🐱ニューラリンク:脳で「見る」 ― 2024年03月26日 04:36
ニューラリンク:脳で「見る」
ニューラリンクの「テレパシー」(念じるだけで、パソコンの操作が出来る仕掛け)が、人間の脳に「リンク」と呼ばれるデバイスを装着し、パソコン上のチェスの駒を動かして見せた話は既に書いた。
(ニューラリンク:チェスOK)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2024/03/21/9669542
「Neuralinkのヒト臨床試験を受けた半身不随の29歳男性が実際に考えるだけでゲームをプレイする様子がムービーで公開」
この件について、イーロンXでも記事になっているのでリンクしておく。
(Neuralink 脳インプラントを装着した最初の人間のユーザーは興奮して自宅でビデオ ゲームをプレイしています)
https://www.elonx.cz/prvni-lidsky-uzivatel-s-mozkovym-implantatem-neuralinku-je-nadseny-a-doma-s-nim-hraje-videohry/
「私たちはさまざまなことを試し始めました。動きを想像したり、麻痺した手を前後に「動かす」ことを試みたりしました。その後、自動的に動作し始めました。あとはカーソルを移動することを考えるだけで済みました。スター・ウォーズの「フォース」を使うようなもので、モニター上の特定の場所を見つめるだけで、カーソルがそこに移動します。」
「唯一の問題は、プレイを続けるために夜間にニューラルインターフェイスを充電しなければならないことでした。 8時間ほどプレイし、その後しばらく充電してプレイを続けました。私は今、このインターフェースを使って日本語とフランス語も勉強しています。」
「今年は間違いなく『X-MEN』のプロフェッサーXになるよ、ぴったりだからね。彼は車椅子に乗っていて、私と同じように念力を持っています。」
動物実験に対する批判が絶えないニューラリンクだが、こういう明るい前向きな話を聞くとホッとするな。
今のところ、大きな副作用もなく、快適に使えているような感じだ。
で、記事の中で、視覚障害を負ったサルの視覚を回復させる仕掛けの話が出てきた。
「Neuralink の次の製品は、Blindsight と呼ばれる視覚インプラント、つまりおそらく「ブラインド ビジョン」となるでしょう。それは実験用サルではすでに機能しています。」
「このようなデバイスの解像度は、最初は古い任天堂のゲームのグラフィックスのように低いですが、いつかは人間の目を超えるかもしれません。」
数日前に別記事になっている。
(イーロン・マスク氏、視力を回復できるニューラリンクの新プロジェクトを明かし、「インプラントはすでにサルで効果を発揮している」と語る)
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-13227927/Elon-Musk-reveals-Neuralinks-new-project-restore-sight-says-implant-working-monkeys.html
「イーロン・マスクは、生まれつき目が見えない人々に視覚を与えるという別のニューラリンク・プロジェクトが進行中であることを何気なく漏らした。」
「その技術はすでにサルでテストされている。」
「デジタルカメラのデータを、視覚野に直接送信できる電気インパルスに再パッケージ化できる」
「自社の次のサイボーグインプラントは失明に取り組むものだ」(写真のキャプションより)
「最初は今年 1 月下旬、そして今週水曜日に再度、マスク氏は自身の先見性のある視覚インプラントがすでにテストされていると明らかにした。」(同上)
カメラから網膜に信号を送り込んで映像を認識させようという試みは、これまでにもあった(<以下追加>参照)。
しかし、これはちょっと違う。
(視覚野)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%87%8E
「visual cortex)という用語は、V1と略される一次視覚野 (または、線条皮質 (striate cortex、有線皮質とも)) 及びV2、V3、V4、V5と略される外線条皮質 (extrastriate cortex、有線外皮質、有線領外皮質とも) を示す。」
つまりだな、脳に直接イメージを送り込む感じで機能する、全く新しい発想の映像認識なわけだ。
「このようなデバイスの解像度は、最初は古い任天堂のゲームのグラフィックスのように低いですが、いつかは人間の目を超えるかもしれません。」(再掲)
ニューラリンクが目指しているものが何かということは、この一言からうかがい知ることが出来る。
人間の視覚機能の拡張だ。
「テレパシー」の開発が、思考や記憶の拡張につながるように、「ブラインドサイト」は、視覚の拡張を目指している。
眼球や視神経といった「センサー」を置き換え、脳を直接刺激する。
出力系だけではなく、入力系に革命をもたらそうとしている。
ヤバいな・・・。
ヤバ過ぎ!。
ひょっとすると、「視覚」や「聴覚」などというデバイスの分類は、既に意味をなさないかも知れない。
状況認識そのものを、外部化し、増強して取り込む。
人間の脳が、そんなもんを受け入れられるのかどうかは知らない。
しかし、たとえば、浮沈子が知るところのスクーバダイビングの世界では、ダイブコンピューターを持ち込んで、水圧(水深)や潜水時間を認識して状況認識を行っているし、それらを処理してNDL(減圧不要限界)までデータとして取り込んでいる。
それらの情報をどう使うかという点については、もちろん、学習や訓練が必要だけど。
ニューラリンクではないけれど、イーロンXの記事には、もう一つ、興味深い話が出ている。
「テスラがオプティマロボット用に開発中の義肢は、ゲーム『デウスエクス』や『サイバーパンク2077』のように人間にも使用できる日が来るかもしれない。人間の手足よりもうまく機能する可能性さえある。」
SFの世界のように、生身の身体を増強して、怪力を手に入れたりする話なわけだ。
もちろん、人間は既に様々な道具を駆使して身体機能を拡張している。
ブルドーザーとか、クレーンとかを操作したりしてな。
それらをポータブルにして、人間の身体にくっつけ、文字通り、「手足のように」操っていくわけだ。
そのうち、口の中に火炎放射器でも入れて、ゴジラのように火を噴くことが出来るようになるかも知れない。
そうえいば、イーロンマスクの会社が火炎放射器を作っていたような記憶も・・・。
(イーロン・マスク氏、火炎放射器2万個を販売 非難の声も)
https://www.afpbb.com/articles/-/3160951
「トンネル掘削会社ボーリング・カンパニー(Boring Company)が1個500ドル(約5万5000円)で売り出した火炎放射器2万個が完売」
まあ、どうでもいいんですが。
浮沈子の前歯2本は、チタン製の人工歯根を植え込んだ差し歯だし、両眼の水晶体は安物の短焦点レンズに置き換えられている。
肉体改造としては可愛いもんだが、これからは、「リンク」と呼ばれるBCI(ブレインコンピューターインターフェイス)を介して接続されるデバイスが、飛躍的に増大することになる。
べらぼーめ・・・。
まあ、人間の遺伝子を操作して、放射線耐性が高いミュータント(突然変異体)を作ろうなどという話もあるくらいだからな。
つらい筋トレをしたりしないで済むなら、それも一つの選択かも知れない(そういうことかあ?)。
ニューラリンクが何をしようとしているのかについては、おいおい明らかになっていくだろう。
脳は、動物としての人間が、効率的に捕食したり、外敵から身を守ったりするために発達させた神経系だけど、「意識」の座として独自に発達して、とうとう身体を外部化する挙に及んできた。
ゆくゆくは、脳それ自体を外部化しようとするに違いない。
「意識」という、活動自体を外部に移して、「永遠の命」を求めるようになるのかもしれない。
生命とは何かという深遠な問いに対する答えとしては、いささか安直にすぎる回答な気がするんだがな・・・。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
(失明者が感動「光が見えた」 開発進む人工網膜の可能性 /6)
https://mainichi.jp/articles/20220529/k00/00m/040/146000c
「その頃の主治医だった不二門(ふじかど)尚(たかし)・大阪大特任教授(医用工学)に開発中の人工網膜の臨床研究に参加するよう協力を依頼された。」
「脳内では、黒い背景に縦7個、横7個の計49個の白い点によって撮影した物の形が表示される。」
記事は途中で読めなくなるけど、不二門氏の論文を見つけた。
(人工網膜の現状と展望)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpa/26/4/26_97/_pdf/-char/ja
「2. 人工網膜の刺激方式:
1)網膜上刺激方式:
最も有名な
ものは Humayun らが開発した米 Second Sight Medical Products 社の ARGUS II であり、眼鏡状のカメラや情報処理装置などの体外装置と、電極および刺激発生装置を含む眼球への埋植装置で構成される。」
「両者は無線で接続されており、カメラで撮影された外界の画像から処理された情報を埋植装置に伝送し、その情報に従って電流を生成し、各電極に個別に通電する。」
「電力も無線を介して伝えられる。」
「この ARGUS II は 60極の電極を有しており、米国食品医薬品局(FDA)の認可と EU の基準に適合していることを示す CEマークの両方を取得し、世界で 350 人以上の患者に埋植された 。」
