CCRと呼吸2011年10月03日 07:19

CCRを使って呼吸するということはどういうことなのだろう?。オープンサーキットで呼吸するのとどう違うのだろう?。

水中で呼吸しているといっても、魚くんたちのようにエラで水中の酸素を吸収したり水中に二酸化炭素を排出しているわけではない(そんな、映画の主人公もいましたが・・・)。

人間は、水中でもやっぱり陸上生物と同じく、肺で呼吸している。肺は、食道の一部が変化して呼吸機能を持つようになった袋状の器官だが、細かく枝分かれして外気と接触する面積を増やすなど高度に発達している。

ここで、酸素と二酸化炭素のガス交換を行う。

肺にとってみれば、肺の中というのは体の外、つまり環境にあたるわけで、肺胞のうっすーい壁を隔ててのガス交換になる。

水中呼吸器はこの肺胞に外気を送り込む役割を果たしているという点で共通している。そして、オープンサーキットの場合は一方通行で、CCRの場合は循環させて外気を肺に送り込んでいる。

オープンサーキットはシリンダーの中のエアを環境圧まで減圧して送るだけで、排気の方もそのまま水中に放出してしまうのでシンプルだが、CCRではガスをぐるっと循環させて、概ね再呼吸させる。だからリブリーザーというのだが、ビニール袋の中の空気をただ再呼吸するような単純な仕掛けではない(良い子はマネしないでね)。

人間は呼吸のたびに酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するが、空気中の全部の酸素を吸ってしまうのではなく4パーセントの酸素を吸い、残りは吐き出しているのだ(あーっ、もったいない!)。水中では貴重なこの酸素をもう一度吸うことができれば水中に持ち込むガスの量を節約できるわけである。

ただ、そのままだと酸素はどんどん減ってしまって、しまいには体の中の酸素の圧力よりも低下してしまう。そうすると逆に血液中から肺を通じて酸素が吸い出されるという恐ろしいことが起こる。こんなことにならないようにCCRでは酸素センサー(まあ、酸素の分子がくっつくと発電する電池ですな)をインスピの場合3個も持っている。

正しい酸素濃度を感知して、環境圧と計算して設定した一定の酸素分圧になるよう酸素シリンダーからのガスをソレノイドバルブの開閉時間を制御しつつ、「プシュー」と回路内に放出してくれるわけで、おかげでチアノーゼにもならずに息ができるわけだ。

もう一つ、重要なのが二酸化炭素の除去なのだが、水酸化カルシウムのつぶつぶをスクラバーという内筒に入れてキャニスターの中に挿入してある。商品名ソフノライムを使うのがメーカーの指示である。怪しげな類似品を使うと所期の性能が発揮できなかったり、発熱が少なく、正しくモニターできなかったり、色が変化しないなどの不都合が生じる。

呼気中の二酸化炭素との化学反応で炭酸カルシウム(貝殻などと同じ成分)になったソフノライムは捨てるしかない。

これらのガスコントロールがうまくいかないと、人間の方にいろいろな問題が起こる。もちろんオープンサーキットでもシリンダー内のガスが不純物を含有していたり、レギュレーターが故障していたりすれば同じことが起こるが、CCRの場合は機器が複雑で、はっきり言って故障の頻度が高いので、トレーニングはその機器の故障を想定したリカバリーを繰り返して行うことになる。

ハイポキシア、ハイパーオキシア、ハイパーカプニアの対応がそれだ。

また、呼吸回路の中に浸水しやすい構造(マウスピースまわりとか)なので、それに対するトレーニング(といっても、排気側カウンターラングに一時溜めるだけですが)も行う。

トレーニングの詳細は省略するが、カウンターラングについて触れる。ビニール袋から空気を吸うことができるのは、ビニール袋が縮んで空気を肺に押し込んでくれるからだ。ビール瓶の口からは中の空気を十分吸い込むことは難しい。どうしても呼吸を循環させるためには柔らかい袋を回路の途中に設置する必要がある。これが、カウンターラングであり、どのCCRにも形や配置場所は多少異なるが必ず設置されている。

このように、CCRによる水中呼吸は、オープンサーキットと似ている部分もあるが、仕掛け的にはかなり独自のものとなっていて、その構造や作動原理、特性を理解して運用する必要がある。

CCRの危険性2011年10月03日 21:13

CCRの危険性
CCRの危険性


この題名でブログを書くのは気が引けるが、自分自身に言い聞かせる意味でも、正面から向き合おうと思う。

どんな機械でも、壊れないということはない。だから、点検をしたり、消耗部品を交換したりする。設計寿命を超えて使用する場合にはオーバーホールを行う。

それでも、壊れるときは壊れる。それは、避けがたいことだ。

そう、リブリーザーは壊れるのだ。それも、(おそらく)最も壊れて欲しくないタイミングで。そして、その時の対処を誤った場合、この機械は実にやっかいな代物になる。

たとえ壊れなかったとしても、限度を超えた無茶なダイビングを行えば危険な状態になる。

いやいや、通常のダイビングでさえ、オープンサーキットとは比較にならないほど危険だという意見もある。

だって、マウスピースをそのまま口から離すだけで水中では水がドバドバ呼吸回路の中に入り込んできて、あっという間に機能不全になる。それどころか、回路の中の空間によって保たれていた浮力が一気に失われ、ぼんやりしているダイバーを水底に引きずり込もうとする。

オープンサーキットではこんなことは起こらない。再びマウスピースをくわえれば即座に呼吸ができる。浮力が失われる危険もない。

ハイポキシア、ハイパーオキシア、ハイパーカプニアの危険もCCRならではのものだ。もう、これらについては、いやというほどリカバリーの訓練を行う。それでも、意識を失うような事故は後を絶たない。

そして、意識を失ってマウスピースを口から離せばそれで終わりだ。

バディが気づいて即座に適切な対応をとったとしても、助かるのは奇跡に近い。石のように重くなった事故者を浮上させることは不可能と思ったほうがいい。バディはあてにできないのだ。

こんな危ない器材でダイビングするなんて、自殺するようなものだと極論する人もいる。

いや、実際そうかもしれない。

そんなダイビングを、ろくな訓練もしないで容認することはできない。中途半端な練習でもダメだ。徹底的に、これでもか、これでもかと繰り返し、夢に見るほど、いや、夢に出てこなくなるほど身に染み付くまでトレーニングする。

もう、これだけやったのだから、これで操作を誤って事故になったり、対応が遅れて意識を失っても、それが寿命だったと諦めがつくまで練習する。

そして、器材のメンテナンスを徹底し、決して無茶なダイビングはしない。

リブリーザーは素晴らしい器材だ、静かで泡の出ない快適なダイビングができる未来の潜水器だ、と宣伝では言うし、私もそう書いている。

でも、それは、「ウソだ」と、ここでは書く。

練習は辛いし、同じことの繰り返しでつまらないし、器材のメンテナンスは手間、ヒマ、金がかかるし、おまけに潜在的なリスクはオープンサーキットよりはるかに大きい。

そして、そのリスクを担保しているのは、胡散臭い訓練だけなのだ。過ちや物忘れや注意散漫になる怪しげな「人間のスキル」だけを当てにして成立しているダイビング!。

こんなものが、「未来のダイビング」だなんて、言えるものか!!。

あー、すっきりした。

しかし、ここで触れたことは、脅しでも誹謗中傷でもなく、「事実」である。

その「事実」と向き合いながら、また練習を続けるのだ。