🚀アルテミス:存続の危機2025年01月08日 14:00

アルテミス:存続の危機


(退任するNASA長官、次期長官にアルテミス計画の継続を要請)
https://arstechnica.com/space/2025/01/outgoing-nasa-administrator-urges-incoming-leaders-to-stick-with-artemis-plan/

「アルス:次期政権がアルテミス計画を見直すのは適切だと思いますか?」

「ビル・ネルソン:アルテミスはキャンセルされるべきだと言っているのですか?」

「Ars :いいえ。アルテミス計画は基本的に中止されないと思います。しかし、アーキテクチャ面でのミッションの遂行方法を検討することになると思います。(以下略)」

SLSが飛ばないかも知れないという時に、アルテミスが継続するというのはいささか楽天的過ぎる気がするけどな。

(イーロン・マスク:「我々はまっすぐに火星へ向かう。月は邪魔だ。」)
https://arstechnica.com/space/2025/01/elon-musk-were-going-straight-to-mars-the-moon-is-a-distraction/

「アルテミスのアーキテクチャは極めて非効率的だ。これは雇用を最大化するプログラムであり、成果を最大化するプログラムではないからだ。まったく新しい何かが必要だ。」

「いや、我々はまっすぐ火星へ向かう。月は邪魔だ。」("No, we’re going straight to Mars. The Moon is a distraction.")

確かに、アイザックマンはアルテミスを支持するかもしれないが、NASAは効率化の対象となるお役所の一つに過ぎない。

その効率化を推進するのはマスクなわけだ。

そして、彼はアルテミスに対して「No」と明言している。

既に締結された契約、つまり、S社の収益源を袖にしてまでアルテミスをお蔵入りにして火星に行くってかあ?。

「これらは、NASA が今世紀後半に一連の有人探査ミッションを月の南極に送り込み、アルテミス計画によってそこに持続可能な活動基地を設立するという計画と真っ向から矛盾する断定的な発言」

「アルテミス計画によって、米国は月面での意義ある存在を確立するため中国と競争している。」

「結局のところ、約5年前にこの計画を創設したのは第1次トランプ政権だったのだ。」

オバマの民主党政権下では、「月はもう行ったから」として、火星を目指していたわけで、当時は中国との競争も表面化していなかったしな。

遅れに遅れた挙句、着実に実績を重ねてきた中国に追い越されそうになっているだけの話だ。

「NASA は月と火星の両方を目指す二車線戦略を採用する可能性が高い。」

エリックバーガーは、そう予想しているけど、浮沈子はそうは思わない。

再び、初出の記事に戻ろう。

「ビル・ネルソン: ・・・世間の噂にあるように、SLS を中止して、スターシップに置き換えることになると思いますか? 答えはノーです。」

「アルス:なぜですか?」

「ビル・ネルソン:トランプ大統領の立場になって考えてみてください。トランプ大統領は任期中に月面でアメリカ人宇宙飛行士と会話をしたいと思うと思いますか?」

「アルス:もちろんです。」

「ビル・ネルソン:では、もう一つ質問させてください。トランプ大統領は、任期中に月面で中国の宇宙飛行士のコメントを聞くよりも、任期中にアメリカの宇宙飛行士と会話をしたいと思われますか?」

この会話は、マスクの方針を無視したものだ。

トランプが宇宙政策に関心が薄いのは、第1期にそれをペンスに丸投げしたことでも明らかだしな(そうなのかあ?)。

ビルネルソンが、そのトランプの意向に忖度してNASAの方針が決まると思っているとしたら大間違いだろう。

SLSが飛ばなければ、アルテミスは無人のプログラムに終わる。

それだけじゃない。

アルテミス3と4では、S社のHLS(ヒューマンランディングシステム:月着陸船)が必要だ。

それがキャンセル(S社側から)されたらどうなるのか。

もちろん、ブルーオリジン主導な着陸船(ブルームーン)は飛ぶかもしれないけど、そこに乗せる人間を運ぶオリオン宇宙船は二度と飛ばないかも知れないわけだ(風前の灯だしな)。

アイザックマンは大人だから、NASAの計画の大部分を踏襲し、効率的に結果重視で取り組む姿勢を見せているけど、マスクはブッ飛んでるからそういう忖度は一切ない(そうなのかあ?)。

「月は邪魔だ。」(再掲)

それが本音だろうし、アルテミスを屠って火星にフォーカスするというのはありそうな話だ。

いや、それしかないだろう。

中国との競争とか、そういうのは志が低いからな。

NASAの予算は限られている。

10分の1とは言わないまでも、アポロ時代の数分の1の予算で火星に行くには月に係わっている暇はない。

「我々はまっすぐ火星へ向かう。」(再掲)

ネルソンは、まあ当然と言えば当然だが、アルテミス2に対して楽観的だ。

「私はアルテミス II が 2026 年 4 月頃に飛行するのを見られると確信しています。」

公共事業としてのSLS(1回の打ち上げ費用が41億ドル以上)がお終いになれば、その確信も煙のように消えるだろう。

アルテミスは終わったも同然だ(そんなあ!)。

それだけじゃない。

ISSでさえ、いつ見限られないとも限らない。

アメリカ一国主義の中、国際協調なんてクソ食らえだ!。

まあ、どうでもいいんですが。

火星を直接目指すというなら、確かにHLSの開発は大して役には立たないだろう。

軌道上給油(メタンと酸素だから「油」じゃないけど)は、少しは役に立つかもな。

もっとも、浮沈子は有人火星探査(いわんや移民をや)には懐疑的だ。

米国の宇宙開発は混迷を極め、S社(マスク?)に振り回されることになるだろう。

しかし、NASAだけを見ていては分からないこともある。

米軍は、宇宙空間での軍事的優位を維持するために、特にシスルナ空間(月軌道までの地球周囲の宇宙空間)での運用性を飛躍的に高めたがっている。

ロシアや中国の動きに警戒しているわけだ。

斜陽なロシアはともかく、中国は急速に宇宙空間で軍事展開しているからな。

(中国の国望衛星打ち上げは衛星の目的と透明性に疑問を投げかける)
https://spacenews.com/chinas-guowang-launch-raises-questions-about-satellite-purpose-and-transparency/

