リベリアの憂鬱 ― 2014年11月15日 11:07
リベリアの憂鬱
(リベリア、エボラ非常事態宣言を解除)
http://www.afpbb.com/articles/-/3031718
初め、この報に接した時、わが耳を疑った(最近は、別の意味でよくあるんですが・・・)。
サーリーフ大統領は、とんでもない勘違いをしているんじゃなかろうかと心配になった。
「エボラ出血熱の新規感染数が大幅に減少したことを受け、非常事態宣言を解除した。」
8月6日に非常事態宣言が出された時、感染者は1000人未満だったとある(集計上は600人未満)。
この頃は、ロファ郡(現在、約650人)の増加が大きく、モンセラード郡(現在、約3800人)の爆発的な増加が始まった頃だ。
マルジビ郡は、まだ平穏だった(現在、約1200人)。
この頃の、1日辺りの感染者の増加は、23人から34人に増加しつつある時期だ。
WHOからの要請もあったのだろうが、非常事態を宣言したというのは、妥当な判断だったのだろう。
「国境を封鎖する、夜間外出禁止や隔離の措置を実施する、学校を閉鎖する、集会を制限する」
同国が取ってきた厳しい規制は、確かに感染拡大の抑止力にはなっているが、このままでは国家が疲弊してしまう。
現在の状況は、どうなんだろうか。
大規模な集計変更後の増加を見ると、10月24日(6253人)から11月10日(6878人)までの感染者は1日当たり37人となり、この数字だけ見れば、非常事態宣言を出した時よりも多い。
もちろん、ピーク時は、この3倍くらいだったから、大統領府のいうとおり、減ったことは確かだが、非常事態は継続しているといえる。
ただ、エボラについての理解が一定程度進んだこと、国際支援の中で医療関係が整備されつつあること、首都近郊を除いて新規感染者が減っていることは確かだし、何よりこのままでは長期戦に耐えられない。
感染者数の増加自体は、シエラレオネの方が大きいが、集計されている感染者の数は、依然としてリベリアがトップだ。
非常事態を切り抜けたとはいえないが、長期戦に向けた態勢立て直しというところではないだろうか。
「エボラウイルスとの闘いの継続を見据えて対策の方向性を調整していくため」
何とも分かり辛い表現だが、腰を据えて掛かろうということなのだろう。
記事の中では、1日に500人の増加とあるが、集計値の調整を行った時以外には、それ程の増加はない。
(EBOLA RESPONSE ROADMAP
SITUATION REPORT
12 NOVEMBER 2014:Figure 2: Ebola virus disease cases reported each week from Liberia and Monrovia参照)
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/141468/1/roadmapsitrep_12Nov2014_eng.pdf?ua=1
1週間に500人弱の新規患者を記録しているに過ぎない。
しかし、まあ、それに比べて減ったというだけであって、相変わらず堂々たるトップの座を維持している。
シエラレオネの増加の勢いが止まらないとしても、少なくとも、あと1か月くらいは首位を維持し続けるだろう。
というより、大規模感染の終息は、まだ遥か彼方だ。
非常事態の撤回は仕方ない。
しかし、むしろ対策は強化されるべきだし、感染の拡大も収まったとはとてもいえない。
リベリアで非常事態が出される前の感染者は600人、その後3か月で、約6900人に増えた。
感染者数の推移は予断を許さないが、浮沈子は、終息までの間に、どう少なく見積もっても、1万人の感染者がこの国だけで発生すると考えている。
大量の資源を投入しても、1日40人規模の増加を抑えることに成功していない現状をみれば、そのことは明らかである。
隣国のシエラレオネからの流入も懸念される。
この国にとって、非常事態宣言を終わらせたということは、エボラの感染の初期段階が終わったという意味なんだろう。
始まりの終わりなのであって、終わりの始まりではない。
「感染拡大が落ち着きを見せている」というが、エボラの感染はこれまでも波状的に拡大してきた。
どこかで、感染が継続している限り、そこを火種として拡大する危険が常にある。
非常事態の解除をきっかけにして、気の緩みが生じ、そこに付け入って感染の拡大を許すことがあってはならないだろう(といっても、まあ、たぶん、おそらく、絶対に無理だな)。
終息に向かう流れが確実になるまでは、宣言の有無にかかわらず、徹底した対策が必要だし、そのための資源をケチってはならない。
それは、たぶん、相当先になるんだろう。
来年か、再来年か、もっと先か。
リベリアの憂鬱は、長期化する感染対策に、どう取り組んでいくかという点にある。
それが、今、始まったということである。
