🚀ISS:宇宙飛行士救出作戦:何が問題なのか ― 2025年01月30日 23:06
ISS:宇宙飛行士救出作戦:何が問題なのか
(マスク氏:トランプ大統領は元スターライナー宇宙飛行士の地球への早期帰還を要求)
https://spaceflightnow.com/2025/01/28/musk-president-trump-calls-for-fast-track-return-to-earth-of-the-former-starliner-astronauts/
「「フリーダム」と名付けられたクルードラゴン宇宙船が、NASAの宇宙飛行士ブッチ・ウィルモア氏とスニ・ウィリアムズ氏を乗せて国際宇宙ステーションから早期に離脱する可能性があることを示唆」(スペースXの創設者イーロン・マスク氏)
「米国大統領はスペースXに対し、宇宙ステーションに取り残された2人の宇宙飛行士をできるだけ早く帰還させるよう要請した。我々はそうするつもりだ」「バイデン政権が彼らをこれほど長い間そこに放置していたのはひどいことだ」(同上)
「クルー10ミッションを軌道に乗せるために設計されたクルードラゴン(計画では5機目で最後の就航予定のドラゴン)に問題が発生し、打ち上げは3月下旬まで延期」
クルー10に使用されるクルードラゴンは新造船だ。
「新しい宇宙船の製造、組み立て、テスト、そして最終的な統合は、細部にまで細心の注意を払う必要がある骨の折れる作業です」(NASAのCCPマネージャー、スティーブ・スティッチ氏)
「私たちのミッションをサポートするためにドラゴン艦隊を拡大してくれたスペースXチームの懸命な努力と、新しいカプセルの飛行準備を完了するために協力するステーションプログラムと遠征クルーの柔軟性に感謝します。」(同上)
まあ、それはそれでいいんですが。
イーロンマスクが、なぜ早期の帰還を行おうとしているのかは不明だ。
憶測はいくらでもできるだろうが、ISSミッションは今でもリスクが高い。
S社が、新造船の問題点を洗い出し、改修しようとしているのを見ても分かる通り、また、スターライナーが遅れに遅れているのを見ても分かるように、過酷な宇宙空間に生卵(宇宙飛行士)乗せて安全に飛ぶためには綿密なチェックを要する。
クルー10を遅らせればいいだけの話ではないのかあ?。
それを、なぜクルー9の帰還を早める形で行おうとしているのかが解せない。
(なぜイーロン・マスクは、トランプ大統領が取り残された宇宙飛行士2人を帰還させたいと言っているのか?)
https://arstechnica.com/space/2025/01/why-did-elon-musk-just-say-trump-wants-to-bring-two-stranded-astronauts-home/
「トランプ氏がスペースX社にウィルモア氏とウィリアムズ氏を早めに返還するよう要請したのは、政治的な理由、つまり彼らの見解ではバイデン政権に恥をかかせるためだった可能性もある。」
ああ、それはあるかもな。
「トランプ氏がNASAに今宇宙飛行士を帰還させるよう要求すれば、クルー9号ミッションはもっと早く地球に帰還できる。」
「このミッション(クルー10)の打ち上げ目標は 2 月から 3 月 25 日に変更されました。」
「以前飛行した別の Dragon (おそらく Axiom-4 ミッションで使用することを意図していた Dragon) を流用する必要がある可能性がある」(情報筋)
まあ、そういうこともあるだろう。
エリックバーガーは、早期帰還について、いくつかの問題点を掲げているので見ていこう。
「NASA は、クルー 10 の 4 人の宇宙飛行士がクルー 9 の出発前に到着することを強く望んでいます。」
・クルー 9 が早く出発すると、宇宙ステーションにはドン ペティットという 1 人の宇宙飛行士しか残らなくなってしまうから
・・宇宙ステーションの米国部分を運用するために NASA の宇宙飛行士が 1 人しかいないというのは、決して最適な状況ではありません。
・・ペティットを困難な立場に追い込む
・・3 月に予定されていた船外活動がキャンセル
・・ノースロップ グラマンの貨物宇宙船の出発準備を行う人が 1 人だけ
シグナスの対応は、確かに問題かもしれない。
「ゴミを積み込むのには時間がかかります。さまざまな理由から、すべてを特定のバッグに特定の場所に詰めなければなりません」
「たとえば、廃棄するバッテリーは耐火容器に入れなければなりません。適切な重心を維持するために、バッグは特定の場所に積み込む必要があります。そして、前回の廃棄飛行以来、すでに7人の乗組員分のゴミが積み込まれています。」
まだあるようだな。
・・クルー10号が3月下旬の打ち上げ予定日からさらに遅れた場合
・・・ペティットはロシアのソユーズ宇宙船で宇宙ステーションに飛び、4月20日に帰還する予定
・・ソユーズ宇宙船は軌道上に210日間留まることが認定されており、4月20日は打ち上げからすでに221日目
・・4月20日はおそらくこのミッションの厳密な終了日かも
つまりだな、クルー9を早期帰還させ、さらに3月25日のクルー10の打ち上げが大幅に遅れ4月21日以降になれば、ISSはもぬけの殻になると言っているわけだ。
それって、何か不都合なんだろうか?。
詳しく調べていないんだが、2000年以降、ISSが無人で放置されたことはないようだ。
少なくとも短期間であれば、無人運用は可能だろうし、その後の再開にも支障はないと思われる(未確認)。