「宇宙インターネット以外の目的、あるいはそれに加えて何か他の目的で建造されている可能性もある」(セキュア・ワールド財団の宇宙安全保障・安定担当チーフディレクター、ビクトリア・サムソン氏)

「中国の公式軍事新聞である解放軍報は、ロシアのウクライナ侵攻後の2022年に、スターリンクはウクライナの対応を支援するために通信以上のものを提供した可能性があると主張する記事を掲載し、スターリンク衛星は偵察、航法、気象などのペイロードを搭載して米軍の戦闘能力を高めることができると主張し、米国は軍事力を強化するために商業宇宙を使用していると主張」

スターリンクそのものじゃないけど、その後、スターシールド衛星として別途展開されている。

「国望衛星は通信用のペイロードに加えてペイロードを搭載できるように大型化しているのではないか」

つまり、中国版スターシールドなわけだ。

明確な軍事衛星として位置付けられるとは限らない。

米国は、政治的要請から民需と軍需を分けているけど、他の国がそれに倣う必要はない。

我が国も既に必要な法改正を行い、JAXAが軍事衛星を打ち上げることが可能となっている。

火星に直接行くとか移民するとか世迷言を言ってるマスクを、地球近傍の宇宙空間に釘付けにするために米軍や国家偵察局(NRO)が一役買うことになるだろう。

確認しておこう。

ネルソンの確信に係わらず、SLSがアルテミス2で飛ぶことはない(そんなあ!)。

S社はHLSの開発を放棄し、少なくともアルテミス3と4はお蔵入りになる(ホントかあ?)。

月軌道ステーションは建造されることなく、モジュールは地上で保管されることになる(そうなのかあ?)。

しかし、マスクの思惑通り、凍結されたNASAのリソースが火星に振り向けられるかどうかは疑問だ。

米国は結局のところ、中国の有人月面着陸を地球上から見ることになる(以前は、月軌道上から見れたのにな)。

間違っても、火星からじゃない!。

スターシップは飛ぶだろうけど、当面はペッツドアからスターリンクV3とか新設計のスターシールド衛星を展開するに留まる。

せいぜい米軍(宇宙軍)などの要請で、シスルナ空間に衛星飛ばすのが関の山だ(そういうことかあ?)。

或いは、怪しげな衛星を軌道から捕獲して持って帰るとかな。

2030年代になれば、ブルームーン月着陸船が出来るかもしれないから、何らかの有人打ち上げシステム(スターライナーかあ?)とコラボして、米国の有人月面着陸が遅ればせながら実現する可能性は残っている。

有人火星探査も、その頃になれば火星軌道周回して帰ってくるくらいは出来るようになるかも知れない(浮沈子は懐疑的ですが)。

アルテミスは死んだな・・・。

<以下追加>ーーーーーーーーーー

いささか興奮して書きまくったけど、米国の宇宙政策が根本的に大きく変わることは間違いない。

それは米国自身が望んだことではないかも知れない。

おそらく、マスクにとって、米国であれ中国であれ、国家というのは便利な道具に過ぎないのかも知れない。

火星に植民するという野望を実現するための道具だ(そうなのかあ?)。

問題なのは、そういう人物を政策決定に影響を与えるポジションに着けたことだろうな(まだ未定ですが)。

トランプ政権の4年が終われば、元の鞘に収まると考えるのは間違いだろう。

NASAや米軍は、S社にとっては「気前のいい顧客」の一つに過ぎない。

スターリンクによって全世界から小銭をかき集める仕掛けを作っただけではなく、スターシップの成功で今度は航空業界に殴り込みをかけようとしている(そういうことかあ?)。

大陸間弾道旅客機を飛ばしてな。

やがては、火星との間に定期便を運航しようとしているんだろう。

べらぼーめ・・・。

NASAや米軍は、米国政府が米国民や企業からかき集めた税金を使って運用されている。

SLSが非効率とかいっても、議会に承認された予算で賄われている限り、何の問題もない(そうなのかあ?)。

それを屠って、自社事業に税金を注ぎ込むことを認めるのかどうか。

「月は邪魔だ。」(再々掲)

「我々はまっすぐ火星へ向かう。」(再々掲)

最終的に、それは米国の選択になるんだろうけど、その米国の選択とは別に、S社(マスク)の選択というのもあるわけだ。

NASAがあくまでもSLSに拘り、S社の意向に沿わない方針を崩さないとすれば、S社の方が米国を捨てる可能性もある(そんなあ!)。

他に「気前のいい顧客」がいるかどうかは知らない。

また、米国と敵対して全世界で商売できるかどうかという問題もある。

結局はどこかで折り合いをつけることになる。

S社が、地球で商売している以上はな。

好き放題にしたけりゃ、火星にでもどこでも行っちまえ・・・。