ただし、この装置は既にメンテナンスを打ち切られている。
(アルガス人工網膜)
https://en.wikipedia.org/wiki/Argus_retinal_prosthesis
「2020年、Second SightはArgus、後継装置Argus II、脳インプラントOrionに対する技術サポートの提供を停止した。」
リンクされている記事も読んだが、なかなか大変な状況だ。
(彼らのバイオニックアイは現在では時代遅れでサポートされていません)
https://spectrum.ieee.org/bionic-eye-obsolete
「同社の共同創設者グリーンバーグ氏によると、セカンドサイトの長期計画は常に、目を完全にバイパスして視覚野を直接刺激する脳インプラントに軸足を移すことであったという。」
おっと、目指せブラインドサイト(ニューラリンクで開発中の脳インプラント)だな。
「2019年7月18日、セカンドサイトはアーガスの患者に書簡を送り、6人の患者を対象に臨床試験を開始していた失明に対する次世代脳インプラント「オリオン」の開発に道を開くため、網膜インプラント技術を段階的に廃止すると述べた。」
もっとも、オリオンのメンテナンスも、ウィキによれば中止されている。
「イノベーションには失敗はつきものです。 Argus II は革新的なテクノロジーであり、Second Sight による進歩は、バイオニック ビジョン システムを開発している他の企業に道を開く可能性があります。しかし、将来そのようなインプラントを検討している人々にとって、アルガス患者が迷ったまま放置されているという警告は、難しい決断をさらに難しくするかもしれない。」
このほかにも、人工網膜の方式はあるようだ。
「2)網膜下刺激方式」
「Pixium Vision 社の PRIMA の臨床試験結果も報告された 。
「PRIMA で埋植する電極アレイには、直径100 µm の画素が 2 mm のサイズに合計 378 個存在し、厚さも 30 µm しかない。」
「外部電源を必要とせず網膜下に完全に埋め込めるが、外部装置としてはカメラと眼底への投影装置を装備した眼鏡を必要とし、近赤外線を用いて網膜下に埋め込まれた電極アレイに投影する。」
「3)脈絡膜上刺激方式」
「大阪大学、奈良先端大、株式会社ニデックを中心としたグループは、第 3 のデザインである、脈絡膜上刺激方式の研究開発を 2001 年より進めてきた。」
「この方式では、網膜の神経組織に電極アレイを直接接触させる上記 2 方式と異なり、強膜の中にポケットを作成し、多点電極アレイを挿入埋植するものである。」
毎日で紹介されているのは、多分この方式だろう。
「現在までに、慢性臨床試験として 49 極の電極を有するシステムを患者に 1 年間埋植して有効性を確認し、引き続き治験の準備を進めている」
49個の点というところも合致している。
人工視覚の研究は意外に古くから行われている。
「眼球から脳に至る視覚経路を電気刺激することによって擬似的な光覚が得られることは昔から知られており、この擬似光覚をフォスフェンと呼ぶ。」
「失明者の大脳皮質視覚野を電気刺激するとフォスフェンの知覚が得られることはすでに 1930 年頃にはわかっており、網膜の刺激装置のアイディアについても 1950 年代後半に報告がある。」
トレンドは、脳インプラントによる視覚野の刺激だが、人工網膜についても地道な研究が続けられているようだ。
大括りの区分としては、視神経そのものを刺激する方法もあるようだが、これといった話にはぶち当たらなかったな。
不二門氏が研究費を受けているニデックのページに、包括的な人工視覚の話が出ていた。
(人工視覚のポイントを押さえよう)
https://www.nidek.co.jp/company/artificial_sight/about_artificial_sight/point.html
「ポイント1:人工視覚=電気デバイス」
・視覚に関する電気信号をつくる細胞は「視細胞」といい、眼の奥の「網膜」という神経組織にあります。網膜から脳までの神経細胞は主に電気信号によって視覚の情報を伝えていきます。
「ポイント2:医療機器のタイプ=「インプラント」型医療機器」
・人工視覚は、それぞれ役割を持ったいくつかのデバイスからなるシステム型の医療機器です。システムのうち、一部のデバイスは、手術によって眼内や体内に植え込まれ、そのまま留置されます。そして使用時に、体外の他のデバイスと共にシステムとして利用されます。
「ポイント3:人工視覚で回復する視覚 = 光の点のあつまり」
・たとえ生来の視覚と同等ではなくても、人工視覚による視覚の回復によって、患者さんの行動範囲が広がり、独立してできる動作が増えるとすれば、新しい医療機器としての開発と実用化には、大きな意義があることには間違いありません。
「人工視覚の種類」(別のリンクページです。)
1.網膜を刺激するタイプ「網膜刺激型」
●網膜上刺激型
●網膜下刺激型
●脈絡膜上経網膜刺激型(STS方式)
それぞれの方式の詳細は割愛する。
2.視神経を刺激するタイプ「視神経刺激型」
・「視神経」という神経組織は、「神経節細胞」という網膜の出力細胞の、神経線維の束で構成されています。この束は眼球から外へ出ていき、脳の神経細胞と接続しています。
・この視神経の外側から、フィルム状の基板に電極が植え込まれたアレイを巻きつけるカフ型電極タイプや、眼内からワイヤ電極で刺激するタイプの人工視覚が提案されています。
なんか、まだ、研究段階みたいな感じだな。
3.脳を刺激するタイプ「脳刺激型」
・脳の視覚をつかさどる領域「視覚野」を電極アレイで刺激するタイプの
人工視覚です。
・この最終地点をうまく刺激することで、人工的な視覚としての画像を再構築できるのであれば、ネットワークの出発点である眼や、中継地点の神経細胞が障害された状態であっても、最終的に人工的な視覚が成立するのではないか、と考えられます。
脳インプラントが、今や本命な感じだ(未確認)。
「ここで紹介した以外にも、脳の外側膝状体という部位を電気刺激するタイプや、電気刺激ではなく、神経伝達物質を利用して視覚ネットワークを化学的に刺激するタイプ、オプトジェネティクス技術とデバイスを組み合わせたタイプなど」
ニューラリンクが、脳インプラント型の人工視覚デバイスの開発に乗り出しているのは、ぶっちゃけ流行に乗っているだけのような気がする。
人間は、情報の80パーセントを視覚から得ていると言われている。
眼内レンズに入れ替えて、近くの細かい字は虫眼鏡のお世話になっている浮沈子だが(ダイビングしても、ウミウシ見えねー・・・)、いつかは人工視覚のデバイスを埋め込むことになるかも知れないな。
おっと、防水型(水圧にも耐えられるヤツ!)にしてもらわんとな・・・。
ニューラリンクの「テレパシー」(念じるだけで、パソコンの操作が出来る仕掛け)が、人間の脳に「リンク」と呼ばれるデバイスを装着し、パソコン上のチェスの駒を動かして見せた話は既に書いた。
(ニューラリンク:チェスOK)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2024/03/21/9669542
「Neuralinkのヒト臨床試験を受けた半身不随の29歳男性が実際に考えるだけでゲームをプレイする様子がムービーで公開」
この件について、イーロンXでも記事になっているのでリンクしておく。
(Neuralink 脳インプラントを装着した最初の人間のユーザーは興奮して自宅でビデオ ゲームをプレイしています)
https://www.elonx.cz/prvni-lidsky-uzivatel-s-mozkovym-implantatem-neuralinku-je-nadseny-a-doma-s-nim-hraje-videohry/
「私たちはさまざまなことを試し始めました。動きを想像したり、麻痺した手を前後に「動かす」ことを試みたりしました。その後、自動的に動作し始めました。あとはカーソルを移動することを考えるだけで済みました。スター・ウォーズの「フォース」を使うようなもので、モニター上の特定の場所を見つめるだけで、カーソルがそこに移動します。」
「唯一の問題は、プレイを続けるために夜間にニューラルインターフェイスを充電しなければならないことでした。 8時間ほどプレイし、その後しばらく充電してプレイを続けました。私は今、このインターフェースを使って日本語とフランス語も勉強しています。」
「今年は間違いなく『X-MEN』のプロフェッサーXになるよ、ぴったりだからね。彼は車椅子に乗っていて、私と同じように念力を持っています。」
動物実験に対する批判が絶えないニューラリンクだが、こういう明るい前向きな話を聞くとホッとするな。
今のところ、大きな副作用もなく、快適に使えているような感じだ。
で、記事の中で、視覚障害を負ったサルの視覚を回復させる仕掛けの話が出てきた。
「Neuralink の次の製品は、Blindsight と呼ばれる視覚インプラント、つまりおそらく「ブラインド ビジョン」となるでしょう。それは実験用サルではすでに機能しています。」
「このようなデバイスの解像度は、最初は古い任天堂のゲームのグラフィックスのように低いですが、いつかは人間の目を超えるかもしれません。」
数日前に別記事になっている。
(イーロン・マスク氏、視力を回復できるニューラリンクの新プロジェクトを明かし、「インプラントはすでにサルで効果を発揮している」と語る)
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-13227927/Elon-Musk-reveals-Neuralinks-new-project-restore-sight-says-implant-working-monkeys.html
