🐱カイパー:少々やりすぎ:プロトタイプ2機打ち上げ ― 2023年10月07日 06:38
カイパー:少々やりすぎ:プロトタイプ2機打ち上げ
(アトラス V ロケット、アマゾンへの目標軌道への配達を完了)
https://arstechnica.com/space/2023/10/first-two-satellites-for-amazons-broadband-megaconstellation-launch-today/
「各カイパー宇宙船の重量はおそらく打ち上げ時に数百キログラムであるため、Amazon の衛星 2 基だけのために専用のアトラス V を地球低軌道に打ち上げるのは、少々やりすぎです。」
「しかし、Amazon がバルカンを待っていた場合よりも数か月早くカイパーサット 1 号と 2 号を軌道に乗せることに利点があると考えていたことは明らかです。この打ち上げでは、アマゾンがカイパーミッション用に予約していた9機のアトラスVのうちの1機を使い果たした。」
湯水のごとく金を使えるアマゾンは、ULAの貴重なアトラスVを惜しげもなく打ち上げたわけだ。
スティーブンクラークがブチ切れているように(そうなのかあ?)、アマゾンはプロジェクトカイパーの衛星について秘密主義だ。
「アマゾンの広報担当者は、なぜ同社がカイパー衛星の画像を公開しないのか、またなぜ打ち上げ直後に打ち上げ報道を終了するようULAに要請したのかについてのアルスからの質問に回答しなかった。」
「アマゾンは、テストミッションの終了時に、両方の試作衛星を「積極的に軌道離脱」させ、最終的には地球の大気圏で燃え尽きることを計画していると述べた。」
証拠隠滅の方法については公表しているけどな。
まあいい。
打ち上げについては、ギガジンも短い記事を上げている。
(2023年10月6日にAmazonの衛星インターネット通信「Project Kuiper」がプロトタイプ衛星の打ち上げへ)
https://gigazine.net/news/20231006-amazon-project-kuiper-prototype-satellite-test-mission/
「今回の10月6日の打ち上げはプロトフライト、つまり実機と同一の機材を用いたテストと位置づけられており、6年かけて打ち上げられる3236基の人工衛星の先駆けとして、「KuiperSat-1」と「KuiperSat-2」の2基のプロトタイプ衛星がULAのAtlas Vロケットで打ち上げられます。」
実機と同一といっても、実運用に供されるわけじゃなくって、テスト後は燃え尽きちゃうわけだがな。
「私たちは研究所で広範なテストを行っており、衛星の設計には高い自信を持っていますが、軌道上でのテストに代わるものはありません。Amazonにとって、人工衛星を宇宙に打ち上げるのはこれが初めてであり、今回のミッションがどのように展開するにせよ、私たちは信じられないほど多くのことを学ぶことになるでしょう」
正論だな。
カイパー衛星について分かっていることは以下の通り。
「私たちが知っていることは、ロケットは地球上空約311マイル、赤道に対して30度の傾きを持った軌道を目標としたということだ。打ち上げ装置から展開された後、衛星はアマゾンの地上局に連絡し、ソーラーパネルを拡張して発電することが期待されていた。KuiperSat 1 および 2 は、将来のカイパー衛星を軌道上で操縦するために使用されるホール効果スラスターまたはイオン エンジンをテストすることもできます。」(アルスの記事より:約311マイル=500km)
カイパーの実運用高度は600kmとされている(記事では平均610kmという記述がある)。
軌道傾斜角も、今回のテスト機はやや浅い(南北緯56度までカバー予定)。
カイパーが注目されているのは、3236機の衛星を投じて、先行するスターリンクにどれだけ迫ることが出来るのかということに尽きる。
通信速度はどうなのか、価格はどうなるのか、ぶっちゃけ、どっちがお得なのか。
「アマゾンは、宇宙から高速インターネットサービスを提供するメガ衛星群を保有する3番目の企業になることを目指している。」
ワンウェブは、直接個人消費者相手の商売はしないからな(勝負にはならないし)。
ガチでぶつかるのはスターリンクだけだ。
十分に展開されれば、価格競争が発揮され、消費者の利益につながることが期待されている。
衛星の性能なんて、概ね重量に比例するだろうから、大きさから考えて、大した性能とは思われない。
スターリンクの10倍なんてことはあり得ない。
