誰かがウソをついている:ファルコン9の1段目回収失敗の真相は謎のまま2021年03月05日 11:39

誰かがウソをついている:ファルコン9の1段目回収失敗の真相は謎のまま


スターリンクV1L19における1段目の回収に失敗した話は既に書いた。

(風が吹けばОFTー2が遅れる)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2021/02/19/9348874

「スペースXとて、万全というわけではない。
相次ぐスターシップの墜落激突爆発炎上木っ端微塵に次ぎ、虎の子のファルコン9の1段目の回収にも失敗してしまった。
おそらく、はた目から見るよりも影響は大きいだろう。
この件については、もう少し情報が出てくるのを待って、別記事で書くつもりだ。」

(遮熱板損傷が原因か:ファルコン9の1段目回収失敗)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2021/02/27/9351182

「遮熱板のお手入れをしたいです。シールが機能していることを確認するために定期的にある程度の検査が必要なエンジンコンポーネントなどがあります。」

「遮熱板(heat shield)というのが、9つのエンジンを仕切っている部分なのか、ノズルから上の部分をカバーしている柔軟性がある覆いの部分なのかは不明だ。」

今回、新たな情報として、遮熱板というのが、エンジンノズルとエンジン上部を仕切っている柔軟性があるカバーの部分らしいことが分かった(ブーツとか、カフ(袖口の意)と呼ばれる部分だ)。

(ファルコン9の着陸の最近の失敗は、エンジンの保護カフの摩耗を引き起こしました)
https://www.elonx.cz/nedavne-selhani-pri-pristani-falconu-9-zapricinilo-opotrebeni-ochranneho-krytu-na-motoru/

「点火が完了した後、今回はエンジン部分に異常な光が見えました。」

「ベンジリードは、問題の原因がマーリンエンジンの1つにあるカフであり、飛行中に特定のコンポーネントを保護していることを明らかにしました。カフに穴が開いて、高温ガスがエンジンの外に逃げ出し、何の関係もありませんでした。これにより、エンジンが自動的にシャットダウンしました。リードによると、ロケットは十分な推力を持っておらず、着陸に失敗しました。」

「故障したエンジンのカフのタイプがこれまでで最も多くのミッションを持っていたのは興味深い理由です。」

「SpaceXがブロック5ロケットバリアントの初演後に別のタイプのエンジンカフを導入し、それが古いステージに再インストールされたことを意味している可能性があります。あるいは、以前のタイプの袖口は、数回の開始後に交換する必要があったため、これほど多くのミッションを受けたピースはありませんでした。」

まあ、このあたりは推測だがな。

「Starlink v1-19ミッションでは、テレメトリはステージを分離する前に問題があったことを示していませんでした。」

「残念ながら、Benji Reedは、エンジンがいつ故障したかについてのジャーナリストの質問に答えませんでした。そのため、現在、フォーラムでは、リードが実際にどのように考えたか、どのエンジンがいつ故障したか、そしてそれが入力点火にどのように影響したかについて議論があります。やがて誰かが一連の出来事全体を明らかにすることを期待することしかできません。」

念のため、事前に公表されているフライトスケジュールと、実際の飛行のビデオを確認してみる。

(Mise Starlink v1-19)
https://www.elonx.cz/docs/press_kits/starlink-v1-19-press-kit.pdf

「LAUNCH, LANDING, AND DEPLOYMENT」

上手くコピペできないが、1段目の燃焼終了(MECO)は2分32秒後、1段目と2段目の分離は2分36秒後、2段目エンジンの点火は2分44秒後の予定だ。

(Starlink Mission:V1L19:動画出ます。)
https://www.youtube.com/watch?v=L0dkyV09Zso

MECOのタイミングは、T+382分38秒辺りで、特に問題はない(映像の遅延が数秒ある)。

分離は2分42秒後、2段目の点火は2分48秒後に行われていて、正常に見える。

問題のエントリーバーンはどうか。

映像では、点火に問題はなく(6分28秒)、シャットダウンのコールもされ、解説のネーチャンがそれを確認する台詞を吐いた後も、引き続き炎は消えずに画面右方向に流れ、T+7分5秒後、1段目のテレメトリーがフリーズする。

予定では、6分41秒後にエントリーバーン完了とある。

エンジンシャットダウンがコールされたのは、6分51秒辺り。

一度消えかかったエンジンが、その後、異常燃焼していることは明らかだ。

その後、何がどうなったかは分からない。

ドローン船(OCISLY)にたむろしていたカモメたちが、焼き鳥にならずに済んだことだけは確かだな。

まあ、どうでもいいんですが。

イーロンXの記事は、比較的穏当な書き方をしている。

不明な部分は不明として残している。

ひょっとしたら、S社内部でも、不明部分は残っているのかも知れない。

スペースフライトナウは、かなり踏み込んだ書き方をしている・・・。

(コンポーネントの疲労により、最後のSpaceXの打ち上げでマーリンエンジンが早期にシャットダウンしました)
https://spaceflightnow.com/2021/03/01/component-fatigue-caused-early-shutdown-of-merlin-engine-on-last-spacex-launch/

