あかつき、なう2015年12月07日 11:53

あかつき、なう
あかつき、なう


(探査機あかつき 金星軌道再挑戦で“エンジン噴射”)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151207/k10010332231000.html

今朝、起きたときには噴射が始まっていた(寝坊・・・)。

まあ、「あかつき」つーくらいだから、朝は強いに違いない・・・。

「7日午前8時51分から、残された小型のエンジンを使って再挑戦」

「予定どおり20分余り、エンジンが噴射したとみられると発表」

「金星を回る軌道に入ることができたかどうか、成否の確認には2日間ほどかかる見通し」

予定の噴射が行われたのなら、周回軌道への投入は成功したに違いない(物理の神様は、公平ですから)。

何にしても良かった。

ホッとしたな。

(あかつき、どうよ?)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2015/12/03/7934596

問題は、今後の観測がどれ程の成果を上げられるかだ。

探査機は、観測機器を現地(ちーっとばっか、遠いですが)に運んだり、電源や熱的管理を行う裏方に過ぎない。

姿勢制御用スラスターの試験は、何度も行われ、所期の成果を得ているし、ある程度の時間噴射できることが確認されていたとはいえ、一発勝負の軌道変更は緊張するな。

(あかつき (探査機))
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%82%E3%81%8B%E3%81%A4%E3%81%8D_(%E6%8E%A2%E6%9F%BB%E6%A9%9F)

「(2010年)12月27日に、トラブルの原因は加圧用のヘリウムタンクから燃料タンクへの配管に設置された逆止弁(逆流防止用の弁)が閉塞したためと発表された」

「2011年6月、JAXAは地上試験の結果、逆止弁閉塞の原因は燃料(ヒドラジン)と酸化剤(四酸化二窒素)が反応して生じた硝酸アンモニウム結晶である可能性が高いと発表した。酸化剤側逆止弁のシールに用いられていた樹脂材料が四酸化二窒素を透過する性質を持っていたために、酸化剤が徐々に燃料側逆止弁に向って拡散、燃料と反応して生じた結晶が弁を詰まらせたと推定された。また、異常燃焼によるセラミックスラスタの破損も再現され、再度スラスタを点火すれば損傷がさらに拡大するであろうことも確認された。」

5年も前だから、何が原因だったか忘れてしまっていた。

(あかつき金星周回軌道投入失敗の
原因究明結果を受けた今後の改善事項)
http://www.jaxa.jp/press/2012/01/20120131_sac_akatsuki.pdf

約1年後に出された「反省文」である。

火星探査機のぞみでの実績とあるが、酸化剤側逆止弁のシール材(樹脂)を透過して漏れ出した希薄な酸化剤(四酸化二窒素)が、燃料側逆止弁内において燃料であるヒドラジンと反応して結晶を生じ、弁の摺動を阻害して燃料タンクへの加圧が不十分となった(ヘリウムで加圧)。

んでもって、異常燃焼になって、失敗。

うーん、分かるようで分からないなあ。

5ページにある配管図(画像参照)で見ると、酸化剤側にある遮断弁(2系統)は、一体、何をやってたんだろうという気がしないでもない。

まあ、どうでもいいんですが。

たぶん、常時ヘリウムで加圧しているから、開いてたのかもしれないな(未確認)。

「酸化剤と燃料のガス系配管内での混合を防ぐために,燃料側ダイヤフラム膜・逆止弁・酸化剤ガス系遮断弁で混合経路を遮断する設計とした.」

問題となった逆止弁は、マーズ・オブザーバーの失敗から取り付けられたものだという。

(マーズ・オブザーバー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%96%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC

「地球から火星への11ヶ月の飛行の間に、NTOはバルブを通して少しずつ配管内に漏れ出ていた。この状態で燃料タンクを加圧したところ、配管内で燃料 (MMH) とNTOが混合して自己着火し、配管が爆発した」

悲惨だな。

あかつきの場合は、爆発はしなかったが、バルブの固着という、情けない結果になった。

(のぞみ (探査機):失敗原因)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AE%E3%81%9E%E3%81%BF_(%E6%8E%A2%E6%9F%BB%E6%A9%9F)#.E5.A4.B1.E6.95.97.E5.8E.9F.E5.9B.A0

「最初のパワースイングバイにおいて、燃料逆流防止バルブが正常に開放されない動作障害が確認されている。このバルブは1992年打ち上げの「マーズ・オブザーバー」(米、失敗)が燃料の逆流によって爆発したと考えられたことで、設計後期に追加されたものだった。バルブの追加が本当に必要だったのかについて検討がなされたものの、明確な結論は出ていない。」

のぞみでの実績って、まさかこのことじゃないよね?。

こんな記事もあった。

(ひとりごちるゆんず 2010年12月:正念場 あかつき 17参照)
http://yunzu.qee.jp/threedstudio/copages/htrgtr/htrgtr1012.html

