古代ギリシャの計算機2016年01月28日 14:36

古代ギリシャの計算機


歯車や、様々な仕掛けを使って、エクリプス(月食・日食の食)や月の満ち欠け、公転速度の変化などを精密に再現する天体運行機械式計算機というのがある。

機械オタクを自任する浮沈子が、これを知らなかったというのは、迂闊であった。

(アンティキティラ島の機械)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%AD%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A9%E5%B3%B6%E3%81%AE%E6%A9%9F%E6%A2%B0

「天体運行を計算するために作られた古代ギリシアの歯車式機械」

NHKが2012年にドキュメンタリー番組を作成しており、ネット上で見ることが出来る。

(世界最古のコンピューター 宇宙を再現! 古代ギリシャの技術:動画出ます)
https://www.youtube.com/watch?v=_6d1rDqvvbw

この映像を見た時に、人間の頭は、2000年経っても進化していないどころか、どんどん退化しているんじゃないかとすら思った。

歯車の枚数から、月の軌道の約9年周期の変化に伴う数字をはじき出すというシーンには、正直カンドーしたな(動画で32分辺りから)。

1年に0.112579655回転ずつ変化するらしい。

映像から拾うと、以下になる(意味不明・・・)。

254/19-(239/223)*(235/19)
=0.1125796554165671
≒0.112579655

メトン周期の近似値を使っているようだな。

(メトン周期:参考)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%B3%E5%91%A8%E6%9C%9F#.E5.8F.82.E8.80.83

「この中の235/19(12.368 42…)がメトン周期に相当する。」

ちなみに、254/19は一コマ足しているな(恒星月ベース?)。

サロス周期の数字も出てくる。

(サロス周期)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%AD%E3%82%B9%E5%91%A8%E6%9C%9F

「日食や月食が起こる日を予測するのに用いられる周期である。」

「1サロス周期は223朔望月」

「239 近点月」

なんとか、ここまでは分かった。

まあいい。

とても歯車で実装できる数字とは思えないが、なんと、26.5という半端な歯の数を入れたら、ドンピシャの数字が出てきたというのだ!。

それを実現していたのは、26.5の2倍の53歯数の歯車だったということだ。

うーん、良く分からないが、すごい話なんだろう。

「世界最古のコンピューター」を読む2016年01月28日 23:02

「世界最古のコンピューター」を読む


といっても、本を読むわけではない。

(古代ギリシャの計算機)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2016/01/28/8003968

NHKの番組に登場する数字を見ていこうというわけだ。

19、127、235、53、223、18など。

発見されたのは、1901年。

地中海のアンティキティラ島という島の近くの海底で見つかった。

後に(1978年)、かのクストーも潜っている。

ウィキの記述では、BC150年から100年ということになっているが、番組ではもっと新しい。

船が沈没したのは、紀元前70年から50年となっている。

デレク・J・デ・ソーラ・プライスが、1951年からこの機械の構造を調べた時には、X線写真の性能から、歯車の歯数を正確に数えることは出来なかったらしい。

だが、歯車の一つの127という歯数は、その頃に数えられている。

127は、254の半分である。

これは、254恒星月(こうせいづき)と19太陽年が等しいということからきている。

また、背面文字盤上部にある235の目盛りは、同様に、235朔望月(さくぼうづき)が19太陽年に等しいということからきている。

(月の運動と見え方)
http://www.osaka-c.ed.jp/ed/h20/multi02/takeura/5moon/moon1/5moon.html

「1恒星月:
地球から見て、月がある恒星の向きに見えてから再び同じ恒星の向きに見えるまで=27.32日」     

「1朔望月:
「満ち欠けの周期。新月(満月)から新月(満月)まで=29.53日」

難しい計算が出ていて、恒星月から朔望月を求めているが、算数嫌いな浮沈子はやらない!。

ここでは、古代の天文学で、235朔望月が、19太陽年と一致するメトン周期(254恒星月が19太陽年と一致)という点だけ確認できればいい。

ホントかあ?。

ちっとだけ、計算すっかな・・・。

朔望月ベース:
29.53*235=6939.55日
6939.55/365=19.01246575342466年

恒星月ベース:
27.32*254=6939.28日
6939.28/365=19.01172602739726年

まあ、大体合ってればいいのだ(簡単のため、1太陽年は365日としている)。

古代ギリシャだからな。

(メトン周期)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%83%88%E3%83%B3%E5%91%A8%E6%9C%9F