むしろ、問題なのはISSが継続的に有人運用され続けているという記録が途絶えることの方だろうな。
まあ、どうでもいいんですが。
いくつかの問題はあるとしても、クルー9を早期に帰還させ、トランプとマスクのおもちゃにする(そういうことかあ?)というのは、実現不可能ではない。
シグナスへのごみの積み込みについても、ロシアの宇宙飛行士に手伝ってもらえれば、何の問題もないだろう(未確認)。
たとえ、クルー10の打ち上げがさらに遅れて4月21日以降になったとしても、致命的な問題は起こらない。
船外活動のキャンセルや、継続している実験の中止は想定内だ。
そういう話は、一般人には分かりづらい。
宇宙飛行士が取り残されていて、一日も早く帰還させるという政治的パフォーマンスの方が重要だ(そうなのかあ?)。
トランプは、1期目の時も、SLSの打ち上げを早めさせようとしたからな。
彼にとって、宇宙開発は米国第一主義を具現するツールに過ぎない。
その価値は、科学でも継続する記録でも、実は宇宙飛行士の健康とかでもない。
政治的パフォーマンスを最大化することだけが、莫大な予算を使って人間を宇宙に送り出している理由だ。
(トランプ大統領、マスク氏に「取り残された」ISSの宇宙飛行士を帰還させるよう指示 スペースXはすでに帰還を計画)
https://spacenews.com/trump-tells-musk-to-bring-back-stranded-iss-astronauts-spacex-already-planned-to-return/
「私はイーロン・マスク氏とスペースXに、バイデン政権によって事実上宇宙に置き去りにされた2人の勇敢な宇宙飛行士を『回収』するよう依頼したところだ」と同氏は書いた。「彼らは宇宙ステーションで何ヶ月も待っている。イーロンはもうすぐ出発する。全員が無事であることを願う。イーロン、幸運を!!!」
マスクに続いて、トランプもそのことを確認している。
この記事の末尾には、2人のクルーをISSに留める決定について政治介入がなかったことが明記されている。
「NASAの前幹部は、ホワイトハウスは昨年夏、彼らを宇宙ステーションに留めるという決定に影響を与えなかったと述べた。」
「「個人的な立場から言えば、この決定に政治は一切関係していないと断言できます」と当時のNASA長官ビル・ネルソン氏は8月に語った。「政治は全く関係ありません」」
この政治的介入の不作為こそ、トランプが突こうとしている前政権のチョンボだというわけだ。
が、この一連の動きに対して、NASAは冷静に振る舞っている。
(NASAはクルー9号の即時帰還を否定し、宇宙飛行士は「可能な限り早く」帰還すると述べている)
https://spacenews.com/nasa-rules-out-immediate-crew-9-return-saying-astronauts-will-come-back-as-soon-as-practical/
「NASAとスペースXは、スペースXクルー9号の宇宙飛行士スニ・ウィリアムズとブッチ・ウィルモアをできるだけ早く安全に帰還させるべく迅速に作業を進めている。また、遠征間の引き継ぎを完了するためクルー10号の打ち上げ準備も進めている」(NASA)
「この声明は、NASAが以前に発表した計画とほぼ一致している。その計画では、ウィリアムズ氏とウィルモア氏は、現在ISSにドッキングしているクルー9のクルードラゴン宇宙船で帰還し、NASAの宇宙飛行士ニック・ヘイグ氏とロスコスモスのアレクサンドル・ゴルブノフ氏も、9月にクルー9でISSに到着していた。地球への帰還は4月上旬と予想されており、ISSの乗組員間での引き継ぎが可能になるクルー10の打ち上げ後となる。」
「注目すべきは、この声明では、クルー10号の打ち上げ前にクルー9号が直ちに帰還する可能性は排除されているように見えることだ。」
「現在4月にも予定されているアクシオムスペースの民間宇宙飛行士によるAx-4ミッションに使う予定のクルードラゴンを代わりに使用する可能性がある」(業界筋)
せいぜいそんなもんだろう。
「マスク氏もトランプ氏も、最初の投稿以来、コメントについて詳しく述べておらず、NASAの声明にも反応していない。」
この件については、書きかけては保留にしていたんだが、追記するにしても、一応ブログに上げておくことにした。
もしかすると、単なる「荒らし」で終わるかも知れないが、そうなればトランプとマスクにチョンボが付くことになるからな。
人騒がせな話だ・・・。
が、しかし、NASAの発表と異なる事態になれば、今後の宇宙開発に様々な懸念が生じる。
実は、NASAを巡っては、それを予感させる事態があった・・・。
(第2次トランプ政権はNASAの暫定指導部をめぐる混乱から始まる)
https://spacenews.com/second-trump-administration-begins-with-confusion-on-acting-nasa-leadership/
「第2次トランプ政権は、人類を火星に送るという雄弁な言葉で始まったが、NASAを暫定的に率いるのは誰かという点では混乱があった。」
「トランプ大統領の演説中、NASAはウェブサイトを更新し、ジム・フリー氏を長官代行として掲載」
「ウェブサイトには他の人事も掲載されており、探査システム開発担当次官のキャシー・コーナー氏が、フリー氏の長官代行の職を暫定的に引き継ぐ。コーナー氏の副官であるロリ・グレイズ氏が、探査システム開発担当次官代行に就任した。」
NASAはお役所だからな。
こういう人事は、まあ、妥当なところだろう。
