夜明け前:潜水計画とダイビングコンピューターの変遷を追う:GF(グラディエントファクター)に挑む:その2 ― 2021年04月01日 19:18
夜明け前:潜水計画とダイビングコンピューターの変遷を追う:GF(グラディエントファクター)に挑む:その2
<おことわり>ーーーーーーーーーー
この記事は、テクニカルダイビングの話題です。指導団体によるトレーニングを受けずにハイリスクのダイビングを行う参考にはなりません。浮沈子も、現在トレーニング中の身です。誤った情報が含まれている恐れが多分にあります。ご注意ください!。
ーーーーーーーーーー
先日から、GFのことを調べ始めている。
様々な記事を当たると、いや、ビュールマンは古いとか、サイレントバブルを考慮しなければならないとか、ディープストップが良いとか、悪いとか、そういう話になっているようだ。
最近は、更に新手のモデルも出てきているようで、百花繚乱だな。
本家ZH-L16にもベーシックなA(保守性なし)、やや保守性を持たせ、広く普及しているB、ダイコンとかに人気のCといった派生形がある。
(Bühlmann解凍アルゴリズム:バージョン)
https://en.wikipedia.org/wiki/B%C3%BChlmann_decompression_algorithm#Versions
「・ZHL-16またはZH-L16A:元の16コンパートメントアルゴリズム(保守性はまったくありません)。
・ZHL-16B:主に中央のコンパートメントで少し控えめな「a」値を使用して、ダイブテーブルの作成用に変更された16コンパートメントアルゴリズム。高性能プロセッサーユニットを搭載したダイブコンピューターで最近使用されていますが、ZHL16Cと比較して柔軟性があります(特にハイテクダイビングで)。
・ZHL-16C:ダイブコンピューターで「パッケージ」として使用することを目的とした、中間および高速の「a」値をさらに変更した16コンパートメントアルゴリズム。ほとんどすべての低レベルプロセッサユニットで使用できますが、ZHL16Bと比較して柔軟性が低くなります。」
ちなみに、浮沈子の初代ペトレルはZHL-16C(GF付き)を採用している。
GFというのは、ビュールマンの16組織コンパートメントモデルの派生形の一つだ。
えーと、一つといっていいかどうかには問題があるかも。
30/70とか、30/80とか、2つの数字(パーセント表示)の組み合わせで、何通りものバリエーションがあるからな。
前回は、初めに出てくるのが深場での保守性を示すGFローセッティング(30とか)で、後ろにくっ付いているのがDFハイセッティング(80とか)であることを、グラフを見ながら確認した。
このグラフは、もちろん、実際のダイビングに使うものではない。
これを持ち込んだとしても、ダイバーの役には立たない。
組織コンパートメントごとの最大許容溶解度を示すM値の深度による推移を示すグラフと、水中の環境圧を示すグラフとの間を、上下(これも混乱するが)に保守率を示すルーラーを置いて、ウニウニと変化させて、保守性(コンサバティズム)を調整するわけだ。
右上のルーラーが示しているのがGFローセッティング、左下のルーラーが示しているのがGFハイセッティングということになる。
このグラフは、GFの概念を分かりやすく説明するためのもので、これをラミネートして水中に持ち込んで参照するためのものではない。
どちらかといえば、潜水計画を立てる時のコンピューターソフトウェアプログラムを書くプログラマーとか、ダイコンの内蔵ソフトウェアを作る際に、基本的な理解を得るための参考図だ。
ダイバーにとって分かりやすいことを目的としているわけではない。
水中は、とにかく忙しいからな。
ややこしいことは、全て陸上で済ませて、水中では余計なことはなるべくしないのがよろしい。
器材のチェック、耳抜き、深度管理、チームの確認、時間の確認、浮力の調整、また耳抜き、マスククリア、残圧の確認、デコタンクのバルブ開閉、浮力の調整、ああ、また耳抜き・・・。
ダイバーに必要なのは、いつ浮上するのか、どのくらいの速度で浮上するのか、何mまで浮上するのか、そこにどれだけ留まるのか、計画とのズレは許容範囲なのか、プランBに変更すべきなのか、修正の範囲内で、元のプランに戻れるのか、ガス量は十分なのか、そのズレをどう管理するかなどなど、実戦的な運用面での情報であって、M値が何だとか、GFが何だとかは、陸上での世迷言に過ぎない(そうなのかあ?)。
自分たちの命が掛かっているにもかかわらず、概ね、減圧理論には疎い(まあ、分かる気もする)。
浮沈子は、ダイビングをスポーツとして考えることは少ないが(陸上の器材運搬は、確かにスポーツ的要素は満載だがな)、テッキーの多くは鍛えた身体と鋼の神経の持ち主だからな。
水中でのストレスだけでなく、陸上での仲間内からのプレッシャーにめげずに、必要な準備を淡々とこなしたり、そもそもこのダイビングをするかしないかなどの判断を下していかなければならない。
冷静沈着慎重な一方、そういうリスキーなダイビングを実行する大胆さや情熱も必要だ。
ダイブプロファイルのグラフ(特に、上の方に赤い線が入っているヤツとか)を見せれば、ハアハアして興奮するかもしれないけど、GFのグラフで発情するとは思えない(未確認?)。
そのくせ、人が30/70のデフォルト設定で潜っていると聞くと、なぜそうなのかとか、保守的過ぎねえかとか(その設定でレクリエーショナルで深場潜ると、概ねデコ出しになるし)、某指導団体は違う数字だとか(知らねーって!)、いろいろ突っ込んでくるのだ。
まあ、どうでもいいんですが。
(ダイビングプランニングの進化)
https://www.shearwater.com/monthly-blog-posts/evolution-of-dive-planning/
「目次(?)
