🐱スターシップ:救世主か?2022年11月21日 06:51

スターシップ:救世主か?


(SpaceX は、今後の Amazon インターネット衛星打ち上げの選択肢として残っている、と上級副社長は述べています。)
https://www.teslarati.com/spacex-falcon-heavy-starship-amazon-internet-satellite-launches/

「Amazon の幹部は、将来の Project Kuiper 打ち上げのより望ましいオプションとして、SpaceX の次世代 Starship ロケットを取り上げました。スターシップは、100 トンから 150 トンの LEO で打ち上げられるように設計されており、Falcon 9 や Falcon Heavy よりもさらに安く、最終的には New Glenn の巨大なフェアリングでさえ小さく見えるペイロード ベイを備えています。」

おっと、ファルコン9は「小さすぎ」、ヘビーなら関心があるという、ややビョーキ(ヘビーリフター依存症?)なアマゾン幹部は、結果的にスターシップが望ましいという。

そりゃあ、安くて打ち上げ能力が高くて高頻度なロケットがいいに決まっている。

札束で世界中のロケット会社の横っ面をひっぱたいて、数千機のカイパー衛星を打ち上げようとしているが、我ばら撒けど汝ら飛ばずだからな。

<カイパー衛星打ち上げ開始時期:予想>
・アトラスV:2023年(衛星が間に合えば)
・バルカン:2025年(2023年デビュー?)
・アリアン6:2026年(2024年デビュー?)
・ニューグレン:2025年(信じている人はいない?)

2段目使い捨てなら、スターシップの方がニューグレンより先に実用化される公算は高い。

多少遅れたとしても、バルカンが運用に入ることはほぼ間違いないし(懸案のBE-4エンジンが納品されたからな)、アリアン6は欧州が意地でも実用化するだろうが、ニューグレンは開発がとん挫する可能性もある。

低軌道コンステレーションは、その性質上、多数の衛星を打ち上げ続けなければ維持できない。

5年から10年に1回だけ、1機か2機ずつを上げていればいい静止衛星とは異なる。

衛星重量が嵩めば、ヘビーリフターで纏めて数十機を上げ続けなければならないし、その頻度は展開するコンステレーションによって異なるものの、年間数十回に及ぶこともある(スターリンク(3万機予定)なんて、あっさり3桁だからな)。

そう考えると、プロジェクトカイパーがたった3,236機のショボいコンステレーションを維持するために、100億ドル(衛星費用込み)をつぎ込むなんてのは序の口に過ぎない。

S社は、いったいいくらかけるつもりなんだろうな(既に100億ドル以上掛けているかも:未確認)。

衛星で50億ドル、打ち上げで50億ドル、端末で10億ドルというのが浮沈子の見立てだ(このままだと、それと同額の追加投資が今後も5年毎に続くことになる:衛星費用削減→高機能化して機数を削減する、打ち上げ費用削減→スターシップに切り替えて削減、端末費用削減→設計変更及び製造方法改善と衛星側機能向上による相乗効果に期待か)。

まあいい。

スターシップは、NASAも当てにしているし、米軍も宇宙経由の兵站の担い手として期待している。

ゆくゆくは有人化して、大統領の命令から1時間以内に、敵地後方に100機くらい飛ばして、1万人の海兵隊送り込んで運用したいに違いない(スゲーな・・・)。

もう、ウクライナ紛争みたいに、1年も掛けてドンパチやる時代じゃないのだ。

まあ、どうでもいいんですが、その前に宇宙空間に衛星を運ばなければならない。

そうか、アマゾンも当てにしてるのか・・・。

カイパーは、衛星にも問題がありそうな感じだな。

「衛星のプロトタイプの遅れにより、会社が遅かれ早かれ大規模な打ち上げを開始することがさらに難しくなります。」

「Amazon の最初のプロトタイプが Vulcan の 2023 年初頭のデビューに合わせて打ち上げられ、優れた性能を発揮し、わずか数か月のテストで期待に応えるかそれを上回り、最終的な衛星設計に近づいた場合、プロジェクト カイパーは 1 つを満たすのに十分な衛星を製造する可能性があります。」(ありえねー・・・)。

「しかし、最初の衛星が大きな問題に遭遇した場合、Amazon の「[プロトタイプの開発と並行して] 量産衛星の製造を開始する」という決定により、衛星の再設計を余儀なくされた場合、Amazon は数か月遅れる可能性があります。新しいサプライヤーを見つけるか、すでに建設中の工場を大幅に変更します。」

