🐱再使用ロケットは定着するのか ― 2023年08月26日 03:58
再使用ロケットは定着するのか
(ラザフォードエンジンの再飛行は、ロケットの再利用が定着していることを示しています)
https://arstechnica.com/space/2023/08/rocket-lab-joins-spacex-in-re-flying-a-rocket-engine-to-space/
「打ち上げ会社は、以前に飛行したラザフォード エンジンを初めて第 1 ステージで再利用しました。」
「この傾向は、つい最近 5 ~ 7 年前まではありえないと思われていましたが、今では後戻りできないように思えます。」
まあ、もう少し様子を見てみないと何とも言えない。
商業ベースで再使用ロケットを部分的であれ使用しているのは、人類史上、スペースXのファルコンシリーズだけだ。
エレクトロンは、再使用の実験レベルに留まるというのが浮沈子の見立てだ。
可能は可能だが、商業ベースでは引き合わないだろう。
各国の国策ロケット(SLSを含む)が、どこも二の足を踏んでいるのは、そこにリスクベネフィットの転換点が見えていないからだな。
リスクは確実に増え、経済的なメリットは少ないか、むしろ赤字になり、打ち上げ頻度は需要低迷で増えない(打ち上げコストが減らないからかも)とすれば、インセンティブは働かない。
現に、ピーターベック自身が、再使用ロケットはニュートロンで実現するとしている。
が、今のところそれは絵餅だ。
また、S社にしても、ファルコンシリーズにおける完全再使用を断念し、スターシップに会社の未来を賭けているが、失敗が続くばかりで、2段目の再使用を先送りして使い捨てで運用を開始せざるを得ない見込みだ。
それさえも、現状ではいつになるかの見通しはない(1段目のスーパーヘビーブースターのくそエンジン(=ラプター2エンジン)が使い物にならんからな)。
再使用ロケットの流れがあるとしても、まだ、開発レベルに留まっている。
コストベネフィットの判断は、打ち上げ頻度にもかかわる。
S社が成功しているように見えるのは、自社事業であるスターリンクの打ち上げ需要に支えられているところが大きい。
スターリンク需要を差し引いた打ち上げ頻度で、再使用のメリットを最大限に発揮することはムリポだろう。
それなら、インドの激安ロケットの方がいいだろうし、打ち上げ頻度については中国の方が多い(昨年度までは)。
つまり、辛うじて首の皮一枚繋がっているファルコンズ以外に、成功した再使用ロケットはないのだ。
リスクを嫌う各国(米国含む)の国策ロケットが、規模や頻度を度外視して再使用に走ることはない。
SLSのように、2年に1回しか打ち上げられない超巨大ロケットを再使用にしても意味ないしな。
また、同じ超巨大ロケットであるスターシップの開発が進んでいるのは、スターリンクV2衛星の打ち上げという需要が見えているからに他ならない。
針の穴を通す需給の見通し(それは賭けだ)を得なければ、困難な開発に進むことはない。
スターシップの開発を断念することになれば、軍事衛星の打ち上げなどの官需以外の再使用ロケットの開発は止まるだろう。
また、逆に成功することがあれば、民間の総需要をごっそり持っていかれて、他のロケット開発のインセンティブ(打ち上げ需要に起因する)を奪われることになる。
我が国のロケット開発の低迷は、ついこの間までは欧州のアリアン、ここ数年はファルコンが、民間需要の大半を持って行ってしまっていることが原因の一つだ。
技術的にも資本的にも、参入障壁が高いロケット開発は難しい。
国策ロケットしか飛ばない時代が長かったのは仕方ない。
再使用は、さらに困難だ。
需要が爆増しない限り、その実現はない。
浮沈子的には、ユニークなニュートロンのコンセプトに注目している。
このロケットは、事実上、2段目を使い捨てにしている準軌道単段式ロケットだ。
地上に戻ってくるフェアリング式1段目は、軌道には上がらないからな。
このコンセプト自体は、以前からあるけど、まだ、どこも成功はしていない。
打ち上げ可能なペイロード重量(使い捨ての2段目含む)が激減するし、その重量の衛星需要が見通せないために、開発が断念されてきた経緯がある。
結局、現実的な選択肢として、使い捨ての1段目が主流なのだ。
ロケットは、航空機と異なり、短時間に巨大なエネルギーを扱う装置だからな。
もともと、再使用には不向きな仕掛けだ。
技術的にも、そう簡単にはいかない。
S社が、そのメインエンジンとして採用したフルフロー二段燃焼エンジンだって、再使用に最適と分かってはいたものの(部品に掛かる負荷が少ない)、複雑さと需要のなさが壁になって実用化しなかった。
開発に困難を極めているのは当然なのだ。
物理の神様は公平だ。
