目論んでいるようだが、果たして実現するんだろうか?。

「JAXAでは、小型再使用ロケットと大型使い捨てロケットを並行して開発することで、将来の大型再使用ロケット開発につながる技術の蓄積ができると考えられている。」

山っ気たっぷりの構想が、花開くことになるのか、雲散霧消してしまうのか。

「2015年6月15日、JAXAは再使用ロケット・エンジンの技術実証試験が完了したことを受け、報道関係者向けに説明会を実施。」

次のステージに進むことが出来るかどうか。

「さてと・・エンジン班いいですね。よーしもう1回行きますか」
「おー!」

その掛け声を、是非もう一度聞きたいものだ・・・。