困難2017年01月14日 02:16

困難
困難


何人かの人々は、火星を目指している。

彼らに触発された、その他多くの人々も、同じく赤い惑星を目指すだろう。

地球の陸地をくまなく支配した(と思っている)人類が、次なる地平を求めて宇宙に進出しようとしている。

地球低軌道に、一桁の人類を送り込むのが精一杯なのに、なんか背伸びしすぎているような気がしないでもない・・・。

例によって、浮沈子は、この手の話に冷淡だ。

人類がこの地球上に留まり、天変地異を受けて滅びるなら、それは仕方ないと考えているし、自らが地球環境を破壊して滅びるなら、それこそ自業自得だ。

別に、それで不都合なことは何もない。

誰に頼まれたわけでもなく、火星などというとてつもない環境に、わざわざ行く必要などないのだ。

もっと近くの、既に足跡を刻んだ月(約38万km)だって、居住に値する魅力がある天体には見えない。

月くらいまでなら、地球から物資を送るにしても、何かあったら帰って来るにしても、数日でOKだが、火星となると数か月単位の話になり、それも、タイミングを計ってのことで、黙っていれば2年に1度の最接近を待たなければならない(近い時でも、2桁以上遠い)。

惑星同士というのは、近づいたり離れたりで、数倍も距離が変わる話なのだ(火星の場合、近い時で6000万km以下。遠いと約4億km)。

(火星が最遠)
http://www.astroarts.co.jp/alacarte/2004/200409/0906/index-j.shtml

「大接近時には0.373天文単位、6日では2.667天文単位とおよそ7倍」

地球からの支援を打ち切れば、たちどころに干上がる運命にあるわけで、植民地としての魅力があるわけではない。

鉱物資源にしても、火星で使用するならともかく、地球に持ち帰ることは現実的ではない。

そこに、小さな重力の、足場がしっかりした天体があるということ以上の魅力はない。

つまり、有人探査以上の話というのは、全てヨタ話ということになる。

月だって、まあ、同じことだったわけで、それは米ソの冷戦が終わった後の、この数十年を見れば明らかな話だ。

月世界に人類がいたのは、わずか数年。

たった6回。

12人の宇宙飛行士(全員、米国人)が、短期間居ただけで終わった。

現在も、有人月探査を行う具体的な計画は、人類にはない。

浮沈子は、今世紀中に人類が再び月を訪れる(月面に降りる)ことはないと思っている。

考えてみれば、有人火星探査にしたって、構想はあるかもしれないけど、計画と呼べるものはないに等しい。

要素技術を検討して、実現可能性を探るという程度だ。

(有人火星探査に乗る?)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2016/08/02/8144431

(国際宇宙探査ロードマップ)
http://www.jaxa.jp/projects/sas/planetary/files/roadmap_2_j.pdf

まして、移住などという途方もない話は、正真正銘の与太話である。

浮沈子は、スペースXがファルコン9を再使用して、宇宙空間にアクセスするコストを削減しようとしていることは高く評価しているし、応援もしている。

いままで、ローンチ・ビークルに対して、誰も試みなかったアイデアを、現実のものにしていこうとしているのは、素晴らしいことだと思っている(まあ、スペースシャトルも再使用ロケットですけど)。

しかし、確実な技術を伴わない有人火星飛行や、火星植民、惑星間ロケットの話というのは、国家が政治目的で掲げる目標ならともかく、民間企業が金儲けを狙ってぶちあげるビジョンとしては、いささか荒唐無稽だ。

もちろん、要素技術の開発は行っているのかもしれないし、スピンオフされた技術が、本業を支えるようになる可能性はある。

えーと、本業って、何だっけえ?。

ああ、衛星の打ち上げだったような気がするな。

火星には、何もない。

少なくとも、人類の将来を託すための何かがそこにあるというのは誤りだ。

もし、それを目的とするなら、人類は一から作り上げなければならない。

地球上にある水、空気、エネルギー、宇宙放射線からの遮蔽、隕石からの遮蔽、紫外線からの遮蔽、不足する重力、その他すべての環境、人類文明が築いてきた社会インフラ、コミュニティ、文化、社会制度、その他もろもろ・・・。

