911ストーリー(軸距)2013年12月23日 00:18

911ストーリー(軸距)
911ストーリー(軸距)


「最新版 ポルシェ911ストーリー (CG BOOKS) [単行本]」のエンジンとトランスミッションの章を読み飛ばして、第5章のアクスル、サスペンション、ブレーキのところを読んでいる。

ポール・フレール(PF)の有名なセリフが載っているところであるな。

「もし911のスタートから25年の間に実施された操縦性関連の設計変更のうち、最も効果があったのはどれかと聞かれたら、私は即座にBシリーズの変更と答える。実際911の中古車を買おうとしている人から相談を受けて、私がAシリーズを奨めたことは未だかつて一度もないのである。」

ナローと呼ばれる911の中でも、Aシリーズと呼ばれるホイールベース(軸距)が短い初期型のタイプは、マニア垂涎の人気車なのだが、PFに言わせると、出来損ないの911ということになるわけだ。

(Aシリーズ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BB911#A.E3.82.B7.E3.83.AA.E3.83.BC.E3.82.BA

2,211mmの軸距は、最初期の0(ゼロ)シリーズからのものである。

しかし、軸距2,211mmというのは、356の2100mmよりもかなり長くなったとはいえ、4気筒から6気筒に拡大したエンジンを考えれば、結果として十分な長さとはいえなかった。

初期の頃の操縦安定性に関するありとあらゆるトラブルの解決と共に、ピエヒが断行した軸距の延長は、最大の改良の一つであることは間違いない。

とはいえ、全長を変えずに軸距だけ伸ばすという方法を採ったため、わずか60mmの延長に留まっている。

(Bシリーズ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BB911#B.E3.82.B7.E3.83.AA.E3.83.BC.E3.82.BA

「1968年8月から1969年7月まで生産された。ホイールベースが2,271mmに延長されるなどで操縦性が大幅に改善され、ポール・フレールは「ポルシェの中古車を買おうとしている人々に、それ以前の車は考えない方がいいとわたしは助言してきた」と書いている。185/70VR15タイヤと6J15inホイールを納めるためにホイールアーチがつくようになり、これ以降「ナロー」との俗称を使わない人もいる。」

ホイールアーチとあるが、外側に若干フレアが付いたことをいっているようだ。

驚くべきことに、このホイールベースは、1998年まで、30年間変わっていない。

厳密には、手元のポルシェデータブックによれば、次のように記載されている。

MY1969~MY1971(3年間):2268mm
MY1972~MY1975(4年間):2271mm
MY1976~MY1998(23年間):2272mm

まあ、細かいことはいわんといて、30年間おんなじということにしといてや!。

PFの本には、Bシリーズになる時は、ちゃんと57mmの延長と明記されている(P.168)。

この変更によって、前後重量配分の改善による操縦安定性の向上が図られた。

ドライブシャフトの後退角の問題については、部品の変更を行い、十分なテストを重ねてクリアしている。

重量配分の改善には、エンジンクランクケースやトランスミッションのハウジングが、アルミからマグネシウム合金に変わって、軽量化されたことも寄与していると書かれている。

この後、1998年から生産された水冷エンジン搭載の996型になって、ようやく2,350mmの軸距を獲得するのである。

(ポルシェ・996)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BB996

「内装
ホイールベースの延長とボディの拡大により、室内長は170mm長くなり、レッグルームも80mm広くなった。ドリンクホルダーは着脱式の簡易なものが用意された。内装はビニール貼りであったが、質感の向上を目的に2000年モデルからアルカンタラに変更となった。」

チャラチャラした話になっていて、浮沈子的にはどーでもいいんだが、だいたい、911の後席に、人間を乗せる機会がどれほどあるというのか。

まあ、室内の拡大により、居住性の向上にも寄与したということであるな(30年間は、そんなことは、考えもしなかったわけだ!)。

しかし、996になったときも、軸距の伸びは78mmである。

356から911になるときに111mm伸び、Bシリーズで57mm伸び、30年間で4mm伸びて、996で78mmということになる。

軸距が変わるということは、クルマの性格をがらりと変えてしまう。

別のクルマになるといってもいい(実際、356と911は別のクルマです)。

その意味では、PFが指摘したように、AシリーズとBシリーズは、全長は1mmたりとも違わないのだが、別のクルマになったといっても過言ではない。

逆にいうと、Bシリーズ以降の30年間は、おんなじクルマを弄り回していただけであったともいえる(たぶん、浮沈子の独断だな)。

993から996になったとき、空冷エンジンが水冷になったことを大騒ぎしていた人々は、911というクルマ自体が、996によって、別のクルマになったと感じていたからでもある。