「日本の火星探査機 のぞみ は逆流防止弁を採用。ところがそれが裏目に出た。エンジン全開にする場面で逆流防止弁が半開きで止まってしまって不完全燃焼が発生。パワー不足でのぞみは火星にたどり着けなかった。」

「宇宙機用バルブは日本じゃ作ってるところがないそうな。長年の経験に基づく独特のノウハウが必要だけど、日本市場だけじゃ商売が成り立つほどの需要がないってことで、開発さえされてないらしい。てことでのぞみチームがアメリカのメーカーに注文したら、規格品は のぞみ チームの要求に応える仕様じゃなかった。なもんで要求を満たすよう特注品を発注したら、動作が不完全になり得るものができてしまった。それでも地上試験で大丈夫だったんで搭載したら、恐れてたことが本番で起こってしまった、という流れ。」

「あかつきじゃ標準品を採用したそうな。確か軌道投入の日の記者会見でこの質疑応答があった。たぶんのぞみの経験から標準品を使った」

いろんな経緯があるようだが、とにかくメインエンジンはパー・・・。

(金星探査機あかつき速報(4)計画責任者らが握手 管制室はリラックスムードに)
http://www.iza.ne.jp/kiji/life/news/151207/lif15120711280012-n1.html

「最大の山場だったエンジン噴射を予定通り終了したとみられ、相模原キャンパスの管制室では研究者らが拍手をして、立ち上がって声を掛け合った。」

やれやれ、とりあえずは一安心だな。

バルブ2015年12月07日 22:49

バルブ
バルブ


あかつきのバルブ(逆流防止弁)の不具合について、いろいろ調べてみた。

詳しいことは分からないが、配管図によれば、ヒドラジンだけによる一液式エンジン(スラスター)と、四酸化二窒素との反応(燃焼)を使ったメインエンジンを使い分けるようになっている。

(一液式ロケット)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E6%B6%B2%E5%BC%8F%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88

「単一の化学物質を燃料に使用するロケットである。」

「推進剤を構成する化学物質の分子の化学結合が解き放たれることにより結合エネルギーに相当するエネルギーが解放され、高温のガスが噴出する事によりその反動で推進する。」

「よく使われる燃料としてはヒドラジン(N2H4)がある。」

「燃料は触媒としてスポンジ状の銀や白金を内蔵した反応槽に入れられる。」

「触媒としては、粒状のアルミナをイリジウム(一例としてS-405やKC 12 GA)でコーティングしたもの(例えば、Shell-405)がある。」

「ヒドラジンを用いるエンジンには点火装置は不要である。Shell-405 は自発的触媒であり、ヒドラジンは接触しただけで分解し始める。」

まあ、ざっとこんな感じかな。

で、問題の逆止弁からの酸化剤の透過(リークだけではなく)が起こったという配管図は、前回引用した。

(あかつき、なう:画像参照)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2015/12/07/7939556

この元ネタの中で、以下のくだりがあった(資料20ページ)。

「今回の不具合事例については,配管系の設計に依存するものであったが,「のぞみ」と「あかつき」では推進系コンフィグレーションに相違があり,実績として単純に参照すべきものではなかった」

こりゃあ、のぞみの配管図を見るしかないなと思って調べたら、ウィキの参照先に載っていた(画像参照)。

(第18号科学衛星 「のぞみ」の火星周回軌道への (PLANET-B)
投入失敗に係る原因究明及び今後の対策について:42ページ参照)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/uchuu/reports/04061101.pdf

確かに、電磁弁と逆止弁の配置は、圧力ガス(ヘリウム)タンクに対して上流下流が逆転している。

これが、燃料ガスの透過による拡散で、燃料側の逆止弁に悪影響を及ぼしたあかつきのケースとの違いを説明するのかどうかは、分からない。

燃料系の逆止弁の下流に、電磁弁がついている(運用不明)という点でも異なり、このバルブによって、結晶生成の材料となる燃料ガスが逆止弁に到達していなかったのかもしれない。

いずれにしても、バルブのシール材を透過するガスに対して、管理が甘かったということは分かった。

そんでもって、あかつきでは、それが原因で燃料側の逆止弁に作動不良を起こしたということになる(閉塞)。

今回、事故後の対応として、メインエンジンを諦め、酸化剤を投棄して一液ロケットである姿勢制御用エンジンを使ったマニューバを行ったわけだが、燃料系に圧力を掛ける際には、問題になった逆止弁の作動が正常でなければならず、その辺りはクリアしていたに違いない(未確認)。

いろいろな資料を見ても、そのことについての記述が見つけられずにいるんだが、きっと見落としているんだろう。

メインエンジンの作動時に異常だった燃料側の逆止弁は、今回の再投入では正常に機能していたということだ。

それとも、スラスターを作動させる際の流量(圧力)は、故障したままでも十分だったんだろうか?。

ちっと、謎のままであるなあ・・・。