🐼メキシコへの道:第2章:ミッションコンプリート:フルケーブダイバー誕生 ― 2022年03月09日 15:06
メキシコへの道:第2章:ミッションコンプリート:フルケーブダイバー誕生
竹内軍曹、いや、竹内インストラクター殿の指導よろしきを得て、無事にフルケーブ講習を修了した(インストラクター認定講習なので、浮沈子の認定者はコースディレクターになります)。
平均的には6日半で終わるところを、特別に9日間に引き伸ばしてもらって、1日あたりの負担を少なくして達成した。
さらに予備日としていた1日半(合計で10日半)は、洞窟のファンダイブとなった(やっぱ、この連中じゃカリブ海は無理か・・・)。
ライン上でのマスク交換及び予備のバンジーへの交換については、一度ではクリアできず、マスク交換が都合3回、バンジー交換は2回目で達成したが、日程に影響はなかった。
さまざまなスキルの中で最も印象深かったのは、以前にもこのブログで取り上げたロストバディだった。
まあ、スキル自体は特別難しいものではないし、手順さえ飲み込めば、大した話じゃないけれど、やはり、その状況下で実際に行うことになれば、大いに取っ散らかるに違いない。
その状況とは・・・。
後ろから来ているはずのバディの灯りが消え、ライン上で待っても追いついてくる気配がない。
何かあったのか?。
自分のライトを胸に押し付けて辺りを暗くし(スイッチ切ったりしないところがミソだな)、かすかな光が見えてこないかとラインコンタクトしたまま周りを見渡す・・・。
漆黒の闇の中に一人取り残された状況で、続く手順を冷静に繰り出せるかどうかは分からない(詳細な手順については触れません)。
残圧を確認し、それが許す限り(必要な予備も残したうえで)捜索を試み、見つけられない時に残していくラインやライト、アローを(たぶん)震える手でちゃんと設置できるだろうか?。
筋肉の記憶になるまで繰り返し練習し、どんな状況下においても確実に行えるようにしておかなければならない。
もたついて、ガスの消費が予定より増えれば、自分自身がトラブルに巻き込まれかねないからな。
それでなくても、ロストバディしてエキジットする際は、ソロダイビングになるわけだしな。
そもそも、ロストバディは、往路でしか行えない。
帰路は、ひたすら出口を目指しているわけで、捜索のために予備ガスを使うわけにはいかないのだ。
閉鎖環境で行うバディ捜索は、それでなくても、かなりなリスクを伴う。
ヤバいな・・・。
ヤバ過ぎ!。
ロストバディと共に、洞窟潜水スキルの双璧とされている(?)ロストラインについては、以前(数年前)に海洋で予習していたこともあり、難なくクリアした。
が、ラインに辿り着いて泳ぎ出した時に仕掛けられていたトラップに見事に引っ掛かり、想定上は出口と反対側に泳ぎ続けるという羽目になった(真の出口としては、正しい方向だったんだがな)。
まあいい。
洞窟内は、光(ライト)命、ライン命な、激ヤバな環境。
吐いた泡で落ちてきた天井の破片などで、一瞬のうちに視界不良となり、不用意な手の動きでもうもうと舞い上がるシルトによってラインがかき消され、ハロックラインの上に顔を出した途端に、境界面での光の屈折のためにライトシグナルを見落とすという経験もした(そのタイミングで出すかあ?)。
ラインから不用意に離れることは、生きて還れなくなるかも知れないことを意味する(ロストラインスキルで、必ず戻れるとは限らない!)。
と、口を酸っぱくして言われていたにもかかわらず、平気でラインを離れてふらふら漂ったり、指向性マーカー外した後にライン上でくるくる回ったりしてたしな。
やれやれ・・・。
こんなんで、認定しちまってだいじょうび?。
まあ、どんなレベルの認定でも、それを受けた直後というのは、そのレベルのスタートラインに立ったに過ぎない。