カイパーの完成形を上回る4000機余りを運用しているスターリンクが、せいぜいこんなもん(100Mbps台で1万円程度)なわけで、上手くいって同程度、下手をすれば下回る性能しか出せないとすれば、多くを期待できないということになる。
もちろん、カイパーがサプライズな性能とコスパ、あるいはコスト度外視の戦略的価格(アマゾンの販売ツールとして)を出してくる可能性は皆無とは言えない。
事業の持続性を考えた時に、それで持つのかどうかは知らない。
向こう10年間の民間衛星打ち上げ能力を買い占めたプロジェクトだからな(スペースX除く)。
打ち上げ業界にとっては、干天の慈雨であり、特需でもある。
が、バルカンロケットもニューグレンもアリアン6も、遅れに遅れて上がらない。
「合計すると、アマゾンは77機の打ち上げを購入したことになる。内訳はバルカン打ち上げ38機に加え、間もなく退役するULAのアトラスVの9飛行、アリアン6ロケット18機、ニュー・グレン・ミッション12機で、さらに15機の契約オプションが付いている。」
カイパーに対する期待と懸念。
衛星とプロジェクトの秘密主義が、それらを加速している。
今のところ、衛星間クロスリンクでデータを伝送する話はない。
地上局との間で伝言ゲームしながら送ることになる。
洋上を飛ぶ航空機や、基地局のない大洋上の船舶などとの通信は制約を受ける。
S社のスターシールドのような、安全保障などの公的部門に対するサービスの提供が想定されているのかどうかについては、全く不明だ。
スターリンクには、米軍が早くから関心を示していて、航空機との通信も早い時期から行っていたのと比べると、少なくとも外部に出ている話の中では鳴かず飛ばずだ。
そもそも、自社で打ち上げ手段から衛星の作成まで内製しているS社とは、事業形態が異なる。
アマゾンが持っているのは、巨大な通信販売というアプリケーションなわけで、カイパーはその一部門に過ぎない。
打ち上げロケットなんて、サービスを買えばいいだけの話だし、販売価格に適正に上乗せできれば(プレミアム会員の会費でも何でも)、通信費なんて無料にしてもいいと思ってるんだろう。
実際、公表しているのはアンテナの価格だけだしな。
(AmazonがStarlinkの対抗馬となる衛星インターネット「Project Kuiper」のアンテナを発表、2024年からサービス開始か)
https://gigazine.net/news/20230315-amazon-project-kuiper-satellite-dish-terminals/
「通信速度は最大400Mbpsで、Amazonは各アンテナを400ドル(約5万3600円)未満で提供する予定」(一般住宅および中小企業向けの標準アンテナ)
記事には、さらに小型のアウトドア用アンテナ(サイズが7インチ(約17.8cm)四方未満で重量が約1ポンド(約450g))も紹介されている。
「より要求水準の高いニーズに対応するため、サイズが19インチ(約48cm)×30インチ(約76cm)で最大1Gbpsの通信速度を提供する大型のアンテナも提供する」
まあ、どれでもいいんですが。
「各衛星で最大1Tbpsのトラフィックを処理できる」
搭載チップの処理能力ということだが、衛星の大きさからは、電力の供給の方が心配になる。
一寸先どころか、手元も真っ暗闇なプロジェクトカイパー。
来年末には、ベータサービスが提供されるということだが、それを信じているものなどいない。
宇宙ネタが、数年単位で遅延する話は当然想定内だ。
アマゾンが、札束で横っ面ひっぱたいて、その常識をぶち破ることが出来るかどうかは知らない。
2機の試験衛星を上げるため「だけ」に、打ち上げロケット(アトラスV)使っちまったという、業界の常識を覆す今回の暴挙(!)も、その一環なのかもしれない。
消費者相手の小売業は、マーケティングに莫大な予算をつぎ込む世界だからな。
プロジェクトカイパー自体が、そういう世界の慣行に従って進んでいるのかもしれない。
「この打ち上げにさらに秘密を加えるために、金曜日のULAの生放送は、打ち上げから約5分後にアトラスVの最初のステージがケンタウロスの上部ステージから分離された後に終了した。ULAの広報担当者によると、これはアマゾンの要請によるものだという。」
「ロケットが軌道に到達する前に生中継を打ち切るこの方針は、ULAが米国政府の偵察衛星の打ち上げ時に行うことと同様である。」
スティーブンクラークは、それを政府の秘密衛星と同じだと感じている。
が、特売日の目玉商品を伏せておくのは、小売業界では当たり前の話だろう。
異業種参入で大混乱の打ち上げ業界というところか・・・。