「イーロン・マスクは、生まれつき目が見えない人々に視覚を与えるという別のニューラリンク・プロジェクトが進行中であることを何気なく漏らした。」
「その技術はすでにサルでテストされている。」
「デジタルカメラのデータを、視覚野に直接送信できる電気インパルスに再パッケージ化できる」
「自社の次のサイボーグインプラントは失明に取り組むものだ」(写真のキャプションより)
「最初は今年 1 月下旬、そして今週水曜日に再度、マスク氏は自身の先見性のある視覚インプラントがすでにテストされていると明らかにした。」(同上)
カメラから網膜に信号を送り込んで映像を認識させようという試みは、これまでにもあった(<以下追加>参照)。
しかし、これはちょっと違う。
(視覚野)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%87%8E
「visual cortex)という用語は、V1と略される一次視覚野 (または、線条皮質 (striate cortex、有線皮質とも)) 及びV2、V3、V4、V5と略される外線条皮質 (extrastriate cortex、有線外皮質、有線領外皮質とも) を示す。」
つまりだな、脳に直接イメージを送り込む感じで機能する、全く新しい発想の映像認識なわけだ。
「このようなデバイスの解像度は、最初は古い任天堂のゲームのグラフィックスのように低いですが、いつかは人間の目を超えるかもしれません。」(再掲)
ニューラリンクが目指しているものが何かということは、この一言からうかがい知ることが出来る。
人間の視覚機能の拡張だ。
「テレパシー」の開発が、思考や記憶の拡張につながるように、「ブラインドサイト」は、視覚の拡張を目指している。
眼球や視神経といった「センサー」を置き換え、脳を直接刺激する。
出力系だけではなく、入力系に革命をもたらそうとしている。
ヤバいな・・・。
ヤバ過ぎ!。
ひょっとすると、「視覚」や「聴覚」などというデバイスの分類は、既に意味をなさないかも知れない。
状況認識そのものを、外部化し、増強して取り込む。
人間の脳が、そんなもんを受け入れられるのかどうかは知らない。
しかし、たとえば、浮沈子が知るところのスクーバダイビングの世界では、ダイブコンピューターを持ち込んで、水圧(水深)や潜水時間を認識して状況認識を行っているし、それらを処理してNDL(減圧不要限界)までデータとして取り込んでいる。
それらの情報をどう使うかという点については、もちろん、学習や訓練が必要だけど。
ニューラリンクではないけれど、イーロンXの記事には、もう一つ、興味深い話が出ている。
「テスラがオプティマロボット用に開発中の義肢は、ゲーム『デウスエクス』や『サイバーパンク2077』のように人間にも使用できる日が来るかもしれない。人間の手足よりもうまく機能する可能性さえある。」
SFの世界のように、生身の身体を増強して、怪力を手に入れたりする話なわけだ。
もちろん、人間は既に様々な道具を駆使して身体機能を拡張している。
ブルドーザーとか、クレーンとかを操作したりしてな。
それらをポータブルにして、人間の身体にくっつけ、文字通り、「手足のように」操っていくわけだ。
そのうち、口の中に火炎放射器でも入れて、ゴジラのように火を噴くことが出来るようになるかも知れない。
そうえいば、イーロンマスクの会社が火炎放射器を作っていたような記憶も・・・。
(イーロン・マスク氏、火炎放射器2万個を販売 非難の声も)
https://www.afpbb.com/articles/-/3160951
「トンネル掘削会社ボーリング・カンパニー(Boring Company)が1個500ドル(約5万5000円)で売り出した火炎放射器2万個が完売」
まあ、どうでもいいんですが。
浮沈子の前歯2本は、チタン製の人工歯根を植え込んだ差し歯だし、両眼の水晶体は安物の短焦点レンズに置き換えられている。
肉体改造としては可愛いもんだが、これからは、「リンク」と呼ばれるBCI(ブレインコンピューターインターフェイス)を介して接続されるデバイスが、飛躍的に増大することになる。
べらぼーめ・・・。
まあ、人間の遺伝子を操作して、放射線耐性が高いミュータント(突然変異体)を作ろうなどという話もあるくらいだからな。
つらい筋トレをしたりしないで済むなら、それも一つの選択かも知れない(そういうことかあ?)。
ニューラリンクが何をしようとしているのかについては、おいおい明らかになっていくだろう。
脳は、動物としての人間が、効率的に捕食したり、外敵から身を守ったりするために発達させた神経系だけど、「意識」の座として独自に発達して、とうとう身体を外部化する挙に及んできた。
ゆくゆくは、脳それ自体を外部化しようとするに違いない。
「意識」という、活動自体を外部に移して、「永遠の命」を求めるようになるのかもしれない。
生命とは何かという深遠な問いに対する答えとしては、いささか安直にすぎる回答な気がするんだがな・・・。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
(失明者が感動「光が見えた」 開発進む人工網膜の可能性 /6)
https://mainichi.jp/articles/20220529/k00/00m/040/146000c
「その頃の主治医だった不二門(ふじかど)尚(たかし)・大阪大特任教授(医用工学)に開発中の人工網膜の臨床研究に参加するよう協力を依頼された。」
「脳内では、黒い背景に縦7個、横7個の計49個の白い点によって撮影した物の形が表示される。」
記事は途中で読めなくなるけど、不二門氏の論文を見つけた。
(人工網膜の現状と展望)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpa/26/4/26_97/_pdf/-char/ja
「2. 人工網膜の刺激方式:
1)網膜上刺激方式:
最も有名な
ものは Humayun らが開発した米 Second Sight Medical Products 社の ARGUS II であり、眼鏡状のカメラや情報処理装置などの体外装置と、電極および刺激発生装置を含む眼球への埋植装置で構成される。」
「両者は無線で接続されており、カメラで撮影された外界の画像から処理された情報を埋植装置に伝送し、その情報に従って電流を生成し、各電極に個別に通電する。」
「電力も無線を介して伝えられる。」
「この ARGUS II は 60極の電極を有しており、米国食品医薬品局(FDA)の認可と EU の基準に適合していることを示す CEマークの両方を取得し、世界で 350 人以上の患者に埋植された 。」
ただし、この装置は既にメンテナンスを打ち切られている。
(アルガス人工網膜)
https://en.wikipedia.org/wiki/Argus_retinal_prosthesis
「2020年、Second SightはArgus、後継装置Argus II、脳インプラントOrionに対する技術サポートの提供を停止した。」
リンクされている記事も読んだが、なかなか大変な状況だ。
(彼らのバイオニックアイは現在では時代遅れでサポートされていません)
https://spectrum.ieee.org/bionic-eye-obsolete
「同社の共同創設者グリーンバーグ氏によると、セカンドサイトの長期計画は常に、目を完全にバイパスして視覚野を直接刺激する脳インプラントに軸足を移すことであったという。」
おっと、目指せブラインドサイト(ニューラリンクで開発中の脳インプラント)だな。
「2019年7月18日、セカンドサイトはアーガスの患者に書簡を送り、6人の患者を対象に臨床試験を開始していた失明に対する次世代脳インプラント「オリオン」の開発に道を開くため、網膜インプラント技術を段階的に廃止すると述べた。」
もっとも、オリオンのメンテナンスも、ウィキによれば中止されている。
「イノベーションには失敗はつきものです。 Argus II は革新的なテクノロジーであり、Second Sight による進歩は、バイオニック ビジョン システムを開発している他の企業に道を開く可能性があります。しかし、将来そのようなインプラントを検討している人々にとって、アルガス患者が迷ったまま放置されているという警告は、難しい決断をさらに難しくするかもしれない。」
このほかにも、人工網膜の方式はあるようだ。
「2)網膜下刺激方式」
「Pixium Vision 社の PRIMA の臨床試験結果も報告された 。
「PRIMA で埋植する電極アレイには、直径100 µm の画素が 2 mm のサイズに合計 378 個存在し、厚さも 30 µm しかない。」
「外部電源を必要とせず網膜下に完全に埋め込めるが、外部装置としてはカメラと眼底への投影装置を装備した眼鏡を必要とし、近赤外線を用いて網膜下に埋め込まれた電極アレイに投影する。」
「3)脈絡膜上刺激方式」
「大阪大学、奈良先端大、株式会社ニデックを中心としたグループは、第 3 のデザインである、脈絡膜上刺激方式の研究開発を 2001 年より進めてきた。」
「この方式では、網膜の神経組織に電極アレイを直接接触させる上記 2 方式と異なり、強膜の中にポケットを作成し、多点電極アレイを挿入埋植するものである。」
毎日で紹介されているのは、多分この方式だろう。
「現在までに、慢性臨床試験として 49 極の電極を有するシステムを患者に 1 年間埋植して有効性を確認し、引き続き治験の準備を進めている」
49個の点というところも合致している。
人工視覚の研究は意外に古くから行われている。
