リダンダンシー2016年01月17日 01:26

リダンダンシー
リダンダンシー


ビル・ストーンの論文を読んでいる。

((Design of fully redundant autonomous life support systems.)
http://archive.rubicon-foundation.org/xmlui/handle/123456789/9141

PDFをOCRに通して、テキストに変換してから自動翻訳するという、浮沈子得意のパターン・・・。

で、翻訳した内容が、良く分からないでいる。

冗長性というのが、よく理解できないのだ。

今は、まだ、オープンサーキットのところを読んでいる。

定量的に線形配置や並行配置のシステムの冗長性を検討する部分だ。

構成要素の故障率を1から引いた数(残存率?)の積(トータルの残存率?)を、さらに1から引いた数がトータルの故障率になるのが線形配置で、シンプルに故障率の積になるのが並行配置ということになっている(この時点で、パンクだな)。

実際の潜水器では、これらが組み合わさっているので、故障率を評価する場合は、構成をトポロジックに図示して、線形配置や並行配置を明らかにして評価しなければならない。

構成要素毎の故障率の評価も重要だ。

「Table 1. Component relative failure probabilities.
・T:Supply Tank(with O-RingSeal):.01
・IE:Isolation Element:0
・I:Instrument(gage,transducer):0
・J:Hard-lined Junction:0
・V:Manual Valve:.015
・VM:Manual Bypass Valve:.015
・VS:Servo Valve:.03
・VA:Auto Add Valve:.015
・SC:Scrubber Stack:.01
・H:Flex Breathing Hose:.01
・M: Mouthpiece:.01
・FS:First Stage Regulator:.02
・SS:Second Stage Regulator:.02」

現在では、この確率も変わっているだろう。

文章の中では、いろいろ解説しているのだが、基礎的知識を欠く浮沈子には、一向にピンとこない。

最後の方のページには、リブリーザーのトポロジーが出てくるが、もう、ワケワカ・・・。

順序良く、スモールステップで読みこなしていくしかないようだな。

写真や図も豊富に出てくる。

浮沈子が注目したのは、サイドマウントの写真だ(画像参照)。

モノクロで、背景が岩場、ドライスーツ(?)の色も黒い(たぶん)ので、細部が見にくいが、解説(キャプション)にはこうある。

「Figure6.Practical implementation of a bi-linear open circuit scuba. Note independent regulators, independent gas supplies, and independent pressure gages for each supply.」

現在、2本差しで潜っているサイドマウントと、同じ構成である。

ははあ、英国では1950年代には、こういうスタイルも既にあったんだと、改めて知ったわけだ。

実際に計算してみると、図4の値が間違っていることが分かる(たぶん、誤植)。

1-(1-0.1)×(1-0)×(1-0.15)×(1-0.02)×(1-0.02)
=1-0.99×1×0.985×0.98×0.98
=1-0.93653406
=0.06346594
≒0.063

これを基に、図5のシステムエラー率を算出すると、0.063^2=0.003969となり、ほぼ0.004となって合致する。

Pmissというのが、何を指しているのかは不明だ。

まあいい。

論文の中では、3分の1ルールも紹介されている。

器材の冗長性だけではなく、運用についても保守的であることが求められているが、それについてはロジカルに数値化することが難しいな。

図7のトポロジーでの計算はこうなる。

1-(1-0.01)*(1-0.01)*{1-(1-0)*(1-0.015)*(1-0.02)*(1-0.02)}^2
=1-0.99*0.99*(1-1*0.0985*0.098*0.098)^2
=0.0217534603427545
≒0.022

うーん、いい感じ!。

ついでだから、図9も計算してみよう。

1-(1-0.01)*{1-(1-0)*(1-0.015)*(1-0.02)*(1-0.02)}^2
=1-0.99*(1-1*0.0985*0.098*0.098)^2
=1-0.99*0.999054006^2
=0.0118721821643984
≒0.012

あれまっ、ちっと違うじゃん!?。

まあ、どうでもいいんですが。

図10は、どうだあ?。

1-(1-0.01)*{1-(1-0)*(1-0.015)*(1-0.02)*(1-0.02)}^2
=1-0.99*(1-1*0.0985*0.098*0.098)^2
=1-0.99*0.999054006^2
=0.0118721821643984
≒0.012

Psys=0.012^2
=0.000144

当然違うが、元の値を、図9にある0.013にすると、当然合ってる。

Psys=0.013^2
=0.000169
≒0.00017

しかし、計算の方法は正しいようだ(たぶん)。

これが、図13になると、さらに複雑怪奇になる。

{1-(1-0.01)*(1-0)*(1-0.015)*(1-0.02)*(1-0.02)}^4
=(1-0.99*1*0.0985*0.098*0.098)^4
=(1-0.93653406)^4
=0.06346594^4
=1.622418415645776e-5
≒0.000016