もちろん、食料もだ。

火星まで、毎日の食料を運ぶわけにはいかない。

全ては、そこで調達され、生産され消費されなければならない。

そうでなければ、火星は単なる墓場になる。

火星に生命はいるんだろうか?。

あるいは、かつていたんだろうか?。

浮沈子は、そのことについても懐疑的だ。

つーか、否定的だな。

科学者の中には、宇宙には生命が溢れているなどと、見てきたような話をする方がいる。

なるほど、いないと証明することは不可能に近い。

いるかも知れないと、強弁されれば、否定はできないだろう。

なにしろ、我々自身の存在が、それを不可能にしている。

事実、宇宙に生命は、溢れているのだ(地球も、宇宙の一部ですから)。

それでも、浮沈子は、生命というのはそう簡単に生まれるものではないと信じている。

未だに、地球外生命の痕跡が発見されていないこと、実際に地球上での生命の発生が、一度だけしか起きなかったとみられていること、化学進化の当然の帰結としての生命(って、化学反応の一つの系に過ぎないと思ってるんですが)が、実験的に生成できないことからも、それは明らかに思われる。

実験室で、特定の環境における生命が生成され、その機序が明らかになり、そういう環境が地球外のどこかに発見され、まあ、そこにダイレクトに生命がいなくても、ちょこちょこっと振り掛けをかければ、たちどころにテラフォーミングすることが出来れば、少しは可能性を信じてもいいんだがな。

それでも、天然の宇宙に、他の生命がいると断言することは出来ない。

あくまでも、可能性があるということが出来るだけだ。

もう一つ、ついでに、恒星間飛行というのもあり得ない話だ。

もう、火星なんてもんじゃない。

人類の文明を、10回くらい宇宙船の中でやり直すくらいの時間をかけなければ、隣の星(プロキシマ・ケンタウリ:約40兆km)までも行けない。

もちろん、この話は、人類が現在手にしている科学技術をもとにしている。

自己修復可能な遺伝子とか(まあ、生体の中では、毎日自己修復してますが)、恒星を2、3個ぶっ潰すくらいの莫大なエネルギーを使って、空間を歪めて推進する宇宙船を造るとか、あらゆる化学反応をシミュレーションできるコンピューターとかが当たり前の高度な文明を手にすれば、いつか可能になるのかもしれない。

その前に、現在の文明が消えてなくなってしまう方に、一票だがな。

確認しておこう。

火星には、何もない。

少なくとも、我々が多大の犠牲と投資を払って開拓しなければならないものはない。

唯一、そこに何かがあるとすれば、それは、何もないという処女地の魅力だけだ。

地球から、2、3日で行くことが出来る月でさえ、人類は居住地とすることは出来なかった。

今後も、当分の間、無人探査機の天国だろう。

夢を語るのは自由である(自由でなければ、夢は語れないしな)。

人類未踏の地を目指して、困難を克服しようとする営為に、水を差す気はない。

失敗を恐れて、前進をやめれば、永遠に辿り着くことは出来ない。

挑戦し続けなければ、立ちはだかる壁を突き崩し、まだ見ぬ世界を拓くことなどできはしない。

人類はそうして世界を切り開いてきたし、宇宙にも進出した。

ちょこっとだけ。

映画ミッション・インポッシブルのセリフに、こんなのがある。

(ミッション・インポッシブルでの一幕 2)
http://ameblo.jp/ultimatum/entry-10046858293.html

「You think it's difficult. It's not mission difficult. It's mission impossible.」

「ミッションインポッシブル2の中で、トム・クルーズ扮するEthan Huntの上司であるAnthony HopkinsがEthanに次のミッションを告げているときの一幕です。」

「Difficulty should be a walk in the park for you Mr. Hunt.」

そう、宇宙に進出することは不可能ではない。

しかし、公園を散歩するよりは、多少(?)困難な話だ。

今週末には、イリジウムネクスト10機を乗せたファルコン9の打ち上げ、トリコムー1を乗せたSS-520 4号機の打ち上げが立て続けにある。

もちろん、公園を散歩するようなもんだろう(そうなのかあ?)。

困難など、何でもないだろう。

何も、恒星間飛行をしろとか、火星に植民しろとか言っているわけじゃないんだから・・・。

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