「眼球から脳に至る視覚経路を電気刺激することによって擬似的な光覚が得られることは昔から知られており、この擬似光覚をフォスフェンと呼ぶ。」
「失明者の大脳皮質視覚野を電気刺激するとフォスフェンの知覚が得られることはすでに 1930 年頃にはわかっており、網膜の刺激装置のアイディアについても 1950 年代後半に報告がある。」
トレンドは、脳インプラントによる視覚野の刺激だが、人工網膜についても地道な研究が続けられているようだ。
大括りの区分としては、視神経そのものを刺激する方法もあるようだが、これといった話にはぶち当たらなかったな。
不二門氏が研究費を受けているニデックのページに、包括的な人工視覚の話が出ていた。
(人工視覚のポイントを押さえよう)
https://www.nidek.co.jp/company/artificial_sight/about_artificial_sight/point.html
「ポイント1:人工視覚=電気デバイス」
・視覚に関する電気信号をつくる細胞は「視細胞」といい、眼の奥の「網膜」という神経組織にあります。網膜から脳までの神経細胞は主に電気信号によって視覚の情報を伝えていきます。
「ポイント2:医療機器のタイプ=「インプラント」型医療機器」
・人工視覚は、それぞれ役割を持ったいくつかのデバイスからなるシステム型の医療機器です。システムのうち、一部のデバイスは、手術によって眼内や体内に植え込まれ、そのまま留置されます。そして使用時に、体外の他のデバイスと共にシステムとして利用されます。
「ポイント3:人工視覚で回復する視覚 = 光の点のあつまり」
・たとえ生来の視覚と同等ではなくても、人工視覚による視覚の回復によって、患者さんの行動範囲が広がり、独立してできる動作が増えるとすれば、新しい医療機器としての開発と実用化には、大きな意義があることには間違いありません。
「人工視覚の種類」(別のリンクページです。)
1.網膜を刺激するタイプ「網膜刺激型」
●網膜上刺激型
●網膜下刺激型
●脈絡膜上経網膜刺激型(STS方式)
それぞれの方式の詳細は割愛する。
2.視神経を刺激するタイプ「視神経刺激型」
・「視神経」という神経組織は、「神経節細胞」という網膜の出力細胞の、神経線維の束で構成されています。この束は眼球から外へ出ていき、脳の神経細胞と接続しています。
・この視神経の外側から、フィルム状の基板に電極が植え込まれたアレイを巻きつけるカフ型電極タイプや、眼内からワイヤ電極で刺激するタイプの人工視覚が提案されています。
なんか、まだ、研究段階みたいな感じだな。
3.脳を刺激するタイプ「脳刺激型」
・脳の視覚をつかさどる領域「視覚野」を電極アレイで刺激するタイプの
人工視覚です。
・この最終地点をうまく刺激することで、人工的な視覚としての画像を再構築できるのであれば、ネットワークの出発点である眼や、中継地点の神経細胞が障害された状態であっても、最終的に人工的な視覚が成立するのではないか、と考えられます。
脳インプラントが、今や本命な感じだ(未確認)。
「ここで紹介した以外にも、脳の外側膝状体という部位を電気刺激するタイプや、電気刺激ではなく、神経伝達物質を利用して視覚ネットワークを化学的に刺激するタイプ、オプトジェネティクス技術とデバイスを組み合わせたタイプなど」
ニューラリンクが、脳インプラント型の人工視覚デバイスの開発に乗り出しているのは、ぶっちゃけ流行に乗っているだけのような気がする。
人間は、情報の80パーセントを視覚から得ていると言われている。
眼内レンズに入れ替えて、近くの細かい字は虫眼鏡のお世話になっている浮沈子だが(ダイビングしても、ウミウシ見えねー・・・)、いつかは人工視覚のデバイスを埋め込むことになるかも知れないな。
おっと、防水型(水圧にも耐えられるヤツ!)にしてもらわんとな・・・。
🐱スターライナー:B社と期待 ― 2024年03月26日 20:50
スターライナー:B社と期待
(スターライナーの初代機長「乗組員試験飛行に完璧を期待してはいけない」)
https://arstechnica.com/space/2024/03/despite-turbulence-at-boeing-astronauts-are-ready-to-fly-companys-starliner/
「4月30日遅く、ウィルモアとウィリアムズは青一色の耐圧服を着てスターライナーに乗り込み、5月1日東部夏時間午前12時55分(協定世界時4時55分)の打ち上げに備えます。」
CFTの打ち上げ予定時刻がフィックスしたようだ。
「このマイルストーンは、ボーイング社がNASAから42億ドルの民間乗組員契約を獲得した際に達成できるとしていた予定より7年遅れている。十年前。」
そう、2014年、B社はS社と共に、ISSタクシーの契約をゲットした。
(宇宙タクシー)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/09/16/7436282
「NASAが調達する宇宙タクシーの開発が大詰めを迎えているという。」
「スペースXとボーイング(画像参照)が、宇宙タクシーに選定される公算が高いといわれている。」
(結果)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/09/17/7437049
「NASAは、モックアップしか出来ていないボーイングを、宇宙タクシーの主契約社の一つに選定した(42億ドル)。」
「スペースX社は、おこぼれを預かるに留まる(26億ドル)。」
当初、2社が平等に受注したという感じは持たなかったので、こういう記述になっている。
「どちらが先に打ち上げられるかはまだ分からないが、初打ち上げは2017年とされている。」
まさか、2024年になってもスターライナーの有人飛行が行われていないなどとは、この時には夢にも思わなかった。
(宇宙タクシー2)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/09/18/7437856
「両社は、対等に次のフェーズであるCCtCap(Commercial Crew Transportation Capability)に進んだのである。」
「分かりにくい契約だが、認定前に1回のISSへの有人飛行を行い、認定後に2回から6回の有人飛行を行うということだな。」
「その込み込みの契約をゲットしたということだ。」
「CST-100:射場での試験を2016年、無人試験飛行を2017年の前半、有人試験飛行を2017年中ごろに行う予定だ。」
冒頭のスティーブンクラークの記事で、「7年遅れ」というのは、このことを指している。
今思えば、3年足らずで無人飛行を行い、その年に有人飛行を行うという自信満々のスケジュールだったことが分かる。
やれやれ・・・。
「開発プロセスではボーイングが先行している。ボーイングのCST-100はこの7月に最終設計審査(CDR)と安全性に関する審査のフェーズ2を終了している。スペース Xは今後の数カ月で、こうした審査を通過する必要がある。」
もっとも、S社の開発も遅れた。
「ドラゴン V2:2015年(来年だぜ!)には有人試験飛行を行うとしている。」
まあ、この会社のスケジュールにどれ程のリアリティーを求めるかについては、大いに議論があっていい。
ドラゴン2の打ち上げは、無人は2019年、有人は5年遅れの2020年だった。
当初予定からの遅延という観点からみれば、B社の7年遅れと比べて、有人に限ってはそれ程極端な差があるわけではない。
当初はB社がやや先行していたことを考慮しても、開発力の差はビミョーだ。
OFT-1の失敗(2年遅れ)、OFT-2のバルブ固着による大幅な延期(1年遅れ)が痛いな。
タラレバの話には意味がないけど、その2つがなければこれほどの差(4年間)はつかなかったに違いない。
クルードラゴンにも、チタンバルブが原因の爆発事故とか、パラシュート(当初はカプセルもパワードランディングを想定)で苦労したこととかあったが、その辺りは両社とも似たり寄ったりだ。
どの程度あったかは不明だが、両社を監督する立場のNASAチームの違いが影響した可能性もある。
宇宙機の開発に実績があるB社に対して手抜きがあったとは言わないけど、S社と同じと言われても信じる気にはなれない。
まあいい。
過去は過去。
指の間からこぼれてしまった10年を嘆いても仕方ない。
「彼らはスターライナーを国際宇宙ステーションに飛ばし、少なくとも8日間滞在し、その後カプセルをパラシュート支援とエアバッグクッションで米国西部、おそらくニューメキシコ州ホワイトサンズに着陸させる予定だ。」(アルス:以下同じ)
記事では航空部門の話も出てくるけど、B社の社内文化はともかくとして、実質的には直接影響はないだろう。
「ボーイングは民間航空機事業を宇宙船や軍用機を製造する部門とは別の部門として運営している。しかし同社は以前にも、これらの無関係なプログラムをひとまとめにしようとしたことがある。」
「エンジニアリングの専門知識、開発プログラムのベストプラクティス、ボーイング社全体のプログラム管理と統合を最も重要な開発活動にさらに効果的に適用」
経営上の問題と、宇宙船の開発は区別されるべきだ。
必要なコストは投じられなければならない。
非常に厳しい環境で運用される機体は、物理の神様の直接の管理下にある。
B社のCEOは、そのしもべに過ぎない。
幸運の女神がいつも微笑んでくれるとは限らんからな。
「宇宙飛行士たちはスターライナーの安全性に自信を持っているが、このミッションの目的は、ボーイングとNASAが宇宙船の運用開始を宣言する前に問題を解決することである。」
「これは試験飛行です。宇宙で飛行して操作するのは大変です。本当に大変です。私たちは何かを見つけるつもりです。それは予想通りです。この宇宙船の全機能を統合する最初の飛行です。」
