🚀スターライナー:問題の本質2024年07月11日 19:52

スターライナー:問題の本質


(スターライナーのスラスター問題に関するNASAの最新情報:これは問題ない)
https://arstechnica.com/space/2024/07/starliner-still-doesnt-have-a-return-date-as-nasa-tests-overheating-thrusters/

「スターライナーのサービスモジュールにある28基の反応制御システムスラスタのうち5基が、先月宇宙船が宇宙ステーションに接近した際にオフラインになった。」

「スターライナーの飛行ソフトウェアは、5基の制御ジェットが過熱して推力を失い始めたときに、これらを無効にした。スラスタのうち4基は後に回復」

1基は回復していない。

つまり、スラスターの故障の原因は過熱らしいこと、そして、それは場合によっては回復不可能な損傷をエンジンに与えるということだ。

「これらの小型スラスタは、軌道離脱噴射自体には必要ありません。軌道離脱噴射では、別のエンジンセットを使用してスターライナーの速度を減速し、軌道から外れて着陸に向かいます。しかし、スターライナーは、軌道離脱噴射のために適切な方向に操縦するために、十分な制御ジェットを作動させる必要があります。」

問題は解決されたわけではない。

「商業乗組員プログラムの素晴らしい点は、乗組員を帰還させるために使用できる 2 台の乗り物、2 つの異なるシステムがあることです」(NASAの商業乗組員プログラムマネージャー、スティーブ・スティッチ氏)

「そのため、データを調べて、何か別のことをする必要があるかどうかを決定するのにもう少し時間がかかります。しかし、現在の最優先の選択肢は、スターライナーでブッチとスニを帰還させることです。現時点では、そうしない理由は見当たりません。」(同上)

歯にものが挟まった言い方だが、スターライナーを使わずに、クルードラゴンで2人の宇宙飛行士を帰還させるという選択肢は(現時点では)ないということだ。

そうなんだろうか?。

「問題の本質」

「この一連のテストは、スターライナーのスラスターが軌道上で経験したことを模倣した一連の点火で7月3日に始まった。」(テストの内容は割愛:スラスターの過熱を再現)

「しかし、テスト技術者は地上のスラスターを宇宙でスターライナーのスラスターが経験したほど熱くすることができなかった」

「当局は今週後半にテストを再開し、週末に終了することを望んでいる。」

つまりだな、地上試験は失敗したということだ。

(宇宙船スターライナー飛行士が地球帰還に自信、機体不具合でISS滞在長期化)
https://jp.reuters.com/life/FSJI4HPOFNPE5HHCR4EAEZTYJQ-2024-07-11/

「現在NASAとボーイングが進めている調査の結果が鍵を握っている」(スターライナーに乗り込んだバリー・ウィルモア氏)

今後の調査で原因が特定できない場合、彼らの帰還は一か八かのギャンブルとなる。

そりゃあ、緊急事態でのリスク承知の帰還とは異なり、試験飛行としての安全を確保したうえでの帰還として、ギャンブルになるということなわけだ。

それでも、故障が起こった原因を特定できずに離脱させることに変わりはない。

故障を起こしたサービスモジュールは、再突入の前に切り離され、地球大気圏で燃え尽きる。

証拠隠滅・・・。

不具合を起こしたのが、エンジンの想定外の長時間高頻度使用に伴う加熱によるという仮説は、地上試験によって確認されないままということになる(まだ、来週の試験が残ってるけどな)。

それは、ヘリウム漏れについても同様だ。

「ヘリウム漏出の原因特定作業も行われている。」

(スターライナーはテストが続く中、7月末に復帰予定)
https://spacenews.com/starliner-return-eyed-for-end-of-july-as-tests-continue/

「私たちが達成できた温度は、飛行データに基づいて期待していた温度とは少し違う」(NASAの商業乗組員プログラムマネージャー、スティーブ・スティッチ氏)