・昔は...
・新しい夜明け
・リスクのリアルタイム管理」
まだ、ちゃんと読んでいないけど、この記事のグラフが特徴的だったので引用した(GFローセッティングのルーラーが縦になっているけど、本質的な違いはない:<以下追加>参照)。
アセント開始してからの最初の線が、環境圧のグラフからスタートしていて、しかも斜めになっているので、こっちの方がリアリティがあるな。
浮沈子が行っている減圧ダイビングは、この記事で言えば夜明け前だな。
テーブルと手計算で潜水計画を立て、予備のプランも立て、ノートとスレートに書き、ちびっとだけデコが出るようにして、一応、パソコンの中の減圧ソフトをグリグリして悲惨な計算違いがないかを確認して、でもって、そっちの潜水計画も予備的に書いておいて潜る(ガス量とかもチェックしてます)。
一応、ペトレルも持って入るけど、それはあくまでも参考で、深度計とダイブタイマーとして使う。
時々、黄色の文字とか、たまあに赤い文字とかが出てきて焦ることがあるけど(良い子は絶対マネしないでね!)、オンタイムに乗せて深度調整している時にはそんなもんを気にするゆとりはない(そんなあ!)。
あとで、ダイブログを見て、ここはヤバかったなと反省する程度だ(そんなことでいいのかあ?)。
あんまり書くと、Cカード返上しろとか言われそうだから、このくらいにしておく。
シェアウォーターの記事では、リアルタイムの減圧管理や、オンタイムに乗らなかった時のバックアップとしての使い方が詳しい(こっちがメインだからな)。
「現在、コンピューターははるかに利用可能で信頼性があります。さらに、コストが大幅に削減されたため、多くの人がバックアップコンピュータを持っています。 コンピュータが提供する柔軟性は、テーブルの堅固な性質とは対照的です。」
潜水計画を立て、そのプロファイル通りに潜る器材運用とダイビングスキルを学び、訓練を重ね、認定されてテッキーになり、経験値を上げながらレベルアップしていく・・・。
その中で、その時代の最も優れた(と思われる)減圧理論を反映した減圧ソフトなり、ダイビングコンピューターを使いこなして、安全かつ楽しいダイビングを続ける。
そう、レジャーダイビングなわけだからな。
楽しめなければ意味はない。
GFについて調べることも、レジャーの一環だ。
自分が命委ねている減圧理論の背景を知り、その正当性がどのように裏付けられているのか、なぜ、保守性などという概念を持ち込まなければならないのか(理論通りに潜ると、DCS続発だからかあ?)を、腹の底から理解したい。
安全なダイビングなどというものはない。
少し危険か、かなり危険か、むちゃくちゃ危険か。
NDLを超えて減圧停止を伴うダイビングは、浮沈子的にはむちゃくちゃ危険なダイビングの範疇になる。
あーっ、とか言いながら、水面に向かって浮上することはできない。
ガスが無くなれば、DCS覚悟で浮上せざるを得ないけど、それはヤバ過ぎな話だ。
そういう目に会わないために、潜水計画を立て、ガス量を管理し、減圧計画と整合させて、なおかつ、チーム全体での調整も行って初めて水に浸かる。
何事もなければ、絵に描いたような安全なテクニカルダイビングは終わる。
水中で何かが起こった時、減圧ダイビングでは直上浮上はできない。
目には見えないガラスの天井(減圧シーリング)があるからな。
そこで、ガス切れに対処し、器材のトラブルに対処し、チームのトラブルに対処しながら、何事もなかったかのように余裕をもって浮上する。
トレーニングの大半は、トラブル対処に費やされる。
CCRの時も、練習していたのは9割がトラブル対処のスキルだったからな。
ファンダイブを楽しんだのは、潜降している時と浮上している時だけ・・・。
まあいい。
「常にテーブルを使うべきだという印象や、ダイブコンピューターを使うよりもテーブルの方が安全だという印象がまだ残っています。」
浮沈子は、そういう考え方を教わっている。
ダイコンは、あくまでバックアップだと。
基本はテーブルだぞと。
記事は繰り返しがあったり、ガス計画がくどかったりして読みづらいところもあるけど、ダイコンを使った緊急時のデコ管理についても書かれている(浮沈子にはワケワカですが)。
「ダイバーが利用できるツールは変化と改善を続けているため、利用可能なツールを最大限に活用するには、使用するテクニックも変更する必要があります。この記事は、ダイビングを計画する必要性を排除するどころか、今日利用可能な洗練されたダイビングコンピューターが計画プロセスの改善に役立つことを示すことを目的としています。」
「状況が変化したときに計画を適応させるために使用することもできます。これは、ダイバーが自由に使えるツールを理解し、それらを使用する練習をしている場合にのみ可能です。」
「この記事のすべての情報を理解し、それを使用してダイビングを計画したり、ダイビング計画を変更したりする前に、それを実践することが不可欠です。他のツールと同様に、実際に使用する前に練習する必要があります。」
