🐱スターシップ:IFT-3:総括2024年03月16日 19:50

スターシップ:IFT-3:総括


(木曜日の飛行後、スターシップはすでにこれまでに製造された最も革新的なロケットとなっている)
https://arstechnica.com/space/2024/03/thursdays-starship-flight-provided-a-glimpse-into-a-future-of-abundant-access-to-space/

「過去 10 年間で、SpaceX ほど私たちを魅了した宇宙機関や企業はありません。」

「私たちはこの約束された未来を目の当たりにしており、スペースXは今年、真に前例のない150回の打ち上げに近づく可能性があります。」

もう、エリックバーガーは舞い上がっちまって、抑制が効かない感じだ。

浮沈子には、前回のラプターの安定した燃焼の方が、今回より重要で、達成した意義も大きいと思われるんだがな。

前回を60点とすれば、今回は20点だ。

で、記事の中で、スペースXのページがリンクされているのでのぞいてみた。

(2024 年 3 月 14 日
スターシップの3回目の飛行試験)
https://www.spacex.com/launches/mission/?missionId=starship-flight-3

達成項目についてまとめているので、少し細かく見ていく。

「・2 回目は、スーパー ヘビー ブースターの 33 基のラプター エンジンすべてが正常に始動し、上昇中に全期間の燃焼を完了しました。」

2回目とあるのは、IFT-1を除外しているからな。

これについては、全く異議はない。

10点満点だ。

「・スターシップは2度目の成功したホットステージ分離を実行し、スーパーヘビーの3基を除くすべてのラプターエンジンの電源を切り、車両を分離する前に6基の第2ステージラプターエンジンの点火に成功した。」

これも問題ない。

が、点数はあげない(10点に含まれる)。

「・分離後、スーパーヘビーブースターはフリップ操作を正常に完了し、完全なブーストバック燃焼を完了してメキシコ湾の着水点に向けて送り出しました。」

ここは、前回から、ちびっと進歩が認められているので5点加算(合計15点)。

「・スーパーヘビーは、機体がRUD(SpaceXで言うところの「予定外の急速な分解」の意味)が発生する前に、史上初の着陸燃焼のために複数のエンジンに点火することに成功した。ブースターの飛行は高度約462メートル、ミッション開始から7分弱で終了した。」

ビデオを見ると、再点火のタイミングが遅れていることに加え、点火しているエンジンがバラバラで、「複数のエンジンに点火」というのが、成果として得られたものなのかは怪しい。

映像を見ると3基ほど点火しているが、本来は13基が点火するはずだろう(未確認)。

速度も時速1100kmを超えており、制御に失敗している。

着水は0点だな(キビシー!)。

「・スターシップの 6 基の第 2 段ラプター エンジンはすべて正常に始動し、予想軌道まで動力を供給し、全期間にわたる上昇燃焼を完了した最初のスターシップとなりました。」

ここも、前回から若干進歩があったので(酸素の排出がどうなったかは未確認)、おまけで5点加算しよう(合計20点)。

エンジン燃焼中は、姿勢制御にも問題はなく、エンジン停止時に若干揺れがあるのが気になるが、見かけ上は大きなトラブルを抱えていたようには見えない。

しかし、映像を見ると分かるが、この後、機体はゆっくりと回転を始める。

それが意図的なものであったのかどうかは不明だが、コールドガススラスターはずーっと出っぱなしになっているから、少なくとも「制御しきれていない感」が満載だ(未確認)。

回転は、止まることなくずーっと続いている・・・。

「・惰性飛行中、スターシップはペイロードドア(別名ペッツディスペンサー)の開閉や推進剤移送デモンストレーションの開始など、飛行試験の追加目的のいくつかを達成した。スターシップは、コースト中の車両のロールレートのため、予定されていた単一のラプターエンジンの軌道上での再点火を試みませんでした。これらのデモンストレーションの結果は、飛行後のデータレビューが完了した後に得られます。」

ペトルメレチンの実況では、ペイロードドアの開閉は失敗(完全に開いたかどうかは不明で、閉じることが出来なかったとされている)、推進剤移送は、ここでは「開始」とあるだけで、評価はこれからだしな。

再点火を見送った理由が、宇宙機の回転を制御できなかったこと(コースト中の車両のロールレートのため)とあるのが注目だ。

コールドガススラスター自体の問題か、どこかからリークしていたガスのトルクを制御できなかったからなのかは不明だ。

もしかしたら、姿勢制御システムそのものの問題である可能性もある。

まあいい。

いずれにせよ、これらの評価はこれからだから、現在の得点である20点に加算される可能性はある(大甘!)。

「・スターシップはその後、史上初の宇宙からの突入を経験し、極超音速再突入時の加熱と車両制御に関する貴重なデータを提供しました。入場のライブビューは、Starship 上で動作する Starlink 端末によって可能になりました。」