実際のダイビングの中で経験を積み、少しずつスキルの練度を上げたり快適ゾーンを広げていくしかないのだ。
フィンキックにも、新たな課題が見えてきたしな(蹴る幅が広過ぎ)。
画像は、ファンダイブで狭いところを通り抜けるためにプルアンドグライドしているところを撮られたんだが、そーゆー時はライトヘッドをヘルメットに着けろというネタにするために撮ったんだそうだ。
弄られ放題の浮沈子(トホホ・・・)。
最後の2日間は、浮沈子1人にインストラクター有資格者4人(三保先生、コースディレクター、ヒデさん、竹内インストラクター)だったからな。
ボコボコだ・・・。
帰国の日は、炎天下に、トゥルム遺跡も見学した。
(トゥルム遺跡)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%AB%E3%83%A0%E9%81%BA%E8%B7%A1
「マヤ文明末期に栄えた城壁都市の遺跡」
「廃墟は、高さ12メートルの崖の上に位置している」
天気はずーっと良く、たまに夜とか降ることがあっても、ダイビングの時に降られたことはなかった。
自分自身のことで何だが、客観的に見れば、一人のフルケーブダイバーの誕生に立ち会う貴重な経験を得た。
今までのダイビングの中で、最も印象に残る出来事の一つになるだろう。
もしも、時間と金と洞窟愛があれば(ここ、重要です)、この講習はお薦めだ。
難しいのか?。
もちろん、簡単ではない。
再講習になったり、脱落することも十分ありうる(ダイビングの講習は金で買えても、認定はもたらされるものだからな)。
危険なのか?。
閉鎖環境である以上、一定のリスクを受け入れなければ講習は成立しない。
今回は、現地ガイドのヒデさん(フルケーブのインストラクターでもある)、コースディレクター、竹内インストラクターの3人が見守る中での講習で、十分な安全管理下だったが、それでも洞窟内では何が起こるか分からないからな。
プレッシャーはあるか?。
反吐を吐くほどではないにしても、また、受講生の向き不向きにも依ると思うけど、少なくとも浮沈子は相当なプレッシャーを感じた。
で、やって良かったか?。
断言する。
合否に関わらず、やって後悔することは絶対ない!。
この講習は本物だ。
そうでなければ、本当に命に係わる。
それで結局、洞窟愛に目覚めたのか?。
正直に書こう。
浮沈子が、この講習を通じて洞窟愛に目覚めたということはなかった(そんなあ!)。
しかし、適切な器材と必要なスキルを身につければ、そして限界をキッチリ守って行動しさえすれば、浮沈子のようなジジイでも自分の行動範囲を広げることが出来る。
体験カバーンダイビングではなく、洞窟潜水をしなければ見ることが出来ないもの(繊細な鍾乳石の織り成す芸術的な造形や、大昔のマストドンの骨など)を見ることが出来るし、そもそも、光の差し込まない閉鎖環境で潜るということ自体が冒険そのものだ。
怖かったのか?。
怖かった。
怖くなかったら、それは逆に危険だ。
怖さを感じ、それを克服するための様々な手段を講じ、恐怖を飼いならして、正しく付き合うしかない。
その意味では、誰にでも勧められるダイビングじゃない。
前から薄々感じていたんだが、洞窟潜水に魅了される人々は、ひょっとしたら今はダイバーですらないかも知れないと、講習を終えて確信するようになった。
冒険を求め、人類未踏の地を求め、困難を愛し、それを克服することに生きがいを見出す人々。
宇宙飛行士になるか、ケーブダイバーになるか・・・。
(13年ぶりの「JAXA宇宙飛行士候補者募集」応募受付終了、締切時点で1563名が手続き済み)
https://sorae.info/space/20220308-jaxa-astronaut.html