「同氏によると、エンジニアたちはヒーターを使って、エンジンの噴射自体と太陽光への露出によってエンジンが受ける温度条件を再現しようとした」

「スターライナーのサービスモジュールにある「ドッグハウス」と呼ばれるスラスターを収容する構造物は、これまで考えられていたよりも多くの熱を保持する可能性がある」

ボーイングの杜撰な熱設計か・・・。

「エンジニアたちは、宇宙船の離陸に向けたスラスターの性能のモデル化に着手する前に、追加のテストが必要かどうかを検討している。RCSスラスターは、ステーションからの離陸や軌道離脱にはそれほど頻繁には使用されず、実際の軌道離脱の燃焼は別の大型スラスターによって行われる。」

うーん、そっちも心配だな(同じドッグハウス内に収容)。

「同氏は、(中略)地上テストと関連作業が完了するまでクルー飛行テスト(CFT)ミッションの終了を待ちたいと強調」

つまりだな、安全性は確認されていないということだ(そうなのかあ?)。

「エンジニアらがスラスターの問題とヘリウム漏れの両方に関連する「30件強」の作業に取り組んでおり、その半分以上は完了していると述べた。すべて来週末までに完了する予定」(ボーイングの副社長兼商業乗務員プログラムマネージャーのマーク・ナッピ氏)

検討の結果、スラスターの交換やドッグハウスの再設計が必要ということになれば、開発はさらに遅延する。

当局にとって(もちろん、B社にとっても)懸念されるのはそっちの方の話かもしれない。

軌道上に実機がある間に、地上試験で出来ることを行い、改善できる要素(例えば、ソフトウェアの差し替え:B社は得意だからな)があれば、この試験飛行の間に目途を着けたいに違いない(離脱時にチェックするつもりかも)。

世間は、帰還できないでISSで暇こいている2人の宇宙飛行士のことばっか気にしているけど、本質的な話はそこじゃないのかもしれない。

宇宙飛行士は消耗品だ(そんなあ!)。

「打ち上げの数日前には、スターライナーでブッチとスニを家に帰さなければなりません」「私たちはデータを追跡し、いつドッキング解除と着陸を目標にできるかを見極めるために真剣に取り組んでいます。一部のデータでは、楽観的に見て7月末までになるだろうと示唆していると思います。」(スティッチ氏)

つまり、逆に悲観的に見れば、8月中旬ギリギリまで帰還できないことになる。

おそらく、そうなるに違いない。

バッテリーの寿命から見たスターライナーの係留期間は7月20日に切れるけど、認定しているのが当事者のNASAだからな。

どーにでもなるだろう。

2つの問題(ヘリウム漏れとスラスターの故障)をどこまで解決できるかというのが、CFTにおける本質だ。

解決できないまま、再突入で実機(サービスモジュール)を失うことになれば、下手をするともう一度CFTを行う必要が出てくるかもしれない。

そこは、まあ、無人で飛ばしてもいいのかもしれないし、実際にISSに接舷しなくても、同じ条件でシミュレーションできるだけでいいかもしれない。

が、環境要因(軌道上の熱環境含む)があるから、地上試験だけで済ませるわけにはいかないだろう(だからこそ、今、粘りに粘っているわけだからな)。

報道では、そことのところが今一つ明確ではない気がする。

つーか、当事者(NASAとボーイング)が、明確にしたくないところでもある(CFT-2が必要とか)。

やれやれ・・・。

この件に付き合い始めて1か月以上になるけど、ようやく全容が見えてきた気がする。

んな話は無人機のレベルで解決しておくべき話だ。

2回も飛ばしたくせに、何やってたんだか・・・。

まあいい。

浮沈子的には、この背景にあるのはエアロジェット・ロケットダインとB社との関係にあるのではないかと見ている。

仕様に従って部品を納品すればいいという考えのロケットダインと、それにまつわるトラブルシューティングを含めて解決への協力を期待するB社との軋轢は、バルブ固着(OFT-2)で表面化した。