映像の中継は、今回の目的には含まれていないから、採点対象にはしない(そうなのかあ?)。

再突入は、制御された状態で行われたというより、高度が下がってきて、避けようもなく突入してしまった感じだ。

降下中も姿勢は安定せず、意図的とは思えない回転を続けている(なんか、ダッチロールっぽい)。

後半では、逆立ち状態になって、カメラは宇宙空間を映している始末だ。

やれやれ・・・。

この間、速度はほとんど下がらず、時速26000km辺りをうろうろしている。

先は長そうな感じだな。

気が重くなる。

もうちっと、サマになると思ってたんだがな。

が、まあ、初回の再突入だから、減点対象にはしない(大甘!)。

「・飛行試験の結論は突入中に得られ、スターシップからスターリンク経由で受信された最後の遠隔測定信号はミッション開始から約49分であった。」

ジエンド・・・。

「私たちはおそらく、SpaceX から 1 ~ 2 便のフライトで、宇宙で Starship を理解し、制御していることになります。」(アルスの記事より:以下同じ)

映像を見る限り、コースティング以降は、とてもとてもそうは見えない。

「さらに大きな問題は、(できれば)再利用可能なタイル システムを使用して、その激しい再突入を乗り切る車両の能力をめぐる問題です。完全に再利用可能なスターシップの上段が完成するのは、間違いなく何年も先のことだ。」

つーことは、当分の間、スターシップの2段目は使い捨てになるということなわけだ。

しかし、そうだとしても、このロケットが部屋の中のゾウであることに違いはない。

コストや積載量について、エリックバーガーは皮算用しているけど、それは、このロケットに関心がある人々の誰もが一度は試みている(浮沈子も、先日計算しました)。

「しかし、それはコストや積載量だけではありません。それはケイデンスです。SpaceXにはさらに4隻の宇宙船があり、実質的にはすぐに出発できる状態にある。SpaceX が Falcon 9 ロケットで熟練していることはすでに見てきました。2025 年には 2 桁のスターシップが打ち上げられ、この 10 年間の後半には年間数十機のスターシップが打ち上げられることを疑う人はいますか?」

製造が追いつくかどうかは別として(2段目は当分使い捨てだからな)、1段目の再使用の目途が立てば、ケイデンスは向上するに違いない。

つーことは、2段目の回収を意図した「商売しながらの開発」が可能になるということだ(ファルコン9と1段目と同じ)。

その意味では、1段目のスーパーヘビーブースターを安定的に回収可能なフェーズに持っていくことが最優先だろう。

使い捨てなら、カーゴベイドアは、閉まらんでもいいしな(そうなのかあ?)。

NASAとの契約があるから、HLSの開発も優先順位は高い。

しかし、それにしたって、真空ラプターの再点火は必須だ。

タンカーや貯蔵施設(燃料デポ)の問題もある。

つまり、今回は今のところ、それらについての前進は見られなかったことになる(燃料移送はペンディングです)。

NASAから見たら、ほぼ0点だな(そんなあ!)。

が、打ち上げ時の安定した燃焼をものにした意味は大きい。

2回目(IFT-2)の完全燃焼(1段目の上昇過程と2段目の9割程度の燃焼)が、まぐれではなかったことが確認された。

そこは、手戻りなくクリアされている。

スターシップロケットシステムの基盤は出来ている。

「注目すべきことに、この車両は木曜日に全期間にわたる燃焼を完了しており、容易に地球の周りの安定した軌道に乗ることができたはずです。これについて細かい点を言っておきますが、スターシップは今週、ファルコン9、ファルコンヘビー、スペースシャトルのこちら側の歴史上のすべてのロケットがこれまでに行ったことと同じことを行いました。つまり、名目上の軌道投入を達成し、その第1段と第2段を失いました。」

この評価については、浮沈子もほぼ同意だ(留保は、再点火未達のため)。

まあ、再点火して制御された大気圏への落下(この場合は、廃棄という観点ですが)が出来る目途が立たなければ、地球周回軌道に打ち上げる許可は出ないだろうけどな。

それが出来るようになれば、アポジーやペリジーでキックしなくても、直接軌道投入して様々な課題をテストすることも可能になる。

うーん、逆に言えば、巨大使い捨てロケットとしても、まだ未完成と言えるわけだ。

一昔前なら、制御落下させられなくても良かったかもしれないが、現在では米国から打ち上げられるロケットについてはそれが義務付けられているからな(中国とかは、関係ないのかも:未確認)。

浮沈子的テキトーな予想では、IFT-4は5月と見ている(もちろん、未確認)。

で、そこから毎月1回ずつ飛ばすことが出来れば、今年の打ち上げ許可回数の9回を満たすことが出来るという算段だ(獲らぬ狸の・・・)。

3、5、6、7、8、9、10、11、12月で9回。

安全にはくれぐれも注意して、墜落炎上爆発木っ端微塵を繰り返してもらいないもんだな・・・。