今、出ました2012年05月22日 21:43

今、出ました
今、出ました


蕎麦屋の出前ではない。スペースX社のファルコン9が発射に成功し、ドラゴン宇宙船がISSに向かって飛行中である。

着替えとピザ(たぶん)を持っての配達である。

(米民間宇宙船「ドラゴン」の打ち上げ成功、25日にISS到着予定)
http://www.newsweekjapan.jp/headlines/world/2012/05/73430.php

この打ち上げの成功には、特別の意味がある。

日本の「こうのとり」は、大気圏再突入の際に大気との摩擦熱で燃え、「焼き鳥」状態になって燃え尽きる。これに対して、ドラゴン宇宙船は、耐熱カプセルが地球に帰還し、宇宙から物資を持ち帰ることができる。

ピザの代わりに人間を乗せることも可能だ。安全性の確立を待って、3年後の有人飛行を目指す。打ち上げロケットも、現在の推進エンジンの束(9本)を3倍にして、ゆくゆくは火星旅行を目指すという。

ISSとのドッキングなんざ、小手調べのようなもんですな。

それだけではない。

この会社のロケットは、ほぼ完全な再利用を計画しているという。今回の打ち上げで成功したかどうかは報じられていないようだが、コスト削減を図る意味でも注目である。

2週間くらいの日程で、ISSに滞在する「宇宙旅行」が手軽にできるようになる日も近い。

こんな記事もあった。

(スペースX、22日に再度打ち上げ 迅速な問題解決力の誇示狙いか)
http://jp.wsj.com/Business-Companies/node_445894

うーん、19日の打ち上げ中止は、ひょっとしたら「ヤラセ」ではないか?。

いやいや、そんなケチな根性はないだろう。今回はたまたま解決が容易な故障だっただけだ。リスクを取りつつ、最善を尽くす。繊細かつ大胆な判断が、成功を呼び寄せたのだろう。

絶対安全なんて言わない。多くの失敗は想定の範囲内だという。今回のミッションでも、部分的な成功に終わる可能性を否定しない。

こういう姿勢が信頼を築く。

周りからは、有人飛行への熱い期待が寄せられるが、これについては臆病なほど慎重である。目標は高いが、プロセスは堅実なのだ。

NASAも、うかうかしてはいられない。下手をすると油揚げをさらわれてしまいかねない。微妙な立場である。成功はしてもらいたいのだろうが、余り派手にやられても困る。自分たちの優位な立場も守りたいし・・・。

安全な輸送と経済性といえば、つい先日、悲しいバス事故があったばかりだ。二律背反とも思える命題を両立させるのに必要なのは、知恵と工夫と良心である。悪知恵と手抜きと悪徳では、本当の金儲けはできない。

亡くなられた方は7人だという。奇しくも有人ドラゴンの定員と同じである。どこぞの国の鉄道には、かつて、「安全は全てに優先する」というスローガンがあったそうだ。福知山線の大事故といい、今回のバス事故といい、何かがおかしくなってしまったのではないか。

冒頭の蕎麦屋の出前も、今は昔、岡持ちを持っての片手運転はご法度である。ゆっくりでいいから、安全な輸送に努めて頂きたい(宇宙ロケットじゃ、「ゆっくり」というわけにもいかないでしょうが・・・)。