「1500名を超える候補者のなかから選ばれた宇宙飛行士は、国際宇宙ステーション(ISS)への滞在のみならず、アメリカが主導する有人月面探査計画「アルテミス」の下で月に降り立つ可能性」
そこに何かがある(聖杯とかあ?)から赴くのではなく、そこに行くことに価値を見出す人々(月にはウサギなんていないしな)。
新たな発見に期待し、未知との遭遇を恐れない人々。
探求することに人生を掛け、それ以外の全てを捨て去ることが出来る人々。
洞窟潜水には、そういった人々を虜にするアットーテキな魅力があるに違いない。
浮沈子は、たぶん、おそらく、きっと、そうじゃない。
ダイビングをするときには、ガイドのフィンを見失わず、ラインを辿ることに集中する。
ラインの先がどうなっているかを確認するためにライトを向けることはあるけれど、そこに浮かび出る魅力的な鍾乳石や、通り抜けられるかもしれない新たな穴とかに吸い込まれることはない。
つーか、あれだな、実際には、まだ、そんな余裕がないだけなんだろうな。
残圧を確認し、水深計を睨み、経過した潜水時間と共に失われていく体温と相談しながら、ダイビングの管理をすることで精いっぱいだ。
何個目のアローを過ぎたとか、特徴的な地形があったかとか、右に曲がったとか、上がったとか下がったとか、あーだとか、こーだとか・・・。
今回の講習でやり残したことがあるとすれば、洞窟潜水を楽しむことだろう。
楽しくなかったのか?。
そんなことはない。
自分の限界を広げることはやりがいがあるし、その結果、行けるところが広がることは素晴らしいと感じる。
今回はセノーテダイビングも2回目で、前回行けなかった新しいセノーテや、カバーンではなくその奥のケーブの中でトレーニングしたりファンダイブしている。
楽しくないはずはない。
この世界にハマる連中がいることも、理解できる気はする。
しかし・・・。
講習5日目、エルエデンのケーブラインでの講習が終わってオープンウォーターエリアに戻ってきた時、まるで天国に来たような気がしたことも確かだ。
光に溢れ、小さな魚たちが泳ぎ、子供たちを含め、多くのスイマーが楽しんでいる。
生き物たちの活気に溢れた、みずみずしい世界。
止まってしまった時間の化石達の世界とは異なる、今、正に生き生きと動いている世界(モノトーンの洞窟内とは異なり、色彩も豊かだ)。
宇宙飛行士が地球に戻ってきて、この世界をより深く知ることになるのと同じように、水中洞窟から戻ってきて初めて、生きとし生けるものの世界のすばらしさを知る。
ブキミーな経験もした。
講習3日目、タジマハのケーブに入った(カバーンエリアの奥、ケーブ内に本格的に入るのは、この時が初めて:例の死神看板の先です)。
潜水終了の合図とともに、振り返って今来た道を戻ろうとした時、浮沈子は、暗闇の中で死神を見たのだ。
そう、あのケーブラインの入口の看板にあった首切り鎌を担いだ死神の顔だ。
確かに、ハッキリとこの目で見たのだ。
ここは、人間が来るところではない、来てはいけない場所なのだと警告するような、闇に浮かび上がる髑髏のような死神の顔を・・・。
ででっ、出たーっ!。
いや、あれはライトを消して、講習の邪魔にならないようにコース脇で待機していたガイドのヒデさんの姿だったかもしれない(なーんだ・・・)。
まあ、どうでもいいんですが。
まだ、時差ボケで、やや朦朧としている・・・。
忘れないうちに、印象に残ったことだけでも思い出して書いておこうとしているけど、浮沈子の脳内にある揮発性メモリーの記憶は、概ね歪んでいたり、自分に都合よく書き換えられていたりするからな。
今回は、講習に集中するため、旅行中にブログを書かなかったし。
ダイブログ(つーか、講習内容のメモ)は付けているから、後は、それを頼りに書こうと思っている。