「時間と練習に少し投資することで、コンピューターや固定されたデコテーブルのセットを盲目的に追跡するよりもはるかにインテリジェントな方法で上昇を管理できるようになります。」
まあ、浮沈子が出来るようになるのは相当先のことになりそうだがな。
今回はここまで。
次回は、気になってしょうがないディープストップの話を書こうと思っている。
GFの記事を読むと、たいていはディープストップのことが書いてある。
(ポストディープストップの世界における勾配要因)
https://gue.com/blog/gradient-factors-in-a-post-deep-stops-world/
「ディープストップは、魚類学者でテクニカルダイビングのパイオニアであるリチャードパイルによって偶然に開発された経験的な「パイルストップ」の形で初期のテクニカルダイバーの注目を集めました。」
「あの」リチャードパイルか・・・。
(リチャード・パイル)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2017/06/06/8587150
「記事の後半には、ディープストップに関する記述がある。
「Pyle published his observation that he had less fatigue when he made such deep stops—now often called "Pyle stops"—which have become common practice on deep dives.」(パイルは深いダイビングでよく練習になっているような深いストップをしたときに疲れが少なくなったという観測を発表しました。)
賛否両論のプロファイルなんだが、パイルストップというのは、初めて聞いたな。」
自分で書いてて、失念していた(まあ、いつものことですけど)。
(パイルストップ)
https://en.wikipedia.org/wiki/Pyle_stop
「ハワイのアメリカの魚類学者であるリチャード・パイル博士にちなんで名付けられました」
「パイルは、1989年に彼の上昇パターンが、デビッド・ヨーント博士の減圧計算の変動透過性モデル(VPM)によって生成されたものと類似していることを発見したとき、彼の発見に対して理論的な正当化を受けました。上昇パターンは、「パイルのストップ」または「ディープストップ」として知られるようになりました。」
まあ、あんまネタバレすると、次回書くことがなくなっちまうからな。
この辺にしとくか・・・。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
①シェアウォーターのグラフ(このブログ記事(その2)掲載の画像:縦置き:初回減圧停止時)と、②ダイブライトのグラフ(前回のブログ記事(その1)掲載の画像:横置き)を比較すると、GFローセッティングのルーラーの置き方が異なる。
さらに言えば、③前回(その1)の<以下追加>で掲載したグラフも、縦置きには違いないが、浮上開始時に置いている点が異なる。
もっとも、③は浮上中(減圧中)の体内ガスの変化がないように描かれているから、ややリアリティに欠けるけどな。
しかし、それにしても、どれがGFローセッティングのグラフ表現として正しいんだろう?。
②のルーラーは、浮上のタイミングとか、減圧のタイミングとかに関係なく、なんかテキトーに置かれている気がする。
①は、初回減圧停止時ということで、一見もっともらしいが、初回減圧停止は、GFローセッティングの設定で変わるわけだから、因果律から考えれば妙な話のような気もする。
プログラムに実装するにも、何か苦労しそうだ(2値を変化させて収束させなければならない)。
どこか、特定の深度でGFローセッティングを決めてくれれば楽なんだが、グラディエントファクターの主旨が、減圧における保守性の付与であることを考えれば、少なくとも動的に、どこかのタイミングで設定されていなければ意味がない気がする。
だって、深度1000m(ありえねー!)で30パーセントに設定したって、せいぜい100m位でしか潜らない現実のダイバーの保守率は、殆どGFハイセッティングの値になっちまうからな。
メーカーの記事や、査読付きの解説記事のグラフがテキトーに描かれているとすれば、テッキー達は、寄って集って騙されていることになる(そういうことかあ?)。
まあ、前回のブログ記事(その1)の標題に書いた通り、GFというのはテクニカルダイバーにとっては鬼門だ。
みんな、細かいところはよく分からずに、半ば盲目的に指導団体やメーカーの推奨する値を入れて、気合と根性をトッピングして潜っているのだ(そんなあ!)。
元々、リチャードパイルが経験値から割り出したプロファイルであるディープストップ(パイルストップ)は、上記の記事にもあるように、その後、VPM(可変気泡モデル)によって理論的裏付けを得たとされる。
