国立科学博物館2016年08月02日 00:14

国立科学博物館
国立科学博物館


ちょっと思い立って、1日がかりで科学博物館に行ってきた。

記憶にあったのは、フーコーの振り子だけ(画像参照)。

全天周映像や、地球館の新設など、旧本館以外の施設が出来ていて、半世紀近く経って訪れた浮沈子を驚かせる。

中にはレプリカもあるが、ここにあるのは概ね本物だ。

江戸から明治、現代にかけての工業化プロセスを展示してあるコーナーでは、正に実物展示が目を引く。

パナソニックのタフパッド(TOUGHPAD JT-B1)を使った、音声と文字による解説グッズを借りて(310円もするけど)、床に書かれた番号を入力して解説を聞きながら歩く。

分銅を、「ぶんどう」とか言ってたけどな。

まあいい。

展示方法に工夫が凝らしてあって、従来のように、ただ並べて、勝手に見てくれという出し方ではない。

テーマや、時代など、複数の切り口で、立体的に展示してある。

細部に至れば、それぞれの研究部門のお家芸が光る。

概観して良し、突っ込んで良し。

まあ、浮沈子にとっては、いささか突っ込みが足りない印象はあったが、ガキども(失礼!、お子様方)や若い方にとっては、科学技術に関する全体的なイメージを形成する上では、有効な施設になっている。

全天周映像(解像度はイマイチ)の宇宙論の解説では、暗黒物質についても触れられていて、最新の知見を織り込んでいる(暗黒エネルギーについては触れられていなかったがな)。

科学は、日々進歩していて、コンテンツのブラッシュアップは永遠の課題だ。

いくつか気になるテーマもあって、小笠原の西之島の火山灰の展示が目を引いた。

(西之島 2014年噴火のマグマ成因を初めて解明:チラシのPDF)
https://www.kahaku.go.jp/event/2016/06magma/magma.pdf

西之島自体は、大陸性の安山岩質の溶岩が絶海の孤島で噴出するという、ちょっと信じられないケースだが、さらに、ホットスポットで形成された海山が、海溝下に沈み込んで、その成分が噴出しているという。

噴出物の分析で、その裏付けがなされたという展示だった(細かいデータとかが出ているわけではありません)。

9月4日までの時限的な展示のようだったな。

工業関係の研究で、受賞した技術を展示してあるコーナーもあった(浮沈子は、曙ブレーキの展示を見るために、わざわざ出かけたんだがな)。

遠赤外線を照射して、アスベストの有無を感知する仕掛けや、コマツのGPSを使った3次元解析で土木機械を制御するシステムなど、かなり面白いネタもあった。

お子様向け(夏休みの宿題用)の展示ということなんだが、ちょっと難し過ぎるかもしれない。

まあ、こういうぎこちなさも、ご愛敬というものだ。

回収されたフリーフライヤーの現物(実際に宇宙空間を飛んできたヤツ:外装とかは替えてあるそうです)があったり、スミソニアンにも引けをとらない内容だが、いかんせん規模が小さい。

30年以上前にワシントンに行った時には、アポロ11号(司令船)の現物とか、巨大ゴキブリの展示に、腰を抜かした!。

そういう、度肝を抜くインパクトには欠けるが、レプリカではない本物が持つ力を引き出し、それを若いころに実際に見ることによる影響は重要だ。

展示スペースに限りがあって、全てを見せるわけにはいかないんだろうが、歴史的に埋もれてしまう収蔵物を収集し、保存していくという作業も、博物館の重要な役目だ。

屋外には、ラムダ4Sのランチャーと、ロケットの模型が置かれていたし、シロナガスクジラのドハデな模型も展示してある(実物大:30mあります)。

620円(入場料)+310円(解説機レンタル料)で、1日楽しめる(食事代、電車賃除く)。

あちこちにベンチがあって、歩き疲れると解説だけ聞きながら、休んでいることもできる。

夏休みということもあり、ガキどもが多かったが、前回来たときは、浮沈子自体がガキだったわけで、半世紀近い時の流れを感じるな。

あの頃の自分を見ているようだ・・・。

そして、彼らもまた、半世紀経って訪れることがあれば、同じような感慨を抱くに違いない。

国立科学博物館自体、120年の歴史を持っているそうだが、自然科学や技術史の研究、教育の基盤としての役割は、今後も続いていくんだろう。

海外の同様の博物館との連携で、展示物を貸し借りしたり、国際的な技術動向を立体的に見せたりすることも出来るといいな。

美術館などは、収蔵品の貸し借りはふつーに行われているしな。

中国や東南アジアなど、新興工業国では、急速な技術革新の中で、失われていく歴史的な事物も多いに違いない。

国立博物館としての限界はあるだろうが、そういう方向性をもっと出してもいい。

理想を言えば、スミソニアンだが(たぶん、展示面積だけで10倍以上)、まあ、今後に期待というところか。

気になる点もあった。

音声ガイダンスはいいんだが、展示物について、より突っ込んだ解説を求めたい時に、誰もいないのだ。

最近の博物館は、そういう人を置いて、展示解説に厚みを持たせているところが多い。

お台場の科学未来館もそうだし、民間でいえば、品川のニコンの展示もそうだ。

まあ、同じ品川でも、三菱重工みたいに、そっけないのもあるけどな。

現役の研究者でなくてもいいから、人間の解説者を常時配置するような形が取れないものか。

解説ツアーのようなことはやっているようだが、厚みのある配置ではないようだ。

現物の持つ力と、適切な解説が融合した時に、強力な訴求力を発揮するに違いない。

VR技術との連携も重要だな。

インターネット時代に、どうやって現物を見せるかというのは、博物館にとっては死活問題だろう。

現物展示では、スペースや保存などの関係で見せることが出来ない収蔵物を、VRで見せるなど、前向きの対応が求められるところだ。

発掘など、研究の現場の状況を体験的に見せるなど、現物展示に厚みを持たせるなどのやり方もある。

一つ一つの展示を丁寧に見ていけば、1日ではとても見終えることは出来ない。

実質、5時間掛けて回ったが、場所的には全部見たものの(常設展示だけ)、内容的には、10分の1も見ていない感じだ。

1週間くらい通い詰めれば、とりあえず堪能することは出来るだろう。

インターネットやVRなどとの連携、人による解説の充実、展示スペースのさらなる拡大と、国内、海外との協力。

博物館自体の、今後の課題も見えてきた。

今日は、月曜日で、休館のところが多い上野界隈だったが、美術館がひしめく所でもあり、日を改めて、また来たいと思った。

音声解説機は、有料だが、それに見合った内容はある。

このコンテンツを、思い切ってネットで公開してもいいのではないか。

予習、復習にもなるし、将来のバーチャル博物館のきっかけになるかも知れない。

まあ、現物収蔵と現物展示の迫力には及ばないだろうけどな。

本物の持つ意味と、仮想化された世界の融合が、今後の課題の一つだと感じた。

しかしなあ、フーコーの振り子は懐かしかったなあ・・・。

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