真空専用エンジンの再使用:人類未踏の領域へ:そもそも本番機はステンなのかあ? ― 2020年09月08日 08:35
真空専用エンジンの再使用:人類未踏の領域へ:そもそも本番機はステンなのかあ?
厳密には、そうとは言えないのかも知れない。
スペースシャトルやXー37Bでは、真空中のみで作動するエンジン(OMSとか)が再使用されているし、シャトルのメインエンジンは、専用ではないかもしれないが真空中で作動している。
しかし、まあ、打ち上げロケットの2段目以降に使われる真空中作動に特化したメインエンジンが回収されて再使用されるという話は、たぶん、史上初になるに違いない。
(SpaceXは、Starship用のRaptor真空エンジンバリアントの最初のコピーのテストを開始します)
https://www.elonx.cz/spacex-zacina-testovat-prvni-exemplar-vakuove-varianty-motoru-raptor-pro-lod-starship/
それがどーしたということなんだが、品質管理や設計の最適化という観点から、浮沈子的には注目している。
回収して現物をつぶさに調べ、過剰品質や逆に破損しやすい部分を特定したり、それらを改善して最適化することができるからな。
更には、そのプロセスを繰り返して、耐久性、信頼性の向上につなげることもできる。
通常の工業製品は、そうして生産管理されているわけで、別に目新しい話じゃない。
従来、使い捨てにしていたロケットを、再使用することによって、当たり前の生産プロセスに持ち込むだけの話なわけだ。
失敗すれば損失が大きい打ち上げロケット(概ねロケットの値段より高いペイロードを積んでたりするしな)の場合、どうしても過剰品質になりがちなわけで、それが使い捨てと相まってコストの増加につながっている。
いや、使い捨てにするから、耐久性を抑えてコスト削減になっているということもあるかも知れない。
いずれにしても、使い捨てにせずに、再使用できるものならそれに越したことはないのだ。
従来は、回収手段が限られていて、再使用するためのコストもかさんでしまい、耐久性の向上自体もマイナスにしか作用しなかったかもしれない。
じゃあ、何回くらい再使用すれば適性なのかという話もある。
材料特性や応力との関係、熱や振動による脆化、化学的変化などなど、考慮すべき点は多い。
部品のコストと、再使用に当たっての検査やメンテナンスコストも考慮する必要がある。
メンテするなら、換えちまった方が安いということなら、その方が早い。
ベンツのプロペラシャフトに噛ませてあったコンパニオンプレートの話を思い出すな。
わざと壊れやすい部品を入れて、そこが集中的に壊れるようにして、劣化を見て交換し、システム全体の長寿命化を図る。
もちろん、それだけが対応方法ではないだろうけど、機械の王国時代の発想としては秀逸と感じる。
全部がちがちに作ってしまって、壊れる時は何の前ぶれもなく、壊滅的に壊れるというのはマズい。
最悪、壊れても、安全側に壊れてくれた方がいい。
タイヤのパンクとかは、操縦可能なレベルで空気が抜けて、事故に繋がらないように起こるのがいい。
301ステンレス鋼から、304Lステンレス鋼に変えようとしているスターシップは、その辺りを狙っているのかも知れない(ド派手な爆発を見られなくなるのは寂しいけどな)。
神ならぬ人の作りしものは、必ず壊れる。
それは、おそらく真理だ。
自然の在り様に手を加え、身勝手に神の造形を弄れば、それは禍となって自らに降りかかるのだ。
人間の知恵が未熟であるだけではなく、自然に手を加えるということの本質に係ることだからな。
遺伝子を弄り、放射線耐性や無重力耐性を上げようとかしても、そう上手くはいかないだろう。
どこかで、手痛いしっぺ返しを食らうことになる。
壊れるということを前提として、それを管理しながら運用し、適切にメンテナンスを行ったり部品を交換しながら延命させ、ある時点で見切りをつけて全とっかえするというのは耐久消費財として健全な姿だ。
使い捨てが悪いわけではない。
