🐱閏秒:誤った理解 ― 2024年03月29日 08:42
閏秒:誤った理解
(地球の自転が速くなっているため2029年までに「負のうるう秒」が必要になる可能性大、ネットやITサービスが大混乱になる危険性も)
https://gigazine.net/news/20240328-negative-leap-second/
「うるう秒は、これまではすべて1秒長くするものでしたが、2029年までに1秒減らす必要があるという計算結果が報告されました。」
まあ、この記事自体はどうでもいいんですが。
一応、確認のためにウィキを読んだんだが、浮沈子は閏秒について誤解していた。
(閏秒:閏秒挿入の理由についての間違った理解)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%8F%E7%A7%92#%E9%96%8F%E7%A7%92%E6%8C%BF%E5%85%A5%E3%81%AE%E7%90%86%E7%94%B1%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%AE%E9%96%93%E9%81%95%E3%81%A3%E3%81%9F%E7%90%86%E8%A7%A3
「地球の自転速度が徐々に遅くなっているために、これと国際原子時との差を調整するために閏秒を挿入している」(誤り)
「頻繁に閏秒が挿入されてきたのは、地球の自転が徐々に遅くなっており、この遅れを調整するためである。」(誤り)
上記のように理解しているとしたら、それは間違っている。
まあ、もちろん、完全に間違いとは言い切れない。
地球の自転が徐々に遅くなっているのは事実だし、国際原子時(TAI)との差を調整するための作業であることも事実だ。
しかし、国際原子時を決める時のいきさつとか、地球の自転を基に算出している世界時(UT1)の揺らぎの大きさとかを理解しないと、主に潮汐によって徐々に遅くなっている地球の自転が理由で、国際原子時との差が生まれていると誤解することになる。
そもそも、最近50年くらいを見れば、地球の自転はむしろ速くなっている。
まずは、長期的な変動から。
「地球の自転が長期的な傾向としては徐々に遅くなる(LODが大きくなる)のは事実であるが、それは1ユリウス世紀につき1.7ms/日 程度の変化(USNOの解説では、1ユリウス世紀につき1.4ms/日 程度の変化としている)の極めて小さなものである。」(LOD:1ユリウス世紀:3155760000 秒、USNO:米国海軍天文台)
2000年間で見ても、1日の長さ(LOD)は0.34秒しか遅くなっていないことになる(1.7ms/日で計算)。
「1972年以降の地球自転速度の変化は、上記の遅れによるものではなく、数年ないし数十年周期の、もっと大きく、不規則な変動によるものである。」
グラフ(画像参照)で見ると、1970年頃からのトレンドとしては、国際原子時との差が小さくなる傾向にある。
2020年以降ではむしろ世界時の方が速くなっている(ギガジンの記事で、将来はマイナスの閏秒を入れる必要があるという話はこれを指している)。
そもそもが、国際原子時を決めた時の経緯が、プラスの閏秒を頻発する原因になっている。
少し長いが、引用する。
「セシウム遷移の9 192 631 770周期を1秒とする国際原子時の歩度は、1750年 - 1892年の間(平均的には、1820年頃)に行われた天文観測からサイモン・ニューカムがTables of the Sunに基づいて計算した秒の長さに基づいて決められた。したがって、1958年当時の地球自転の歩度(86 400.0025 SI秒程度)とは合わなくなっていた。」
「もし、国際原子時の歩度を、セシウム遷移の9 192 631 770周期ではなく、9 192 631 997周期にしておけば、1972年以降、2回のマイナス(閏秒の削除)と1回のプラス(閏秒の挿入)の3回だけの閏秒の削除・挿入で済んでいたはずである。」
つまり、国際原子時をちっと短く定義し過ぎたということなわけだ。
「ただし、仮に1967年時点で9 192 631 997周期にしていたとすると、(9 192 631 997 - 9 192 631 770)/9 192 631 770 = 2.469×10-8だけ、秒の長さを長く定義し直すことになり、1967年までに蓄積されていた様々な物理定数の値を変更する問題が生じていたはずである。」
まあいい。
なお、ギガジンの記事には、閏秒を廃止するという記述があるが、やや正確性を欠く。
「うるう秒は2035年までに実質的に廃止されることが決定している」(ギガジン)
ウィキの解説によれば、そう言うことではなさそうだ。
「こうした論議を踏まえた上で、国際度量衡総会(CGPM)は2022年11月18日の会議にて存廃の是非を問う投票を実施し、2035年までに閏秒に替わる案を決定した。」