「しかし、就任直後の声明で、ホワイトハウスはジャネット・ペトロ氏が暫定長官を務めると発表した。ペトロ氏はフロリダ州ケネディ宇宙センターの所長」
いわば、大どんでん返しをしたわけだ。
しかも、公式の発表の後にだ。
「従来は次官が長官代行を務めてきたが、そうしなければならないという規定はなく、大統領には他の職員を任命して長官代行として機関を率いる権限がある。」
まあ、そりゃあそうなんだろうけど・・・。
「矛盾した公式声明の原因は不明」
「「トランプ政権は月曜日付けでジャネット・ペトロ氏をNASAの暫定長官に任命した」とNASAの広報担当者は1月20日遅くの声明で述べたが、詳細は明らかにしなかった。」
NASAの次期長官には、ジャレッドアイザックマンが指名されている。
就任するためには議会の承認が必要だ。
「アイザックマン氏の指名は上院商務委員会で審議される予定だが、同委員会はまだ同氏の承認公聴会の日程を発表していない。」
まあいい。
トランプとマスクに振り回されるNASAが、スターライナーのCFTで取り残された2人のクルーを、いつ回収するのかは知らない。
8日間の予定が8か月になり、さらに10か月になろうとしているけど、大きな問題にはならなかった。
そこに土足で踏み込んで、大いに荒らしているわけだ。
外野で見ている浮沈子から見ればそれはそれで面白いけど、いろいろやりくりしている当事者にしてみれば、余計なことしやがって!な状況に違いない。
むしろ、新造船の製造に手間取っているS社こそ、帰還を遅らせている張本人なわけで、この一連の騒ぎはそのことから目を逸らそうとする企みかも知れない(だとしたら、余りに稚拙だ)。
まあ、どうでもいいんですが。
この件、何かあればまた書く。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
(長い間計画されていた2人の宇宙飛行士の宇宙からの帰還は今や政治問題となっている)
https://arstechnica.com/space/2025/01/the-long-planned-return-of-two-astronauts-from-space-is-now-a-political-issue/
「NASAは、ウィリアムズ氏とウィルモア氏がボーイング社のスターライナー宇宙船で軌道に打ち上げられてからほぼ8か月が経った今もなお宇宙にいるという事実を理由にNASAとバイデン政権に恥をかかせようとするトランプ大統領の不誠実な政治的取り組みの影響を封じ込めようと奮闘している。」
「これはいろいろな理由でかなりおかしいことだが、そのうちの 2 つが最大の理由」
・ウィリアムズとウィルモアは取り残されたわけではない
・2人は2月下旬、つまり今からほんの数週間後に帰還する予定だった
第1の理由はNASAの従来からの主張そのものだ。
第2の理由は、つまり、帰還が予定より遅れているのはS社の新造船の問題だということなわけだ。
エリックバーガーは、まあ、至極常識的だから、誰もが考えそうな経路で思考している。
その局面局面では確かにそうだが、振り返って考えてみれば、少なくともスターライナーで帰還しないという決定をした後、スニとブッチを連れ戻すため「だけ」にクルードラゴンを飛ばすという選択をしなかった理由が問われるかもしれない。
つまり、クルー9を止めて、完全な「救助船」として飛ばすべきではなかったかということだ。
もちろん、そうなればISSのアメリカクルーが1人になる期間が長くなり、その間に行われる実験が出来なくなるし、船外活動を伴うISSのメンテナンスにも支障が出るだろうが、それとの比較考量がなされたのかどうかが問題だな。
宇宙に取り残されたわけではないというのは、確かに理屈の上では帰還船が用意されていたという意味ではそうなるけど、スターライナーでは安全な帰還が見込めないからこそ残されたわけだしな。
クルー9は別の2人のクルーが乗っているから、到着後に相当の理由がなければすぐに戻ることはできない前提で打ち上げられている(救助船じゃないし)。
その意味では、取り残されたという状況は変わらない。
水素漏れを抱えたスターライナーのCFTが決行された際、スニとブッチがISSに取り残されることを想定したプランBが用意されていたかどうかは知らないが、その後の経緯を考えれば「んなもんはなかった」と考えるのが自然だ。
スターライナーに不具合が生じて、ヤバいから無人で帰還させようという判断には、浮沈子的には問題はないと認識している。
それは全く正しい。
そこに、政治的介入がなかったというのも、おそらく事実に違いない。
しかし、その失敗をフォローする方法として、現在の選択が最良だったかどうかの判断は問われていい。
特に、直ちに救助船を打ち上げて、スニとブッチを帰還させるという方法を採らせなかった政治的「不介入」の是非は問われていいかも知れない。
お役所としてのNASAの行政判断としては、浮沈子も妥当と思ってるけど、「分かりやすい物語」を好む米国の一般の人々に、宇宙での科学的成果やISSの管理上の問題を、救助船を出さない理由として認めてもらえるかどうかは何とも言えないからな。
NASAの判断は、予算を効率的に運用する義務を負うお役所としての判断だ。
取り残されたスニとブッチに予定外の任務を負わせ、8か月間(当初)のISS「監禁」を申し渡すことで、その義務を果たしている。
それはかわいそうだ、ひどい話だというほうが、むしろひどい話というのは、「理屈」の上のことで、お役所としてのNASAが非難されたって、取り残された宇宙飛行士を1日も早く連れ戻すことを優先すべきだったという「人情」には勝てない気もする(そうなのかあ?)。