その結末がどうなったかは知らないが、スラスター供給元のロケットダインと、宇宙船の設計製造に当たっているB社という構図は同じだ。

熱設計が問題ということなら、B社の責任は大きい。

スターライナーのサービスモジュールに搭載されている合計52基のエンジンは使い捨てになる。

コスト構造として、ライバルであるクルードラゴン(エンジンは全て回収される)に比べて割高になることは明らかだ。

つーことはだな、徹底したコスト管理が行われていることになる(そういうのは、B社は得意だからな:そうなのかあ?)。

CFTの打ち上げ前に、必要な冗長性(運用手順)が確保されていなかったことが発見されて、対策が講じられるまで打ち上げが延期された話は記憶に新しい。

この宇宙船はヤバ過ぎる。

モグラ叩きのように、次々と新たなトラブルが表面化する。

まだ開発レベルだし、運用初期にはありがちな話だが、その内容がひどすぎるからな。

尋常とは思えない。

悪いことは言わない。

ISSに閉じ込められている宇宙飛行士2人は、クルードラゴンで帰還させるべきだ。

テスト飛行とはいえ、潜在的なリスクが大き過ぎる。

ISSの運用やスケジュールに多少の変更が必要だろうけど、それで失うものは贖いがつく。

基礎的な設計(今回判明しているのは熱設計:まだ、そうと決まったわけではないけど)に瑕疵がある可能性が高いスターライナーは、まだ、有人で飛ばせる段階には至っていない。

ヘリウム漏れについては、まだ、謎なままだ(原因の判明も、解決の見通しもない)。

たっぷり積んでいるから大丈夫というのは、現状の漏洩率が変わらないと仮定した場合の仮の話だ。

打ち上げ前には、1か所だった漏洩か所は、現在では5倍に増えている。

仮に、ISSから離脱して、サービスモジュールを切り離す(これ自体もヤバいイベントだけどな)までに、さらに5倍(25か所)の漏洩か所が生じたらどーする!?。

10倍積んでるから大丈夫とは、必ずしも言えないのではないのかあ?。

まあ、どうでもいいんですが。

おそらく、スターライナーは今月(7月)中にはISSを離脱できないだろう。

当局は、ギリギリまで解決の道を探りたいに違いない。

それでも、浮沈子的にはCFT-2の可能性が高まっている気がする。

或いは、スターライナーの運用断念か。

当局は、2つの問題が解決されない限り、ミッション運用はしないと明言している。

ISSタクシーはケツカッチンのミッションだからな。

2030年までしか、ISSが飛んでいないとすれば、来年前半の運用開始がギリギリとなる。

来年後半ということになれば、場合によってはISSの運用期間の延長が必要だ。

2025年前期:クルードラゴン
2025年後期:スターライナー1回目
2026年前期:クルードラゴン
2026年後期:スターライナー2回目
2027年前期:クルードラゴン
2027年後期:スターライナー3回目
2028年前期:クルードラゴン
2028年後期:スターライナー4回目
2029年前期:クルードラゴン
2029年後期:スターライナー5回目
2030年前期:クルードラゴン
2030年後期:スターライナー6回目

2030年後期というのは、少なくとも2031年2月くらいまでは、ISSに係留されているということだからな。

おそらく、CFT-2が行われることになれば、2025年後期のミッションスタートに間に合わない公算が高い。

それよりなにより、打ち上げに必要なアトラスVが足りなくなる。

既に、使用可能な1段目は限られており、アマゾンと奪い合うことになる(そうなのかあ?)。

NASAとB社は追い詰められている。

やっぱ、宇宙飛行士の気分にかまってる暇なんてないだろう。

「私は文句を言っていませんし、ブッチも文句を言っていません。私たちがここに2週間余分にいることに対して」(NASAの宇宙飛行士スニ・ウィリアムズ:スペースニュースの記事より)

2週間の余分の滞在期間は、おそらく2か月に達するだろう(当初予定は6月14日だった:もう忘れたけど?)。

かくも長き不在かあ・・・。

<以下追加>ーーーーーーーーーー

(NASAとボーイング、スターライナーの帰還に先立ち地上テストを実施:Posted onJuly 10, 2024)
https://blogs.nasa.gov/boeing-crew-flight-test/2024/07/10/nasa-boeing-conduct-ground-tests-ahead-of-starliner-return/

「今月末に機関レベルの準備状況の見直しが行われた後、NASAとボーイングは、有人飛行試験の新たな目標帰還日を選択する予定」(After an agency-level readiness review later this month, NASA and Boeing plan to select a new target return date for the Crew Flight Test.)

