kfujitoの徒然（ｂｙ浮沈子）

ＳＬＳ：ＷＤＲ：４回で終わり


（NASAは別のアルテミス1カウントダウンドレスリハーサルを計画していません）
https://spaceflightnow.com/2022/06/22/nasa-not-planning-another-artemis-1-countdown-dress-rehearsal/

「情報筋によると、VABに戻ると、ウェットドレスリハーサル（WDR）キャンペーンが終了し、NASAは月の周りで長らく遅れたアルテミス1号のテスト飛行の開始に近づきました。」

「NASAのスポークスマンであるキャサリンハンブルトンは木曜日、SLSチームがWDRキャンペーンの完了を宣言していることを確認」

浮沈子の記憶が確かならば、９０パーセントしか終わってなかったんじゃいかあ？。

「私たちは、全体として必要な場所に関して、90パーセンタイルにいると思います」

「月曜日のカウントダウンリハーサル中に未達成の「未解決のアイテム」がまだいくつかある」

「そのうちの1つは、SLS固体ロケットブースターの水力発電ユニットの始動でした。これは、推力ベクトル制御メカニズムを備えたジンバルステアリングチェックを通じてブースターノズルを駆動するために、カウントダウンの最後の30秒に発生するはずでした。」

もちろん水素漏れの修理もある。

「アルテミス1ロケットがスペースシャトル組立棟内に戻ったら、アルテミス地上チームは月曜日に検出された漏れのある水素コネクタのトラブルシューティングを行います。技術者はまた、離陸後にロケットがコースから外れた場合にロケットを破壊するために作動する飛行終了システムの準備を完了します。」

水素コネクターのトラブルが、常温で解決するかどうかは分からない。

それは、前回のテストでは明らかにならなかった事象だ。

次回、また、新たな水素漏れが発生しないとも限らない。

「エンジニアはカウントダウンリハーサルの最後の20秒を通過せずに打ち上げに進むリスクを評価する」

もちろん、ＳＲＢのジンバルを含め、何かトラブルが発生すればスクラブが掛かって、打ち上げは中止されるかもしれない。

しかし、それはＷＤＲを完了しない理由にはならない。

「（別のリハーサルのために）パッドでハードウェアを行使し続けることには相対リスクがあります」

「それは必ずしもリスクのない状況ではありません。」

何度もうち上げているロケットなら、その経験値を生かすことはできるかも知れない。

Ｓ社のファルコン９ならば、その言い訳は通用するだろうが、かつて一度もうち上げられたことがないロケットの場合は、未達のテストがあれば、それは失敗を意味すると考えるべきだろう。

スペースシャトルの遺産を受け継いでいるからといって、プログラムも書き換えているし、変更や改良も行われている。

別物だろう。

「私たちの月面ミッションに最適なウィンドウの打ち上げ目標を達成できるかどうか」

それは、ちゃんとテストが終わった後の話だ。

「アルテミス1号の打ち上げ期間は、8月23日から9月6日までで、9月19日からさらに多くの打ち上げの機会が利用可能になります。」

５回目（場合によっては６回目も）のＷＤＲを行い、一点の曇りもなく全てのテストを終えることを強く推奨する。

もちろん、アルテミス１自体が、無人試験飛行であり、ある程度のリスクを取って行われることは確かだ。

しかし、ＷＤＲを設計する段階で、それは十分考慮されていたに違いない。

４回目では、水素漏れをスルーするようにプログラムを書き換えて、打ち上げ２９秒前までターミナルカウントダウンを行った。

まあ、水素漏れはある程度予想されていたから、想定された変更だったに違いない。

その場で、急遽決定されたわけじゃない。

事前に想定されたオプションの一つだったはずだ。

既に、４回目のＷＤＲにおいてもイレギュラーな方法を取っている。

それは、多くのチェック項目を達成するという点では許容されるけれど、最終的には是正されて再試行されることを前提としている。

それが、いきなり本番になるということなら何をかいわんやだな。

アルテミス１は、ＷＤＲを完遂しないまま打ち上げに供される。

「打ち上げ日に適切に機能しなかった場合に、達成できなかった目標をシステムで保護できるため、打ち上げが成功するか、スクラブが行われます」

「彼らは実際に車両をより安全に飛行させることを目的としていません。」

冗談じゃない！。

２度の重大事故を起こし、１４人の命を奪ったスペースシャトルの失敗に懲りて、ＳＬＳは、全て（オリオン宇宙船は再使用しますが）使い捨てにして安全第一に開発したはずじゃなかったのかあ？。