「SpaceXの有人宇宙飛行プログラムのシニアディレクターであるベンジリード氏によると、2月15日の打ち上げでカバーの1つに穴が開いて、エンジンの1つに高温ガスが入ることができたという。」

「この特定のブーツには、少し穴が開いていました」

「それは穴を開発しました。高温ガスがあります。もちろん、それがロケットを上昇させ、エンジンから非常に高温のガスが出てくるのです。しかし、あなたはそれらの高温ガスが本来あるべき場所にあり、本来あるべき場所に行かないようにしたいのです。そのため、ブーツ、少しの穴が開いて、少しの高温ガスが想定外の場所に到達し、そのエンジンがシャットダウンしました。」

いいだろう、問題は、その特定のエンジンがシャットダウンしたのはいつかということだ。

「当社にはエンジン出力機能があります。さらに、この車両には、必要なときに自律的に制御、シャットダウン、中止するための優れたシステムがすべて備わっています。この場合、それはそれがすることになっていたことを正確に行い、そのエンジンを切り取り、そのエンジンをオフにしました。車両は安全でした。ビークルは軌道に乗り、衛星を希望の場所に正確に配置し、主要な任務を遂行しました。」

「そのブースターが家に帰ってきたとき、その特定のエンジンの問題のために、私たちは必要な場所に戻るのに十分な推力を持っていませんでした」

この記述だけ読めば、第1段の上昇中に問題が発生し、9基のマーリンエンジンの1つがシャットダウンし、エントリーバーン以降に点火せず、降下速度の低下が出来ずに終わってしまったことになるが、映像が伝える事実とは異なる(1段目のテレメトリーの値を見ると、異常燃焼中も速度の低下が見られる)。

S社は、この部分では一般論を披歴しているにすぎず、今回の事例でそのようなことが起こったと言っているわけではないのかも知れない。

事実に基づいてみる限り、上昇中の燃焼は通常通り行われ、エントリーバーン自体も問題はなく、異常燃焼はその終了直後に起こった。

当初の発表である熱的なトラブルと、今回のカフ(ブーツ)の穴(?)が原因であるとすれば、エントリーバーンの炎が、穴から逆流し、エンジン内部の配管かバルブを損傷して異常燃焼を誘発、最後のランディングバーン(中央の1基のみ点火)のための燃料の不足を来して海面激突炎上爆破木っ端微塵の転帰となったというのが、もっともらしい話になる(テキトーです)。

トラブルが起こったエンジンがどれだったのか、そのタイミングはいつなのかは、相変わらずの謎だ(ひょっとすると、ど真ん中のエンジンがトラブった可能性が高いかも!)」。

それはともかくとして、長期間地上待機の憂き目に会っていたV1L17は、無事に上がった様だ。

(SpaceXは、さらに60のスターリンク衛星を打ち上げた後、75番目のファルコンロケットの着陸を維持します)
https://spaceflightnow.com/2021/03/04/spacex-sticks-75th-falcon-rocket-landing-after-launching-60-more-starlink-satellites/

「ロケットの最初のステージは、大西洋にあるSpaceXの浮体着陸プラットフォームに着陸し、8回目の宇宙旅行を完了しました。」

「SpaceXの前回の打ち上げ2月15日のファルコン9ブースターは、9つのメインエンジンの1つが上昇中に途中でシャットダウンした後、ドローン船に着陸できませんでした。」

故障したエンジンが1基だったということ以外に、新しい情報はない。

上昇中にシャットダウンというのは、既に見た通り、いささか疑わしい。

ビデオの映像を見ても、9基のエンジンが正常に燃焼しているように見えるし、解説のねーちゃんも、正常燃焼をほのめかしている。

「We've got a cool view of the first stage in those nine merlin 1d engines burning bright.」
(明るく燃えている9つのマーリン1Dエンジンの最初のステージのクールなビューを持っています。)

8つじゃない。

9つだ。

9つとも、明るく燃えているってな・・・。

まあいい。

遅れて打ち上げられたV1L17のブーツに、どれ程の修理が施されたかは知らない。

①確認しただけで何もしなかったか、②見つけた穴をふさいだだけか、③旧来のブーツに交換したか、④急遽設計変更した新たなブーツに取り換えたか。

故障した1基のエンジンがどれかとか、いつ止まったのかなどと共に、明かされていない謎の一つだ。

再使用ロケットは、S社の自社事業だけじゃなく、民間顧客を初め、NASAや空軍(宇宙軍?)でも使用される(ああ国家偵察局:NROもあるか)。

回収の失敗は、打ち上げ失敗と関連する可能性もあり、関心は高いだろう。

今回の回収失敗の真の原因は、少なくとも関係者に対しては、いつかは正しく明らかにされなければならない。

と同時に、再使用のノウハウはS社の最高機密でもある(未確認)。

特に、経年劣化にかかる部分は、運用の根幹にかかわる。

肝心の部分は、外部には漏れてこないかも知れない。

ベンジリードが漏らした打ち上げ時のエンジントラブルの話は、その辺を意識した煙幕の可能性がある。

S社はロケット打ち上げ会社だからな。

煙に巻くのは、得意中の得意かもな・・・。