(リベリア、エボラ非常事態宣言を解除)
http://www.afpbb.com/articles/-/3031718
初め、この報に接した時、わが耳を疑った(最近は、別の意味でよくあるんですが・・・)。
サーリーフ大統領は、とんでもない勘違いをしているんじゃなかろうかと心配になった。
「エボラ出血熱の新規感染数が大幅に減少したことを受け、非常事態宣言を解除した。」
8月6日に非常事態宣言が出された時、感染者は1000人未満だったとある(集計上は600人未満)。
この頃は、ロファ郡(現在、約650人)の増加が大きく、モンセラード郡(現在、約3800人)の爆発的な増加が始まった頃だ。
マルジビ郡は、まだ平穏だった(現在、約1200人)。
この頃の、1日辺りの感染者の増加は、23人から34人に増加しつつある時期だ。
WHOからの要請もあったのだろうが、非常事態を宣言したというのは、妥当な判断だったのだろう。
「国境を封鎖する、夜間外出禁止や隔離の措置を実施する、学校を閉鎖する、集会を制限する」
同国が取ってきた厳しい規制は、確かに感染拡大の抑止力にはなっているが、このままでは国家が疲弊してしまう。
現在の状況は、どうなんだろうか。
大規模な集計変更後の増加を見ると、10月24日(6253人)から11月10日(6878人)までの感染者は1日当たり37人となり、この数字だけ見れば、非常事態宣言を出した時よりも多い。
もちろん、ピーク時は、この3倍くらいだったから、大統領府のいうとおり、減ったことは確かだが、非常事態は継続しているといえる。
ただ、エボラについての理解が一定程度進んだこと、国際支援の中で医療関係が整備されつつあること、首都近郊を除いて新規感染者が減っていることは確かだし、何よりこのままでは長期戦に耐えられない。
感染者数の増加自体は、シエラレオネの方が大きいが、集計されている感染者の数は、依然としてリベリアがトップだ。
非常事態を切り抜けたとはいえないが、長期戦に向けた態勢立て直しというところではないだろうか。
「エボラウイルスとの闘いの継続を見据えて対策の方向性を調整していくため」
何とも分かり辛い表現だが、腰を据えて掛かろうということなのだろう。
記事の中では、1日に500人の増加とあるが、集計値の調整を行った時以外には、それ程の増加はない。
(EBOLA RESPONSE ROADMAP
SITUATION REPORT
12 NOVEMBER 2014:Figure 2: Ebola virus disease cases reported each week from Liberia and Monrovia参照)
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/141468/1/roadmapsitrep_12Nov2014_eng.pdf?ua=1
1週間に500人弱の新規患者を記録しているに過ぎない。
しかし、まあ、それに比べて減ったというだけであって、相変わらず堂々たるトップの座を維持している。
シエラレオネの増加の勢いが止まらないとしても、少なくとも、あと1か月くらいは首位を維持し続けるだろう。
というより、大規模感染の終息は、まだ遥か彼方だ。
非常事態の撤回は仕方ない。
しかし、むしろ対策は強化されるべきだし、感染の拡大も収まったとはとてもいえない。
リベリアで非常事態が出される前の感染者は600人、その後3か月で、約6900人に増えた。
感染者数の推移は予断を許さないが、浮沈子は、終息までの間に、どう少なく見積もっても、1万人の感染者がこの国だけで発生すると考えている。
大量の資源を投入しても、1日40人規模の増加を抑えることに成功していない現状をみれば、そのことは明らかである。
隣国のシエラレオネからの流入も懸念される。
この国にとって、非常事態宣言を終わらせたということは、エボラの感染の初期段階が終わったという意味なんだろう。
始まりの終わりなのであって、終わりの始まりではない。
「感染拡大が落ち着きを見せている」というが、エボラの感染はこれまでも波状的に拡大してきた。
どこかで、感染が継続している限り、そこを火種として拡大する危険が常にある。
非常事態の解除をきっかけにして、気の緩みが生じ、そこに付け入って感染の拡大を許すことがあってはならないだろう(といっても、まあ、たぶん、おそらく、絶対に無理だな)。
終息に向かう流れが確実になるまでは、宣言の有無にかかわらず、徹底した対策が必要だし、そのための資源をケチってはならない。
それは、たぶん、相当先になるんだろう。
来年か、再来年か、もっと先か。
リベリアの憂鬱は、長期化する感染対策に、どう取り組んでいくかという点にある。
それが、今、始まったということである。
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