その良し悪しは別にして、GFローセッティングを低め(10パーセントとか)に咬ませれば、疑似的にディープストップを実装できることから、GFの記事の中にはディープストップを論じているのが多いようだ。
本来は、別々の出どころの話なんだがな。
GFの原論文が見つかったら、ローセッティングの具体な正解(ややワケワカ)についても書く。
<さらに追加>ーーーーーーーーーー
(勾配係数の計算)
https://alertdiver.eu/en_US/articles/gradient-factor-calculations
「1990年代に減圧研究者のErikBakerによって開発された勾配係数(GF)は、保守性を調整するためにBuhlmann減圧モデルで一般的に使用されます。」
オリジナル論文ではないみたいだが、関係する図が出ているのは見つけた。
(Clearing Up The Confusion
About “Deep Stops”
By Erik C. Baker, P.E.)
https://www.shearwater.com/wp-content/uploads/2012/08/Deep-Stops.pdf
広告多いけど、自動翻訳を通してくれるページも。
(「ディープストップ」に関する混乱の解消ErikC。Baker著)
https://docplayer.net/128772-Clearing-up-the-confusion-about-deep-stops-by-erik-c-baker.html
「8(項番)
圧力グラフ:勾配係数(グラフの標題)
x(軸)周囲圧力、絶対
y(軸)コンパートメント不活性ガス圧力、絶対
<以下、グラフの右の欄の注釈>
・グラデーション係数は、M値のグラデーションの小数(またはパーセンテージ)です。
・勾配係数(GF)は、0と1の間で定義されます。
・勾配係数0は、大気圧線を表します。
・勾配係数1は、M値の線を表します。
・勾配係数は、減圧ゾーン内の保守性のために元のM値方程式を変更します。
・低いグラデーションファクター値(GF Lo)は、最初のストップの深さを決定します。「可能な限り深いデコストップ」の深さまで深いストップを生成するために使用されます。
<以下、グラフ内の注釈>
・GF Loは、ファーストストップ勾配ファクターを生成します
・M値勾配
・表面圧力
・M値ライン
・ファーストストップ
・周囲圧力ライン
・GF Hi(表面値)は、勾配係数の段階的変化に対する安全マージン
・勾配係数の段階的変化に対する線形関数
<以下、グラフの下の欄の注釈>
勾配係数(GF)で使用するために変更されたM値方程式
・職人方程式:
M =深さ(M GF-GF + 1)+(Psb + GF(MO-Psb))
Tol。深さ= [P-(Psb + GF(MO-Psb))] /(M GF-GF + 1)
・ビュールマン方程式:
Pt.tol。ig = Pamb。t。(GF / b-GF + 1)+ GF a
Pamb.tol。=(P ig-GF a)/(GF / b-GF + 1)
勾配係数は、各ストップに手動で適用することも、自動モードで適用することもできます。単純な線形関数により、勾配係数をGFLo値からGFHi値に徐々に変更できます。
GF勾配=GFHi-GFLo/最終停止深度-最初の停止深度
GF = GF勾配×現在の停止深度+ GFHi
保守主義のための勾配因子法の利点:
・「可能な限り深い減圧停止」の深さまでの深い停止を生成するために使用できます
・ディープストップを含む減圧ストップは、常に減圧ゾーン内にあります
・最初の停止から表面までの勾配の段階的な変化を含む、過圧勾配の正確な制御を可能にします
・おなじみのハルダニア減圧モデルへのマイナーな変更-理解と適用が簡単
・柔軟性-勾配係数を適用して、個々の生理学やさまざまなタイプのダイビングプロファイルを処理できます」
ベタ訳だが、グラフを理解する助けにはなる。
これを見ると、最初の減圧停止が20パーセントライン(グラフでは0.2)に当たっていることが分かる(20パーセント同士を結んでいるので、ライン上はどこでも20パーセントになっていることに注意)。
そうすると、①が正しく、②(タイミング不明)③(浮上開始時)は誤りということか。
やれやれだな・・・。
<おことわり>ーーーーーーーーーー
この記事は、テクニカルダイビングの話題です。指導団体によるトレーニングを受けずにハイリスクのダイビングを行う参考にはなりません。浮沈子も、現在トレーニング中の身です。誤った情報が含まれている恐れが多分にあります。ご注意ください!。
ーーーーーーーーーー
先日から、GFのことを調べ始めている。
様々な記事を当たると、いや、ビュールマンは古いとか、サイレントバブルを考慮しなければならないとか、ディープストップが良いとか、悪いとか、そういう話になっているようだ。