「メディアの期待は完璧であってはなりません」
そうは言っても、このCFTで重大な不具合が見つかり、その改修に想定外の時間と費用が掛かる事態になれば、状況は極めて困難になる。
「私の観点からすると、これまでのところ、私たちはすべてを調べてきたように思えます。私たちは多くの場合、独立した分析を行っており、着陸荷重に関して(SpaceXの)ドラゴンについても同じことを行っています」(NASAの商業乗組員プログラムマネージャーのスティーブ・スティッチ氏)
「パフォーマンスの中止、ランデブーやドッキングなど、あらゆる種類のことです。」(同上)
「我々は人々を横に並べてテープを検査し、テープを剥がした後に配線を検査し、それが適切に行われたことを確認しました。パラシュートでも同じことです。つまり、プロセスは航空とは少し異なります」
「私たちが話しているのは、複数のミッションを飛行する2機の宇宙船です。そのため、それらの宇宙船1台1台に多くの個別のケアと栄養が注がれており、NASAはボーイングと肩を並べています。」
絶縁テープが可燃性材料であったこと、パラシュートの紐に強度的欠陥があったことについては、さらに1年近くの遅れをもたらし、クルードラゴンとの差は決定的になった。
「NASAもスターライナーの打ち上げ中止システムの独立した分析を完了しているが、パラシュートと同様に、NASAのこのシステムの承認は4月までに最終決定する予定だとシュティッチ氏は述べた。」
この記述を見ると、アボートシステムについても何か懸念があったようだ(未確認)。
「チーフエンジニアたちは今、まさにそのような質問をするために、自分の専門分野のすべてに真剣に取り組んでいます。何か見落としていませんか?何か心配していますか?もう少し取り組む必要がある分野があると思いますか?」(スティッチ氏)
あと1か月余りで、10年以上の開発期間を要したスターライナーが人間を乗せて初飛行する。
NASAにとっては想定外の事態になった。
当初の見込みでは、たぶん、B社が先んじて運用を開始し、チャレンジャーのS社が追い付くのを待つはずだったに違いない。
しかし、NASAは、結果的に2系統のISSタクシーを手に入れたことになる。
ここまで手がかかるとは思っていなかったろうが、あと6年でお払い箱にするというのはもったいない気がしないでもない。
ISS後継の民間宇宙ステーションへの人員輸送に、バックアップとしてキープしておきたいところだろうが、なにせコスパが悪いからな。
打ち上げに使われるロケットも、バルカンロケットを有人用に認定し直さなければならない(アトラスVはもう飛ばないしな)。
使い続けるには、さらに金がかかるだろうが、NASAはどーするんだろうな・・・。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
(ボーイングとNASA、スターライナーによる宇宙ステーションへの初の有人飛行は5月1日を目指す)
https://spaceflightnow.com/2024/03/26/boeing-nasa-target-may-1-for-first-crewed-flight-of-starliner-to-the-space-station/
「スターライナーのすごいところは、まさにパイロットの宇宙船であるということです。本当に機動性が高いです」とラマーズ氏は語った。 「そこには50機近くの反応制御ジェットと軌道操縦ジェットがあり、スティックもあります。そして本当に素晴らしいのは、パイロットである宇宙飛行士がいると、彼らは本当にそれを使いたがるということです。」
手動操縦の快適さを自慢しても始まらないような気がするんだがな。
「この車両には素晴らしい飛行手がかりがあります。私も何度もシミュレーターに参加して自分で操縦しましたが、この車両は手動でドッキングできますが、それはプライムモードではありません。主要なモードは、vesta ランデブー センサー システムを使用して自動モードで実際に飛行することです。」
まあ、自動操縦が基本だ。
「ボーイングは、2010 年に NASA によって民間乗組員育成ラウンド 1 (CCDev1) の資金提供のために選ばれた 5 社のうちの 1 社でした。同庁は米国復興再投資法(ARRA)を通じて受け取った約5000万ドルのうち、この宇宙法協定を通じてボーイングに1800万ドルを投資した。」
「続いて 2011 年に CCDev2 がボーイングに 9,230 万ドルを与え、SpaceX に 7,500 万ドルの最初の資金提供を提供しました。他の2社、ブルー・オリジンとシエラ・ネバダ・コーポレーションは、それぞれ2,200万ドルと8,000万ドルを受け取った。」
「2012年から2014年にかけての追加の開発賞により、ボーイングのスターライナーとスペースXのクルードラゴンの総資金はそれぞれ48億2000万ドルと31億4400万ドルとなった。」
最初期からの通算では、14年の開発期間ということになる。
「OFT は準軌道ミッションとなり、ボーイングと NASA は機体を徹底的に調査」
「準軌道」とあるが、ISSには到着できなかったが、軌道自体は周回軌道に達してたような気がするんだがな(<さらに追加>参照)。
まあいい。
「そのうちの1つは、生命維持システムの不均衡でした。カプセル内に体温を供給して平衡状態を作り出す人間が搭乗していなかったために、温度調節システムのコイルの 1 つがカプセルを過冷却してしまいました。」
「当社の熱制御システムでは、ループの 1 つに氷が付着していました。そして実際には、おそらく乗組員が乗っていなかったことが原因だろう」とボーイングのスターライナープログラム担当副社長兼プログラムマネージャーのマーク・ナッピ氏は語った。 「私たちはその問題に対処し、この最後のフローでいくつかの変更を加えて、同じことが二度と起こらないようにしました。したがって、次の飛行で私たちが焦点を当てるのは、乗組員が搭乗するミッション中に環境がどのように制御されるかということです。」
温度調節の不具合というのは、生命維持システム絡みだったわけだ。
やれやれ・・・。
「ボーイングは宇宙ステーション自体の大部分を設計し、建設しました。彼らは私たちの主要な維持者であり、彼らが構築したすべての機器の安全性に加えて、宇宙船全体の統合された安全性にも責任を負っています」
「したがって、私たちが話している、有人宇宙飛行のために私たちが一緒に使用しているプロセスは以前から存在していました…ボーイングが有人宇宙飛行の安全性を扱うのはこれが初めてではありません。」
ISSの管理をB社が実質的に行っていることは周知だが、それがスターライナーの建造に当たって役立っているとは思えないな。
そうだとすれば、ISSの管理自体にも不安が残る。
まあ、どうでもいいんですが。
「4月10日頃、彼らはこの車両をSLC-41のパッドに展開し、アトラス5ロケットと結合する予定」
長い道のりの一つの到達点ではある。
この道がどこまで続いているかは、また、別の問題だがな・・・。
<さらに追加>ーーーーーーーーーー
(ボーイングの軌道飛行試験)
https://en.wikipedia.org/wiki/Boeing_Orbital_Flight_Test
「軌道パラメータ:
参照系 地心軌道
政権 地球低軌道
近地点高度 187km
遠地点高度 222km
傾斜 51.63°
期間 90.00分」
OFT-1の軌道パラメーターを見ると、高度的に不十分で、上層大気の抗力で再突入することになるが、一応、近地点高度はクリアしているし、2日間周回もしているわけだからな。
弾道軌道ではない。
「スターライナーが 187 km × 222 km (116 マイル × 138 マイル) の軌道に乗ったことが確認された。」
ちょっと気になる記述もある。
「ミッション終了後、飛行中に別の重大なソフトウェアのバグが発見され、分離後にサービスモジュールがスターライナーに衝突する可能性があることが明らかになった。このバグはカプセルが再突入する2時間前に修正された。このバグが発見され修正されていなかったら、スターライナーが損傷し、安全な着陸が妨げられた可能性があります。」
この話は浮沈子も認識していたんだが、問題は次だ・・・。
「さらに、最初の異常が発生していなければ、2 番目の異常は検出されなかったであろうことが判明しました。」
(ボーイングとNASA、スターライナーのミッションにおける複数の異常を認める)
https://www.nasaspaceflight.com/2020/02/boeing-nasa-admit-multiple-anomalies-starliner-mission/
「極めて注目すべき点は、NASA が、地上管制官が介入していなければ、両方のソフトウェアの問題により「車両の損失」が発生していたと直接述べたことです。」
「ミッション経過タイマーに関する最初の問題を取り巻く状況は文書化されていますが、木曜日の午後にできるだけ早く明らかになったのは、2 番目の重大なソフトウェア コーディング エラーでした。」
「ボーイング社のジム・チルトン氏が、ミッション経過タイマーに関する最初の問題が発生していなければ、2番目のソフトウェアの問題を発見することはなかったと認めた」
「2つ目のソフトウェアの問題は、スターライナーが大気圏に再突入しようとして破壊されるほんの数時間前に発見された」
やれやれ・・・。
結果的に、最初のトラブルであるタイマーのずれがあったことで、B社はこの機体(カリプソ)を失わずに済んだことになる。
記事を読むと、2つ目のトラブルの評価についてはすったもんだしているけど、ソフトウェアを再突入直前に差し替えるという「緊急措置」をとったということは、それなりのリスクがあって放置できないという評価をしたからに他ならない。