ＮＡＳＡは、まだ、最終的にＷＤＲを打ち切ったと発表したわけじゃない。

記事は、内部情報に基づいて書かれていて、若干不確定要素もある（打ち上げ日とか未発表だしな）。

アルステクニカの記事では、火曜日の電話会議の様子では、５回目のＷＤＲを行いそうな感じだったという。

スケジュールを優先する悪しき風習が、再びＮＡＳＡ内部に蔓延っているのかも知れない。

もちろん、リスクを取るなとは言わない。

適正に評価されて、十分説明が付くなら、それはそれで好ましい話だ。

お役所主義からの脱却に繋がる。

しかし、一方で、スケジュール優先でごり押しすることがあれば、チャレンジャー事故の二の舞だろう。

浮沈子の妄想に過ぎないけれど、スターシップの準軌道飛行試験との兼ね合いがあるのではないのか。

完全再使用可能で、打ち上げコストが数百分の１（４１億ドルと１０００万ドル：日本語版ウィキより：英語版では２００万ドル！）のロケットが先に飛行するようなことになれば、１０年以上の歳月と２００億ドルの費用を掛けて開発したＳＬＳの面目は丸潰れだ（面目の問題かあ？）。

ボカチカの認可手続きで引っ張ったり、フロリダの打ち上げ施設にケチを付けたりして引き伸ばしているけど、もうそろそろ限界になってきている。

もちろん、両者を単純に比較することはできない。

片や実際の有人での運用を見据えた最終段階の無人テスト飛行で月を周って帰って来るし、此方有人飛行など１０年以上先になると思われる正真正銘のテスト飛行で、完全再使用はおろか、１段目のブースターも２段目の宇宙船も回収されない。

それどころか、地球周回軌道にすら乗らない弾道軌道だ（４分の３周くらい？）。

レベルが違い過ぎる。

が、しかし、その目指すところは画期的で、実現した暁には、宇宙開発の歴史を塗り替える程の破壊力を持つことになる。

少なくとも、有人化を果たした後に、ＳＬＳの出番はない。

浮沈子は、ＤＳＴ（ディープスペーストランスポーター：深宇宙輸送機）に関心があるんだが、ひょっとするとスターシップがそのままＤＳＴになる可能性もある。

従来は、ＳＬＳが月軌道までそれを運ぶということだったんだが、無人のスターシップのレベルで十分対応可能だ。

地球から月軌道までは、オリオンが飛べばいいわけだからな。

オリオンって、ファルコンヘビーとかで打ち上げできないのかな。

重量的には、デルタ４ヘビーで上げてたわけだから（２０１４年のテスト飛行）、十分対応できるだろう（ファルコンの方が打ち上げ重量は大きい）。

ファルコンヘビーを有人化するのが難しいのかも知れない。

それでも、ＵＬＡはアトラスＶを有人化したわけだから、やってできないことはないだろう（Ｓ社自身がファルコン９を有人対応にしたわけだしな）。

そうすれば、オリオンをうち上げるのにＳＬＳを使わずに済む。

なんなら、使い捨てのスターシップ（２段目）を開発して、それで打上げたっていい（１段目は回収されるから、随分安上がりになるだろう）。

そのレベルなら、２０２０年代に開発可能かもしれない。

２年に１回くらいしか飛ばないＳＬＳは、結局、１０回飛ばないうちに（下手すると、５回くらいかあ？）製品寿命を迎えることになる。

ますます存在意義が問われることになるなあ。

そんなＳ社の動向が、ＷＤＲの行方に影響を与えていないことを願うのみだな。

確認しておこう。

まだ、確定ではないけれど、ＮＡＳＡ内部では、５回目のＷＤＲを行わない方向で検討が続いているようだ。

それは、あまりいい知らせとは思えない。

キッチリやることやって、安全な有人ロケットを仕上げることだけが、失われた命に報いる唯一の方法だと思うんだがな・・・。

＜以下追加＞ーーーーーーーーーー

（SpaceXは、巨大なロボットアームを備えた発射台にスーパーヘビーブースターを取り付けます）
https://www.teslarati.com/spacex-starship-super-heavy-booster-rollout-2022/