(アトラス V ロケット、アマゾンへの目標軌道への配達を完了)
https://arstechnica.com/space/2023/10/first-two-satellites-for-amazons-broadband-megaconstellation-launch-today/
「各カイパー宇宙船の重量はおそらく打ち上げ時に数百キログラムであるため、Amazon の衛星 2 基だけのために専用のアトラス V を地球低軌道に打ち上げるのは、少々やりすぎです。」
「しかし、Amazon がバルカンを待っていた場合よりも数か月早くカイパーサット 1 号と 2 号を軌道に乗せることに利点があると考えていたことは明らかです。この打ち上げでは、アマゾンがカイパーミッション用に予約していた9機のアトラスVのうちの1機を使い果たした。」
湯水のごとく金を使えるアマゾンは、ULAの貴重なアトラスVを惜しげもなく打ち上げたわけだ。
スティーブンクラークがブチ切れているように(そうなのかあ?)、アマゾンはプロジェクトカイパーの衛星について秘密主義だ。
「アマゾンの広報担当者は、なぜ同社がカイパー衛星の画像を公開しないのか、またなぜ打ち上げ直後に打ち上げ報道を終了するようULAに要請したのかについてのアルスからの質問に回答しなかった。」
「アマゾンは、テストミッションの終了時に、両方の試作衛星を「積極的に軌道離脱」させ、最終的には地球の大気圏で燃え尽きることを計画していると述べた。」
証拠隠滅の方法については公表しているけどな。
まあいい。
打ち上げについては、ギガジンも短い記事を上げている。
(2023年10月6日にAmazonの衛星インターネット通信「Project Kuiper」がプロトタイプ衛星の打ち上げへ)
https://gigazine.net/news/20231006-amazon-project-kuiper-prototype-satellite-test-mission/
「今回の10月6日の打ち上げはプロトフライト、つまり実機と同一の機材を用いたテストと位置づけられており、6年かけて打ち上げられる3236基の人工衛星の先駆けとして、「KuiperSat-1」と「KuiperSat-2」の2基のプロトタイプ衛星がULAのAtlas Vロケットで打ち上げられます。」
実機と同一といっても、実運用に供されるわけじゃなくって、テスト後は燃え尽きちゃうわけだがな。
「私たちは研究所で広範なテストを行っており、衛星の設計には高い自信を持っていますが、軌道上でのテストに代わるものはありません。Amazonにとって、人工衛星を宇宙に打ち上げるのはこれが初めてであり、今回のミッションがどのように展開するにせよ、私たちは信じられないほど多くのことを学ぶことになるでしょう」
正論だな。
カイパー衛星について分かっていることは以下の通り。
「私たちが知っていることは、ロケットは地球上空約311マイル、赤道に対して30度の傾きを持った軌道を目標としたということだ。打ち上げ装置から展開された後、衛星はアマゾンの地上局に連絡し、ソーラーパネルを拡張して発電することが期待されていた。KuiperSat 1 および 2 は、将来のカイパー衛星を軌道上で操縦するために使用されるホール効果スラスターまたはイオン エンジンをテストすることもできます。」(アルスの記事より:約311マイル=500km)
カイパーの実運用高度は600kmとされている(記事では平均610kmという記述がある)。
軌道傾斜角も、今回のテスト機はやや浅い(南北緯56度までカバー予定)。
カイパーが注目されているのは、3236機の衛星を投じて、先行するスターリンクにどれだけ迫ることが出来るのかということに尽きる。
通信速度はどうなのか、価格はどうなるのか、ぶっちゃけ、どっちがお得なのか。
「アマゾンは、宇宙から高速インターネットサービスを提供するメガ衛星群を保有する3番目の企業になることを目指している。」
ワンウェブは、直接個人消費者相手の商売はしないからな(勝負にはならないし)。
ガチでぶつかるのはスターリンクだけだ。
十分に展開されれば、価格競争が発揮され、消費者の利益につながることが期待されている。
衛星の性能なんて、概ね重量に比例するだろうから、大きさから考えて、大した性能とは思われない。
スターリンクの10倍なんてことはあり得ない。
カイパーの完成形を上回る4000機余りを運用しているスターリンクが、せいぜいこんなもん(100Mbps台で1万円程度)なわけで、上手くいって同程度、下手をすれば下回る性能しか出せないとすれば、多くを期待できないということになる。