エンジンだけではなく、全く別のクルマとして、新登場したというのが正しい。

PFは、巻頭でいみじくもその点をズバリと突いている。

「この第6版で、1963年9月の発表から最終モデル(993)に至るまでの911の歴史が、ようやく完結する。本書が読者のお手元に届く頃には、911の後継者となる新型車がすでに街を走っているに違いないが、それは911と同じく後部にオーバーハングしたフラット6エンジンを持ち、形も911によく似てはいるが、シリンダーヘッドもシリンダーも水冷で、ポルシェではあっても911ではないのだ。」(カッコ内は浮沈子の補足)

いやあ、見事ですなあ。

空冷フリークの恨み節を、華麗なる文章でぶち上げているとは!。

フェーリー・ポルシェの賛辞の横に、並べて書かれていると、なおさら引き立つ、きつーいイッパツであるな。

PFも、エンジンのことしか書いていないが、185mm伸びた全長を考えても、別のクルマに違いない。

さらに、我々は、991なる存在を知っている。

(ポルシェ・991)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BB991

「乗車定員:4名
ボディタイプ:2ドア クーペ
エンジン:水冷 F6 DOHC 3,436cc / 水冷 F6 DOHC 3,800cc
変速機:7速MT / 7速PDK
駆動方式:RR / 4WD
サスペンション :
前 マクファーソンストラット+コイル
後 マルチリンク+コイル
全長:4,491mm
全幅:1,808mm
全高:1,303mm
ホイールベース:2,450mm
車両重量:1,350kg」

これを、初代の911と比較してみる。

「乗車定員:4名
ボディタイプ:2ドア クーペ
エンジン:空冷 F6 SOHC 1,991cc
変速機:5速MT
駆動方式:RR
サスペンション:
前 マクファーソンストラット+トーションバー
後 トレーリングAアーム+トーションバー
全長:4,163mm
全幅:1,610mm
全高:1,320mm
ホイールベース:2,211mm / Bシリーズ以降2,271mm
車両重量:1,095kg」

エンジンの排気量はほぼ2倍、255kg重くなり、全長は328mm伸び、幅は198mm増えた。

まあ、50年も前のクルマと比較しても仕方ない。

肝心の軸距は、初代からは239mm、先代の997からは100mmも増えている。

これは、ハッキリと別のクルマであるな。

911というバッジを付けて、カエル顔をして見せれば、お客は喜んで買ってくれるのだろうが、997とは異なる新型車である。

それはそれでいい。

浮沈子は、991にケチを付けようというのではない。

いいクルマだし、この手のクルマ(2+2のGTカー)として、文句の付けようがない。

もちろん、試乗もしている。

出るとこ出ても、負ける気がしない(峠とか、サーキットとか)。

だが、それは、PFが言うように、「911と同じく後部にオーバーハングしたフラット6エンジンを持ち、形も911によく似てはいるが、・・・ポルシェではあっても911ではないのだ。」

どうも、最近は、ポルシェであるかどうかも怪しくなってきつつある(VWとかアウディとか)。

PFは、愚痴っぽく996のことを、911に似て非なるものと書いてはいるが、その後、ちゃんと997まで書き足しているので、まあ、911ダッシュ(911´)位には考えていたんだろう。

実際、本を読むと、997のボディワークやエンジンについては、かなり好意的な記述であると感じる。

しかし、彼は、幸か不幸か、991の登場を待たずに逝った。

一気に100mも伸びた軸距の新型を、何といって表現するだろうか。

浮沈子は、たまたま83タルガと03ボクスターを所有し、乗り比べることが出来るが、背中の直後にエンジンしょってるボクスターよりも、昔の911の方がエンジンが近くにあるように感じる(986型の軸距は2415mm)。