講習9日目、予定されていた講習内容が終わり、名ばかりのフルケーブダイバーになった時、ホッと肩の荷が下りた気がした。
ミッションコンプリート。
いや、たぶん、そうじゃないんだろうな。
それは、新たなダイビングの始まりに過ぎない。
この先、洞窟ダイビングを続けていくかどうかは分からない。
いまは、とりあえず、浮沈子のダイビングの基本である、浅く明るく暖かい南の島のリゾートダイブに戻りたいだけだ。
狭い世界だから(別に、洞窟が狭いわけじゃないけど)、今回のダイビングでも、いろいろ思わぬ人との繋がりが分かったりして、ますます悪いことはできない感が強くなった(別に、悪いことしたいわけじゃないけど)。
11日目、ファンダイブ(ラストダイブ)のデータを見たら、103分となっていた(今回の最長は、2日目の125分)。
(Sistema Nohoch Nah Chich)
https://en.wikipedia.org/wiki/Sistema_Nohoch_Nah_Chich
「Sistema Nohoch NahChichはSistema Sac Actunに接続されていることが発見され、Sac Actunは世界で最も長く調査された水中洞窟システムになっています。」
まあ、潜ったのは、入口の近くだけだけど。
最後の2日間のファンダイブのガイドをして頂いた三保先生は、「ショートダイブ」だと言ってたけど、マルチタンクで何時間も潜っている探検家からしたら、そういう話になるんだろう。
浮沈子は、ケーブダイビング初心者なわけだからな(ファンダイビングは、最後の2日間の3ダイブだけ)。
2度目のメキシコ訪問、2度目のプラヤデルカルメン逗留。
初めてのトゥルム市内、初めての遺跡観光。
2週間余りのメキシコ行きは、夢のように過ぎた。
汗が滴る南国から、春と呼ぶにはまだ早い日本へと帰ってきた。
ANAのNH179便機長の到着前のアナウンス・・・。
「成田の天候は晴れ、気温は摂氏1度」
べらぼーめ・・・。
うーん、次回は絶対、カリブ海も潜るぞ・・・。
竹内軍曹、いや、竹内インストラクター殿の指導よろしきを得て、無事にフルケーブ講習を修了した(インストラクター認定講習なので、浮沈子の認定者はコースディレクターになります)。
平均的には6日半で終わるところを、特別に9日間に引き伸ばしてもらって、1日あたりの負担を少なくして達成した。
さらに予備日としていた1日半(合計で10日半)は、洞窟のファンダイブとなった(やっぱ、この連中じゃカリブ海は無理か・・・)。
ライン上でのマスク交換及び予備のバンジーへの交換については、一度ではクリアできず、マスク交換が都合3回、バンジー交換は2回目で達成したが、日程に影響はなかった。
さまざまなスキルの中で最も印象深かったのは、以前にもこのブログで取り上げたロストバディだった。
まあ、スキル自体は特別難しいものではないし、手順さえ飲み込めば、大した話じゃないけれど、やはり、その状況下で実際に行うことになれば、大いに取っ散らかるに違いない。
その状況とは・・・。
後ろから来ているはずのバディの灯りが消え、ライン上で待っても追いついてくる気配がない。
何かあったのか?。
自分のライトを胸に押し付けて辺りを暗くし(スイッチ切ったりしないところがミソだな)、かすかな光が見えてこないかとラインコンタクトしたまま周りを見渡す・・・。
漆黒の闇の中に一人取り残された状況で、続く手順を冷静に繰り出せるかどうかは分からない(詳細な手順については触れません)。
残圧を確認し、それが許す限り(必要な予備も残したうえで)捜索を試み、見つけられない時に残していくラインやライト、アローを(たぶん)震える手でちゃんと設置できるだろうか?。
筋肉の記憶になるまで繰り返し練習し、どんな状況下においても確実に行えるようにしておかなければならない。