ちょっと英語のお勉強・・・。

(later this month のニュアンスについて)
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1211317617

「今月後半あるいは、今月下旬というように使われるようですが、微妙に違います。」

「ベストアンサー:
月初めに「later this month」と云えばその月の下旬、月の中央あたりで「later this month」といえば下旬でも「月末近く」と言ったニューアンスになります。 聞き手にとっては何れにしても明確な日にちにはなりませんが、大部分の場合「月末の4~5日間に」と理解しています。」

NASAの記事は、10日にリリースされている(上旬だけど、まあ、月半ばな印象だ)。

既に見たように、追加の地上試験が行われるかどうかも含めて、来週末(7月20日)までには、何らかの結論(試験結果)が出ているものと思われる。

それを評価するプロセス(1週間くらい?:26日頃か)を経て、幹部がうんうん唸って結論を出すんだろう(29日頃か)。

月内に、離脱(帰還)の目標日が設定されることはない(タイミングは4日に1回訪れるそうです)。

早くて8月上旬(8月2日以降?)、遅ければ中旬にかかる可能性もある(12日ころ?)。

もちろん、ギリギリまで粘ったというエクスキューズも必要だ。

NASAはお役所だからな。

納税者に対して、説明責任を果たさなければならない。

つーことは、あれだな、CFT-2は不可避という結論が既に出ているということなわけだ(そうなのかあ?)。

こんな状況で、正規のミッションを実施するわけにはいかないだろう。

改善するための影響は小さくない。

熱設計をやり直せば、構造・材質的な変更やそれらに伴う必要な試験も行わなければならない。

それを避けるために、スラスターの噴射時間や噴射間隔を短くして運用ができないかをシミュレーションしているんだろうが、付け焼刃な対策で済むかどうかは怪しい。

ヘリウム漏れはもっと深刻になる可能性もある。

延々と止まらない漏れと格闘し続けたSLSの悪夢が蘇るからな(あれもB社じゃなかったっけえ?)。

CFTで、やるだけのことはやったという言い訳を作っておかなければ、CFT-2に移ることはできないだろう。

➀2度目の有人飛行になるのか、➁OFT-3として無人で行うのか、➂強引にミッションにつなげて、OFT-2+ミッション1にするのか。

➂の場合の宇宙飛行士の数や、ロシア側の乗員の可否も問題になるだろうな。

まあ、どうでもいいんですが。

地上試験で、熱的劣化が再現できなかったというのは痛いな。

それが真の原因なのか、はたまた別の原因(エンジンそのものの欠陥)に伴う現象として出ているだけなのかは分からない。

このトンネルを抜けるには、もう少し時間が必要なようだ・・・。

🚀アリアン6:初打ち上げの評価2024年07月11日 21:27

アリアン6:初打ち上げの評価
アリアン6:初打ち上げの評価


(欧州の新型ロケット「アリアン6」初打ち上げ 軌道到達と超小型衛星放出に成功)
https://sorae.info/ssn/20240710-ariane6.html

「欧州宇宙機関(ESA)は日本時間2024年7月10日に「アリアン6」ロケット初号機の打ち上げを実施しました。ロケット2段目の軌道到達と搭載されていたペイロードの軌道投入に成功したことがESAから発表されています。」

おう、成功だったのかあ?。

「一方、打ち上げミッション第3段階の技術デモンストレーションとして発射2時間37分後頃に計画されていた2段目エンジン3回目の燃焼と、それに続く再突入カプセル2機の分離は実施されませんでした。」

「2段目のVinciエンジンを再点火するにはアリアン6用に開発された補助推進装置(Auxiliary Propulsion Unit: APU)が必要」

「APUの主な役割は推進剤タンクの加圧ですが、浮遊する推進剤をVinciエンジンの再点火時にタンクの底へ集めるために加速度を生じさせたり、必要に応じて推力を追加させたりする役割も」

