火のない煙 ― 2013年03月23日 00:48
火のない煙
(米ボーイング、787型機の安全性を説得できるか)
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323873404578375133071458410.html
WSJの記事は、すぐに読めなくなってしまうのが玉に瑕だ。
(米ボーイング、787型機の試験飛行を週内にも実施へ=関係筋)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92K01020130321
最近は、ロイターの記事の切れ味が悪い。
B787のバッテリー問題が、大した記事にならないと踏んで、取材態勢を縮小しているのかもしれない。
その中で、WSJの記事は正鵠を射ている。
「3月に始まった改善後のリチウムイオン電池のテストは順調なもようで、関係筋は、バッテリーの過熱の原因はまだ特定されていないものの、米政府は早ければ3月末にも改善策を承認する可能性があるとみている。」
「しかし、4月初めにも予想される商業運航の再開に向け、ボーイングや787型機を運航する航空会社は、事故原因が引き続き分からないにもかかわらず対策は十分であると人々に納得してもらわなければならないという難しい課題を解決しなければならない。」
「ボーイングのマーケティング担当副社長ランディ・ティンセス氏は先週、「われわれはいくつかの問題を経験した飛行機を持っているということに疑問の余地はない。そしてこれらの問題は広く知れわたっている」とし、「われわれがしなければならないのは、どのような形であれ、この飛行機に触れる全ての人に(787型機の良さを)本当に理解してもらうことだ」と強調した。」
バッテリー以外は、きっと良い飛行機なのかもしれないが、次のような内容もある。
「航空専門家は通常、発煙や発火事象を航空安全リスクの最高位に置く。NTSBのデボラ・ハースマン委員長は2月、「航空の面で期待されるのは、決して機内で発火させないということだ」と指摘した。」
しかしながら、ボーイングの態度は微妙に違う。
「787の主任エンジニア、マイク・シネット氏は記者団に対して、商業機のバッテリーの誤作動は「この10年間非常に多く」、航空機運航ではこうした出来事は見慣れたものになっており、「その多くは結果として煙と火が出ている」と述べた。だが、シネット氏や他のボーイングの関係者は、他の安全システムがプログラム通りに動いたために、航空機の安全は脅かされなかったとしている。」
「また、同型機のベテランエンジニア、ロン・ヒンダーバーガー氏はバッテリーの不具合の影響は「毎週のように機内で起きている」と述べた。」
まるで、航空機のバッテリー火災が、日常茶飯事であるかのような物言いだ。
「デルタ航空で整備関係部門の元トップを務めていたレイ・バレイカ氏は35年で、米国の大手航空会社が運航する旅客機でバッテリーが火災を起こした事故は一つも思いだせないと語った。」
真逆である。
乗客にしてみれば、火が出ない航空機と、火が出ても影響がない航空機の区別なんて、余り関心がないのかもしれない。
少なくともボーイングは、そう願っているようだ。
「・・・アンケートで、「計画を変更してもわざわざ787型機に乗る」あるいは「787型機に乗るのを最大限避ける」といった設問がある。」とある。
みんな、どっちにチェックしたんだろう?。
実際には、乗客がどういう機材を選ぶかという選択肢は、あまりない。それは、エアラインが決めることで、787を選ばないという自由がない場合が多い。
売り込みにさえ成功すれば、乗客は乗らざるを得ないのだ。
「同社はグーグルで「ドリームライナー火災」や「787バッテリー」といった検索ワードを入力した場合、検索結果のトップに「FAA、ボーイングの計画を承認」というスポンサー付きのリンクが表示され、ボーイングがバッテリーに加えた変更について詳しく読むことができるようにしている。」
どうやら、日本の検索エンジンでは表示されないようだ。
このブログでは、B787のバッテリー事故は、B787という飛行機の本質的な欠陥によるものであり、それはおそらく解決できない問題であると指摘し続けている。
無知な乗客や、一蓮托生のFAAや、グルになっているキャリアを丸め込んで、好き放題に絵空事(まあ、空飛びますから)を宣伝するのは構わないが、結果は事実として示される。
画像を見ても、バッテリーケースの中までは分からない。
前にも書いたが、この問題は、原発と同じ様相を呈してきた。
問題の本質は何も変わらず、取って付けたような目先の対策だけ施して、後は、大量の宣伝とマスコミの扇動を利用して「安全神話」を作り出す。次に火が出るときまでは、安全神話を繰り返し聞かされるわけだな。
今、米国のシャーナリズムが試されていると考えているのは、浮沈子だけなのだろうか。
良きにつけ、悪しきにつけ、ジャーナリズムの影響は、日本などより遥かに大きい。
緻密で、広範囲にわたる取材、本質を抉り出す鋭い視線、当事者の馴れ合いを許さない社会正義、何より、読者に真実を伝えようとする使命感・・・。
日本の商業新聞は、トヨタの脅しに簡単に屈してしまう情けないジャーナリズムに成り下がったが、米国もまた同じなのだろうか。
煙を見て、サンマを焼いているのか、大火事の前触れなのかをしっかりと見極め、社会の木鐸としての役割をキッチリと果たしてもらいたい。