「はっきりさせておきたいのは、スペースXとクルードラゴンは現在、NASAが国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を確実に送り届ける唯一の手段を提供しているということだ。」
これはこれで、全くその通りなんだが、そして、浮沈子は未確認なんだが、ソユーズ宇宙船を手配して、救助船にすることが出来たのではないかという問題は残っている。
ロシアがそれに応じたかどうか、そもそも、ソユーズ宇宙船にそんな余裕があったのか、場合によってはロシアのミッションに影響を及ぼす選択をなし得たのかどうかは知らない。
しかし、おそらく、政治的にバイデンがプーチンに頭を下げて救助を依頼していないことだけは確かだろう(ウクライナ問題発生後、コンタクトしていないと言われる)。
つまりだな、スターライナーを無人で帰還させる判断の後始末を、NASAの行政判断に委ねたというバイデン政権の不作為の政治判断が問われているわけだ。
そこを突かれている。
NASAは、ISSを政治問題化させないというスタンスを崩さないだろう。
ロシアとの協力なくして、この事業を進めることはできないからな。
ウクライナ問題を抱えて、米ロ両国はISSに対してビミョーなかじ取りを行っている(当初はロゴージンの乱(?)とかもあったけどな)。
トランプが、そこに手を突っ込み始めたというのは、単発的なパフォーマンスだけではないかも知れない。
「トランプ氏とマスク氏がこの問題を持ち出した理由は正確には不明だが、新政権が宇宙での短期的な「勝利」を望んでいた可能性はある。」
「この問題に関してマスクとトランプがどれだけ勇ましい態度を見せたとしても、最もありそうな結末は、彼らがNASAが何ヶ月も前から立ててきた計画に従うだけだろうということだ。」
エリックバーガーの見立ては、至極常識的だ。
筋も通っているし、浮沈子的にも納得できるが、何か大きなものを見落としているような気がしないでもない。
例えば、ISSそのものを早期に軌道離脱させるとかな。
米国第一主義にとって、国際協力の象徴であるISS自体が、政権にとっては目障りな存在という見方も出来る(未確認)。
第1期トランプ政権では、宇宙関係はペンス副大統領任せにして、せいぜいSLSの前倒しくらいしか横やりを入れなかったけど、2期目ではイーロンマスクが側近だからな。
S社はISSタクシーや貨物輸送で利益を上げているけど、ISSに投じられている金をごっそり頂ければ、そっちの利益の方が大きいだろう(未確認)。
S社の設立目的は火星移民で、そのプランの中にISSはないからな(もちろん、月もない)。
つまり、今回の「早期救出事件」は、NASAの有人宇宙開発のグランドデザイン(ISS+アルテミス計画)に対する第2期トランプ政権の宣戦布告に過ぎないということだ。
そういう目で見ると、今回のNASAのコメントは、踏み絵を踏んだ(踏めなかった?)ことになる。
そうか、あくまでもグランドデザインに従おうということなわけだな・・・。
ジャレッドアイザックマンが議会承認されて送り込まれる時、彼もまた踏み絵を踏まされることになるだろう。
議会と政権の間に立つお役所のトップとして、困難なかじ取りになる。
宇宙開発はディールには馴染まない。
高度な技術性、継続性、専門性を要求される分野だ。
しかし、その基本的構造が、競争を排除して効率的な予算運用を妨げ、一方では議会のおもちゃにされてきたことも確かだ。
トランプ2.0は、そこに手を突っ込み始めている。
バイデン政権の問題を突くというより、従来のNASAの在り方に対する宣戦布告、宇宙開発を政治目的に利用するという明確な意思の表明だ。
ISSが米国第一主義にそぐわないということなら、一刻も早く落とすのがよろしい(そうなのかあ?)。
もしかするともしかして、クルー10自体が飛ばない可能性すらある。
そうであれば、クルー9を明日にでも地上に降ろして「救助」するというシナリオが、がぜんリアリティを持ってくるからな。
我が国の「きぼう」やESAのコロンバスは閉鎖に追い込まれるだろう。
制御落下の準備が整うまでの間、ロシアモジュールでリブーストするだけの運用になるかも知れない。
やれやれ・・・。
もちろん、これらは浮沈子の妄想に過ぎない。
昨日のように今日があり、今日のように明日がある。
そうあって欲しいと願うのは、庶民の偽らざるささやかな希望だ。
しかし、現実はオレシュニクが飛んできたり、対外支援がぶった切られてNGOの活動が停止に追い込まれる始末だ。
国際協力というのは、何か金科玉条のように捉えられているけど、ぶっちゃけ妥協の産物に過ぎない(そうなのかあ?)。
一国支配による征服、植民地化が出来ずに、仕方ないから協力するという構図が正しいだろう(ホントかよ!?)。
ISSだって、中国の参加はなく、米国の地球低軌道におけるプレゼンスの象徴だからな。
フリーダム構想からソ連崩壊を経て変化した妥協の産物だ。
言ってみれば、政治目的を果たすための道具として始まった(国際協力というのは、後付けの話だ)。
モジュール構造であるとはいえ、現在では相互に依存しているわけで、一体としての運用が求められている。
気に入らなければ、丸ごと落とすしか手はない。
イーロンマスクは、それを踏まえて「荒らし」を掛けているのかも知れない。
この話が続くのか、このまま立ち消えになるかは分からない。
今後の推移によっては、浮沈子の妄想が現実として浮かび上がってくる可能性もある。