もちろん、カイパーがサプライズな性能とコスパ、あるいはコスト度外視の戦略的価格(アマゾンの販売ツールとして)を出してくる可能性は皆無とは言えない。
事業の持続性を考えた時に、それで持つのかどうかは知らない。
向こう10年間の民間衛星打ち上げ能力を買い占めたプロジェクトだからな(スペースX除く)。
打ち上げ業界にとっては、干天の慈雨であり、特需でもある。
が、バルカンロケットもニューグレンもアリアン6も、遅れに遅れて上がらない。
「合計すると、アマゾンは77機の打ち上げを購入したことになる。内訳はバルカン打ち上げ38機に加え、間もなく退役するULAのアトラスVの9飛行、アリアン6ロケット18機、ニュー・グレン・ミッション12機で、さらに15機の契約オプションが付いている。」
カイパーに対する期待と懸念。
衛星とプロジェクトの秘密主義が、それらを加速している。
今のところ、衛星間クロスリンクでデータを伝送する話はない。
地上局との間で伝言ゲームしながら送ることになる。
洋上を飛ぶ航空機や、基地局のない大洋上の船舶などとの通信は制約を受ける。
S社のスターシールドのような、安全保障などの公的部門に対するサービスの提供が想定されているのかどうかについては、全く不明だ。
スターリンクには、米軍が早くから関心を示していて、航空機との通信も早い時期から行っていたのと比べると、少なくとも外部に出ている話の中では鳴かず飛ばずだ。
そもそも、自社で打ち上げ手段から衛星の作成まで内製しているS社とは、事業形態が異なる。
アマゾンが持っているのは、巨大な通信販売というアプリケーションなわけで、カイパーはその一部門に過ぎない。
打ち上げロケットなんて、サービスを買えばいいだけの話だし、販売価格に適正に上乗せできれば(プレミアム会員の会費でも何でも)、通信費なんて無料にしてもいいと思ってるんだろう。
実際、公表しているのはアンテナの価格だけだしな。
(AmazonがStarlinkの対抗馬となる衛星インターネット「Project Kuiper」のアンテナを発表、2024年からサービス開始か)
https://gigazine.net/news/20230315-amazon-project-kuiper-satellite-dish-terminals/
「通信速度は最大400Mbpsで、Amazonは各アンテナを400ドル(約5万3600円)未満で提供する予定」(一般住宅および中小企業向けの標準アンテナ)
記事には、さらに小型のアウトドア用アンテナ(サイズが7インチ(約17.8cm)四方未満で重量が約1ポンド(約450g))も紹介されている。
「より要求水準の高いニーズに対応するため、サイズが19インチ(約48cm)×30インチ(約76cm)で最大1Gbpsの通信速度を提供する大型のアンテナも提供する」
まあ、どれでもいいんですが。
「各衛星で最大1Tbpsのトラフィックを処理できる」
搭載チップの処理能力ということだが、衛星の大きさからは、電力の供給の方が心配になる。
一寸先どころか、手元も真っ暗闇なプロジェクトカイパー。
来年末には、ベータサービスが提供されるということだが、それを信じているものなどいない。
宇宙ネタが、数年単位で遅延する話は当然想定内だ。
アマゾンが、札束で横っ面ひっぱたいて、その常識をぶち破ることが出来るかどうかは知らない。
2機の試験衛星を上げるため「だけ」に、打ち上げロケット(アトラスV)使っちまったという、業界の常識を覆す今回の暴挙(!)も、その一環なのかもしれない。
消費者相手の小売業は、マーケティングに莫大な予算をつぎ込む世界だからな。
プロジェクトカイパー自体が、そういう世界の慣行に従って進んでいるのかもしれない。
「この打ち上げにさらに秘密を加えるために、金曜日のULAの生放送は、打ち上げから約5分後にアトラスVの最初のステージがケンタウロスの上部ステージから分離された後に終了した。ULAの広報担当者によると、これはアマゾンの要請によるものだという。」
「ロケットが軌道に到達する前に生中継を打ち切るこの方針は、ULAが米国政府の偵察衛星の打ち上げ時に行うことと同様である。」
スティーブンクラークは、それを政府の秘密衛星と同じだと感じている。
が、特売日の目玉商品を伏せておくのは、小売業界では当たり前の話だろう。
異業種参入で大混乱の打ち上げ業界というところか・・・。
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