合ってんじゃん!。

次のアイソレーションバルブ付きの、一般的なダブルタンクについては、基本的にはIEの故障確率を0としているので、インデペンデントダブルタンクと同じだ。

要するに、Pmissとかは、良く分からんのだが、システムの故障率の計算については、大体の方法が分かったような気になっている。

他の類似の論文を、どっかで見つけてくれば、比較が出来るんだがな。

リダンダンシー(冗長性)とは、工学的にどういうものかというのが、何となく分かってきた。

問題は、この器材的な冗長性を生かして、どう運用するかということになる。

閉鎖循環回路のところは、頭爆発するといけないので、今日はここまでにしよう・・・。

SCRとCCR2016年01月17日 03:04

SCRとCCR


浮沈子の中では、リブリーザーというのは、酸素リブリーザーを含めて、SCRから始まり、CCRに発展していくものだという固定観念があった(正直言って、今でもあります)。

純酸素とディリュエントガスを混ぜて、酸素分圧一定の混合ガスを製造するCCRこそ、未来のダイビングを担う本命で、SCRというのは、その中途半端(!)な性能と、運用限界から、過渡的な器材だと思っていたわけだ。

ガスの吐出量をコントロールすることで、回路内のガスのFO2を多少コントロールできるとはいえ、基本的には、持ち込んだ混合ガスの構成比を変えることは出来ない。

MODは、たとえばナイトロックスを持ち込めば、その制限値を超えることは出来ない。

須賀次郎氏のブログで、持ち込んだガスを水中で切り替えて、大深度(ここでは、概ね40m以深)で使用することができるという話が出ていて、実際はともかく、ロジカルには可能ということは分かった。

回路を循環させて、必要に応じてガスを吐出すればいいだけの話で、PO2の管理や二酸化炭素の除去はCCRと同じだ。

適切なガスを選択すれば、ボトムタイムの延長という観点からは、必要な性能が得られるだろう。

何より、その物理的にシンプルな構造が堪らない。

基本的には、タンク1本で、何とかする。

サイドマウントとの相性もよさそうだし(ジュルッ:舌なめずりの音)。

(KISS Sidekick:メーカーが、とっくにサイドマウントにしてましたな:追加)
http://www.kissrebreathers.com/sidekick.html

深度に応じたガスをサイドマウントで持ち込んで、切り替えながらロングダイブを楽しむという芸当が出来そうな気がする。

大深度になれば、当然、ベイルアウト用のシリンダーも持ち込むわけだしな。

どんなガスを吸わせられるかは、コンピューター次第という、電脳博打(?)なCCRとは異なり、基本的には由緒正しいタンク内のガスを吸うだけのSCRは、ある意味で正統な呼吸器であるともいえる。

