サイドマウントの研究(5)2013年01月31日 21:26

サイドマウントの研究(5)
サイドマウントの研究(5)


サイドマウントを始めてみようと思ったら、誰かに教わるか、自分流を貫くか、星の数ほどある指導団体のコースを受講するしかない。

現在、コースとして開催されるレクリエーショナルダイビングのサイドマウントプログラムは、PADIしか知らない(他にもあるかも知れません)。

今回は、PADIのプログラムの宣伝ページをネタに、サイドマウントで如何に儲けるか、という研究(?)をしてみよう!。

(【特集】サイドマウント・ダイビング)
http://www.padi.co.jp/visitors/program/spcon/smd.asp

トップページのバナーから、リンクされているこのページ。

どこかで見たような写真が使用されている。

(サイドマウント症候群)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2012/10/09/6598185

浮沈子のブログネタにされてしまった、可愛そうなダイバーさんの写真だった。

(PADI Japanの関係者か?。悪いフィッティングの見本ですかあ?)
http://www.facebook.com/photo.php?fbid=476980099008632&set=a.185046901535288.39713.183431858363459&type=1&theater

まあ、いい。

まずは、ファーストパラグラフに気になる記述・・・。

「サイドマウントでは体の両脇に1本ずつ、2本のタンクを付けて潜るのが基本です。」とある。

基本ねえ・・・。

その前に、「通常のダイビングが背中側に1本のタンクを付けて潜る」とあるが、そのスタイルを広めたのは、当のPADIである。

別に、サイドマウントのタンクが2本でなくても、運用できるし、2本にしなければならない必然性はないのだが、「基本」と言い切るところが、「指導」団体のつよーいところである。

この、2本のタンクを基本とするのには、れっきとした理由がある(と、浮沈子は見抜いた!)。

まずは、1本でバランスをとることは難しい。カウンターウエイトを付けるとか、余程手馴れたフィッティングができるベテランでないと、ビシッと決めるのは無理だ。

メタリコンの10リッタータンクで、1本サイドにチャレンジするのは考え物だ。浮力体を付けるのもいいが、好みが分かれるところだ。

(重いスチールタンクに浮きを付けている写真)
http://ameblo.jp/kuroakira/image-11305074582-12084516708.html

写真を見て思うのだが、これ2本持って行くというのは大変だろう。

基本は2本というのは、1本タンクのバランスの悪さから入ると、敬遠されてしまうからであると確信している。

そして次には、後のページでアルミのタンクを勧めるわけだが、11リッターとか、でかいのはダメだと書いてある。

当然、アルミの6リッタータンクを新調しなければならないとか、しかも、2本必要になるとか、レギュレーターも2セット、ゲージも2倍と、器材メーカーが泣いて喜ぶ配慮にもなる。

日本のダイビングタンクのスタンダードである、重い重いメタリコン(溶着)スチールタンク1本で潜るのが基本です、とは、絶対に言わないのだ。

次のパラグラフには、「PADIがサイドマウント・ダイバー・スペシャルティ・コースをスタートさせたことにより、「サイドマウントは、ケーブ・ダイバー専用でもなければ、テクニカル・ダイバーだけのシステムでもない」と多くのダイバーが気づき始め・・・」とあるが、そうなのか?。

PADIが、「サイドマウントは、ケーブ・ダイバー専用でもなければ、テクニカル・ダイバーだけのシステムでもない」と気付き、さらに、新しいスペシャルティになる(=儲かる)と思いつき、サイドマウント・ダイバー・スペシャルティ・コースをスタートさせた、というところだろう。

多くのダイバーは、「PADIがコースを始めたから、サイドマウントなんていうのが世の中にあるということに、初めて気付いた」ということなのではないのか。

ついでに、「多くのダイバー」というのも怪しい・・・。

まあ、どうでもいいんですが。

次のパラグラフは飛ばして(まあ、メリットは散々書いてきたので)、第4パラグラフに注目である。

「最近国内でも普及が進んできているエンリッチド・エアのタンクを使用すれば、水中での滞在時間をより長くすることできます。もちろん、通常の空気のタンクでも、2本を使用するので長く水中にいることが可能ですが、減圧不要限界を長く延ばせるエンリッチド・エアでこそ、その真価を発揮。」とある。

先ほど指摘した、「2本が基本」というコンセプトが、ここでその真価を遺憾なく発揮していることが分かる。

しかも、エンリッチド・エア(=ナイトロックス)の宣伝も怠りない。もちろんスペシャルティだな。金儲けは、複合的に行う必要がある。

さらに、次のように続く。

「被写体に対し、じっくり粘って撮影したいフォト派ダイバーにとっても、非常に便利なダイビングスタイルといえるでしょう。」とある。

素晴らしい!。1粒で3回美味しいスペシャルティの宝庫である。

サイドマウントについては、この後も4ページに渡って特集されている。

ここからが、重要だ。

この中では触れられていないが、サイドマウントのコンフィギュレーションが、レックやカバーンなどに威力を発揮することは言うまでもない。スペシャルティはもちろん、テックレック路線を驀進するPADIは、サイドマウントダイバーを増やして、テクニカルの世界に誘おうとしているのだ(と、例によって断言する!)。

