進化分子工学2013年10月05日 02:52

進化分子工学
進化分子工学


最近、レベルの低い事象ばかりをブログしているので、たまには高尚な学問の世界を覗いてみよう。

(阪大など、人工細胞を用いて膜タンパク質の進化に成功)
http://news.mynavi.jp/news/2013/10/04/044/index.html

(人工細胞を使って膜たんぱく質を「進化」させる技術の開発:元記事)
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20131001-2/

別の論文も同時期に発表されているようだ。

(人工細胞を作製 子孫残しやすく進化 大阪大チームが英科学誌に発表)
http://sankei.jp.msn.com/science/news/131004/scn13100422570003-n1.htm

(人工細胞を作製 子孫残しやすく進化)
http://www.47news.jp/CN/201310/CN2013100301002255.html

キーパーソンの一人である四方哲也の研究室のページに、分かりやすい解説が載っている。

(なぜ人工細胞をつくるのか?)
http://www-symbio.ist.osaka-u.ac.jp/research/theme01.html

「人工細胞が持つべき機能として、

1. 遺伝情報の翻訳機構
2. 遺伝情報の複製機構
3. 細胞膜のような区画構造
4. 細胞構造の再帰的複製
5. 進化能
6. 外部環境適応能

が挙げられる。これまでに私達の研究室では、1-3の機能を有した人工細胞モデルの構築に世界で初めて成功している」

「現在さらに、4-6の機能を実装させるプロジェクトが進行中である。これにより私達の構築する人工細胞モデルは、生命に近づいていくだろう。そしてその過程で生命を生命たらしめている条件が明らかになると期待している。」とある。

今回は、5-6が、部分的ではあるが達成されたということになるのだろうか。

4については、再構成するところまでは行っていなくて、遺伝子などを人工的に液滴内に封入しなければならないようだ。

人工生命とはいえないわけだな。

「人工細胞の定義だが、まだ明確にはなされていないものの、一般的には細胞の機能の一部を人工的に再構成した細胞状の構造を人工細胞と呼ぶことが多い。今回の人工細胞は、細胞の機能の内、タンパク質合成に必要なものをすべて持ち、その系による遺伝子翻訳、脂質二重膜による微小区画構造が人工的に再構成されている。」とある。

古い話で恐縮だが、浮沈子が生命科学に興味を持ったのは、オパーリンのコアセルベート説が華やかなりし頃であった。

(コアセルベート)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88

「この説は、最初の生命の形成に関する現在の説にもなんとなく似てはいるが、コアセルベートが直接最初の細胞となったとは、もはや考えられていない。現在の説では、無生物から細胞に至る前にはもっと多くの段階を通過してきたと考えられているからである。」

外は、今、雨が降ってきた。

降る雨や、昭和は遠くなりにけり、というところか。

人工細胞というのは、いってみれば、本当の細胞の一部の機能を持った微小反応系で、人工生命のイミテーションという感じなのである。

どちらかというと、生物学というよりは、工学系の要素が強く、RNAなどの遺伝子も、タンパク質合成の部品として扱う。

生命への畏敬など、微塵もない!。

生物が持つ化学反応系は、もちろん、生体外でも成立する。

そいつを、人工細胞という擬似生命体の中でインキュベートしてやると、何やら生体内での反応っぽいことが起こって、ドキドキするわけだ。

いわく、「リポソームディスプレイによるα-ヘモリシンの「進化」」

いわく、「天然の細胞と同じように遺伝子を複製し、子孫を残しやすいように遺伝子が変化する人工細胞を大阪大のチームが作製」。

まあ、「進化」とカッコが付いているのは、α-ヘモリシンから取り込ませた蛍光物質を使って、人工的に遺伝子の選択を行っているからである。

「最も多くの蛍光物質を取り込んだ人工細胞が蛍光セルソーターで選択・分取され、分取された人工細胞からは高機能型の遺伝子が得られ、その遺伝子を用いて再度人工細胞を作製して同様の作業を繰り返す。これらの作業を20回繰り返された結果、野生型よりも約30倍も脂質膜に穴を開ける能力の高い変異体の取得に成功したのである。」とある。

うまい方法を考えたもんだな。

この仕掛けを使えば、選択的かつ高効率に、高機能の分子の穴をリポソームに開けることができる。

RNA進化の方は、反応を継続することで、RNAに特異的な変化が「自然に」起こったわけで、上記の「人為的な選択」とは意味が異なる。

「人工細胞の中では、RNAを基に酵素が作られ、酵素はRNAを複製するというウイルスに感染した天然の細胞内と同じ反応が継続。分裂した細胞内に残ったRNAに、38カ所の突然変異が起きた。この変異は子孫を残しやすくするもので、子孫のRNAを増やす能力も、元のRNAより約30倍上がっていた。」

元の論文を見ていないので、何ともいえないが、ネタにしたRNAがネイティブな由来のものであったとすると、もともと仕組まれていた変異の傾向が、複製を経て発現しただけのことかもしれない。

この「傾向」をデザインできたとすると、本当のニュースになる!。

(試験管内自己複製系)
http://www-symbio.ist.osaka-u.ac.jp/research/theme01_b.html

研究の概要を見ると、ブラックボックスはないということなので、進化促進のRNAをデザインできたのかもしれない。

ちょっと、興味が出てくる。

(リポソーム内自己複製系の構築)
http://www-symbio.ist.osaka-u.ac.jp/research/theme01_d.html

しかし、このような人工細胞を「進化」させていって、人工生命(天然の細胞)が出来上がるものなのだろうか。

フランケンシュタインは、死体を組み合わせて怪物を作ったが、現代の研究者は、その辺の無生物の材料を集めてきて、試験管の中で人工的に生命を合成しようとする。

(フランケンシュタイン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B1%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3

恋人を作ってくれとせがむ怪物の心情を考えると、センチな気分になるが、試験管の中の人工生命も、そんな要求をするようになるのか。

人工細胞と、天然の細胞との間には、まだまだ無限の距離があるような気がする。

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