音が大きいとか、振動があるとかではなく、踏み込んだときのトルクの出方が直に伝わってくる感じがするのだ(ドン、と来ます)。

991のカレラに試乗した時には、あの荒々しいダイレクトさはなかった(スムーズなもんです)。

エンジンも、どこか遠くの方で回っている感じだった。

そりゃあ、それなりに走らせれば太刀打ちできっこない、21世紀の電子制御テンコ盛りのスーパーカーだが、178mmの軸距の違いは、隠し様がない。

たかが軸距、されど軸距である。

RRの911の場合、その差はハッキリと体感できる。

もちろん、重量バランスや、サスペンションを無視して語ることは出来ないが、PFが指摘したように、軸距の差はクルマの「質」を変える力を持っているのだ。

沢村慎太郎が、スポーツカーの軸距の黄金値は、2400mmだと書いていたのを思い出す(午前零時の自動車評論2:P.20~22)。

人間の身体の感覚が届く大きさだというのだ。

まあ、人類の体格は、徐々に大きくなっているというから、その限界も怪しいもんだが、991がそれを超えていることは、覚えておいていいかもしれないな(ちなみに、981型ボクスターの軸距は2475mm)。

「最新のポルシェが最良のポルシェ」であるというのは、当のポルシェの宣伝文句だが、何を持って良しとするかは、個人の価値観にもよるだろう。

911を名乗るクルマについて、間違いなくいえるのは、最新の911は、常に最大の軸距である、ということである。

世界で最も新しい国の崩壊?2013年12月23日 09:18

世界で最も新しい国の崩壊?
世界で最も新しい国の崩壊?


我々は、国家というのは永遠に不滅な、確固不動の存在であるかのように日々を過ごしている。

税金を払い、公共サービスを受け、選挙を行い、(実質)国営放送の国会中継とやらを見る。

足元の大地は揺るぎなく(地震で、よく揺れますが)、万世一系の天皇は、(ちょっと不安だが)今後も、「千代に八千代にさざれ石のいわおとなりてこけのむすまで」続くと信じている(まあ、国歌ですから)。

しかしながら、歴史を紐解けば、この地球上では、国家という概念が生まれると同時に、それは栄枯盛衰を繰り返し、生まれては消え、消えては生まれる流れの中の泡のような存在であることは明らかである。

人間が集団で暮らしていく中で見出した、便利でやっかいなシステムに過ぎない。

(国家)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E5%AE%B6

「国家(こっか)は、国境線で区切られた領土に成立する政治組織で、地域に居住する人々に対して統治機構を備える。領域と人民に対して排他的な統治権を有する政治団体もしくは政治的共同体である。 政治機能による異なる利害を調整し、社会の秩序と安定を維持していくことを目的にし社会の組織化をする。またその地域の住民は国家組織から国民あるいは公民と定義される。」

「国家は支配の道具であり、社会学者マックス・ウェーバーが国家は「正当化された暴力」を独占していると指摘したように、法に従わせることを確実なものとする能力を持たなければならない。」

「国家の三要素
・領域(Staatsgebiet:領土、領水、領空)- 一定に区画されている。
・人民(Staatsvolk:国民、住民)- 恒久的に属し、一時の好悪で脱したり復したりはしない。
・権力(Staatsgewalt)ないし主権- 正統な物理的実力のことである。この実力は、対外的・対内的に排他的に行使できなければならない、つまり、主権的(souverän)でなければならない。」

領土内の国民を統治できなくなれば、国家としての要件を失い、国家は崩壊する。

現代においてさえ、このような事態は、頻繁に起こっており、国家の消長は日常茶飯事であるとさえいえる。

このブログでも、中央アフリカ共和国について、つい先日、統治機構が崩壊したことについて触れた。

(中央アフリカ)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2013/12/09/7101202

「私たちはアフリカの忘れ去られた人々だ。この争いのことさえも忘れさられている。私が訴えたいのは、みなさんには私たちのことを忘れないでほしいということだ。私たちはお互いに殺し合ってはならない、でもこの国ではそれが実際に起きているんだ。」

繰り返し書くが、国家の崩壊と無秩序状態は、国民にとっては悲劇である。

本日現在も、外務省のページでは、中央アフリカには全土に対して「退避を勧告しています。渡航は延期してください。」となっている。

そしたら、その東隣の南スーダンとかいう国で、クーデター(というか、内戦)が起こっているというじゃないの!。

(民族紛争飛び火、内戦危機 南スーダン首都衝突1週間 対話メド立たず)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/131222/mds13122222250004-n1.htm