最近は、更に新手のモデルも出てきているようで、百花繚乱だな。
本家ZH-L16にもベーシックなA(保守性なし)、やや保守性を持たせ、広く普及しているB、ダイコンとかに人気のCといった派生形がある。
(Bühlmann解凍アルゴリズム:バージョン)
https://en.wikipedia.org/wiki/B%C3%BChlmann_decompression_algorithm#Versions
「・ZHL-16またはZH-L16A:元の16コンパートメントアルゴリズム(保守性はまったくありません)。
・ZHL-16B:主に中央のコンパートメントで少し控えめな「a」値を使用して、ダイブテーブルの作成用に変更された16コンパートメントアルゴリズム。高性能プロセッサーユニットを搭載したダイブコンピューターで最近使用されていますが、ZHL16Cと比較して柔軟性があります(特にハイテクダイビングで)。
・ZHL-16C:ダイブコンピューターで「パッケージ」として使用することを目的とした、中間および高速の「a」値をさらに変更した16コンパートメントアルゴリズム。ほとんどすべての低レベルプロセッサユニットで使用できますが、ZHL16Bと比較して柔軟性が低くなります。」
ちなみに、浮沈子の初代ペトレルはZHL-16C(GF付き)を採用している。
GFというのは、ビュールマンの16組織コンパートメントモデルの派生形の一つだ。
えーと、一つといっていいかどうかには問題があるかも。
30/70とか、30/80とか、2つの数字(パーセント表示)の組み合わせで、何通りものバリエーションがあるからな。
前回は、初めに出てくるのが深場での保守性を示すGFローセッティング(30とか)で、後ろにくっ付いているのがDFハイセッティング(80とか)であることを、グラフを見ながら確認した。
このグラフは、もちろん、実際のダイビングに使うものではない。
これを持ち込んだとしても、ダイバーの役には立たない。
組織コンパートメントごとの最大許容溶解度を示すM値の深度による推移を示すグラフと、水中の環境圧を示すグラフとの間を、上下(これも混乱するが)に保守率を示すルーラーを置いて、ウニウニと変化させて、保守性(コンサバティズム)を調整するわけだ。
右上のルーラーが示しているのがGFローセッティング、左下のルーラーが示しているのがGFハイセッティングということになる。
このグラフは、GFの概念を分かりやすく説明するためのもので、これをラミネートして水中に持ち込んで参照するためのものではない。
どちらかといえば、潜水計画を立てる時のコンピューターソフトウェアプログラムを書くプログラマーとか、ダイコンの内蔵ソフトウェアを作る際に、基本的な理解を得るための参考図だ。
ダイバーにとって分かりやすいことを目的としているわけではない。
水中は、とにかく忙しいからな。
ややこしいことは、全て陸上で済ませて、水中では余計なことはなるべくしないのがよろしい。
器材のチェック、耳抜き、深度管理、チームの確認、時間の確認、浮力の調整、また耳抜き、マスククリア、残圧の確認、デコタンクのバルブ開閉、浮力の調整、ああ、また耳抜き・・・。
ダイバーに必要なのは、いつ浮上するのか、どのくらいの速度で浮上するのか、何mまで浮上するのか、そこにどれだけ留まるのか、計画とのズレは許容範囲なのか、プランBに変更すべきなのか、修正の範囲内で、元のプランに戻れるのか、ガス量は十分なのか、そのズレをどう管理するかなどなど、実戦的な運用面での情報であって、M値が何だとか、GFが何だとかは、陸上での世迷言に過ぎない(そうなのかあ?)。
自分たちの命が掛かっているにもかかわらず、概ね、減圧理論には疎い(まあ、分かる気もする)。
浮沈子は、ダイビングをスポーツとして考えることは少ないが(陸上の器材運搬は、確かにスポーツ的要素は満載だがな)、テッキーの多くは鍛えた身体と鋼の神経の持ち主だからな。
水中でのストレスだけでなく、陸上での仲間内からのプレッシャーにめげずに、必要な準備を淡々とこなしたり、そもそもこのダイビングをするかしないかなどの判断を下していかなければならない。
冷静沈着慎重な一方、そういうリスキーなダイビングを実行する大胆さや情熱も必要だ。
ダイブプロファイルのグラフ(特に、上の方に赤い線が入っているヤツとか)を見せれば、ハアハアして興奮するかもしれないけど、GFのグラフで発情するとは思えない(未確認?)。
そのくせ、人が30/70のデフォルト設定で潜っていると聞くと、なぜそうなのかとか、保守的過ぎねえかとか(その設定でレクリエーショナルで深場潜ると、概ねデコ出しになるし)、某指導団体は違う数字だとか(知らねーって!)、いろいろ突っ込んでくるのだ。
まあ、どうでもいいんですが。
(ダイビングプランニングの進化)
https://www.shearwater.com/monthly-blog-posts/evolution-of-dive-planning/
「目次(?)