何なら、純酸素も持ち込んで、最終減圧とかに使ってもいい。

オープンサーキットにおける、大深度下でのガスの大量消費というデメリットを回避する観点からは、必要にして十分な器材ではないのか。

PO2一定のメリットは、浅いところでは享受できないが、そこは、ベイルアウト用のナイトロックスや純酸素でカバーすればいい。

SCRは、いわゆるレクリエーショナルダイビング向けだという評価もある。

MODさえ守れば、ハイパーオキシアの危険がないという観点からは、まさしくその通りといえる。

構造が簡単で、価格も安く(CCRの半分くらい?)、手を出しやすいということはあるが、浮沈子的には、玄人好みのコアな器材に見えるな。

弄りたくなる、改造したくなる、遊びたくなる・・・(良い子は、絶対にマネしないでね!)。

一部の機種(エクスプローラーとか)を除いて、専用のタンクでなくても使用は可能なようだ。

特に、キスジェムは、本体をタンクに括り付けるという、目から鱗の逆転の発想である。

(KISS GEM SCR)
http://www.kissrebreathers.com/gem-scr.html

じゃばらホースの長さを調整すれば、何の苦労もなく、サイドマウントにすることが可能だ。

つーか、そのために開発したんじゃないかと思うような器材である。

排気がマウスピースの辺りから視界を遮って出るとか、酸素センサー一つに命預けるという点は、今後の改良に期待だ。

もっとも、何かあったらベイルアウトというのが、これくらい分かりやすい器材はない!。

どっちかっていうと、何かあったらSCRといった方がいいかもしれない程、オープンサーキット寄りの器材である。

これを、デュアル化するという発想も出てくる。

カウンターラングや、ホースの取り回しについては、ひと工夫必要だが、なんでもアリという感じだな。

オープンサーキットダイビングとの相性も抜群だし、何なら、40キュービックフィートの細身のタンクにこいつを付けて、ロングダイブを身軽に楽しむという手もある。

もちろん、リブリーザーであることに変わりはないので、トレーニングとかは専用に用意されているようだ。

BOVへの切り替えが全てともいうがな。

浮力の調整とかは、CCRとほぼ同じとみていいだろう(詳しくは知りません)。

この機種は、そのシンプルさが身上だ。

浮沈子は、泡が出ないという点には、余り拘りがないので、CCRでなくてもその点では構わない。

定量的に出る少ない泡ならば、それ程気にならないかもしれない。

怪しげなガスを吸う気づかいが少なく、ダイブタイムの延長や比較的静穏なダイビングを享受できるSCRは、ひょっとしたら大化けする可能性がある。

CCRは、基本的に不安定な器材だ。

どんなガスを吸わせられるかを、常にモニターし続け、気にし続けなければならない。

オープンサーキットについては、ガス交換を行う際だけ、気遣えばいい。

その代わり、排気ガスをぶちまけるという、構造的な特徴から、大深度でのガス持ちに難がある。

SCRのどっちつかずの特性は、ある意味で、いいとこ取りでもある。

リスク少なく、メリットだけ享受できるわけだ。

もっと、正当に評価されてもいいんじゃないか。

最近では、エクスプローラーのように、凝った仕掛けも出てきているし、SCRとしてのメリットを押し出した機種がもっと出てきてもいいように思う。

どこでも、気軽に使えて、価格もリーズナブルで、トレーニングも簡単で済む。

その一方で、本格的な探検的ダイビングにも使えるということになれば、重宝する器材ということになるんじゃね?。

しかし、これは、浮沈子の現時点での個人的な見解なので、各指導団体やメーカーがそういっているわけではない。

一部の機種(RB80とか)を除いては、今のところ、レクリエーショナルレベルでのメリットを追求しているだけだ。

どんな器材であれ、大深度や閉鎖空間内でのリスクは同じようにある。

そこで、低い故障率や、高いリカバリー性能を引き出すことが出来れば、シビアな環境における運用が可能になるということだ。

その点については、少し調べてみようかという気になっている。

今のところ、未来の潜水器がCCRであるという確信は揺らいでいない。

人間の酸素の消費が、深度にほとんど影響されないという生理的な特性があり、水中で不活性ガスと酸素を、単一混合ガスから分離できないという制約がある限り、純酸素とディリュエントガスを別々に持ち込んで混合するというスタイルは、極めて合理的だ。

エネルギーと膜を使って、酸素を分離することが出来れば、また、新たな潜水器が登場する可能性もある。

さらに、タンクに詰めたガスではなく、水中で調達することが出来るようになれば、ダイビングに革命が起きることは間違いない。

CCRが、そんな人工鰓(えら)の登場までの過渡的な技術であるという点では、浮沈子も異論はない。

それまでの間、SCRだって、活躍の場があっていい。

もちろん、700気圧のタンクが登場すれば、オープンサーキットだって、当分の間は使われるに違いない。

選択肢は、沢山あるというわけだ。

ど・れ・に・し・よ・う・か・な。

いい時代に、ダイビングを楽しむことが出来るようになった。

SCRだって、捨てたもんじゃなさそうだぞ!。

過去記事2016年01月17日 11:43

過去記事


SCRの記事を書くので、いろいろ調べていると、自分の書いた過去記事にぶち当たる。

(スポーツリブリーザー)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/02/02/7209821

デチューンしたCCRや、チューンしたSCRに対して、浮沈子が抱いていた感想を、そのままぶつけた正直な記事だ。

レクリエーショナルレベルのリブリーザーを成立させようとして、PADIが放ったタイプRというコンセプトに対して、メーカーがどう応えたのかという話でもある。

浮沈子は、そこが気に入らなかったわけで、フルスペックの器材の性能を、敢えて落とすようなマネが許せなかった。

くそくらえなのは、その点である。

リブリーザーの市場を広げ、普及させていくためには、フルスペックの器材ではリスクが大きいので、改善しようという中でのデチューンであり、機能制限ということになる。

それが、面白くない。

記事中にもある通り、トレーニングの中で、使用を制限すべきであって、せっかく実現している機能を取っ払うなど、もってのほか!。

ビル・ストーンのリダンダンシーの論文を読んでいるが、器材としての冗長性はシンプルに計算できても、トレーニングによる危機回避や、ミスの回避については、定量化しにくい。