「実際の静的火災が始まる前でも、ブースター7は1回以上のウェットドレスリハーサル（WDR）を完了する必要があります。これは、発射を正確にシミュレートしますが、点火の瞬間の直前に停止するテストです。」

「早ければ6月27日月曜日に飛行前テストの次の段階を開始できます。」

もちろん、スターシップのＷＤＲは、今のところ１段目のブースターだけの話で、上段を積み重ねて行われる訳じゃない（それもやるでしょうけど）。

工学的な日程的でも、スターシップは遅延しているからな。

ＦＡＡの手続きに文句をつける暇があったら、開発を進めた方がいい（もちろん、ものすごいスピードなことは確かだ）。

懸案のラプター２が出来上がり、今後の継続的な打ち上げ準備が整えば（つまり、発射台をぶっ壊す以外の失敗で、早期のリカバリーが可能な状態になれば）、準軌道試験が行われるだろう。

早ければ、たぶん、年内か（例によって、誰かさんは７月とか世迷言を言っているけど）。

どちらのロケットも、規模も複雑さも桁違いだ。

巨大ロケットといえば、鳥嶋さんがエネルギア絡みの記事を上げていた。

（米国の衛星を破壊せよ！　ソ連のレーザー砲衛星、打ち上げから35年目の真実）
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20220623-2375788/

「ゴルバチョフ氏は1985年に、「宇宙は平和に役立たなければならない」とする論文を発表するなど、自国の宇宙兵器も、もちろん米国の戦略防衛構想にも、宇宙の軍事利用すべてに公然と反対していた。」

「ポーリュスの打ち上げ直前にバイコヌール宇宙基地を視察に訪れたのも、ポーリュスに兵器が搭載されていないかを自ら確認するためであり、さらに現地でも宇宙の軍事利用に反対する演説を行っている。」

「長らくソ連・ロシアが、ポーリュスを「非軍事目的の地球物理学実験用」としていたのは、そこに至る経緯はともかく、事実ではあったのである。」

ロシアネタに強い鳥嶋さんならではの記事だが、エネルギア（エネルーギア）とブラン（ブラーン）の開発の影に、こんな話があったとは知らなかったな。

「1991年にはソ連が解体。その後、エネールギヤもブラーンも計画は廃止」

ある意味で、ソ連（ロシア）の宇宙開発の絶頂期だったのかも知れない。

ロシアの大型打ち上げロケットはプロトン（無人対応）のみで、後継機の開発は事実上凍結状態だ（未確認）。

ミハイルゴルバチョフといえばグラスノスチ（情報公開）と帽子がトレードマークだが、宇宙の平和利用に肩入れしていた話は初めて知った。

新型ＩＣＢＭサルマトの年内実戦配備に熱心なウラジーミルプーチンに、爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいもんだな・・・。

＜さらに追加＞ーーーーーーーーーー

（ロケットレポート：SpaceX蒸気ローラーが転がります。ロシアのロケット労働者はアイドル状態です：NASAは多かれ少なかれSLSロケットのウェットドレステストを完了します。参照）
https://arstechnica.com/science/2022/06/rocket-report-spacex-steamroller-rolls-on-russian-rocket-workers-are-idled/

「5回目の試みはありません...：
NASAの職員は、ロケットの次のステップについて話し合うために金曜日に記者会見を予定しています。」

「ただし、Spaceflight Nowは、エージェンシーがT-9.3秒までカウントダウンする5番目のテストに反対することを決定したと報告しています。NASAのスポークスマンであるキャサリンハンブルトンは木曜日、SLSチームがウェットドレスキャンペーンの完了を宣言していることを確認し、マネージャーは「VABにロールバックする前にいくつかの残りの（テスト）目標に取り組む計画に取り組んでいる」と述べた。」

金曜日の記者会見とやらが楽しみだな。

ＮＡＳＡが、後日の検証に耐える形で結論を導くことを期待している・・・。