・昔は...
・新しい夜明け
・リスクのリアルタイム管理」
まだ、ちゃんと読んでいないけど、この記事のグラフが特徴的だったので引用した(GFローセッティングのルーラーが縦になっているけど、本質的な違いはない:<以下追加>参照)。
アセント開始してからの最初の線が、環境圧のグラフからスタートしていて、しかも斜めになっているので、こっちの方がリアリティがあるな。
浮沈子が行っている減圧ダイビングは、この記事で言えば夜明け前だな。
テーブルと手計算で潜水計画を立て、予備のプランも立て、ノートとスレートに書き、ちびっとだけデコが出るようにして、一応、パソコンの中の減圧ソフトをグリグリして悲惨な計算違いがないかを確認して、でもって、そっちの潜水計画も予備的に書いておいて潜る(ガス量とかもチェックしてます)。
一応、ペトレルも持って入るけど、それはあくまでも参考で、深度計とダイブタイマーとして使う。
時々、黄色の文字とか、たまあに赤い文字とかが出てきて焦ることがあるけど(良い子は絶対マネしないでね!)、オンタイムに乗せて深度調整している時にはそんなもんを気にするゆとりはない(そんなあ!)。
あとで、ダイブログを見て、ここはヤバかったなと反省する程度だ(そんなことでいいのかあ?)。
あんまり書くと、Cカード返上しろとか言われそうだから、このくらいにしておく。
シェアウォーターの記事では、リアルタイムの減圧管理や、オンタイムに乗らなかった時のバックアップとしての使い方が詳しい(こっちがメインだからな)。
「現在、コンピューターははるかに利用可能で信頼性があります。さらに、コストが大幅に削減されたため、多くの人がバックアップコンピュータを持っています。 コンピュータが提供する柔軟性は、テーブルの堅固な性質とは対照的です。」
潜水計画を立て、そのプロファイル通りに潜る器材運用とダイビングスキルを学び、訓練を重ね、認定されてテッキーになり、経験値を上げながらレベルアップしていく・・・。
その中で、その時代の最も優れた(と思われる)減圧理論を反映した減圧ソフトなり、ダイビングコンピューターを使いこなして、安全かつ楽しいダイビングを続ける。
そう、レジャーダイビングなわけだからな。
楽しめなければ意味はない。
GFについて調べることも、レジャーの一環だ。
自分が命委ねている減圧理論の背景を知り、その正当性がどのように裏付けられているのか、なぜ、保守性などという概念を持ち込まなければならないのか(理論通りに潜ると、DCS続発だからかあ?)を、腹の底から理解したい。
安全なダイビングなどというものはない。
少し危険か、かなり危険か、むちゃくちゃ危険か。
NDLを超えて減圧停止を伴うダイビングは、浮沈子的にはむちゃくちゃ危険なダイビングの範疇になる。
あーっ、とか言いながら、水面に向かって浮上することはできない。
ガスが無くなれば、DCS覚悟で浮上せざるを得ないけど、それはヤバ過ぎな話だ。
そういう目に会わないために、潜水計画を立て、ガス量を管理し、減圧計画と整合させて、なおかつ、チーム全体での調整も行って初めて水に浸かる。
何事もなければ、絵に描いたような安全なテクニカルダイビングは終わる。
水中で何かが起こった時、減圧ダイビングでは直上浮上はできない。
目には見えないガラスの天井(減圧シーリング)があるからな。
そこで、ガス切れに対処し、器材のトラブルに対処し、チームのトラブルに対処しながら、何事もなかったかのように余裕をもって浮上する。
トレーニングの大半は、トラブル対処に費やされる。
CCRの時も、練習していたのは9割がトラブル対処のスキルだったからな。
ファンダイブを楽しんだのは、潜降している時と浮上している時だけ・・・。
まあいい。
「常にテーブルを使うべきだという印象や、ダイブコンピューターを使うよりもテーブルの方が安全だという印象がまだ残っています。」
浮沈子は、そういう考え方を教わっている。
ダイコンは、あくまでバックアップだと。
基本はテーブルだぞと。
記事は繰り返しがあったり、ガス計画がくどかったりして読みづらいところもあるけど、ダイコンを使った緊急時のデコ管理についても書かれている(浮沈子にはワケワカですが)。
「ダイバーが利用できるツールは変化と改善を続けているため、利用可能なツールを最大限に活用するには、使用するテクニックも変更する必要があります。この記事は、ダイビングを計画する必要性を排除するどころか、今日利用可能な洗練されたダイビングコンピューターが計画プロセスの改善に役立つことを示すことを目的としています。」
「状況が変化したときに計画を適応させるために使用することもできます。これは、ダイバーが自由に使えるツールを理解し、それらを使用する練習をしている場合にのみ可能です。」