そもそも、差し替えたソフトの完全性の検証も十分にしていないわけだから、ほとんど「一か八か」のギャンブルなわけだ。
差し替えそのものにも、リスクがあったわけだ。
差し替えずにそのまま突入させれば、機体が失われることが確実な状況でなければそんなことはしないだろう。
まあ、どうでもいいんですが。
根本原因が、不十分な地上テストにあったことは間違いない。
ミスを発見できなかった原因は、確かにそこにある。
見逃したミスが、致命的なトラブルにつながり、不幸中の幸いで、辛くも難を逃れた形になっただけだ。
OFT-1は、B社の開発態勢に多くの疑問を投げかけてた。
その後のトラブルの数々もまた、B社自身に起因する。
定額契約が背景にあったかどうかは知らない。
コストプラス契約だったら、要素テストや統合テストに時間も金も人手もかけて、たっぷりと地上テストを行ったかもしれない(その方が儲かるしな)。
つまり、B社は手抜きをしていたことになる。
CFTは、その契約の中で行われる。
「NASAはまた、民間乗組員プログラムに関するボーイングの取り組みの組織的安全性評価を開始すると述べた。」
「・・・目的は、宇宙飛行士とのミッションに先立ち、民間乗組員プロバイダーとの職場文化を調査することです。」
適正な調査が行われ、十分な対策が施されていることを願うばかりだな・・・。
<さらにさらに追加>ーーーーーーーーーー
(ボーイングのスターライナーは若干遅れたが、進水準備は整っている)
https://www.teslarati.com/boeings-starliner-slightly-delayed-but-ready-for-launch/
「前回のスペースシャトルミッションであるSTS-135以来、打ち上げ後にヒューストンが管制する初めてのミッション」(STS-135:アトランティスによるスペースシャトル最後のミッション)
「システムにはデータから伝送システムへの接続が欠けていると述べ、上昇中およびISSへの輸送中にカプセルからのライブビデオは配信されないと述べた。録画されたビデオは、カプセルがドッキングされた後にダウンリンクされます。」(スターライナーのランデブー飛行責任者のエド・ヴァン・シーズ氏)
なんだ、船内の生中継は無しか・・・。
まあいい。
「契約では6回の飛行が必要で、アトラスVが退役したため、スターライナーを打ち上げるための(互換性のある)人間評価ロケットは現在他に存在せず、NASAがボーイングとの契約を延長したい場合、ULAはそれを行う必要があるだろう。バルカンでスターライナーを打ち上げる承認を得る。」
つまり、バルカンが有人の承認を得るかどうかは、NASA次第ということになる。
B社は、どこも金を出さなければ、スターライナーを損切りするつもりということだ(そうなのかあ?)。
ISSの後継機が民営化され、NASAが顧客として利用することになった場合、そのアクセスを冗長化したければ、バルカンを有人ロケットとして認可しなければならない。
全く別物のロケットだから、スターライナーとの適合性は不明だ(ちっとは配慮してるかも:未確認)。
ULA自体が売却される運命と報じられており(買い手はブルーオリジンと言われている)、先々は不透明だ。
場合によっては、NASAの要請に応じない可能性もある。
スターライナーは、不幸な星の下に生まれた。
こんだけケチが付いた開発も珍しいだろう。
ライバルのクルードラゴンに比べて、運用コストは高く(少なくとも、ロケットは使い捨てで割高だからな)、実績もない。
運用していく中で、新たな問題が発見されれば、それに対するコストも上積みされる。
クルードラゴンも、耐熱塗料(アブレーター)の問題やトイレの配管の外れの問題に直面した(どのように対応したかは未確認)。
今現在の状況は不明だが、S社のことだから、ちまちまと改修を続けているに違いない。
B社は、運用に支障がなければ、そのまま放置するかもしれない。
NASAが有人宇宙船としての認定を取り消せば、そのまま引退だ。
二度と有人宇宙船を作ろうなどとは考えないに違いない。
こりごりだ・・・。
が、開発過程や運用コストが割高なことと、宇宙船の出来上がり自体は別物だ。
有人機だからな。
安全性はもちろん、乗り心地や使い勝手の問題もある。
クルードラゴンは、スペースシャトルに比べて振動が大きいという話だった。
スターライナーはどうだったんだろう?。
無人での打ち上げでは、ロージー(ザロケッティア)と名付けられたダミーの人形が乗せられていたと記憶している。
乗せられたことは報じられているが、それによって計測されたデータの評価とかは、余りニュースにはならないようだ(未確認)。
まあ、どうでもいいんですが。
浮沈子は、せっかく作った宇宙船を、お払い箱にしちまうのはもったいない気もするんだが、考えてみれば、アポロとかは1度限りの使用だったからな。
2号機(名称未定)とカリプソ(3号機)の2機が制作されている。
CFTを含めても、有人では最大4回しか使われない(無人テストを含めても5回:カリプソのみ)。
設計では、最大10回の再使用が想定されているようだからな。
やっぱ、もったいないな・・・。
<また追加>ーーーーーーーーーー
(ボーイングの新型宇宙船「スターライナー」有人飛行試験は2024年5月6日以降に実施)
https://sorae.info/space/20240403-starliner.html
「NASAによると、StarlinerのCFTは早ければアメリカの現地時間2024年5月6日に打ち上げが実施される予定」
5日ほど後ろにずれ込んだ感じだ。
「CFTに先立ち、ISSでは2024年3月23日に到着した無人補給船「Cargo Dragon(カーゴドラゴン)」の出発や、有人宇宙飛行ミッション「Crew-8(クルー8)」のCrew Dragon宇宙船を現在係留中のドッキングポートから別のドッキングポートに移動させるなど、Starlinerの到着に備えた準備が進められます。」
画像を見ると、7機の宇宙機がこれでもかと言わんばかりに接続している。
プログレスとかは関係ないけど、クルードラゴンが接続しているハーモニーモジュールの前方を。空けないとな。
斜陽になったとはいえ、B社の手掛けた宇宙船が有人デビューする日が近づいている。
それは、一つの時代の始まりであると同時に、これまで刻んできた歴史の一部が幕引きを迎えることでもある。
ロッキードマーチンが作ったアトラスの後継であるバルカンには、デルタシリーズに関わったB社の影はない。
ULAが売りに出て、デルタ4ヘビーが最後の打ち上げを迎え、蹉跌を繰り返したスターライナーが難産の末、有人で飛ぶ。
民間航空機業界の巨人は、そっちの方でもケチが付きまくってるしな。
おっと、そういえば、オスプレイもB社だったっけ・・・。
(スターライナーの初代機長「乗組員試験飛行に完璧を期待してはいけない」)
https://arstechnica.com/space/2024/03/despite-turbulence-at-boeing-astronauts-are-ready-to-fly-companys-starliner/
「4月30日遅く、ウィルモアとウィリアムズは青一色の耐圧服を着てスターライナーに乗り込み、5月1日東部夏時間午前12時55分(協定世界時4時55分)の打ち上げに備えます。」
CFTの打ち上げ予定時刻がフィックスしたようだ。
「このマイルストーンは、ボーイング社がNASAから42億ドルの民間乗組員契約を獲得した際に達成できるとしていた予定より7年遅れている。十年前。」
そう、2014年、B社はS社と共に、ISSタクシーの契約をゲットした。
(宇宙タクシー)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/09/16/7436282
「NASAが調達する宇宙タクシーの開発が大詰めを迎えているという。」
「スペースXとボーイング(画像参照)が、宇宙タクシーに選定される公算が高いといわれている。」
(結果)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/09/17/7437049
「NASAは、モックアップしか出来ていないボーイングを、宇宙タクシーの主契約社の一つに選定した(42億ドル)。」
「スペースX社は、おこぼれを預かるに留まる(26億ドル)。」
当初、2社が平等に受注したという感じは持たなかったので、こういう記述になっている。
「どちらが先に打ち上げられるかはまだ分からないが、初打ち上げは2017年とされている。」
まさか、2024年になってもスターライナーの有人飛行が行われていないなどとは、この時には夢にも思わなかった。
(宇宙タクシー2)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/09/18/7437856
「両社は、対等に次のフェーズであるCCtCap(Commercial Crew Transportation Capability)に進んだのである。」
「分かりにくい契約だが、認定前に1回のISSへの有人飛行を行い、認定後に2回から6回の有人飛行を行うということだな。」
「その込み込みの契約をゲットしたということだ。」
「CST-100:射場での試験を2016年、無人試験飛行を2017年の前半、有人試験飛行を2017年中ごろに行う予定だ。」
冒頭のスティーブンクラークの記事で、「7年遅れ」というのは、このことを指している。
今思えば、3年足らずで無人飛行を行い、その年に有人飛行を行うという自信満々のスケジュールだったことが分かる。
やれやれ・・・。
「開発プロセスではボーイングが先行している。ボーイングのCST-100はこの7月に最終設計審査(CDR)と安全性に関する審査のフェーズ2を終了している。スペース Xは今後の数カ月で、こうした審査を通過する必要がある。」