まあ、例によって、当てにはならんけどな・・・。
(マスク氏:トランプ大統領は元スターライナー宇宙飛行士の地球への早期帰還を要求)
https://spaceflightnow.com/2025/01/28/musk-president-trump-calls-for-fast-track-return-to-earth-of-the-former-starliner-astronauts/
「「フリーダム」と名付けられたクルードラゴン宇宙船が、NASAの宇宙飛行士ブッチ・ウィルモア氏とスニ・ウィリアムズ氏を乗せて国際宇宙ステーションから早期に離脱する可能性があることを示唆」(スペースXの創設者イーロン・マスク氏)
「米国大統領はスペースXに対し、宇宙ステーションに取り残された2人の宇宙飛行士をできるだけ早く帰還させるよう要請した。我々はそうするつもりだ」「バイデン政権が彼らをこれほど長い間そこに放置していたのはひどいことだ」(同上)
「クルー10ミッションを軌道に乗せるために設計されたクルードラゴン(計画では5機目で最後の就航予定のドラゴン)に問題が発生し、打ち上げは3月下旬まで延期」
クルー10に使用されるクルードラゴンは新造船だ。
「新しい宇宙船の製造、組み立て、テスト、そして最終的な統合は、細部にまで細心の注意を払う必要がある骨の折れる作業です」(NASAのCCPマネージャー、スティーブ・スティッチ氏)
「私たちのミッションをサポートするためにドラゴン艦隊を拡大してくれたスペースXチームの懸命な努力と、新しいカプセルの飛行準備を完了するために協力するステーションプログラムと遠征クルーの柔軟性に感謝します。」(同上)
まあ、それはそれでいいんですが。
イーロンマスクが、なぜ早期の帰還を行おうとしているのかは不明だ。
憶測はいくらでもできるだろうが、ISSミッションは今でもリスクが高い。
S社が、新造船の問題点を洗い出し、改修しようとしているのを見ても分かる通り、また、スターライナーが遅れに遅れているのを見ても分かるように、過酷な宇宙空間に生卵(宇宙飛行士)乗せて安全に飛ぶためには綿密なチェックを要する。
クルー10を遅らせればいいだけの話ではないのかあ?。
それを、なぜクルー9の帰還を早める形で行おうとしているのかが解せない。
(なぜイーロン・マスクは、トランプ大統領が取り残された宇宙飛行士2人を帰還させたいと言っているのか?)
https://arstechnica.com/space/2025/01/why-did-elon-musk-just-say-trump-wants-to-bring-two-stranded-astronauts-home/
「トランプ氏がスペースX社にウィルモア氏とウィリアムズ氏を早めに返還するよう要請したのは、政治的な理由、つまり彼らの見解ではバイデン政権に恥をかかせるためだった可能性もある。」
ああ、それはあるかもな。
「トランプ氏がNASAに今宇宙飛行士を帰還させるよう要求すれば、クルー9号ミッションはもっと早く地球に帰還できる。」
「このミッション(クルー10)の打ち上げ目標は 2 月から 3 月 25 日に変更されました。」
「以前飛行した別の Dragon (おそらく Axiom-4 ミッションで使用することを意図していた Dragon) を流用する必要がある可能性がある」(情報筋)
まあ、そういうこともあるだろう。
エリックバーガーは、早期帰還について、いくつかの問題点を掲げているので見ていこう。
「NASA は、クルー 10 の 4 人の宇宙飛行士がクルー 9 の出発前に到着することを強く望んでいます。」
・クルー 9 が早く出発すると、宇宙ステーションにはドン ペティットという 1 人の宇宙飛行士しか残らなくなってしまうから
・・宇宙ステーションの米国部分を運用するために NASA の宇宙飛行士が 1 人しかいないというのは、決して最適な状況ではありません。
・・ペティットを困難な立場に追い込む
・・3 月に予定されていた船外活動がキャンセル
・・ノースロップ グラマンの貨物宇宙船の出発準備を行う人が 1 人だけ
シグナスの対応は、確かに問題かもしれない。
「ゴミを積み込むのには時間がかかります。さまざまな理由から、すべてを特定のバッグに特定の場所に詰めなければなりません」
「たとえば、廃棄するバッテリーは耐火容器に入れなければなりません。適切な重心を維持するために、バッグは特定の場所に積み込む必要があります。そして、前回の廃棄飛行以来、すでに7人の乗組員分のゴミが積み込まれています。」
まだあるようだな。
・・クルー10号が3月下旬の打ち上げ予定日からさらに遅れた場合
・・・ペティットはロシアのソユーズ宇宙船で宇宙ステーションに飛び、4月20日に帰還する予定
・・ソユーズ宇宙船は軌道上に210日間留まることが認定されており、4月20日は打ち上げからすでに221日目
・・4月20日はおそらくこのミッションの厳密な終了日かも
つまりだな、クルー9を早期帰還させ、さらに3月25日のクルー10の打ち上げが大幅に遅れ4月21日以降になれば、ISSはもぬけの殻になると言っているわけだ。
それって、何か不都合なんだろうか?。
詳しく調べていないんだが、2000年以降、ISSが無人で放置されたことはないようだ。
少なくとも短期間であれば、無人運用は可能だろうし、その後の再開にも支障はないと思われる(未確認)。
むしろ、問題なのはISSが継続的に有人運用され続けているという記録が途絶えることの方だろうな。
まあ、どうでもいいんですが。