打ち上げ開始が遅れれば、展開のスケジュールはいっそう厳しくなる。

衛星通信でインターネットに接続する需要は限られている。

競争が起これば、一社総取りになりかねない。

また、衛星間通信で軌道上にバックボーンを構築するなどしない限り、既存の地上インフラに取って代わることなどできないのだ。

衛星は、固有のリスクも抱えている。

太陽フレアの直撃を受けるなどの事態になれば、一度に多数の衛星が機能を失う。

もちろん、そのためのコンステレーションだし、再配置や予備機の投入、場合によっては相互運用などによってカバーしていくことになる。

また、低軌道コンステレーションは、衛星寿命が静止衛星に比べて短いから、毎年うち上げ続ける必要があり、定常的な打ち上げ能力の確保も求められる。

ワンウェブの打ち上げ手段がソユーズに片寄り、ウクライナ侵攻でリスクに晒されたのがいい例だ。

アマゾンは、使える限りのありったけのヘビーリフターを買い漁ったように見えるけど、リスク分散もしていることになる。

GSLV(インド)とか、我が国のH3とかは、調達しなかったけどな(打ち上げ能力が足りないからかも:ファルコン9でも小さいそうですから)。

その意味でも、大いに当てにされているスターシップだが、それ一辺倒では、やはり不安だな。

そう考えると、スターリンクなんて、リスキーの極みだけどな(自社事業だからいいか)。

アマゾンは、ちゃんとした企業だ(たぶん)。

ビジネスのリスクヘッジもし、継続性を維持し続けようと必要な対策を検討している。

低軌道コンステレーションによる衛星インターネットは、長期に渡るビッグビジネスだ。

技術的にも不透明な部分があり(適正なコストで地上のアンテナが作成できていない:スターリンクはコスト割れ)、ライバルも多いが、棲み分けは可能かもしれない。

スターリンクは、桁違いの投資をして、アットーテキ物量作戦に出ているが、ワンウェブを初めとする後続は、妥当な投資で妥当なサービスを狙っている。

中途半端といえばそうなるけど、元々、需要は限られている。

ワンウェブの投資額は、スターリンクより2桁くらい少ないに違いない。

アマゾンのカイパーは中間くらいか。

それ以外でも、小規模なコンステレーションで、モバイル機器をターゲットとするビジネスは、いくつもある(イリジウムとかグローバルスターとか)。

先日上がったBlueWalker 3も、そういうミニコンステレーションの一つだ。

(楽天モバイルも使う巨大通信衛星「BlueWalker 3」が明るすぎて天体観測を妨害&電波望遠鏡と電波干渉する可能性も)
https://gigazine.net/news/20221117-sparking-satellite-bluewalker/

「BlueWalker 3はAST SpaceMobileが計画している168基の人工衛星による大規模通信網「BlueBirds」のプロトタイプとして開発された人工衛星」

もっとデカいのが、168機も飛んだら、さぞかし邪魔だろうけどな。

「AST SpaceMobileはBlueWalker 3の位置情報共有を求める天文学者の要望に応じていません。」

まだ、テスト衛星だから、秘密にしておきたいに違いない(そうなのかあ?)。

しかし、これらの衛星群は、スターリンクなどとは似て非なるものだ。

通信のスループットが低いし、用途も限られるからな。

インターネット衛星群も、バックボーンまで担う全地球サービス(衛星間リンクがないとできない)から、ワンウェブのように、地上局がある地域だけを担うやり方もある(次期展開ではクロスリンクも狙うようですが)。

様々な思惑(ビジネスモデル)と、20世紀に全滅した歴史を持つ低軌道コンステレーション構想。

事業として成功を掴んだところは何処もない(スターリンクも、まだ赤字:イリジウムは未確認:一度潰れているけど)。

その展開のボトルネックを握っている衛星の打ち上げ。

早い(打ち上げ頻度が高い)、安い、美味い(確実で大量打ち上げ可能な)ロケットが求められている。

アマゾンの衛星をS社が上げることになれば、なかなか面白いことになりそうだ。

将来は、自社の衛星と相乗りして打ち上げることになるかも知れないしな(スターリンクとの相乗り衛星は、今までもあったけど)。

文字通りの、呉越同舟・・・。

同じ低軌道コンステレーションによるインターネット衛星なわけだ。

ジェフベゾスとイーロンマスクの確執も絡むしな(ショットウェルおばちゃんに変わったけど)。

考えてみれば、スターシップのように過剰な打ち上げ能力を持つロケットが出てくれば、市場で競合する複数の衛星を同時にうち上げることだって当たり前になるだろう。

コンステレーション以外でも、100機を超える相乗り衛星を打ち上げることだって、珍しくは無くなってきたからな。

大量打上げの時代は、もう始まっているのだ。

完全再使用で、その時代を席巻しようとするスターシップは、時代の寵児だ。

急激な立ち上がりの衛星需要とミスマッチが起こっている現在は、救世主かもしれない(打ち上げロケットの世代交代でもたついているしな)。

もっとも、まだ、飛ぶかどうかは分からない。

スーパーヘビーブースターの33機のラプターが同時点火できれば、その可能性は高まる。

が、発射台が持つかどうかはやってみなければ分からない。

B4の機体では、強度的にも問題があったみたいだしな(未確認)。

一寸先は闇のスターシップ開発。

墜落激突爆発炎上木っ端微塵は当たり前。

発射台が吹っ飛べば、半年は軽く遅れる(予備の発射台もありますけど)。

それを当てにせざるを得ない、低軌道衛星コンステレーション。

21世紀の宇宙開発は、混とんとしている。

SLSは上がったけど、あれを使うわけにもいかないしなあ・・・。