もっとも、S社の開発も遅れた。
「ドラゴン V2:2015年(来年だぜ!)には有人試験飛行を行うとしている。」
まあ、この会社のスケジュールにどれ程のリアリティーを求めるかについては、大いに議論があっていい。
ドラゴン2の打ち上げは、無人は2019年、有人は5年遅れの2020年だった。
当初予定からの遅延という観点からみれば、B社の7年遅れと比べて、有人に限ってはそれ程極端な差があるわけではない。
当初はB社がやや先行していたことを考慮しても、開発力の差はビミョーだ。
OFT-1の失敗(2年遅れ)、OFT-2のバルブ固着による大幅な延期(1年遅れ)が痛いな。
タラレバの話には意味がないけど、その2つがなければこれほどの差(4年間)はつかなかったに違いない。
クルードラゴンにも、チタンバルブが原因の爆発事故とか、パラシュート(当初はカプセルもパワードランディングを想定)で苦労したこととかあったが、その辺りは両社とも似たり寄ったりだ。
どの程度あったかは不明だが、両社を監督する立場のNASAチームの違いが影響した可能性もある。
宇宙機の開発に実績があるB社に対して手抜きがあったとは言わないけど、S社と同じと言われても信じる気にはなれない。
まあいい。
過去は過去。
指の間からこぼれてしまった10年を嘆いても仕方ない。
「彼らはスターライナーを国際宇宙ステーションに飛ばし、少なくとも8日間滞在し、その後カプセルをパラシュート支援とエアバッグクッションで米国西部、おそらくニューメキシコ州ホワイトサンズに着陸させる予定だ。」(アルス:以下同じ)
記事では航空部門の話も出てくるけど、B社の社内文化はともかくとして、実質的には直接影響はないだろう。
「ボーイングは民間航空機事業を宇宙船や軍用機を製造する部門とは別の部門として運営している。しかし同社は以前にも、これらの無関係なプログラムをひとまとめにしようとしたことがある。」
「エンジニアリングの専門知識、開発プログラムのベストプラクティス、ボーイング社全体のプログラム管理と統合を最も重要な開発活動にさらに効果的に適用」
経営上の問題と、宇宙船の開発は区別されるべきだ。
必要なコストは投じられなければならない。
非常に厳しい環境で運用される機体は、物理の神様の直接の管理下にある。
B社のCEOは、そのしもべに過ぎない。
幸運の女神がいつも微笑んでくれるとは限らんからな。
「宇宙飛行士たちはスターライナーの安全性に自信を持っているが、このミッションの目的は、ボーイングとNASAが宇宙船の運用開始を宣言する前に問題を解決することである。」
「これは試験飛行です。宇宙で飛行して操作するのは大変です。本当に大変です。私たちは何かを見つけるつもりです。それは予想通りです。この宇宙船の全機能を統合する最初の飛行です。」
「メディアの期待は完璧であってはなりません」
そうは言っても、このCFTで重大な不具合が見つかり、その改修に想定外の時間と費用が掛かる事態になれば、状況は極めて困難になる。
「私の観点からすると、これまでのところ、私たちはすべてを調べてきたように思えます。私たちは多くの場合、独立した分析を行っており、着陸荷重に関して(SpaceXの)ドラゴンについても同じことを行っています」(NASAの商業乗組員プログラムマネージャーのスティーブ・スティッチ氏)
「パフォーマンスの中止、ランデブーやドッキングなど、あらゆる種類のことです。」(同上)
「我々は人々を横に並べてテープを検査し、テープを剥がした後に配線を検査し、それが適切に行われたことを確認しました。パラシュートでも同じことです。つまり、プロセスは航空とは少し異なります」
「私たちが話しているのは、複数のミッションを飛行する2機の宇宙船です。そのため、それらの宇宙船1台1台に多くの個別のケアと栄養が注がれており、NASAはボーイングと肩を並べています。」
絶縁テープが可燃性材料であったこと、パラシュートの紐に強度的欠陥があったことについては、さらに1年近くの遅れをもたらし、クルードラゴンとの差は決定的になった。
「NASAもスターライナーの打ち上げ中止システムの独立した分析を完了しているが、パラシュートと同様に、NASAのこのシステムの承認は4月までに最終決定する予定だとシュティッチ氏は述べた。」
この記述を見ると、アボートシステムについても何か懸念があったようだ(未確認)。
「チーフエンジニアたちは今、まさにそのような質問をするために、自分の専門分野のすべてに真剣に取り組んでいます。何か見落としていませんか?何か心配していますか?もう少し取り組む必要がある分野があると思いますか?」(スティッチ氏)
あと1か月余りで、10年以上の開発期間を要したスターライナーが人間を乗せて初飛行する。
NASAにとっては想定外の事態になった。
当初の見込みでは、たぶん、B社が先んじて運用を開始し、チャレンジャーのS社が追い付くのを待つはずだったに違いない。
しかし、NASAは、結果的に2系統のISSタクシーを手に入れたことになる。
ここまで手がかかるとは思っていなかったろうが、あと6年でお払い箱にするというのはもったいない気がしないでもない。
ISS後継の民間宇宙ステーションへの人員輸送に、バックアップとしてキープしておきたいところだろうが、なにせコスパが悪いからな。
打ち上げに使われるロケットも、バルカンロケットを有人用に認定し直さなければならない(アトラスVはもう飛ばないしな)。
使い続けるには、さらに金がかかるだろうが、NASAはどーするんだろうな・・・。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
(ボーイングとNASA、スターライナーによる宇宙ステーションへの初の有人飛行は5月1日を目指す)
https://spaceflightnow.com/2024/03/26/boeing-nasa-target-may-1-for-first-crewed-flight-of-starliner-to-the-space-station/
「スターライナーのすごいところは、まさにパイロットの宇宙船であるということです。本当に機動性が高いです」とラマーズ氏は語った。 「そこには50機近くの反応制御ジェットと軌道操縦ジェットがあり、スティックもあります。そして本当に素晴らしいのは、パイロットである宇宙飛行士がいると、彼らは本当にそれを使いたがるということです。」
手動操縦の快適さを自慢しても始まらないような気がするんだがな。
「この車両には素晴らしい飛行手がかりがあります。私も何度もシミュレーターに参加して自分で操縦しましたが、この車両は手動でドッキングできますが、それはプライムモードではありません。主要なモードは、vesta ランデブー センサー システムを使用して自動モードで実際に飛行することです。」
まあ、自動操縦が基本だ。
「ボーイングは、2010 年に NASA によって民間乗組員育成ラウンド 1 (CCDev1) の資金提供のために選ばれた 5 社のうちの 1 社でした。同庁は米国復興再投資法(ARRA)を通じて受け取った約5000万ドルのうち、この宇宙法協定を通じてボーイングに1800万ドルを投資した。」
「続いて 2011 年に CCDev2 がボーイングに 9,230 万ドルを与え、SpaceX に 7,500 万ドルの最初の資金提供を提供しました。他の2社、ブルー・オリジンとシエラ・ネバダ・コーポレーションは、それぞれ2,200万ドルと8,000万ドルを受け取った。」
「2012年から2014年にかけての追加の開発賞により、ボーイングのスターライナーとスペースXのクルードラゴンの総資金はそれぞれ48億2000万ドルと31億4400万ドルとなった。」
最初期からの通算では、14年の開発期間ということになる。
「OFT は準軌道ミッションとなり、ボーイングと NASA は機体を徹底的に調査」
「準軌道」とあるが、ISSには到着できなかったが、軌道自体は周回軌道に達してたような気がするんだがな(<さらに追加>参照)。
まあいい。
「そのうちの1つは、生命維持システムの不均衡でした。カプセル内に体温を供給して平衡状態を作り出す人間が搭乗していなかったために、温度調節システムのコイルの 1 つがカプセルを過冷却してしまいました。」
「当社の熱制御システムでは、ループの 1 つに氷が付着していました。そして実際には、おそらく乗組員が乗っていなかったことが原因だろう」とボーイングのスターライナープログラム担当副社長兼プログラムマネージャーのマーク・ナッピ氏は語った。 「私たちはその問題に対処し、この最後のフローでいくつかの変更を加えて、同じことが二度と起こらないようにしました。したがって、次の飛行で私たちが焦点を当てるのは、乗組員が搭乗するミッション中に環境がどのように制御されるかということです。」
温度調節の不具合というのは、生命維持システム絡みだったわけだ。
やれやれ・・・。
「ボーイングは宇宙ステーション自体の大部分を設計し、建設しました。彼らは私たちの主要な維持者であり、彼らが構築したすべての機器の安全性に加えて、宇宙船全体の統合された安全性にも責任を負っています」
「したがって、私たちが話している、有人宇宙飛行のために私たちが一緒に使用しているプロセスは以前から存在していました…ボーイングが有人宇宙飛行の安全性を扱うのはこれが初めてではありません。」
ISSの管理をB社が実質的に行っていることは周知だが、それがスターライナーの建造に当たって役立っているとは思えないな。
そうだとすれば、ISSの管理自体にも不安が残る。
まあ、どうでもいいんですが。
「4月10日頃、彼らはこの車両をSLC-41のパッドに展開し、アトラス5ロケットと結合する予定」