適性なメンテナンスコストの方が、製造にかかる費用に対して極端に高い場合は使い捨てでもやむを得ない。
使い捨てにすることによるコスト削減や、品質向上が期待される場合もあるからな。
一概には言えない。
最近は、使い捨てにしてリサイクルする際のコストも織り込んで評価しなければならないし、環境負荷を資源レベルやエネルギーレベルで見なければならなくなってきている。
打ち上げロケットだって、そのうち省エネとか言いだすに決まってるのだ(そうなのかあ?)。
環境負荷が低いのは水素酸素燃料だが、エネルギー密度の観点からは最適とは言えないしな(炭化水素系の燃料では、エンジンの耐熱性の問題から酸素リッチで燃やせなかったために、仕方なく水素にした経緯もある)。
その兼ね合いが難しい。
時代時代で、適用できる技術は異なるし、それは常に変化し続けている。
再使用ロケットが志向されたのは、スペースシャトルからだが、様々な理由でとん挫した。
安全性、経済性、実効性。
そう、実効性が乏しかったことが、最大の理由かもしれない。
それは、地球低軌道までしか行けなかったし、打ち上げ能力にも限界があった。
ISSを建造するというアプリケーションに特化したロケットだったといってもいい。
ロシアモジュールが、それぞれ独立した宇宙機として操縦でき、自分でドッキングして宇宙ステーションをつぎはぎで作って行っているのに対して、米国その他のモジュールは、運んでもらって人手でくっつけなければならないドンガラに過ぎない(そんなあ!)。
そういうことができたのは、シャトルの広大なカーゴベイのおかげだ。
もちろん、サターンVを片っ端から打ち上げれば、ISSは建造できたかもしれないが、べらぼーなコストになったかもな。
使い捨てか、再使用かは、2者択一ではない。
常に流動的で、組み合わせ可能で、最適化を追求されるべきだ。
SLS(コアモジュール、固体燃料ブースター、第2段目)は使い捨てだが、ペイロードであるオリオン宇宙船の一部(CM)は再使用されるしな。
ファルコン9だって、2段目や衛星分離機構などは使い捨てだ。
フェアリングは、今のところグレーゾーン。
スターシップが、完全再使用を目指していることは画期的だし、実現すれば大した話だ。
真空専用エンジンの最適化だけではなく、スペースシャトルの夢を継ぐことになる。
開発過程についても、特徴的と感じる。
使い捨てロケットは、SLSの開発に見るように、地上で徹底的にテストして、完成品として世に送り出す(送り出すと、使い捨てされるだけ!)。
何度も飛ばして、ぶっ壊しながら作るわけではない。
ファルコン9だって、徹底した地上試験を行い、性能を確認して開発された使い捨てロケットが出自となっている。
使い捨てロケット→再使用ロケットなわけで、初めから再使用を目論んだ開発を行ったわけではない(ケストレルやマーリンエンジンは、当初から再使用を前提とした開発だったらしい)。
そうはいっても、再使用指向はファルコン1の開発当初からあったわけだから、何らかの特徴的な開発プロセスがあるかもしれない(未確認)。
まあいい。
スターシップは、最初から完全再使用を目指しているから、プロトタイプはホッピングからスタートしている。
従来の使い捨てロケットの開発から見れば、異様な風景だ(SLSは、ホッピングできないしな:着陸脚ないし)。
別の観点から見れば、スターシップという宇宙船(本番機)の開発は、まだ、始まってすらいないかもしれない。
現在は、プロトタイプを開発しているというだけの話だ。
しかし、完全再使用の場合、どこまでがプロトタイプで、どこからが本番機かというのは区別し難いかもしれない。
材料がフィックスし、機体構造に連続的な改良を続けていくのであれば、一連の開発ということになる。
エンジンは、くっつければいいだけのユニットだからな。
少なくとも、エンジンの数がころころ変わっていくのを見ると、そう感じざるを得ない。
実際に、プロトタイプから本番機に連続的に移行するかどうかは分からない。
機体構造から模索しているところを見ると、そう考えるのが順当だろうが、ステンレス鋼を加工して作っているのは、仮の姿という可能性もある。