「APUは超小型衛星放出後に一旦は再始動したものの、何らかの問題が生じて数秒後に停止し、その後の2段目は計画通りの軌道から逸れていった」

ミッションとしては部分的成功という評価が妥当なんだろう。

(打ち上げ履歴)
https://en.wikipedia.org/wiki/Ariane_6#List_of_launches

「質量シミュレータを搭載したアリアン6号の初飛行。上段は補助動力装置の異常により2度目の再起動に失敗し、軌道離脱噴射が不可能となった。」

「このペイロードは主に質量シミュレーターであったが、複数の相乗りペイロードも搭載していた。これらには、5つの実験(GAREFのPariSat、Sint-PieterscollegeのPeregrinus、OLEDCOMMのLIFI、Libre SpaceのSIDLOC、ESAのYPSat )と8つのCubeSat(RapidCubeのOOV-Cube、PTSのCurium One 、リスボン大学のISTSat、カタロニア工科大学の3Cat-4 、SpacemanicのGRBBEta、モンペリエ大学のROBUSTA-3 、 NASAのCURIE 、Orbital MatterのReplicator)が含まれており、これらは正常に展開された。この打ち上げでは、第2段が軌道から外れた後に展開される予定だった再突入カプセル2つ(ArianeGroupのSpaceCase SC-X01とThe Exploration CompanyのNyx Bikini )も搭載されていたが、機体は予定通り再突入しなかった。」

「打ち上げ結果:部分的な失敗」

うーん、まあ、どっちでもいいんですが。

が、浮沈子の評価は異なる。

(ヨーロッパ初のアリアン6号の飛行は目的のほとんどを達成したが、予定より早く終了した。)
https://arstechnica.com/space/2024/07/europes-first-ariane-6-flight-achieved-most-of-its-goals-but-ended-prematurely/

「8分を少し切ったところで、ヴァルカン2.1エンジンが停止し、ロケットの主段が下がって上段のヴィンチエンジンが軌道速度まで加速する役割を終えた。主段と同じ液体水素と液体酸素の混合物を燃焼するヴィンチエンジンは、飛行開始から18分半ほど経過して予備的な移行軌道に到達するまで噴射された。」(初期点火:浮沈子注)

「上段は地球を半周した後、ヴィンチエンジンを短時間再点火し、高度約360マイル(580キロメートル)、赤道に対して62度の傾斜で円軌道を描いた。」(第1回再点火:浮沈子注)

「しかし、その発言から間もなく、上段の故障により、ヴィンチエンジンは地球の大気圏に再び突入して破壊的な再突入を狙う3回目の燃焼を完了することができなくなった。」(2度目の再点火に失敗:つーか、再点火はしたんだが継続できなかった:浮沈子注)

「ほとんどのロケットは推進剤タンクを加圧するためにヘリウムを使用しますが、設計者は重量を軽減し、低推力のセカンダリーエンジンとしてのAPUの追加の利点を活用するために、アリアン6にAPUを導入しました。」

「上段には補助推進装置(APU)も搭載されており、基本的には小型の第2エンジンで、いくつかの重要な機能を果たす。」

「これらには、上段の推進剤タンクから少量の液体水素と液体酸素を引き出し、3D プリントされたガス発生器で加熱し、その後、ガスをタンクに注入して加圧するといったことが含まれます。APU はまた、ヴィンチ エンジンが点火される前に上段のタンクに浮遊している推進剤を沈めたり、宇宙空間でのロケットの位置を微調整してペイロードをわずかに異なる軌道に放出したりするのに十分な、低レベルの推力も生成します。」

ガス発生機(ガスジェネレーター)で生成されたガスというのは、たぶん、水蒸気だろう(燃料が水素と酸素だからな:未確認)。

最近のロケットは、2段目の長期間運用や再点火が流行っていて(流行りなのかあ?)、いろいろ複雑な仕掛けを施している。

欧州らしい小技の連発で、使い捨てロケットのネガを、少しでも緩和して再使用に対抗しようといういじましい取り組みだ(そういうことかあ?)。

「ある時点で、APU を再点火しました」「再点火しましたが、その後停止しました。なぜ停止したのかはわかりません。これは、すべてのデータを入手したときに理解する必要があることです。」(アリアン6ロケットの主契約者であるアリアングループのCEO、マーティン・シオン氏)

「APU の故障は、残りの試験飛行にいくつかの影響を及ぼした。APU が作動せず、ロケットの燃料タンクを適切に調整できなかったため、ヴィンチ エンジンは再起動できなかった。」