「南スーダンの首都ジュバで武力衝突が起きてから、22日で1週間となった。有力民族ディンカ人中心のキール大統領派と、対立するヌエル人のマシャール前副大統領派による戦闘は国内各地に飛び火し、油田が集中する北部ユニティ州や東部ジョングレイ州はマシャール派が掌握したとの情報もある。」

「事態収拾の見通しが立たない中、大量の国内避難民も発生しており、2011年7月に独立した「世界で最も新しい国」は、民族紛争激化による内戦と人道危機に陥る懸念が強まっている。」

聞いたことがない国だと思ったら、一昨年出来たばっかしじゃん!。

「15日夜の武力衝突以降、ジュバでは少なくとも500人が死亡した。アフリカ連合(AU)は両派にクリスマス期間中の停戦を働きかけているが、マシャール氏側は、キール氏が退陣しない限り対話には応じない姿勢を示している。」

我が国の自衛隊も駐屯している。

(南スーダンへの自衛隊の派遣について)
http://www.mod.go.jp/j/approach/others/shiritai/sudan/

「本年11月下旬頃から派遣される第5次要員以降は、約400名の隊員が南部3州(中央、東及び西エクアトリア州)で施設活動を実施することとしています。」とある。

けっこうな邦人がいるわけだな。

「ディンカ人とヌエル人の住民同士の暴力も激化しており、日本の陸上自衛隊も国連平和維持活動(PKO)で派遣されているジュバの国連施設などには、住民約4万人が避難した。」とあるので、ここで逃げ帰るわけにはいかんだろう?。

「ジョングレイ州では21日、米国民避難のために派遣された米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイが銃撃され、米兵4人が負傷。多くの油田労働者が働く中国や英国なども、自国民の退避を進めている状況だ。」

V22が、残存性の高い機体であることが、図らずも実戦で証明されたわけだな。

「当初はSPLM(新政府を担った独立運動組織:スーダン人民解放運動)古参幹部でヌエル人のマシャール氏が副大統領に就くなどして、一定の安定性が保たれたが、キール氏が今年7月、マシャール氏を解任して均衡が崩れた。」

「SPLMはもともと、独立前から内部分裂を繰り返してきた。原油輸出が国家収入の95%を占めながら、スーダン経由のパイプラインに頼らざるを得ないなど、基盤が脆弱(ぜいじゃく)なまま独立を果たした事情もある。」

なんでまた、そんな脆弱な国家が独立を果たしたんだあ?。

「黒人系キリスト教徒が多い南スーダンは11年、アラブ系イスラム教徒が中心のスーダンからの独立を果たした。スーダンのバシル政権と敵対する米欧の強い後押しが背景にあった。」とある。

石油の権益を廻って、汚いやり取りがあったことは、想像に難くない。

どーせ、CIAとかも絡んでいるんだろうよ。

この国の貿易相手国には、中国の名前もある。

アフリカでの資源獲得に熱心で、ここにも首を突っ込んでいるわけだな。

(反政府軍、南スーダンの油田地帯を制圧)
http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2013122355828

「アフリカ連合のドラミニ・ズマ委員長も、南スーダン政府軍と反政府軍にクリスマス休戦を求めた。」

(中国石油天然気集団)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E7%9F%B3%E6%B2%B9%E5%A4%A9%E7%84%B6%E6%B0%97%E9%9B%86%E5%9B%A3

事態は深刻で、一刻の猶予もならない。

大体、キリスト教徒でもないヌエル族に、クリスマス休戦を呼びかけるセンスもいかがなものか。

(ヌエル族:宗教)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8C%E3%82%A8%E3%83%AB%E6%97%8F#.E5.AE.97.E6.95.99

「信仰心が厚く、大地の神クウォス(Kuoth)を信仰しており、しばしば家畜の供犠や祭事が執り行われる。」

浮沈子は、石油資源を廻る都合で、政治的に不安定なまま独立させた米欧の責任は重大であると考えている(隣の中央アフリカ共和国を初め、イラクとか、アフガニスタンでも同じ様な感じだったし)。

世界で最も新しい国が、独立して2年余りで、崩壊の危機に晒されているのだ。

国家が永遠に不滅だなどという幻想は、捨てた方がいい。

それにしても、PKOに派遣されている自衛隊の対応は、どういうことになるのか。

この事態、人事では済まされないのだ。