いくつかの問題はあるとしても、クルー9を早期に帰還させ、トランプとマスクのおもちゃにする(そういうことかあ?)というのは、実現不可能ではない。
シグナスへのごみの積み込みについても、ロシアの宇宙飛行士に手伝ってもらえれば、何の問題もないだろう(未確認)。
たとえ、クルー10の打ち上げがさらに遅れて4月21日以降になったとしても、致命的な問題は起こらない。
船外活動のキャンセルや、継続している実験の中止は想定内だ。
そういう話は、一般人には分かりづらい。
宇宙飛行士が取り残されていて、一日も早く帰還させるという政治的パフォーマンスの方が重要だ(そうなのかあ?)。
トランプは、1期目の時も、SLSの打ち上げを早めさせようとしたからな。
彼にとって、宇宙開発は米国第一主義を具現するツールに過ぎない。
その価値は、科学でも継続する記録でも、実は宇宙飛行士の健康とかでもない。
政治的パフォーマンスを最大化することだけが、莫大な予算を使って人間を宇宙に送り出している理由だ。
(トランプ大統領、マスク氏に「取り残された」ISSの宇宙飛行士を帰還させるよう指示 スペースXはすでに帰還を計画)
https://spacenews.com/trump-tells-musk-to-bring-back-stranded-iss-astronauts-spacex-already-planned-to-return/
「私はイーロン・マスク氏とスペースXに、バイデン政権によって事実上宇宙に置き去りにされた2人の勇敢な宇宙飛行士を『回収』するよう依頼したところだ」と同氏は書いた。「彼らは宇宙ステーションで何ヶ月も待っている。イーロンはもうすぐ出発する。全員が無事であることを願う。イーロン、幸運を!!!」
マスクに続いて、トランプもそのことを確認している。
この記事の末尾には、2人のクルーをISSに留める決定について政治介入がなかったことが明記されている。
「NASAの前幹部は、ホワイトハウスは昨年夏、彼らを宇宙ステーションに留めるという決定に影響を与えなかったと述べた。」
「「個人的な立場から言えば、この決定に政治は一切関係していないと断言できます」と当時のNASA長官ビル・ネルソン氏は8月に語った。「政治は全く関係ありません」」
この政治的介入の不作為こそ、トランプが突こうとしている前政権のチョンボだというわけだ。
が、この一連の動きに対して、NASAは冷静に振る舞っている。
(NASAはクルー9号の即時帰還を否定し、宇宙飛行士は「可能な限り早く」帰還すると述べている)
https://spacenews.com/nasa-rules-out-immediate-crew-9-return-saying-astronauts-will-come-back-as-soon-as-practical/
「NASAとスペースXは、スペースXクルー9号の宇宙飛行士スニ・ウィリアムズとブッチ・ウィルモアをできるだけ早く安全に帰還させるべく迅速に作業を進めている。また、遠征間の引き継ぎを完了するためクルー10号の打ち上げ準備も進めている」(NASA)
「この声明は、NASAが以前に発表した計画とほぼ一致している。その計画では、ウィリアムズ氏とウィルモア氏は、現在ISSにドッキングしているクルー9のクルードラゴン宇宙船で帰還し、NASAの宇宙飛行士ニック・ヘイグ氏とロスコスモスのアレクサンドル・ゴルブノフ氏も、9月にクルー9でISSに到着していた。地球への帰還は4月上旬と予想されており、ISSの乗組員間での引き継ぎが可能になるクルー10の打ち上げ後となる。」
「注目すべきは、この声明では、クルー10号の打ち上げ前にクルー9号が直ちに帰還する可能性は排除されているように見えることだ。」
「現在4月にも予定されているアクシオムスペースの民間宇宙飛行士によるAx-4ミッションに使う予定のクルードラゴンを代わりに使用する可能性がある」(業界筋)
せいぜいそんなもんだろう。
「マスク氏もトランプ氏も、最初の投稿以来、コメントについて詳しく述べておらず、NASAの声明にも反応していない。」
この件については、書きかけては保留にしていたんだが、追記するにしても、一応ブログに上げておくことにした。
もしかすると、単なる「荒らし」で終わるかも知れないが、そうなればトランプとマスクにチョンボが付くことになるからな。
人騒がせな話だ・・・。
が、しかし、NASAの発表と異なる事態になれば、今後の宇宙開発に様々な懸念が生じる。
実は、NASAを巡っては、それを予感させる事態があった・・・。
(第2次トランプ政権はNASAの暫定指導部をめぐる混乱から始まる)
https://spacenews.com/second-trump-administration-begins-with-confusion-on-acting-nasa-leadership/
「第2次トランプ政権は、人類を火星に送るという雄弁な言葉で始まったが、NASAを暫定的に率いるのは誰かという点では混乱があった。」
「トランプ大統領の演説中、NASAはウェブサイトを更新し、ジム・フリー氏を長官代行として掲載」
「ウェブサイトには他の人事も掲載されており、探査システム開発担当次官のキャシー・コーナー氏が、フリー氏の長官代行の職を暫定的に引き継ぐ。コーナー氏の副官であるロリ・グレイズ氏が、探査システム開発担当次官代行に就任した。」
NASAはお役所だからな。
こういう人事は、まあ、妥当なところだろう。