「ミッション開始から 2 時間半以上経過して予定されていたこの 3 回目のヴィンチ燃焼は、ロケットの速度を十分減速させて軌道から外れ、大気圏に再突入し、太平洋上でロケットが分解するはずだった。」

この故障の影響が、初回の点火や燃焼に及ぼす影響は見えていない。

「フランスの打ち上げサービス会社アリアンスペースのCEO、ステファン・イスラエル氏は、APUの問題は次回のアリアン6号の飛行には「影響しない」と述べた。」

「この飛行では、CSO-3というフランス軍の偵察衛星が打ち上げられる予定」

「フランスのCSO-3衛星は低高度軌道に打ち上げられる。1つの衛星で低軌道に打ち上げられるため、このミッションでは火曜日に試みたようにアリアン6号の上段でAPUを複数回点火する必要はないと思われる。」

しかしながら、推進剤タンクの加圧や推進剤をタンクの下部に押し付ける加速は必要だからな。

アリアン6は、ホットステージじゃないから、2段目を分離した時の加速はゼロになる。

その際にAPUを働かせているかどうかは不明だ(<以下追加>参照)。

もしそうなら、今回、3回目の点火(2回目の再点火)後に失火したというのは重要なネガになる。

APUの作動に信頼がおけないということだ。

「今夜の打ち上げ成功によって我々は次のミッションの準備ができる」

ステファンイズラエルは強気の発言をしているけど、根本的なところで問題を抱えていることを露呈した打ち上げとなった。

最後の最後で躓いたわけではない。

16機のペイロード(その中で2段目から分離されるのは11機)のうち、分離できなかったのは2機だけだから、成功は16機中14機(87.9%)だとか、そういう割合の話でもない。

1回目の再点火には成功しているから、確かに機能することは確認されたが、2度目の再点火(継続燃焼)に失敗したことの影響はデカい。

原因の究明は急務だ。

同時に、このロケットに対する今後の運用にも影響が出かねない。

(欧州宇宙機関、アリアン6ロケット初号機を打ち上げるが上段に問題発生)
https://spaceflightnow.com/2024/07/07/esa-makes-final-preparations-for-its-inaugural-ariane-6-launch/

「6月下旬、前述のEUMETSAT(欧州気象衛星輸出機構)は、メテオサットMTG-S1衛星の打ち上げを、アリアン6(アリアン64構成を採用した最初のロケット)の3回目の打ち上げから、スペースXのファルコン9ロケットに変更すると発表した。これは、ル・モンド紙が最初に報じた。」

これに対しては、関係者から避難囂々だったようだが、初打ち上げの状況を見れば、先見の明有りというところだろう。

「アリアン6号の打ち上げに必要な技術的条件は整っており、ロケットも確かに利用可能でした。欧州の主要な宇宙開発国や欧州委員会が欧州のロケットで欧州の衛星を打ち上げるよう呼びかけているこの時期に、ユーメトサットがこのような決定を下した理由を私は待ち焦がれています!」(CNESの会長兼CEOであるフィリップ・バティスト氏)

ズバリ、信頼性の欠如だ。

「EUMETSATの決定は「理解しがたい」」(ESAのヨゼフ・アッシュバッハー事務局長)

今は、十分理解できるんじゃないのかあ?。

「ロケット危機の終焉は手の届くところにある。今こそ、欧州が間近に迫っている宇宙への自律アクセスを支援する時だ」(同上)

鼻息が荒いのは結構だが、実質が伴わなければ何にもならない。

フランスの軍事衛星が今年上がるかどうかに注目だな・・・。

<以下追加>ーーーーーーーーーー

(ローンチタイムライン)
https://spaceflightnow.com/wp-content/uploads/2024/07/20240705_Ariane6_launch_timeline.jpg

スペースフライトナウのページに張られていた画像を見ると、発射後のシーケンスが確認できる(ちゃんと見てない証拠だな)。

画像からのOCRはこのページを参照・・・。

(無料&ブラウザ上でPDF・JPEG・PNG・GIFファイルからOCRによるテキスト抽出ができる「OCR PDFs and images directly in your browser」)
https://gigazine.net/news/20240404-ocr-pdfs-and-images-directly-in-your-browser/

「Time Event
(hh:mm:ss)
 -00:00:07 Valcain ignition.