長い道のりの一つの到達点ではある。
この道がどこまで続いているかは、また、別の問題だがな・・・。
<さらに追加>ーーーーーーーーーー
(ボーイングの軌道飛行試験)
https://en.wikipedia.org/wiki/Boeing_Orbital_Flight_Test
「軌道パラメータ:
参照系 地心軌道
政権 地球低軌道
近地点高度 187km
遠地点高度 222km
傾斜 51.63°
期間 90.00分」
OFT-1の軌道パラメーターを見ると、高度的に不十分で、上層大気の抗力で再突入することになるが、一応、近地点高度はクリアしているし、2日間周回もしているわけだからな。
弾道軌道ではない。
「スターライナーが 187 km × 222 km (116 マイル × 138 マイル) の軌道に乗ったことが確認された。」
ちょっと気になる記述もある。
「ミッション終了後、飛行中に別の重大なソフトウェアのバグが発見され、分離後にサービスモジュールがスターライナーに衝突する可能性があることが明らかになった。このバグはカプセルが再突入する2時間前に修正された。このバグが発見され修正されていなかったら、スターライナーが損傷し、安全な着陸が妨げられた可能性があります。」
この話は浮沈子も認識していたんだが、問題は次だ・・・。
「さらに、最初の異常が発生していなければ、2 番目の異常は検出されなかったであろうことが判明しました。」
(ボーイングとNASA、スターライナーのミッションにおける複数の異常を認める)
https://www.nasaspaceflight.com/2020/02/boeing-nasa-admit-multiple-anomalies-starliner-mission/
「極めて注目すべき点は、NASA が、地上管制官が介入していなければ、両方のソフトウェアの問題により「車両の損失」が発生していたと直接述べたことです。」
「ミッション経過タイマーに関する最初の問題を取り巻く状況は文書化されていますが、木曜日の午後にできるだけ早く明らかになったのは、2 番目の重大なソフトウェア コーディング エラーでした。」
「ボーイング社のジム・チルトン氏が、ミッション経過タイマーに関する最初の問題が発生していなければ、2番目のソフトウェアの問題を発見することはなかったと認めた」
「2つ目のソフトウェアの問題は、スターライナーが大気圏に再突入しようとして破壊されるほんの数時間前に発見された」
やれやれ・・・。
結果的に、最初のトラブルであるタイマーのずれがあったことで、B社はこの機体(カリプソ)を失わずに済んだことになる。
記事を読むと、2つ目のトラブルの評価についてはすったもんだしているけど、ソフトウェアを再突入直前に差し替えるという「緊急措置」をとったということは、それなりのリスクがあって放置できないという評価をしたからに他ならない。
そもそも、差し替えたソフトの完全性の検証も十分にしていないわけだから、ほとんど「一か八か」のギャンブルなわけだ。
差し替えそのものにも、リスクがあったわけだ。
差し替えずにそのまま突入させれば、機体が失われることが確実な状況でなければそんなことはしないだろう。
まあ、どうでもいいんですが。
根本原因が、不十分な地上テストにあったことは間違いない。
ミスを発見できなかった原因は、確かにそこにある。
見逃したミスが、致命的なトラブルにつながり、不幸中の幸いで、辛くも難を逃れた形になっただけだ。
OFT-1は、B社の開発態勢に多くの疑問を投げかけてた。
その後のトラブルの数々もまた、B社自身に起因する。
定額契約が背景にあったかどうかは知らない。
コストプラス契約だったら、要素テストや統合テストに時間も金も人手もかけて、たっぷりと地上テストを行ったかもしれない(その方が儲かるしな)。
つまり、B社は手抜きをしていたことになる。
CFTは、その契約の中で行われる。
「NASAはまた、民間乗組員プログラムに関するボーイングの取り組みの組織的安全性評価を開始すると述べた。」
「・・・目的は、宇宙飛行士とのミッションに先立ち、民間乗組員プロバイダーとの職場文化を調査することです。」
適正な調査が行われ、十分な対策が施されていることを願うばかりだな・・・。
<さらにさらに追加>ーーーーーーーーーー
(ボーイングのスターライナーは若干遅れたが、進水準備は整っている)
https://www.teslarati.com/boeings-starliner-slightly-delayed-but-ready-for-launch/
「前回のスペースシャトルミッションであるSTS-135以来、打ち上げ後にヒューストンが管制する初めてのミッション」(STS-135:アトランティスによるスペースシャトル最後のミッション)
「システムにはデータから伝送システムへの接続が欠けていると述べ、上昇中およびISSへの輸送中にカプセルからのライブビデオは配信されないと述べた。録画されたビデオは、カプセルがドッキングされた後にダウンリンクされます。」(スターライナーのランデブー飛行責任者のエド・ヴァン・シーズ氏)
なんだ、船内の生中継は無しか・・・。
まあいい。
「契約では6回の飛行が必要で、アトラスVが退役したため、スターライナーを打ち上げるための(互換性のある)人間評価ロケットは現在他に存在せず、NASAがボーイングとの契約を延長したい場合、ULAはそれを行う必要があるだろう。バルカンでスターライナーを打ち上げる承認を得る。」
つまり、バルカンが有人の承認を得るかどうかは、NASA次第ということになる。
B社は、どこも金を出さなければ、スターライナーを損切りするつもりということだ(そうなのかあ?)。
ISSの後継機が民営化され、NASAが顧客として利用することになった場合、そのアクセスを冗長化したければ、バルカンを有人ロケットとして認可しなければならない。
全く別物のロケットだから、スターライナーとの適合性は不明だ(ちっとは配慮してるかも:未確認)。
ULA自体が売却される運命と報じられており(買い手はブルーオリジンと言われている)、先々は不透明だ。
場合によっては、NASAの要請に応じない可能性もある。
スターライナーは、不幸な星の下に生まれた。
こんだけケチが付いた開発も珍しいだろう。
ライバルのクルードラゴンに比べて、運用コストは高く(少なくとも、ロケットは使い捨てで割高だからな)、実績もない。
運用していく中で、新たな問題が発見されれば、それに対するコストも上積みされる。
クルードラゴンも、耐熱塗料(アブレーター)の問題やトイレの配管の外れの問題に直面した(どのように対応したかは未確認)。
今現在の状況は不明だが、S社のことだから、ちまちまと改修を続けているに違いない。
B社は、運用に支障がなければ、そのまま放置するかもしれない。
NASAが有人宇宙船としての認定を取り消せば、そのまま引退だ。
二度と有人宇宙船を作ろうなどとは考えないに違いない。
こりごりだ・・・。
が、開発過程や運用コストが割高なことと、宇宙船の出来上がり自体は別物だ。
有人機だからな。
安全性はもちろん、乗り心地や使い勝手の問題もある。
クルードラゴンは、スペースシャトルに比べて振動が大きいという話だった。
スターライナーはどうだったんだろう?。
無人での打ち上げでは、ロージー(ザロケッティア)と名付けられたダミーの人形が乗せられていたと記憶している。
乗せられたことは報じられているが、それによって計測されたデータの評価とかは、余りニュースにはならないようだ(未確認)。
まあ、どうでもいいんですが。
浮沈子は、せっかく作った宇宙船を、お払い箱にしちまうのはもったいない気もするんだが、考えてみれば、アポロとかは1度限りの使用だったからな。
2号機(名称未定)とカリプソ(3号機)の2機が制作されている。
CFTを含めても、有人では最大4回しか使われない(無人テストを含めても5回:カリプソのみ)。
設計では、最大10回の再使用が想定されているようだからな。
やっぱ、もったいないな・・・。
<また追加>ーーーーーーーーーー
(ボーイングの新型宇宙船「スターライナー」有人飛行試験は2024年5月6日以降に実施)
https://sorae.info/space/20240403-starliner.html
「NASAによると、StarlinerのCFTは早ければアメリカの現地時間2024年5月6日に打ち上げが実施される予定」
5日ほど後ろにずれ込んだ感じだ。
「CFTに先立ち、ISSでは2024年3月23日に到着した無人補給船「Cargo Dragon(カーゴドラゴン)」の出発や、有人宇宙飛行ミッション「Crew-8(クルー8)」のCrew Dragon宇宙船を現在係留中のドッキングポートから別のドッキングポートに移動させるなど、Starlinerの到着に備えた準備が進められます。」
画像を見ると、7機の宇宙機がこれでもかと言わんばかりに接続している。
プログレスとかは関係ないけど、クルードラゴンが接続しているハーモニーモジュールの前方を。空けないとな。
斜陽になったとはいえ、B社の手掛けた宇宙船が有人デビューする日が近づいている。
それは、一つの時代の始まりであると同時に、これまで刻んできた歴史の一部が幕引きを迎えることでもある。
ロッキードマーチンが作ったアトラスの後継であるバルカンには、デルタシリーズに関わったB社の影はない。
ULAが売りに出て、デルタ4ヘビーが最後の打ち上げを迎え、蹉跌を繰り返したスターライナーが難産の末、有人で飛ぶ。
民間航空機業界の巨人は、そっちの方でもケチが付きまくってるしな。
おっと、そういえば、オスプレイもB社だったっけ・・・。
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