「しかし、就任直後の声明で、ホワイトハウスはジャネット・ペトロ氏が暫定長官を務めると発表した。ペトロ氏はフロリダ州ケネディ宇宙センターの所長」
いわば、大どんでん返しをしたわけだ。
しかも、公式の発表の後にだ。
「従来は次官が長官代行を務めてきたが、そうしなければならないという規定はなく、大統領には他の職員を任命して長官代行として機関を率いる権限がある。」
まあ、そりゃあそうなんだろうけど・・・。
「矛盾した公式声明の原因は不明」
「「トランプ政権は月曜日付けでジャネット・ペトロ氏をNASAの暫定長官に任命した」とNASAの広報担当者は1月20日遅くの声明で述べたが、詳細は明らかにしなかった。」
NASAの次期長官には、ジャレッドアイザックマンが指名されている。
就任するためには議会の承認が必要だ。
「アイザックマン氏の指名は上院商務委員会で審議される予定だが、同委員会はまだ同氏の承認公聴会の日程を発表していない。」
まあいい。
トランプとマスクに振り回されるNASAが、スターライナーのCFTで取り残された2人のクルーを、いつ回収するのかは知らない。
8日間の予定が8か月になり、さらに10か月になろうとしているけど、大きな問題にはならなかった。
そこに土足で踏み込んで、大いに荒らしているわけだ。
外野で見ている浮沈子から見ればそれはそれで面白いけど、いろいろやりくりしている当事者にしてみれば、余計なことしやがって!な状況に違いない。
むしろ、新造船の製造に手間取っているS社こそ、帰還を遅らせている張本人なわけで、この一連の騒ぎはそのことから目を逸らそうとする企みかも知れない(だとしたら、余りに稚拙だ)。
まあ、どうでもいいんですが。
この件、何かあればまた書く。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
(長い間計画されていた2人の宇宙飛行士の宇宙からの帰還は今や政治問題となっている)
https://arstechnica.com/space/2025/01/the-long-planned-return-of-two-astronauts-from-space-is-now-a-political-issue/
「NASAは、ウィリアムズ氏とウィルモア氏がボーイング社のスターライナー宇宙船で軌道に打ち上げられてからほぼ8か月が経った今もなお宇宙にいるという事実を理由にNASAとバイデン政権に恥をかかせようとするトランプ大統領の不誠実な政治的取り組みの影響を封じ込めようと奮闘している。」
「これはいろいろな理由でかなりおかしいことだが、そのうちの 2 つが最大の理由」
・ウィリアムズとウィルモアは取り残されたわけではない
・2人は2月下旬、つまり今からほんの数週間後に帰還する予定だった
第1の理由はNASAの従来からの主張そのものだ。
第2の理由は、つまり、帰還が予定より遅れているのはS社の新造船の問題だということなわけだ。
エリックバーガーは、まあ、至極常識的だから、誰もが考えそうな経路で思考している。
その局面局面では確かにそうだが、振り返って考えてみれば、少なくともスターライナーで帰還しないという決定をした後、スニとブッチを連れ戻すため「だけ」にクルードラゴンを飛ばすという選択をしなかった理由が問われるかもしれない。
つまり、クルー9を止めて、完全な「救助船」として飛ばすべきではなかったかということだ。
もちろん、そうなればISSのアメリカクルーが1人になる期間が長くなり、その間に行われる実験が出来なくなるし、船外活動を伴うISSのメンテナンスにも支障が出るだろうが、それとの比較考量がなされたのかどうかが問題だな。
宇宙に取り残されたわけではないというのは、確かに理屈の上では帰還船が用意されていたという意味ではそうなるけど、スターライナーでは安全な帰還が見込めないからこそ残されたわけだしな。
クルー9は別の2人のクルーが乗っているから、到着後に相当の理由がなければすぐに戻ることはできない前提で打ち上げられている(救助船じゃないし)。
その意味では、取り残されたという状況は変わらない。
水素漏れを抱えたスターライナーのCFTが決行された際、スニとブッチがISSに取り残されることを想定したプランBが用意されていたかどうかは知らないが、その後の経緯を考えれば「んなもんはなかった」と考えるのが自然だ。
スターライナーに不具合が生じて、ヤバいから無人で帰還させようという判断には、浮沈子的には問題はないと認識している。
それは全く正しい。
そこに、政治的介入がなかったというのも、おそらく事実に違いない。
しかし、その失敗をフォローする方法として、現在の選択が最良だったかどうかの判断は問われていい。
特に、直ちに救助船を打ち上げて、スニとブッチを帰還させるという方法を採らせなかった政治的「不介入」の是非は問われていいかも知れない。
お役所としてのNASAの行政判断としては、浮沈子も妥当と思ってるけど、「分かりやすい物語」を好む米国の一般の人々に、宇宙での科学的成果やISSの管理上の問題を、救助船を出さない理由として認めてもらえるかどうかは何とも言えないからな。
NASAの判断は、予算を効率的に運用する義務を負うお役所としての判断だ。
取り残されたスニとブッチに予定外の任務を負わせ、8か月間(当初)のISS「監禁」を申し渡すことで、その義務を果たしている。
それはかわいそうだ、ひどい話だというほうが、むしろひどい話というのは、「理屈」の上のことで、お役所としてのNASAが非難されたって、取り残された宇宙飛行士を1日も早く連れ戻すことを優先すべきだったという「人情」には勝てない気もする(そうなのかあ?)。