➀ 00:00:00 Booster ignition and liftoff

➁ 00:02:16 Booster separation

➂ 00:03:39 Fairing separation

  00:07:35 Vulcain 2.1 cutoff

➃ 00:07:41 Upper stage separation

⑤ 00:07:50 First Vinci boost

  00:08:53 First Auxiliary Propulsion Unit power up

  00:18:32 Vinci cutoff

⑥ 00:56:20 Second Vinci boost

  00:56:42 Vinci cutoff

  01:05:36 Auxiliary Propulsion Unit cutoff

⑦ 01:05:53 First separation command:

         00V-Cube, Curium One, Robusta-3A and initialisation of YPSat and Peregrinus

⑧ 01:05:56 Second separation command:

         3Cat-4, ISTSat-1, GRBBeta and initialisation of SIDLOC and Pariat

⑨ 01:06:02 Third separation command:

         CURIE and Replicator

  01:14:12 Second Auxiliary Propulsion Unit power up

  01:43:41 Auxiliary Propulsion Unit cutoff

  01:51:11 Third Auxiliary Propulsion Unit power up

⑩ 02:37:15 Third Vinci boost

  02:37:43 Vinci cutoff

  02:39:26 Auxiliary Propulsion Unit cutoff

⑪ 02:40:13 Capsule separation command:

         Nyx Bikini and SpaceCase SCX01

  02:40:33 First passivation manoeuvre」

ポイントは⑤からだな。

➃で2段目を切り離した直後に、ヴィンチエンジンを点火している(00:07:50)。

APUの起動はその後だ(00:08:53)。

つまり、初回のヴィンチエンジンの点火には、ステファンイズラエルが言うように、APUの不具合は影響しないと考えるのが妥当だ。

興味深いのは、必ずしもヴィンチエンジンの点火とAPUの起動とは1対1で対応しているわけではないことだな。

そこんとこだけ抽出するとこうなる。

00:07:50 First Vinci boost:第1回目ヴィンチ起動
(ヴィンチのみ起動)
00:08:53 First Auxiliary Propulsion Unit power up:第1回目APU起動
(両方起動)
00:18:32 Vinci cutoff:第1回目ヴィンチ停止(作動時間10分42秒)
(この間はAPUのみ起動)
00:56:20 Second Vinci boost:第2回目ヴィンチ起動
(両方起動)
00:56:42 Vinci cutoff:第2回目ヴィンチ停止(作動時間12秒)
(この間はAPUのみ起動)
01:05:36 Auxiliary Propulsion Unit cutoff:第1回目APU停止(作動時間57分46秒)
(推力なし)
01:14:12 Second Auxiliary Propulsion Unit power up:第2回目APU起動
(この間はAPUのみ起動)
01:43:41 Auxiliary Propulsion Unit cutoff:第2回目APU停止(作動時間29分29秒)
(推力なし)
01:51:11 Third Auxiliary Propulsion Unit power up:第3回目APU起動(起動するもその後停止)
(この間はAPUのみ起動予定)
02:37:15 Third Vinci boost:第3回目ヴィンチ起動予定
(両方起動予定)
02:37:43 Vinci cutoff:第3回目ヴィンチ停止予定(作動時間28秒予定)
(この間はAPUのみ起動予定)
02:39:26 Auxiliary Propulsion Unit cutoff:第3回目APU停止予定(作動時間38分15秒予定)
(推力なし)

このシーケンスを見ると、確かに、いいところまでは行った感じだな。

部分的失敗というのは妥当な評価かも知れない。

01:14:12の第2回目APU起動と、その後の30分近い燃焼は上手くいっている。

まあいい。

欧州の威信を賭けたロケットは、初めから完璧には動作しなかった。

その影響がどうなるのかは知らない。

2段目の初期点火にAPUが関与していない点は確認出来た。

が、その信頼性に疑問符が付いたことは事実だ。

初期点火後に、衛星をデプロイしたあと、APUの点火や再点火のテストを行うことは可能だろう。

ミッションをこなしながら、熟成させていくことは可能だ。

今後に期待だな・・・。