「この記事のすべての情報を理解し、それを使用してダイビングを計画したり、ダイビング計画を変更したりする前に、それを実践することが不可欠です。他のツールと同様に、実際に使用する前に練習する必要があります。」
「時間と練習に少し投資することで、コンピューターや固定されたデコテーブルのセットを盲目的に追跡するよりもはるかにインテリジェントな方法で上昇を管理できるようになります。」
まあ、浮沈子が出来るようになるのは相当先のことになりそうだがな。
今回はここまで。
次回は、気になってしょうがないディープストップの話を書こうと思っている。
GFの記事を読むと、たいていはディープストップのことが書いてある。
(ポストディープストップの世界における勾配要因)
https://gue.com/blog/gradient-factors-in-a-post-deep-stops-world/
「ディープストップは、魚類学者でテクニカルダイビングのパイオニアであるリチャードパイルによって偶然に開発された経験的な「パイルストップ」の形で初期のテクニカルダイバーの注目を集めました。」
「あの」リチャードパイルか・・・。
(リチャード・パイル)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2017/06/06/8587150
「記事の後半には、ディープストップに関する記述がある。
「Pyle published his observation that he had less fatigue when he made such deep stops—now often called "Pyle stops"—which have become common practice on deep dives.」(パイルは深いダイビングでよく練習になっているような深いストップをしたときに疲れが少なくなったという観測を発表しました。)
賛否両論のプロファイルなんだが、パイルストップというのは、初めて聞いたな。」
自分で書いてて、失念していた(まあ、いつものことですけど)。
(パイルストップ)
https://en.wikipedia.org/wiki/Pyle_stop
「ハワイのアメリカの魚類学者であるリチャード・パイル博士にちなんで名付けられました」
「パイルは、1989年に彼の上昇パターンが、デビッド・ヨーント博士の減圧計算の変動透過性モデル(VPM)によって生成されたものと類似していることを発見したとき、彼の発見に対して理論的な正当化を受けました。上昇パターンは、「パイルのストップ」または「ディープストップ」として知られるようになりました。」
まあ、あんまネタバレすると、次回書くことがなくなっちまうからな。
この辺にしとくか・・・。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
①シェアウォーターのグラフ(このブログ記事(その2)掲載の画像:縦置き:初回減圧停止時)と、②ダイブライトのグラフ(前回のブログ記事(その1)掲載の画像:横置き)を比較すると、GFローセッティングのルーラーの置き方が異なる。
さらに言えば、③前回(その1)の<以下追加>で掲載したグラフも、縦置きには違いないが、浮上開始時に置いている点が異なる。
もっとも、③は浮上中(減圧中)の体内ガスの変化がないように描かれているから、ややリアリティに欠けるけどな。
しかし、それにしても、どれがGFローセッティングのグラフ表現として正しいんだろう?。
②のルーラーは、浮上のタイミングとか、減圧のタイミングとかに関係なく、なんかテキトーに置かれている気がする。
①は、初回減圧停止時ということで、一見もっともらしいが、初回減圧停止は、GFローセッティングの設定で変わるわけだから、因果律から考えれば妙な話のような気もする。
プログラムに実装するにも、何か苦労しそうだ(2値を変化させて収束させなければならない)。
どこか、特定の深度でGFローセッティングを決めてくれれば楽なんだが、グラディエントファクターの主旨が、減圧における保守性の付与であることを考えれば、少なくとも動的に、どこかのタイミングで設定されていなければ意味がない気がする。
だって、深度1000m(ありえねー!)で30パーセントに設定したって、せいぜい100m位でしか潜らない現実のダイバーの保守率は、殆どGFハイセッティングの値になっちまうからな。
メーカーの記事や、査読付きの解説記事のグラフがテキトーに描かれているとすれば、テッキー達は、寄って集って騙されていることになる(そういうことかあ?)。
まあ、前回のブログ記事(その1)の標題に書いた通り、GFというのはテクニカルダイバーにとっては鬼門だ。