そう、サイドマウントなら、テクニカルダイビングの最大の関門である、「ダブルタンク」という「地獄」を味合わなくて済むからだ。

このように、PADIの世界戦略の中で、サイドマウントの果たす役割は、実に重要なのである(確証はないが)。

単なるスペシャルティではないのだ。

ここのところを誤解して、オープンウォーターでサイドマウントなんてやっても、メリットなんてない!、とか言ってはいけない。

教える方には、ちゃんとメリットがあるし、器材やダイビング関係の書籍、フロントのサービス(タンクフィーって、2倍なのかあ?)にも増収増益に繋がる。ナイトロックスの普及にも、弾みがつくかもしれない(個人的な期待・・・)。

いや、ダイビングの世界を広げるという意味で、コンシューマーにも当然メリットはあるのだ。ここは、声を大にして言いたい。

他の指導団体は、様子見なのだろうか。

(NAUIのホームページ)
http://www.naui.co.jp/

サイドマウントの影も形もない。

PADIのサイドマウント戦略が、ダイビングのスタイルを激変させるほどのインパクトを持つのか、単にスペシャルティが1個増えただけに終わるのか。

特集の4ページ目に、「将来的には、サイドマウントスタイルでオープン・ウォーター・ダイバー講習を受けることさえできるようになるかも。」とあるが、洒落や冗談で書いているわけではないだろう。

このスペシャルティに商機あり、と考えるショップがどれだけあるか、それが普及の分かれ目になる。

PADI本部は、今のところそんな戦略はおくびにも出さない。

(PADI Sidemount Diver Course)
http://www.padi.com/scuba/padi-courses/technical-courses/view-all-technical-courses/padi-Sidemount/default.aspx

最後に断っておくが、このブログでは、あくまでサイドマウントの「研究」を行っているのであって、PADIのコースの宣伝や、ショップの経営のコンサルをしているわけではない。

リチウムイオン電池継続2013年01月31日 23:51

リチウムイオン電池継続
リチウムイオン電池継続


3つの報道が気になる。

(米ボーイング、787型機バッテリー問題の原因究明で進展=CEO)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE90T01C20130130

いったい、何がどう進展したのだろうか。

内容については何も書かれていない。

不気味な記事である。

(故障続きバッテリー見直さず…ボーイングCEO)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20130131-OYT1T01101.htm?from=ylist

読売新聞の記者である、越前谷知子の記名記事だからではない(ニューヨークにいるのか・・・)。

「米航空機大手ボーイングのジム・マックナーニ最高経営責任者(CEO)は30日の決算会見で、」「「我々が選択を誤っているとは考えていない。787型機に適している」と述べ、リチウムイオン電池で構成する現在のバッテリーを見直す考えがないことを明らかにした。」

リチウムイオン電池継続である。CEOの判断である。普通、この段階で、この手の発言をメーカーのトップがするということは考えられない。

下手をすれば、命取りの可能性もある。

ヤケクソなのかあ?。

(787型機検査、最終試験はボーイング依存-米体制追い付かず)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MHH4SZ6K50ZD01.html

(FAA 787 Inspections Reveal Checks Were Left to Boeing:元記事)
http://www.bloomberg.com/news/2013-01-31/faa-787-inspections-reveal-checks-were-left-to-boeing.html

あっちゃーっ!、FAAも我が国の航空行政当局と同じなんですなあ。

元記事の中に出てくる「スイス航空111便」というのが気になったので、調べてみた。

(スイス航空111便墜落事故)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%82%B9%E8%88%AA%E7%A9%BA111%E4%BE%BF%E5%A2%9C%E8%90%BD%E4%BA%8B%E6%95%85

航空機における火災の恐ろしさに震えながら読んだ。1月16日の全日空692便も、機長の適切な判断がなければ同様の事態に発展していたかも知れない。

「この事故がきっかけで、スイス航空は破産することになった。」とある。

ナショナルフラッグキャリアが消える。

暗澹たる思いで、この記事を読んだ。

これらの記事を繋ぎ合わせて思い浮かぶのは、我が国の原子力発電所のことである。適切な技術基準を適用せず、メーカーや電力会社の言いなりになって原子力発電を推進したツケを、今、我々が払わされている。

技術基準の決定に、この手の圧力がかかるのはよくある話だ。

(UPDATE1: 日本政府、B787型機の就航前に安全基準を緩和=資料・関係筋)
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK827851620130128

航空機メーカーや、キャリアが政治や行政に及ぼす影響を排除することは不可能だ。ボーイングのCEOが、未だに当局による原因解明の目処が立っていない、リチウムイオン電池の継続を表明したことと合わせて読むと、同じ轍の上を進んでいるような「錯覚」に陥る。

今度は、誰が、いつ、どんな形でツケを払わされるのだろうか。