もたついて、ガスの消費が予定より増えれば、自分自身がトラブルに巻き込まれかねないからな。
それでなくても、ロストバディしてエキジットする際は、ソロダイビングになるわけだしな。
そもそも、ロストバディは、往路でしか行えない。
帰路は、ひたすら出口を目指しているわけで、捜索のために予備ガスを使うわけにはいかないのだ。
閉鎖環境で行うバディ捜索は、それでなくても、かなりなリスクを伴う。
ヤバいな・・・。
ヤバ過ぎ!。
ロストバディと共に、洞窟潜水スキルの双璧とされている(?)ロストラインについては、以前(数年前)に海洋で予習していたこともあり、難なくクリアした。
が、ラインに辿り着いて泳ぎ出した時に仕掛けられていたトラップに見事に引っ掛かり、想定上は出口と反対側に泳ぎ続けるという羽目になった(真の出口としては、正しい方向だったんだがな)。
まあいい。
洞窟内は、光(ライト)命、ライン命な、激ヤバな環境。
吐いた泡で落ちてきた天井の破片などで、一瞬のうちに視界不良となり、不用意な手の動きでもうもうと舞い上がるシルトによってラインがかき消され、ハロックラインの上に顔を出した途端に、境界面での光の屈折のためにライトシグナルを見落とすという経験もした(そのタイミングで出すかあ?)。
ラインから不用意に離れることは、生きて還れなくなるかも知れないことを意味する(ロストラインスキルで、必ず戻れるとは限らない!)。
と、口を酸っぱくして言われていたにもかかわらず、平気でラインを離れてふらふら漂ったり、指向性マーカー外した後にライン上でくるくる回ったりしてたしな。
やれやれ・・・。
こんなんで、認定しちまってだいじょうび?。
まあ、どんなレベルの認定でも、それを受けた直後というのは、そのレベルのスタートラインに立ったに過ぎない。
実際のダイビングの中で経験を積み、少しずつスキルの練度を上げたり快適ゾーンを広げていくしかないのだ。
フィンキックにも、新たな課題が見えてきたしな(蹴る幅が広過ぎ)。
画像は、ファンダイブで狭いところを通り抜けるためにプルアンドグライドしているところを撮られたんだが、そーゆー時はライトヘッドをヘルメットに着けろというネタにするために撮ったんだそうだ。
弄られ放題の浮沈子(トホホ・・・)。
最後の2日間は、浮沈子1人にインストラクター有資格者4人(三保先生、コースディレクター、ヒデさん、竹内インストラクター)だったからな。
ボコボコだ・・・。
帰国の日は、炎天下に、トゥルム遺跡も見学した。
(トゥルム遺跡)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%AB%E3%83%A0%E9%81%BA%E8%B7%A1
「マヤ文明末期に栄えた城壁都市の遺跡」
「廃墟は、高さ12メートルの崖の上に位置している」
天気はずーっと良く、たまに夜とか降ることがあっても、ダイビングの時に降られたことはなかった。
自分自身のことで何だが、客観的に見れば、一人のフルケーブダイバーの誕生に立ち会う貴重な経験を得た。
今までのダイビングの中で、最も印象に残る出来事の一つになるだろう。
もしも、時間と金と洞窟愛があれば(ここ、重要です)、この講習はお薦めだ。
難しいのか?。
もちろん、簡単ではない。
再講習になったり、脱落することも十分ありうる(ダイビングの講習は金で買えても、認定はもたらされるものだからな)。
危険なのか?。
閉鎖環境である以上、一定のリスクを受け入れなければ講習は成立しない。
今回は、現地ガイドのヒデさん(フルケーブのインストラクターでもある)、コースディレクター、竹内インストラクターの3人が見守る中での講習で、十分な安全管理下だったが、それでも洞窟内では何が起こるか分からないからな。
プレッシャーはあるか?。