(米ボーイング、787型機の安全性を説得できるか)
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323873404578375133071458410.html
WSJの記事は、すぐに読めなくなってしまうのが玉に瑕だ。
(米ボーイング、787型機の試験飛行を週内にも実施へ=関係筋)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92K01020130321
最近は、ロイターの記事の切れ味が悪い。
B787のバッテリー問題が、大した記事にならないと踏んで、取材態勢を縮小しているのかもしれない。
その中で、WSJの記事は正鵠を射ている。
「3月に始まった改善後のリチウムイオン電池のテストは順調なもようで、関係筋は、バッテリーの過熱の原因はまだ特定されていないものの、米政府は早ければ3月末にも改善策を承認する可能性があるとみている。」
「しかし、4月初めにも予想される商業運航の再開に向け、ボーイングや787型機を運航する航空会社は、事故原因が引き続き分からないにもかかわらず対策は十分であると人々に納得してもらわなければならないという難しい課題を解決しなければならない。」
「ボーイングのマーケティング担当副社長ランディ・ティンセス氏は先週、「われわれはいくつかの問題を経験した飛行機を持っているということに疑問の余地はない。そしてこれらの問題は広く知れわたっている」とし、「われわれがしなければならないのは、どのような形であれ、この飛行機に触れる全ての人に(787型機の良さを)本当に理解してもらうことだ」と強調した。」
バッテリー以外は、きっと良い飛行機なのかもしれないが、次のような内容もある。
「航空専門家は通常、発煙や発火事象を航空安全リスクの最高位に置く。NTSBのデボラ・ハースマン委員長は2月、「航空の面で期待されるのは、決して機内で発火させないということだ」と指摘した。」
しかしながら、ボーイングの態度は微妙に違う。
「787の主任エンジニア、マイク・シネット氏は記者団に対して、商業機のバッテリーの誤作動は「この10年間非常に多く」、航空機運航ではこうした出来事は見慣れたものになっており、「その多くは結果として煙と火が出ている」と述べた。だが、シネット氏や他のボーイングの関係者は、他の安全システムがプログラム通りに動いたために、航空機の安全は脅かされなかったとしている。」
「また、同型機のベテランエンジニア、ロン・ヒンダーバーガー氏はバッテリーの不具合の影響は「毎週のように機内で起きている」と述べた。」
まるで、航空機のバッテリー火災が、日常茶飯事であるかのような物言いだ。
「デルタ航空で整備関係部門の元トップを務めていたレイ・バレイカ氏は35年で、米国の大手航空会社が運航する旅客機でバッテリーが火災を起こした事故は一つも思いだせないと語った。」
真逆である。
乗客にしてみれば、火が出ない航空機と、火が出ても影響がない航空機の区別なんて、余り関心がないのかもしれない。
少なくともボーイングは、そう願っているようだ。
「・・・アンケートで、「計画を変更してもわざわざ787型機に乗る」あるいは「787型機に乗るのを最大限避ける」といった設問がある。」とある。
みんな、どっちにチェックしたんだろう?。
実際には、乗客がどういう機材を選ぶかという選択肢は、あまりない。それは、エアラインが決めることで、787を選ばないという自由がない場合が多い。
売り込みにさえ成功すれば、乗客は乗らざるを得ないのだ。
「同社はグーグルで「ドリームライナー火災」や「787バッテリー」といった検索ワードを入力した場合、検索結果のトップに「FAA、ボーイングの計画を承認」というスポンサー付きのリンクが表示され、ボーイングがバッテリーに加えた変更について詳しく読むことができるようにしている。」
どうやら、日本の検索エンジンでは表示されないようだ。
このブログでは、B787のバッテリー事故は、B787という飛行機の本質的な欠陥によるものであり、それはおそらく解決できない問題であると指摘し続けている。
無知な乗客や、一蓮托生のFAAや、グルになっているキャリアを丸め込んで、好き放題に絵空事(まあ、空飛びますから)を宣伝するのは構わないが、結果は事実として示される。
画像を見ても、バッテリーケースの中までは分からない。
前にも書いたが、この問題は、原発と同じ様相を呈してきた。
問題の本質は何も変わらず、取って付けたような目先の対策だけ施して、後は、大量の宣伝とマスコミの扇動を利用して「安全神話」を作り出す。次に火が出るときまでは、安全神話を繰り返し聞かされるわけだな。
今、米国のシャーナリズムが試されていると考えているのは、浮沈子だけなのだろうか。
良きにつけ、悪しきにつけ、ジャーナリズムの影響は、日本などより遥かに大きい。
緻密で、広範囲にわたる取材、本質を抉り出す鋭い視線、当事者の馴れ合いを許さない社会正義、何より、読者に真実を伝えようとする使命感・・・。
日本の商業新聞は、トヨタの脅しに簡単に屈してしまう情けないジャーナリズムに成り下がったが、米国もまた同じなのだろうか。
煙を見て、サンマを焼いているのか、大火事の前触れなのかをしっかりと見極め、社会の木鐸としての役割をキッチリと果たしてもらいたい。
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