みんな、細かいところはよく分からずに、半ば盲目的に指導団体やメーカーの推奨する値を入れて、気合と根性をトッピングして潜っているのだ(そんなあ!)。
元々、リチャードパイルが経験値から割り出したプロファイルであるディープストップ(パイルストップ)は、上記の記事にもあるように、その後、VPM(可変気泡モデル)によって理論的裏付けを得たとされる。
その良し悪しは別にして、GFローセッティングを低め(10パーセントとか)に咬ませれば、疑似的にディープストップを実装できることから、GFの記事の中にはディープストップを論じているのが多いようだ。
本来は、別々の出どころの話なんだがな。
GFの原論文が見つかったら、ローセッティングの具体な正解(ややワケワカ)についても書く。
<さらに追加>ーーーーーーーーーー
(勾配係数の計算)
https://alertdiver.eu/en_US/articles/gradient-factor-calculations
「1990年代に減圧研究者のErikBakerによって開発された勾配係数(GF)は、保守性を調整するためにBuhlmann減圧モデルで一般的に使用されます。」
オリジナル論文ではないみたいだが、関係する図が出ているのは見つけた。
(Clearing Up The Confusion
About “Deep Stops”
By Erik C. Baker, P.E.)
https://www.shearwater.com/wp-content/uploads/2012/08/Deep-Stops.pdf
広告多いけど、自動翻訳を通してくれるページも。
(「ディープストップ」に関する混乱の解消ErikC。Baker著)
https://docplayer.net/128772-Clearing-up-the-confusion-about-deep-stops-by-erik-c-baker.html
「8(項番)
圧力グラフ:勾配係数(グラフの標題)
x(軸)周囲圧力、絶対
y(軸)コンパートメント不活性ガス圧力、絶対
<以下、グラフの右の欄の注釈>
・グラデーション係数は、M値のグラデーションの小数(またはパーセンテージ)です。
・勾配係数(GF)は、0と1の間で定義されます。
・勾配係数0は、大気圧線を表します。
・勾配係数1は、M値の線を表します。
・勾配係数は、減圧ゾーン内の保守性のために元のM値方程式を変更します。
・低いグラデーションファクター値(GF Lo)は、最初のストップの深さを決定します。「可能な限り深いデコストップ」の深さまで深いストップを生成するために使用されます。
<以下、グラフ内の注釈>
・GF Loは、ファーストストップ勾配ファクターを生成します
・M値勾配
・表面圧力
・M値ライン
・ファーストストップ
・周囲圧力ライン
・GF Hi(表面値)は、勾配係数の段階的変化に対する安全マージン
・勾配係数の段階的変化に対する線形関数
<以下、グラフの下の欄の注釈>
勾配係数(GF)で使用するために変更されたM値方程式
・職人方程式:
M =深さ(M GF-GF + 1)+(Psb + GF(MO-Psb))
Tol。深さ= [P-(Psb + GF(MO-Psb))] /(M GF-GF + 1)
・ビュールマン方程式:
Pt.tol。ig = Pamb。t。(GF / b-GF + 1)+ GF a
Pamb.tol。=(P ig-GF a)/(GF / b-GF + 1)
勾配係数は、各ストップに手動で適用することも、自動モードで適用することもできます。単純な線形関数により、勾配係数をGFLo値からGFHi値に徐々に変更できます。
GF勾配=GFHi-GFLo/最終停止深度-最初の停止深度
GF = GF勾配×現在の停止深度+ GFHi
保守主義のための勾配因子法の利点:
・「可能な限り深い減圧停止」の深さまでの深い停止を生成するために使用できます
・ディープストップを含む減圧ストップは、常に減圧ゾーン内にあります
・最初の停止から表面までの勾配の段階的な変化を含む、過圧勾配の正確な制御を可能にします
・おなじみのハルダニア減圧モデルへのマイナーな変更-理解と適用が簡単
・柔軟性-勾配係数を適用して、個々の生理学やさまざまなタイプのダイビングプロファイルを処理できます」
ベタ訳だが、グラフを理解する助けにはなる。
これを見ると、最初の減圧停止が20パーセントライン(グラフでは0.2)に当たっていることが分かる(20パーセント同士を結んでいるので、ライン上はどこでも20パーセントになっていることに注意)。
そうすると、①が正しく、②(タイミング不明)③(浮上開始時)は誤りということか。
やれやれだな・・・。
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