終息?2014年11月23日 13:24

終息?
終息?


42日間(過去の最大潜伏期間の2倍)、新たな感染者が確認されなくなれば、その地域での感染は終息したと看做されるようだ。

徹底した感染者のトレース、感染者が接触した全ての人々の監視、隔離や治療を行う医療機関の充実があって、初めて実現する状態である。

大規模感染の場合、感染者が接触した人々の数は膨大となり、漏れが生じ、新たな感染者を生む。

感染者が監視下の人々から発生したのではない場合、遡って元々の感染者を特定していかなければならない。

そして、その地域において初めて感染した人間を突き止めたら、そこからもう一度接触者を調べなおして、新たに監視下に置くというプロセスを繰り返す。

監視下に置かれた人については、感染を拡大しないように、健康管理と行動制限を行い、一定期間(概ね潜伏期間)が経過するのを待って監視を解く。

保健態勢が充実した先進国では当たり前の話だし、これまでのエボラ出血熱に対しても、この手法が有効だった。

感染拡大のスピードや規模に対して、十分な資源が投入されてきたし、エボラについては、ヒトの無症候性キャリアによる感染拡大がなかったことも幸いしている。

致死率が高く、発症から死に至るまでの期間が比較的短いことから、大規模感染に発展し辛かったということもある。

しかし、今回は、あらゆる状況が感染拡大を後押しした。

エボラなんかない、外国人が持ち込んだ疫病だ(これは、ある意味では正しい:リベリアやシエラレオネにとっては、初発国であるギニアは外国です)などといった著しい誤解による防疫活動への抵抗や、遺体に触れる埋葬習慣による感染の拡大、国境を越えた周辺地域への移動頻度の高さ、首都への侵入、元々の医療体制の貧弱さに加えて、医療機関自体が感染の温床となる有り得ない状況、隔離の不徹底とトレースの不足、などなど。

そして、これらの状況は、何一つ改善されないまま、今、この瞬間にも、感染は拡大している。

そんな中で、浮沈子が仰天する発言が飛び出している。

(エボラ熱「流行終息は遠い」支援強化を)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141122/k10013410911000.html

「対策を加速させ続ければ、来年の中頃には今回の流行を終息させることができる」

国連事務総長が、1年近くも先の終息について言及した。

こんな予測は、神様でない限り不可能である。

現在の対策が効果を発揮しているというアピールと、さらなる支援を求めるという政治的な要素が強いとはいえ、浮沈子に言わせれば、暴言だな。

確かに、一部地域で感染の勢いが衰えてきているというのは事実だし、投入してきた資源の効果がなかったということではない。

しかし、それが十分だったか、感染の拡大を食い止めることに成功しているかといえば、そんなことは全くない。

せいぜい、感染のスピードを遅らせることが出来ているだけだ。

この違いは大きい。

感染が持続しているアクティブな状況がある限り、いつ再燃するか分からないのだ。

まして、今回は広範囲に及ぶ無数の感染経路が形成されてしまった。

この経路を潰していくプロセスは、気の遠くなるような手間隙が掛かるし、それは時間との戦いになる。

シエラレオネは国家禁足令を出してまで、実態把握や啓発を行ったが、その後、むしろ感染の勢いが増加するという皮肉な結果になっている。

全体に網を掛けるような啓発活動には実効性が無く、感染を終息させるためには、地道なトレース作業を続けるしかないのだ。

もちろん、埋葬習慣を改めさせたり、移動を制限するためには、強権発動だけでなく、丁寧な啓発活動の継続と食料を初めとする生活物資の援助など、包括的な対応が必要だが、基本はトレースによる監視と、発症者の早期隔離である。

そのスピードが、エボラのスピードを上回り、全ての感染者が捕捉され、接触者のリストが完備され、監視体制が機能し、新たな感染者がそのリストからだけ発生するようになり、隔離・治療体制が整って初めて終息について語ることが可能になる。

しかも、それは、無症候性キャリア(ヒトを含む全ての感染源)からの新たな感染がないと仮定した場合の、楽観的な状況においての話である。

米軍や国連が動き出して2か月程になる。

どの程度の資源が投入されているのかは、纏まった情報が無いのと、現地での実際の展開が不透明なので良く分からないが、もしも十分だと考えているのなら、感染が続いているという事実をどう説明するのか。

そして、それが不十分であるなら、有り得べき規模や内容はどの程度で、何がどの程度不足し、その調達にはどの程度のコストや人員などが必要なのかを明示しなければならない。