「2023年12月11日には国際電気通信連合(ITU)が同様の決議を行ったが、2040年まで延長可能とする猶予措置などが新たに設けられた。これらの決議は、正確には「閏秒を廃止する」としたものではない。」
代替案の概要は次の通り。
・これまでは、UT1-UTCの差分( = DUT1)が0.9秒に到達すると見込まれるときに閏秒が挿入されてきた。
・CGPMは、このDUT1の最大値(現在は0.9秒)を2035年までに増加させることを決定した。
・CGPMは、CIPMに対して、ITU、その他の機関とともに、少なくとも100年間はUTCを変動させないような、上記の最大値を提案することを求めた。
・CGPMは、2026年開催の第28回CGPMで合意を得られる提案を求めた。
「CGPMの決議はDUT1の最大値を具体的には述べていない」
それは、次回の会合(2026年開催予定)に先送りされている。
「LODの変動要因:
LODの変動に最も大きな影響を及ぼすのは、潮汐であり、朔望月の周期で0.6-0.8ミリ秒程度の変動がある。」
「1年から数年程度の周期のLOD変動の原因は、その大部分が大気(地殻と風の相互作用)によることが確かめられている。」
「一方、LODの年単位より長周期の変動の原因は分かっておらず、未解決の課題である。」
「月による潮汐摩擦、地震による地球内部の質量の分布変化、マントルと外核の相互作用、氷床の消長、地球内部の核、風、海水などによる影響が考えられているが、定量的には分かっていない。」
ギガジンの記事では、氷床(陸域の氷)の融解に伴う海水の増加で遅くなるという説明だが、どうもそれだけではない感じだな(未確認)。
人類の活動によって温暖化が進み、氷床が溶けて海水が増加して遠心力で赤道域に海水が集まり、スピンが遅くなって地球の自転に影響を与えるというストーリーだが、ちょっと眉唾な気もする(そうなのかあ?)。
ひょっとすると、2035年までマイナスの閏秒を入れずに済んで、ズレ(UT1-UTCの差分 = DUT1)の許容範囲を変更することになり(2026年決定予定)、向こう100年間は閏秒なしの時代が続く可能性もある(未確認)。
氷床の融解が更に進めば、そういう事態になるかも知れない。
2017年1月1日が、今世紀最後の閏秒になるのかもな・・・。
(地球の自転が速くなっているため2029年までに「負のうるう秒」が必要になる可能性大、ネットやITサービスが大混乱になる危険性も)
https://gigazine.net/news/20240328-negative-leap-second/
「うるう秒は、これまではすべて1秒長くするものでしたが、2029年までに1秒減らす必要があるという計算結果が報告されました。」
まあ、この記事自体はどうでもいいんですが。
一応、確認のためにウィキを読んだんだが、浮沈子は閏秒について誤解していた。
(閏秒:閏秒挿入の理由についての間違った理解)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%8F%E7%A7%92#%E9%96%8F%E7%A7%92%E6%8C%BF%E5%85%A5%E3%81%AE%E7%90%86%E7%94%B1%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%AE%E9%96%93%E9%81%95%E3%81%A3%E3%81%9F%E7%90%86%E8%A7%A3
「地球の自転速度が徐々に遅くなっているために、これと国際原子時との差を調整するために閏秒を挿入している」(誤り)
「頻繁に閏秒が挿入されてきたのは、地球の自転が徐々に遅くなっており、この遅れを調整するためである。」(誤り)
上記のように理解しているとしたら、それは間違っている。
まあ、もちろん、完全に間違いとは言い切れない。
地球の自転が徐々に遅くなっているのは事実だし、国際原子時(TAI)との差を調整するための作業であることも事実だ。
しかし、国際原子時を決める時のいきさつとか、地球の自転を基に算出している世界時(UT1)の揺らぎの大きさとかを理解しないと、主に潮汐によって徐々に遅くなっている地球の自転が理由で、国際原子時との差が生まれていると誤解することになる。
そもそも、最近50年くらいを見れば、地球の自転はむしろ速くなっている。
まずは、長期的な変動から。
「地球の自転が長期的な傾向としては徐々に遅くなる(LODが大きくなる)のは事実であるが、それは1ユリウス世紀につき1.7ms/日 程度の変化(USNOの解説では、1ユリウス世紀につき1.4ms/日 程度の変化としている)の極めて小さなものである。」(LOD:1ユリウス世紀:3155760000 秒、USNO:米国海軍天文台)