「はっきりさせておきたいのは、スペースXとクルードラゴンは現在、NASAが国際宇宙ステーションに宇宙飛行士を確実に送り届ける唯一の手段を提供しているということだ。」
これはこれで、全くその通りなんだが、そして、浮沈子は未確認なんだが、ソユーズ宇宙船を手配して、救助船にすることが出来たのではないかという問題は残っている。
ロシアがそれに応じたかどうか、そもそも、ソユーズ宇宙船にそんな余裕があったのか、場合によってはロシアのミッションに影響を及ぼす選択をなし得たのかどうかは知らない。
しかし、おそらく、政治的にバイデンがプーチンに頭を下げて救助を依頼していないことだけは確かだろう(ウクライナ問題発生後、コンタクトしていないと言われる)。
つまりだな、スターライナーを無人で帰還させる判断の後始末を、NASAの行政判断に委ねたというバイデン政権の不作為の政治判断が問われているわけだ。
そこを突かれている。
NASAは、ISSを政治問題化させないというスタンスを崩さないだろう。
ロシアとの協力なくして、この事業を進めることはできないからな。
ウクライナ問題を抱えて、米ロ両国はISSに対してビミョーなかじ取りを行っている(当初はロゴージンの乱(?)とかもあったけどな)。
トランプが、そこに手を突っ込み始めたというのは、単発的なパフォーマンスだけではないかも知れない。
「トランプ氏とマスク氏がこの問題を持ち出した理由は正確には不明だが、新政権が宇宙での短期的な「勝利」を望んでいた可能性はある。」
「この問題に関してマスクとトランプがどれだけ勇ましい態度を見せたとしても、最もありそうな結末は、彼らがNASAが何ヶ月も前から立ててきた計画に従うだけだろうということだ。」
エリックバーガーの見立ては、至極常識的だ。
筋も通っているし、浮沈子的にも納得できるが、何か大きなものを見落としているような気がしないでもない。
例えば、ISSそのものを早期に軌道離脱させるとかな。
米国第一主義にとって、国際協力の象徴であるISS自体が、政権にとっては目障りな存在という見方も出来る(未確認)。
第1期トランプ政権では、宇宙関係はペンス副大統領任せにして、せいぜいSLSの前倒しくらいしか横やりを入れなかったけど、2期目ではイーロンマスクが側近だからな。
S社はISSタクシーや貨物輸送で利益を上げているけど、ISSに投じられている金をごっそり頂ければ、そっちの利益の方が大きいだろう(未確認)。
S社の設立目的は火星移民で、そのプランの中にISSはないからな(もちろん、月もない)。
つまり、今回の「早期救出事件」は、NASAの有人宇宙開発のグランドデザイン(ISS+アルテミス計画)に対する第2期トランプ政権の宣戦布告に過ぎないということだ。
そういう目で見ると、今回のNASAのコメントは、踏み絵を踏んだ(踏めなかった?)ことになる。
そうか、あくまでもグランドデザインに従おうということなわけだな・・・。
ジャレッドアイザックマンが議会承認されて送り込まれる時、彼もまた踏み絵を踏まされることになるだろう。
議会と政権の間に立つお役所のトップとして、困難なかじ取りになる。
宇宙開発はディールには馴染まない。
高度な技術性、継続性、専門性を要求される分野だ。
しかし、その基本的構造が、競争を排除して効率的な予算運用を妨げ、一方では議会のおもちゃにされてきたことも確かだ。
トランプ2.0は、そこに手を突っ込み始めている。
バイデン政権の問題を突くというより、従来のNASAの在り方に対する宣戦布告、宇宙開発を政治目的に利用するという明確な意思の表明だ。
ISSが米国第一主義にそぐわないということなら、一刻も早く落とすのがよろしい(そうなのかあ?)。
もしかするともしかして、クルー10自体が飛ばない可能性すらある。
そうであれば、クルー9を明日にでも地上に降ろして「救助」するというシナリオが、がぜんリアリティを持ってくるからな。
我が国の「きぼう」やESAのコロンバスは閉鎖に追い込まれるだろう。
制御落下の準備が整うまでの間、ロシアモジュールでリブーストするだけの運用になるかも知れない。
やれやれ・・・。
もちろん、これらは浮沈子の妄想に過ぎない。
昨日のように今日があり、今日のように明日がある。
そうあって欲しいと願うのは、庶民の偽らざるささやかな希望だ。
しかし、現実はオレシュニクが飛んできたり、対外支援がぶった切られてNGOの活動が停止に追い込まれる始末だ。
国際協力というのは、何か金科玉条のように捉えられているけど、ぶっちゃけ妥協の産物に過ぎない(そうなのかあ?)。
一国支配による征服、植民地化が出来ずに、仕方ないから協力するという構図が正しいだろう(ホントかよ!?)。
ISSだって、中国の参加はなく、米国の地球低軌道におけるプレゼンスの象徴だからな。
フリーダム構想からソ連崩壊を経て変化した妥協の産物だ。
言ってみれば、政治目的を果たすための道具として始まった(国際協力というのは、後付けの話だ)。
モジュール構造であるとはいえ、現在では相互に依存しているわけで、一体としての運用が求められている。
気に入らなければ、丸ごと落とすしか手はない。
イーロンマスクは、それを踏まえて「荒らし」を掛けているのかも知れない。
この話が続くのか、このまま立ち消えになるかは分からない。
今後の推移によっては、浮沈子の妄想が現実として浮かび上がってくる可能性もある。
まあ、例によって、当てにはならんけどな・・・。
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