「紀元前433年、アテナイの数学者・メトンが発見したのでこの名がある。」

「メトンは1太陽年を365日ちょうどとし19太陽年=235朔望月=6940日として計算している」

さて、19、127、235という数字がメトン周期からきていることは分かったが、背面歯車の223という数字が問題になった。

これは、プライスの20年余りに渡る研究では解明されなかった。

また、歯の数も222または223とされていて、未確定のままであった。

この数字の確定は、21世紀になってからである。

最新のX線装置で三次元的な画像を得て、さらに破片Fによる補助的な情報も組み合わせ、表面に掘られた文字からのヒントを加え、古代バビロニアの18年周期による食に起因するものであると確定された。

(サロス周期)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%AD%E3%82%B9%E5%91%A8%E6%9C%9F

「日食や月食が起こる日を予測するのに用いられる周期である。」

「1サロス周期は6585.3212日(約18年11日8時間」

「・223 朔望月 = 6585.3212日
・242 交点月 = 6585.3575日
・239 近点月 = 6585.5375日
・19 食年 = 6585.782日」

「おそらくカルデア人(古代バビロニア地方の天文学に長けていた人々)には知られていた」

食年だけ、確認しておこう。

(食年 しょくねん eclipse year)
https://kotobank.jp/word/%E9%A3%9F%E5%B9%B4-80190

「太陽が白道と黄道の交点の1つを通過してから次にそこを通過するまでの時間」

「約 346.62日」

サロス周期には、系列とか、ややっこしい話が書いてあるが、パス!。

223朔望月と、約18太陽年という数字はここから出ている。

破片Fの文字からも、裏面下側の表示板が食の日付と時間を表示することを目的にしたものであることが分かった。

文字情報では、皆既月食の際の月面の色の表示もあった。

月の楕円軌道に伴う角速度の変化を実装する差動歯車の仕組みについては、マイケル・ライトが独自に解明している。

数学者のトニー・フリースが、月の公転軸の約9年周期の謎から53枚の歯車の歯数を解明した話は、前回すでに書いた(まだ、浮沈子の中では、未解明のままですが)。

2000年以上も前に、こんなややっこしい仕掛けをコンパクトに実装して見せた連中は、正真正銘のオタクであり、ヘンタイであることだけは間違いない。

現代のCCRユーザーもびっくりだな。

このレベルの複雑さと正確さを併せ持った機械が歴史上、次に登場するのは、1000年以上待たなくてはならない。

欧州は、この後、文明的には長い暗闇の世界に入っていく・・・。

その間、この技術を継承したのはイスラム文明だった。

ようやく、この歯車の技術を取り入れたのが時計だった。

(時計の歴史)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%82%E8%A8%88%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2

「記録に残っている最初の時計は、996年頃、後にローマ教皇となるジェルベールがドイツの町マクデブルクに作ったものである。」

さらに、自動人形とかにも発展している。

(オートマタ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%9E%E3%82%BF

まあいい。

浮沈子は、歴史は算数の次に苦手なのだ・・・。

もちろん、アンティキティラ島の機械は時計ではない。

計算尺というか、シミュレーターというか、そういう訳の分からないものだ。

変数が、歯車の歯数として固定で与えられた計算機と言えなくもない。

ロジックを駆動するのは、その噛み合わせである。

構造自体が固定のプログラムとなっていて、専用計算機として見ることもできる。

適切な動力を与えることが出来れば、時計になったろう。

当時の天文学とか数学(って、たぶん一緒かあ?)、工学、冶金学、その他もろもろの知識や技術を集大成して作った仕掛けだ。

一体、誰が、何のために作ったのか。

詳細なマニュアルが本体に刻まれていることから、実用を目的としたものであると推定されている。

月の公転の細かい特徴や、惑星の動きをある程度再現できたとされているので、天文カレンダーとして使うこともできたかもしれないな。

えーっと、今日は何日だっけえ?(んな、バカな!)。

まあ、どうでもいいんですが。

とにかく、機械仕掛けとして見てもスゴイし、それが、当時の天文学の知識に基づいて正確に動いていたというのもスゴイ。

その知見や技術が、人類の歴史から消えて、中世を経て、もう一度蘇らなければならなかった責任は、誰が、どう取ってくれるのか!?。

発見された機械は、完成度が高く、他にも作られたか、試作品のようなものがあったのかもしれない。

それらは、歴史に埋もれ、消えてしまった。

青銅製というから、ひょっとしたら残っている可能性があるかもしれない。

紀元前のオタクが、次に訪れる食の日付を眺めては、ニヤニヤしていたと思うと、なんか不気味・・・。