CCRの頭脳2011年10月17日 20:02

CCRの頭脳


インスピレーションなど、最近売り出されている多くのCCRには、酸素分圧を一定にコントロールするための仕組みが備わっている。

二酸化炭素除去剤の上に蓋があるのだが、その中に仕込まれている。インスピの場合は2台のコンピューターが常時稼働し、1台が壊れたときに2台目に自動的に切り替わるようになっている。

黒い小さなコンピューターなので、この中にそんなものが仕込まれているとはパッと見では分からない。

こいつ(こいつら?)は、一体何をしているのだろうか?。

CCRの仕組みについては、既に触れた。

http://kfujito2.asablo.jp/blog/2011/09/30/6118172

ここで言っている「CCR本体」というのが、コンピューターである。酸素濃度と水圧を検知して、何秒間ソレノイドバルブを開けば呼吸回路の中の酸素分圧が設定値になるかを計算して、ソレノイドバルブに必要な秒数だけ電気を送る(たぶん)。

ソレノイドバルブには、いろいろなタイプがあり、同じインスピでも、販売時期によって違うものが付いている。ただ共通していることは、一定時間の開放に比例して酸素が供給される仕組みになっているということだ。流速が音速になるようにノズルを絞ってやることによって、この機能を実現している(と思う)。

コンピューターは、この開放時間を制御しているわけだ。

なんとなく、簡単に作れてしまうような気もするが、私は回路設計とかできないし、コンピューターのプログラムも書けないので、売っているものを買うしかない。

ダイバーの生死の鍵を握るこのコンピューター(達)は、本当に信用できるのだろうか?。

インスピのマニュアルや教習のテキストには、頻繁に酸素分圧をチェックするように、と(しつこく)書かれている。

なーんだ、設計者も信用していないのか、と、ちょっと不安になる。まあ、一般に、電気機器は環境の変化に比較的弱い。所期の性能を発揮してくれるかどうかは、繰り返し行う試験や実地テストで確認されていても、絶対の保証はない。

プログラムのバグ(ミス)については、舐めるようにチェックしていても見つからないことがある。コンピューターといえども、「人の作りしもの」である限り、「完璧」なものではない。

そこは、融通の利く「人間」が補ってやらなければならない。水中におけるコンピューターとは、そういうものだと諦めて、リカバリーの練習に精を出すしかない。

人と機械の融合が、CCRの頭脳になるのだ。

私が使っているインスピのコンピューターは、いろいろな警告が出される仕組みになっている。音と光でわかるようになっているのだが、その仕組み自体が壊れてしまったら、人間の体がセンサーとコンピューターの役割を果たさなければならない。

そう、CCRには「人間」という第3のコンピューターシステムが接続されていると言っても過言ではない。この第3のシステムは、かなり個体差(個人差)があり、性能の良いシステム(=物覚えや感が鋭い人)は、どんどん高性能になっていくのだが、やや古いくたびれかけたシステム(=私とか)は、なかなか性能が向上しない。

それでも、最近は「CCRの上にも3年」というか、時間をかければ徐々に性能が上がり、まあまあ使い物になるようだ。ワインじゃないんだから、寝かせればいいというものではないのだろうが、人間の脳も、使いようではCCRのコンピューターをカバーできるようになってくる。

ソレノイドバルブが壊れた時のリカバリーの訓練では、手動で酸素を送り込むスキルを学ぶ。上手になればCCRのコンピューターを超えられるのではないかと練習に励むのだが、酸素の消費量は、ずいぶんと増えてしまう。

今に見てろよ!(うーん、なんて面倒くさい機械なのだろう!)。