S社が、最も困難な方法を選択し、総力を挙げて開発に取り組んでいることの方が驚異なのだ。
ブルー(オリジン)が、完全再使用に取り組んでいると言っても、それはより安易なエンジン形式を選択している点を見逃すわけにはいかない。
そのエンジンを、そして、エンジンユニットだけを再使用しようと計画していた(過去形だからな)ULAは、さらにその後方にある。
その他大勢は、まだ、影も形もない。
確認しておこう。
開発レベルであっても、再使用ロケットは主流じゃない。
柳の下のドジョウを捕まえるためには、ドジョウを食ってくれる需要が必要だ。
が、年に1度の土用丑の日しか食ってくれなければ(それって、ウナギじゃね?)柳の下には行っても仕方ないのだ。
やれやれ・・・。
その一方、ドジョウが増えなければ、それを食う人々も増えない。
スターリンクは、自社事業という形で、その需要自体を生み出している。
地獄鍋というアプリケーションを作って、ドジョウの需要を喚起しているわけだ。
スターリンクを契約する人々は、地獄鍋を食いに(あるいは、「見に」)行くのが目的であって、本当は、ドジョウには興味はないのだ(あれって、決して美味い料理じゃないからな)。
が、しかし、結局は再使用ロケットの開発に貢献することになる。
リスクを分かち合う事業構造の構築に成功している。
使い捨てロケットだって、その意味では税金という国家の仕掛けに乗ることによって、少ない頻度の打ち上げで事業化に成功しているわけだ。
技術の進歩の問題じゃなく、まして、流行とか流れでもない。
需要と供給が生み出している、2つの表現型があるだけの話だ。
100年経っても、使い捨てロケットはなくならないだろう。
高い信頼性を確保できなければ、再使用ロケットが普及することはない。
ファルコンズの再使用が、未だに試験運用として申請されていることが何よりの証拠だ。
失敗の可能性は常にある。
S社だけが、高い技術を持っているから成功しているわけじゃない。
が、このまま行けば、再使用のノウハウは独占されることになりかねない。
浮沈子は、再使用に反対ではない。
むしろ逆だ。
多くのプレイヤーが参入してこそ、技術の進歩は加速される。
クソなラプター2エンジン(未だに、33基同時燃焼に成功していない)を見れば、それは明らかだからな。
S社自身が見切りをつけて、バージョンアップに踏み切っている(ラプター3が開発中)。
まあいい。
S社大好きエリックバーガーは、そりゃあ、再使用の肩を持つかもしれないが、他社が成功するかどうかは、需要を掴むことができるかに掛かっている。
中規模ロケットで打ち上げられる衛星は、まとめて超巨大ロケットでもあげられるからな・・・。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
(SpaceX、巨大スターシップロケットの高温燃焼試験を成功裏に完了)
https://arstechnica.com/space/2023/08/starships-next-test-flight-might-be-closer-than-you-think/
「金曜午後、超重量ブースターの2回目の高温燃焼試験を実施」
「テスト中に33基のラプターエンジンすべてが点火し、2基を除くすべてが6秒間完全に作動」
「成功した」(イーロン・マスク)
「テストが明らかに成功したことを考えると、SpaceX と Starship ロケットの 2 回目のテスト飛行の間に立ちはだかる最後の重要なハードルは規制です。」
前にも書いたが、スタティックファイアテストであって、着火テストじゃないからな。
少なくとも2基のラプター2は、必要な時間燃焼することなく消えた。
残りの31基は、たった6秒間の燃焼を確認しただけ。
7秒後には、さらに数基が消えるかもしれないわけだ(そうなのかあ?)。
それを成功と位置付けている(確かに「点火」テストとしてはせいこうかもな・・・)。
ラプター2の信頼性はひどいレベルだ。
実際、S社はラプター2に見切りをつけ、次のバージョン(ラプター3)の開発に取り組んでいる。
2回目のテストは、にもかかわらず行われる。
スーパーヘビーブースターの、スタティックファイアテスト(燃焼テスト)が可能なテストベンチはない。
2分半に及ぶ燃焼試験は、実際に飛ばして行う。
だから、「点火」に成功すればいいというわけだ。
飛ばしてみなけりゃ分らんだろう!?。
浮沈子は、年内の再飛行はないと見ている。
エンジンは、何も変わっていない。
発射台の逆さシャワーのテストならできるだろう。
S社としては、2段目の分離にこぎつけたいんだろうが、現状ではムリポだ。
ラプター3の開発の成否が発射時期を決める。
まあ、空中での燃焼テストは、いくらでもできるだろうさ・・・。