反吐を吐くほどではないにしても、また、受講生の向き不向きにも依ると思うけど、少なくとも浮沈子は相当なプレッシャーを感じた。
で、やって良かったか?。
断言する。
合否に関わらず、やって後悔することは絶対ない!。
この講習は本物だ。
そうでなければ、本当に命に係わる。
それで結局、洞窟愛に目覚めたのか?。
正直に書こう。
浮沈子が、この講習を通じて洞窟愛に目覚めたということはなかった(そんなあ!)。
しかし、適切な器材と必要なスキルを身につければ、そして限界をキッチリ守って行動しさえすれば、浮沈子のようなジジイでも自分の行動範囲を広げることが出来る。
体験カバーンダイビングではなく、洞窟潜水をしなければ見ることが出来ないもの(繊細な鍾乳石の織り成す芸術的な造形や、大昔のマストドンの骨など)を見ることが出来るし、そもそも、光の差し込まない閉鎖環境で潜るということ自体が冒険そのものだ。
怖かったのか?。
怖かった。
怖くなかったら、それは逆に危険だ。
怖さを感じ、それを克服するための様々な手段を講じ、恐怖を飼いならして、正しく付き合うしかない。
その意味では、誰にでも勧められるダイビングじゃない。
前から薄々感じていたんだが、洞窟潜水に魅了される人々は、ひょっとしたら今はダイバーですらないかも知れないと、講習を終えて確信するようになった。
冒険を求め、人類未踏の地を求め、困難を愛し、それを克服することに生きがいを見出す人々。
宇宙飛行士になるか、ケーブダイバーになるか・・・。
(13年ぶりの「JAXA宇宙飛行士候補者募集」応募受付終了、締切時点で1563名が手続き済み)
https://sorae.info/space/20220308-jaxa-astronaut.html
「1500名を超える候補者のなかから選ばれた宇宙飛行士は、国際宇宙ステーション(ISS)への滞在のみならず、アメリカが主導する有人月面探査計画「アルテミス」の下で月に降り立つ可能性」
そこに何かがある(聖杯とかあ?)から赴くのではなく、そこに行くことに価値を見出す人々(月にはウサギなんていないしな)。
新たな発見に期待し、未知との遭遇を恐れない人々。
探求することに人生を掛け、それ以外の全てを捨て去ることが出来る人々。
洞窟潜水には、そういった人々を虜にするアットーテキな魅力があるに違いない。
浮沈子は、たぶん、おそらく、きっと、そうじゃない。
ダイビングをするときには、ガイドのフィンを見失わず、ラインを辿ることに集中する。
ラインの先がどうなっているかを確認するためにライトを向けることはあるけれど、そこに浮かび出る魅力的な鍾乳石や、通り抜けられるかもしれない新たな穴とかに吸い込まれることはない。
つーか、あれだな、実際には、まだ、そんな余裕がないだけなんだろうな。
残圧を確認し、水深計を睨み、経過した潜水時間と共に失われていく体温と相談しながら、ダイビングの管理をすることで精いっぱいだ。
何個目のアローを過ぎたとか、特徴的な地形があったかとか、右に曲がったとか、上がったとか下がったとか、あーだとか、こーだとか・・・。
今回の講習でやり残したことがあるとすれば、洞窟潜水を楽しむことだろう。
楽しくなかったのか?。
そんなことはない。
自分の限界を広げることはやりがいがあるし、その結果、行けるところが広がることは素晴らしいと感じる。
今回はセノーテダイビングも2回目で、前回行けなかった新しいセノーテや、カバーンではなくその奥のケーブの中でトレーニングしたりファンダイブしている。
楽しくないはずはない。
この世界にハマる連中がいることも、理解できる気はする。
しかし・・・。
講習5日目、エルエデンのケーブラインでの講習が終わってオープンウォーターエリアに戻ってきた時、まるで天国に来たような気がしたことも確かだ。