人間が侵すリスクがあるなら、運用限界を決めて、不要な要素は取り除いてしまおうという発想だな。

少なくとも、酸素側のマニュアルインフレーターは、ポセイドンから消えた。

それで、どれだけの事故が無くなったかは分からない。

センサーの異常値で、ハイパーオキシアによる事故があったという話も聞いたから、CCR固有のリスクは皆無になったわけではない。

器材として潜在的に持っている、呼吸ガスが不安定であること、そのコントロールを失い、ヤバイガスになっていたとしても、構造上呼吸できてしまうこと、浸水しやすい構造であることは、変わらないのだ。

酸素側のマニュアルインフレーターの廃止は、焼け石に水、気休め、保険会社対策(?)位かもしれない。

そんなリブリーザーを、なぜ使うかといえば、それでなければ実現できないメリットを享受するためである。

それなのに、ああ、それなのに、普及を図るためとはいえ、その機能を制限するのでは本末転倒なのではないのか?。

許せん!(まあまあ)。

もちろん、タイプRであっても、レクリエーショナルレベルのダイビングでは、十分以上の性能を発揮するし、こともあろうに、浮沈子自身が、そのインストラクターを目指しているという自己矛盾的状況もある。

PADIに限らず、指導団体がレクリエーショナルレベルのCCRと、テクニカルレベルのCCRを別コースとし、器材を弄るか、そのまま使うかは別として、ダイビングにおけるリスクを管理しようとしていることは確かだ。

浮沈子は、それで十分だと考えたわけだし、その考えは今も変わっていない。

してはいけないことは、理由を納得させてダイバー自身が管理するようにならなければ、かえって危険な状況になることもある。

器材だけで安全性を確保するには、余りにもリスクが多い。

たとえば、浸水のリスクというのは、BOVの導入によって、軽減されることはあっても、なくなるわけではない。

プレダイブチェックで、気密性(水密性?)を確認しないまま運用すれば、不測の事態を招くことになる。

正しい運用があって、初めて成立するのがリブリーザーダイビングだ。

英語のウィキしかないが、器材としてのリブリーザーと、リブリーザーダイビングが、別項目となっていることは、その象徴であるような気がする。

器材を論じるのは素人で、運用を論じるのがプロともいえる。

まあ、器材がダメなら、運用でカバーできることにも限界はあるがな。

SCRは、確かにハイパーオキシアのリスクは、オープンサーキットと同等だが、ハイポキシアについては、CCRと同程度のはずだ(詳しくは知りません)。

呼吸ガスの供給が途絶えれば(或いは、不足すれば)、酸素の少ないガスが回路を循環するだけになる。

その確率が、CCRに比べてどうかということはあるが、気付かなければイチコロである。

ハイパーカプニアや、浸水のリスクは同じだ。

リブリーザーの器材としての特性(欠点?)を、十分に理解し、評価してからでなければ導入は出来ないし、すべきではない。

酸素側のマニュアルインフレーターを外し、BOV付けたからといって、安全な器材に化けるようなことはない。

もちろん、安全性を向上させるための改善は必要だが、それが新たなリスクを生むという考え方もある。

二酸化炭素吸収材の寿命や、二酸化炭素を検出するためのセンサーは、確かに有効だが、それ自体の故障も起こり得るし、それに頼ったダイビングを行うことによる潜在的なリスクの増加もある。

唯一、確実なのは、時間管理と使用した酸素量による管理だ。

浮沈子的には、ソフノライムの価格を下げ、ケチケチせずに使えるようにするというのが最も有効な対策に思えるがな。

まあいい。

リパッキングしないとか、廃棄したソフノダイブ(プレパッキングされた吸収剤)を誤って再使用しないとかは、別の次元の話である。

どれだけ器材が進歩しても、運用が誤っていれば元も子もない。

整備された正しい器材を、正しい運用で使うことでしか、リブリーザーの安全は確保できない。

メーカーによる器材の改善と、運用する側のスキルの増進だけが、普及を後押しする。

デチューンしたって、それだけで安全になるわけではないのだ。

むしろ、フルスペックの器材を、使いこなそうという努力を続けることが、安全を担保するような気がする。

誰もが使える器材だが、誰もが使うべき器材ではない。

禅問答のような話だが、浮沈子自身の経験からもそう感じる。

まあ、おまえは使うべきじゃないだろうという突っ込みもアリだがな。