(ラザフォードエンジンの再飛行は、ロケットの再利用が定着していることを示しています)
https://arstechnica.com/space/2023/08/rocket-lab-joins-spacex-in-re-flying-a-rocket-engine-to-space/
「打ち上げ会社は、以前に飛行したラザフォード エンジンを初めて第 1 ステージで再利用しました。」
「この傾向は、つい最近 5 ~ 7 年前まではありえないと思われていましたが、今では後戻りできないように思えます。」
まあ、もう少し様子を見てみないと何とも言えない。
商業ベースで再使用ロケットを部分的であれ使用しているのは、人類史上、スペースXのファルコンシリーズだけだ。
エレクトロンは、再使用の実験レベルに留まるというのが浮沈子の見立てだ。
可能は可能だが、商業ベースでは引き合わないだろう。
各国の国策ロケット(SLSを含む)が、どこも二の足を踏んでいるのは、そこにリスクベネフィットの転換点が見えていないからだな。
リスクは確実に増え、経済的なメリットは少ないか、むしろ赤字になり、打ち上げ頻度は需要低迷で増えない(打ち上げコストが減らないからかも)とすれば、インセンティブは働かない。
現に、ピーターベック自身が、再使用ロケットはニュートロンで実現するとしている。
が、今のところそれは絵餅だ。
また、S社にしても、ファルコンシリーズにおける完全再使用を断念し、スターシップに会社の未来を賭けているが、失敗が続くばかりで、2段目の再使用を先送りして使い捨てで運用を開始せざるを得ない見込みだ。
それさえも、現状ではいつになるかの見通しはない(1段目のスーパーヘビーブースターのくそエンジン(=ラプター2エンジン)が使い物にならんからな)。
再使用ロケットの流れがあるとしても、まだ、開発レベルに留まっている。
コストベネフィットの判断は、打ち上げ頻度にもかかわる。
S社が成功しているように見えるのは、自社事業であるスターリンクの打ち上げ需要に支えられているところが大きい。
スターリンク需要を差し引いた打ち上げ頻度で、再使用のメリットを最大限に発揮することはムリポだろう。
それなら、インドの激安ロケットの方がいいだろうし、打ち上げ頻度については中国の方が多い(昨年度までは)。
つまり、辛うじて首の皮一枚繋がっているファルコンズ以外に、成功した再使用ロケットはないのだ。
リスクを嫌う各国(米国含む)の国策ロケットが、規模や頻度を度外視して再使用に走ることはない。
SLSのように、2年に1回しか打ち上げられない超巨大ロケットを再使用にしても意味ないしな。
また、同じ超巨大ロケットであるスターシップの開発が進んでいるのは、スターリンクV2衛星の打ち上げという需要が見えているからに他ならない。
針の穴を通す需給の見通し(それは賭けだ)を得なければ、困難な開発に進むことはない。
スターシップの開発を断念することになれば、軍事衛星の打ち上げなどの官需以外の再使用ロケットの開発は止まるだろう。
また、逆に成功することがあれば、民間の総需要をごっそり持っていかれて、他のロケット開発のインセンティブ(打ち上げ需要に起因する)を奪われることになる。
我が国のロケット開発の低迷は、ついこの間までは欧州のアリアン、ここ数年はファルコンが、民間需要の大半を持って行ってしまっていることが原因の一つだ。
技術的にも資本的にも、参入障壁が高いロケット開発は難しい。
国策ロケットしか飛ばない時代が長かったのは仕方ない。
再使用は、さらに困難だ。
需要が爆増しない限り、その実現はない。
浮沈子的には、ユニークなニュートロンのコンセプトに注目している。
このロケットは、事実上、2段目を使い捨てにしている準軌道単段式ロケットだ。
地上に戻ってくるフェアリング式1段目は、軌道には上がらないからな。
このコンセプト自体は、以前からあるけど、まだ、どこも成功はしていない。
打ち上げ可能なペイロード重量(使い捨ての2段目含む)が激減するし、その重量の衛星需要が見通せないために、開発が断念されてきた経緯がある。
結局、現実的な選択肢として、使い捨ての1段目が主流なのだ。
ロケットは、航空機と異なり、短時間に巨大なエネルギーを扱う装置だからな。
もともと、再使用には不向きな仕掛けだ。
技術的にも、そう簡単にはいかない。
S社が、そのメインエンジンとして採用したフルフロー二段燃焼エンジンだって、再使用に最適と分かってはいたものの(部品に掛かる負荷が少ない)、複雑さと需要のなさが壁になって実用化しなかった。
開発に困難を極めているのは当然なのだ。
物理の神様は公平だ。
S社が、最も困難な方法を選択し、総力を挙げて開発に取り組んでいることの方が驚異なのだ。