2000年間で見ても、1日の長さ(LOD)は0.34秒しか遅くなっていないことになる(1.7ms/日で計算)。
「1972年以降の地球自転速度の変化は、上記の遅れによるものではなく、数年ないし数十年周期の、もっと大きく、不規則な変動によるものである。」
グラフ(画像参照)で見ると、1970年頃からのトレンドとしては、国際原子時との差が小さくなる傾向にある。
2020年以降ではむしろ世界時の方が速くなっている(ギガジンの記事で、将来はマイナスの閏秒を入れる必要があるという話はこれを指している)。
そもそもが、国際原子時を決めた時の経緯が、プラスの閏秒を頻発する原因になっている。
少し長いが、引用する。
「セシウム遷移の9 192 631 770周期を1秒とする国際原子時の歩度は、1750年 - 1892年の間(平均的には、1820年頃)に行われた天文観測からサイモン・ニューカムがTables of the Sunに基づいて計算した秒の長さに基づいて決められた。したがって、1958年当時の地球自転の歩度(86 400.0025 SI秒程度)とは合わなくなっていた。」
「もし、国際原子時の歩度を、セシウム遷移の9 192 631 770周期ではなく、9 192 631 997周期にしておけば、1972年以降、2回のマイナス(閏秒の削除)と1回のプラス(閏秒の挿入)の3回だけの閏秒の削除・挿入で済んでいたはずである。」
つまり、国際原子時をちっと短く定義し過ぎたということなわけだ。
「ただし、仮に1967年時点で9 192 631 997周期にしていたとすると、(9 192 631 997 - 9 192 631 770)/9 192 631 770 = 2.469×10-8だけ、秒の長さを長く定義し直すことになり、1967年までに蓄積されていた様々な物理定数の値を変更する問題が生じていたはずである。」
まあいい。
なお、ギガジンの記事には、閏秒を廃止するという記述があるが、やや正確性を欠く。
「うるう秒は2035年までに実質的に廃止されることが決定している」(ギガジン)
ウィキの解説によれば、そう言うことではなさそうだ。
「こうした論議を踏まえた上で、国際度量衡総会(CGPM)は2022年11月18日の会議にて存廃の是非を問う投票を実施し、2035年までに閏秒に替わる案を決定した。」
「2023年12月11日には国際電気通信連合(ITU)が同様の決議を行ったが、2040年まで延長可能とする猶予措置などが新たに設けられた。これらの決議は、正確には「閏秒を廃止する」としたものではない。」
代替案の概要は次の通り。
・これまでは、UT1-UTCの差分( = DUT1)が0.9秒に到達すると見込まれるときに閏秒が挿入されてきた。
・CGPMは、このDUT1の最大値(現在は0.9秒)を2035年までに増加させることを決定した。
・CGPMは、CIPMに対して、ITU、その他の機関とともに、少なくとも100年間はUTCを変動させないような、上記の最大値を提案することを求めた。
・CGPMは、2026年開催の第28回CGPMで合意を得られる提案を求めた。
「CGPMの決議はDUT1の最大値を具体的には述べていない」
それは、次回の会合(2026年開催予定)に先送りされている。
「LODの変動要因:
LODの変動に最も大きな影響を及ぼすのは、潮汐であり、朔望月の周期で0.6-0.8ミリ秒程度の変動がある。」
「1年から数年程度の周期のLOD変動の原因は、その大部分が大気(地殻と風の相互作用)によることが確かめられている。」
「一方、LODの年単位より長周期の変動の原因は分かっておらず、未解決の課題である。」
「月による潮汐摩擦、地震による地球内部の質量の分布変化、マントルと外核の相互作用、氷床の消長、地球内部の核、風、海水などによる影響が考えられているが、定量的には分かっていない。」
ギガジンの記事では、氷床(陸域の氷)の融解に伴う海水の増加で遅くなるという説明だが、どうもそれだけではない感じだな(未確認)。
人類の活動によって温暖化が進み、氷床が溶けて海水が増加して遠心力で赤道域に海水が集まり、スピンが遅くなって地球の自転に影響を与えるというストーリーだが、ちょっと眉唾な気もする(そうなのかあ?)。
ひょっとすると、2035年までマイナスの閏秒を入れずに済んで、ズレ(UT1-UTCの差分 = DUT1)の許容範囲を変更することになり(2026年決定予定)、向こう100年間は閏秒なしの時代が続く可能性もある(未確認)。
氷床の融解が更に進めば、そういう事態になるかも知れない。
2017年1月1日が、今世紀最後の閏秒になるのかもな・・・。
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