関係者の間では、分かっているのかもしれないし、分かっている気になっているだけかもしれない。

(エボラ出血熱:年末までには制御…シエラレオネ副保健相)
http://mainichi.jp/select/news/20141123k0000m030043000c.html

「装備・人手と対策資金が十分に入手できれば、12月末までに感染拡大を制御できると思う」

フォディ・サウィ・ラハイ副保健相には悪いが、そんなことは100パーセント有り得ないと浮沈子は断言する。

もちろん、装備・人手・対策資金の入手が十分であったとしてもだ。

毎日100人もの新規感染者を発生させている中で、感染をコントロールするなどおこがましい。

(Districts of Sierra Leone)
http://en.wikipedia.org/wiki/Districts_of_Sierra_Leone

画像の地域別確定感染者の動向と併せて見ると、現在の感染は、むしろ首都圏から周辺地域に拡大しているのではないか。

この際、首都を隔離して、全国への波及を食い止めてはどうか。

副保健相の初期対応の過ちの認識が正しければ、そうすべきだろう?。

しかし、そんなことは現実には不可能だ。

感染者が比較的少ない地域というのは、人口密度も低く、インフラも乏しく、防疫の拠点を置くことができない。

今後も首都圏を中心にした感染拡大は続くだろう。

年末だってえ?。

夢でも見てんじゃね?。

確かに、新たな援助を呼び込むには、投資が効果を上げていることを示す必要がある。

そうでなければ、今までの投資が無効になってしまっているという印象を与えかねない。

損切りをして、見限られたらお仕舞いだ。

そうならないためには、終息の見通しを与え、新たな援助を引き出す必要がある。

国連にしてもシエラレオネにしても、気持ちは分かるんだが、動機が見え見えで、今一つ説得力に欠けるな。

援助する方だって、いろいろ問題を抱えているのだ。

米国は、大統領が職権乱用で訴えられているし、どっかの国は、この時期にワケワカの解散総選挙なんかやってるし・・・。

まあ、どうでもいいんですが。

(国連エボラ対策責任者 感染拡大も想定)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141122/k10013410191000.html

「今後も数年流行が続き、より多くの国に感染が広がる事態も想定される」

「ナバロ調整官は、マラリアや鳥インフルエンザなどの感染症の対策に当たってきた専門家として知られていますが、今回のエボラ出血熱ほど危機的な事態は初めてだとしています。」

なんか、閣内不一致のような発言だが、浮沈子はこのミスターインフレの認識の方が正しいと感じている。

少なくとも、今の状況を見ている限り、年末とか来年中頃などという話はどっからも出てこない。

画期的な治療薬や、効き目のあるワクチンが出てきて、その辺の風邪と変わらない病気になるまでは、そんな話はでっち上げだと考えていた方がいい。

ワクチンの一般接種が始まるのが来年中頃というので、国連事務総長の発言は、それも踏まえているのかもしれない。

「依然として患者の数は増え続けている。やれることはすべてやる」

その結果として、実際に来年中頃に終息してくれればそれに越したことはないが、現時点ではその発言を裏付けるエビデンスは公開されていない。

WHOトップのマーガレット・チャンが現地に乗り込むというが、誰が行っても同じことだ。

現場での地道な活動以外に、この状況を終息へ向かわせる方法は無い。

ワクチンや治療薬を当てにしているとしても、それまでに感染して苦しんだり、亡くなってしまう人々を少しでも減らす努力を怠っていいということにはならない。

WHOの甘い目論見が当てにならないということは、感染者の増加を見ても、最早疑いの余地無く明らかになった。

2まんにんだってえ?。

そんな数字があったことさえ、誰も気に留めていないだろうが、浮沈子は当初から懐疑的だった。

(スピード13)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/08/28/7423734

この時の想定を見てみる。

「・ギニア:2,550
・リベリア:11,950
・シエラレオネ:5,500
合計:2万」

リベリアは、随分少なくて済んでいる(現在、約7千100人)。

シエラレオネ(約6千400人)はとっくにオーバーしているし、ギニア(2100人)がこの数字を越えるのは時間の問題だ。

たった3か月先のことさえ、WHOの予想は外れまくっている。

だから、国連事務総長がなんと言おうと、頭から信じることなど出来るはずがない。

今は、終息などという甘い状況を語る時期ではなく、過剰な資源を投入しまくる必死の時期だ。

しかし、シエラレオネの副保健相は、なんでローマなんかにいるんだあ?。

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