光に溢れ、小さな魚たちが泳ぎ、子供たちを含め、多くのスイマーが楽しんでいる。
生き物たちの活気に溢れた、みずみずしい世界。
止まってしまった時間の化石達の世界とは異なる、今、正に生き生きと動いている世界(モノトーンの洞窟内とは異なり、色彩も豊かだ)。
宇宙飛行士が地球に戻ってきて、この世界をより深く知ることになるのと同じように、水中洞窟から戻ってきて初めて、生きとし生けるものの世界のすばらしさを知る。
ブキミーな経験もした。
講習3日目、タジマハのケーブに入った(カバーンエリアの奥、ケーブ内に本格的に入るのは、この時が初めて:例の死神看板の先です)。
潜水終了の合図とともに、振り返って今来た道を戻ろうとした時、浮沈子は、暗闇の中で死神を見たのだ。
そう、あのケーブラインの入口の看板にあった首切り鎌を担いだ死神の顔だ。
確かに、ハッキリとこの目で見たのだ。
ここは、人間が来るところではない、来てはいけない場所なのだと警告するような、闇に浮かび上がる髑髏のような死神の顔を・・・。
ででっ、出たーっ!。
いや、あれはライトを消して、講習の邪魔にならないようにコース脇で待機していたガイドのヒデさんの姿だったかもしれない(なーんだ・・・)。
まあ、どうでもいいんですが。
まだ、時差ボケで、やや朦朧としている・・・。
忘れないうちに、印象に残ったことだけでも思い出して書いておこうとしているけど、浮沈子の脳内にある揮発性メモリーの記憶は、概ね歪んでいたり、自分に都合よく書き換えられていたりするからな。
今回は、講習に集中するため、旅行中にブログを書かなかったし。
ダイブログ(つーか、講習内容のメモ)は付けているから、後は、それを頼りに書こうと思っている。
講習9日目、予定されていた講習内容が終わり、名ばかりのフルケーブダイバーになった時、ホッと肩の荷が下りた気がした。
ミッションコンプリート。
いや、たぶん、そうじゃないんだろうな。
それは、新たなダイビングの始まりに過ぎない。
この先、洞窟ダイビングを続けていくかどうかは分からない。
いまは、とりあえず、浮沈子のダイビングの基本である、浅く明るく暖かい南の島のリゾートダイブに戻りたいだけだ。
狭い世界だから(別に、洞窟が狭いわけじゃないけど)、今回のダイビングでも、いろいろ思わぬ人との繋がりが分かったりして、ますます悪いことはできない感が強くなった(別に、悪いことしたいわけじゃないけど)。
11日目、ファンダイブ(ラストダイブ)のデータを見たら、103分となっていた(今回の最長は、2日目の125分)。
(Sistema Nohoch Nah Chich)
https://en.wikipedia.org/wiki/Sistema_Nohoch_Nah_Chich
「Sistema Nohoch NahChichはSistema Sac Actunに接続されていることが発見され、Sac Actunは世界で最も長く調査された水中洞窟システムになっています。」
まあ、潜ったのは、入口の近くだけだけど。
最後の2日間のファンダイブのガイドをして頂いた三保先生は、「ショートダイブ」だと言ってたけど、マルチタンクで何時間も潜っている探検家からしたら、そういう話になるんだろう。
浮沈子は、ケーブダイビング初心者なわけだからな(ファンダイビングは、最後の2日間の3ダイブだけ)。
2度目のメキシコ訪問、2度目のプラヤデルカルメン逗留。
初めてのトゥルム市内、初めての遺跡観光。
2週間余りのメキシコ行きは、夢のように過ぎた。
汗が滴る南国から、春と呼ぶにはまだ早い日本へと帰ってきた。
ANAのNH179便機長の到着前のアナウンス・・・。
「成田の天候は晴れ、気温は摂氏1度」
べらぼーめ・・・。
うーん、次回は絶対、カリブ海も潜るぞ・・・。
最近のコメント