ブルー(オリジン)が、完全再使用に取り組んでいると言っても、それはより安易なエンジン形式を選択している点を見逃すわけにはいかない。
そのエンジンを、そして、エンジンユニットだけを再使用しようと計画していた(過去形だからな)ULAは、さらにその後方にある。
その他大勢は、まだ、影も形もない。
確認しておこう。
開発レベルであっても、再使用ロケットは主流じゃない。
柳の下のドジョウを捕まえるためには、ドジョウを食ってくれる需要が必要だ。
が、年に1度の土用丑の日しか食ってくれなければ(それって、ウナギじゃね?)柳の下には行っても仕方ないのだ。
やれやれ・・・。
その一方、ドジョウが増えなければ、それを食う人々も増えない。
スターリンクは、自社事業という形で、その需要自体を生み出している。
地獄鍋というアプリケーションを作って、ドジョウの需要を喚起しているわけだ。
スターリンクを契約する人々は、地獄鍋を食いに(あるいは、「見に」)行くのが目的であって、本当は、ドジョウには興味はないのだ(あれって、決して美味い料理じゃないからな)。
が、しかし、結局は再使用ロケットの開発に貢献することになる。
リスクを分かち合う事業構造の構築に成功している。
使い捨てロケットだって、その意味では税金という国家の仕掛けに乗ることによって、少ない頻度の打ち上げで事業化に成功しているわけだ。
技術の進歩の問題じゃなく、まして、流行とか流れでもない。
需要と供給が生み出している、2つの表現型があるだけの話だ。
100年経っても、使い捨てロケットはなくならないだろう。
高い信頼性を確保できなければ、再使用ロケットが普及することはない。
ファルコンズの再使用が、未だに試験運用として申請されていることが何よりの証拠だ。
失敗の可能性は常にある。
S社だけが、高い技術を持っているから成功しているわけじゃない。
が、このまま行けば、再使用のノウハウは独占されることになりかねない。
浮沈子は、再使用に反対ではない。
むしろ逆だ。
多くのプレイヤーが参入してこそ、技術の進歩は加速される。
クソなラプター2エンジン(未だに、33基同時燃焼に成功していない)を見れば、それは明らかだからな。
S社自身が見切りをつけて、バージョンアップに踏み切っている(ラプター3が開発中)。
まあいい。
S社大好きエリックバーガーは、そりゃあ、再使用の肩を持つかもしれないが、他社が成功するかどうかは、需要を掴むことができるかに掛かっている。
中規模ロケットで打ち上げられる衛星は、まとめて超巨大ロケットでもあげられるからな・・・。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
(SpaceX、巨大スターシップロケットの高温燃焼試験を成功裏に完了)
https://arstechnica.com/space/2023/08/starships-next-test-flight-might-be-closer-than-you-think/
「金曜午後、超重量ブースターの2回目の高温燃焼試験を実施」
「テスト中に33基のラプターエンジンすべてが点火し、2基を除くすべてが6秒間完全に作動」
「成功した」(イーロン・マスク)
「テストが明らかに成功したことを考えると、SpaceX と Starship ロケットの 2 回目のテスト飛行の間に立ちはだかる最後の重要なハードルは規制です。」
前にも書いたが、スタティックファイアテストであって、着火テストじゃないからな。
少なくとも2基のラプター2は、必要な時間燃焼することなく消えた。
残りの31基は、たった6秒間の燃焼を確認しただけ。
7秒後には、さらに数基が消えるかもしれないわけだ(そうなのかあ?)。
それを成功と位置付けている(確かに「点火」テストとしてはせいこうかもな・・・)。
ラプター2の信頼性はひどいレベルだ。
実際、S社はラプター2に見切りをつけ、次のバージョン(ラプター3)の開発に取り組んでいる。
2回目のテストは、にもかかわらず行われる。
スーパーヘビーブースターの、スタティックファイアテスト(燃焼テスト)が可能なテストベンチはない。
2分半に及ぶ燃焼試験は、実際に飛ばして行う。
だから、「点火」に成功すればいいというわけだ。
飛ばしてみなけりゃ分らんだろう!?。
浮沈子は、年内の再飛行はないと見ている。
エンジンは、何も変わっていない。
発射台の逆さシャワーのテストならできるだろう。
S社としては、2段目の分離にこぎつけたいんだろうが、現状ではムリポだ。
ラプター3の開発の成否が発射時期を決める。
まあ、空中での燃焼テストは、いくらでもできるだろうさ・・・。
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