つまり、あれはプロトタイプだけの材料・構造というわけだ。
当初指向していた複合材料は、プロトタイプ用としては確かに高価だからな。
浮沈子は、どこかのタイミングで、全く異なる材料と構造から本番機が作られる可能性は、否定できないと考えている。
だって、あのカッコのままのロケットが離陸するシーンは、想像し難いからな。
まあ、どうでもいいんですが。
現在のプロトタイプの延長線上に、本番機が来るとすれば、ロケット開発の手法自体を変えることになる。
再使用されたスペースシャトルの場合、確かにエンタープライズというプロトタイプはあった。
(スペースシャトル・エンタープライズ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%BA
「このエンタープライズは滑空実験機であり、ファン達の望んだ「宇宙船エンタープライズ号」の誕生とはならなかった。」
実は、爆発して飛び散ってしまったチャレンジャーも、実験機だった。
(スペースシャトル・チャレンジャー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC
「滑空試験機エンタープライズと同時に製造された地上試験機を改造している」
しかし、まあ、機体構造はそのままで、改造で本番機に出来たようだし、エンタープライズも本番機に改造しようかという話もあったり、一部、部品取りに使われたということだから、いってみれば、逆に本番機を試験に使っていたようなものだろう。
爆発を繰り返しながら、材料を変えたり構造開発を詰めていっているスターシップとは発想が異なる気がするな。
静的に不安定なスペースシャトルを実現する時に、最大の懸念はおそらく滑空して着陸できるかということだったに違いない(耐熱タイルもヤバかったろうけどな)。
そこの部分は、徹底的にテストするぞ、と。
幸いなことに、滑空でトラブルを起こしたという話は聞かない(ドリームチェイサーは、車輪出なかったけどな)。
開発済みの本番機をテストに回して確認するという、スターシップとは逆の発想だと思うけどな。
先日調べたHAL/Sで書かれた制御プログラムの確認は、エンタープライズで行われたということだ。
真空エンジンの記事に刺激されて書き始めたんだが、話が逸れまくった。
(SpaceXの2番目の飛行実証済みのスターシップは、次の「テストタンク」に道を開きます)
https://www.teslarati.com/spacex-second-flight-proven-starship-next-test-tank/
「現在、SpaceXは本日と明日(9月8日)にCDT午前8時から午後8時まで予定されています。明日はSN7.1テストを開始する最も早い機会です。」
304Lステンレス鋼のタンクの2度目の試験が、単にプロトタイプ専用として行われているのか、本番機までを想定した開発として行われているのかについては分からない。
ラプターエンジン制作との兼ね合いで、プロトタイプでは、スターシップには3機しか積まず、スーパーヘビーも最大20機程度までと言われている。
それをそのまま素直に取れば、本番機は構造からして異なると考えることもできる。
最大1000回使いまわすというスーパーヘビーが、ステンレス鋼の溶接構造で作られると本気で考える方が不自然かも知れない。
プロトタイプだけではないのか。
耐熱について、それ程考慮しなくて済むスーパーヘビーこそ、ステンレス鋼にする意味は薄い。
本番機は、従来通りアルミ合金か複合材料にした方がいいような気がする。
スターシップは、多くても100回程度の再使用回数だし、耐熱性を考慮しなければならないからどうなるかは分からない。
S社は、何を考え、どうしようとしているのか。
浮沈子は、明日、本番機はステンじゃないって発表があっても、全然驚かないけどな・・・。
厳密には、そうとは言えないのかも知れない。
スペースシャトルやXー37Bでは、真空中のみで作動するエンジン(OMSとか)が再使用されているし、シャトルのメインエンジンは、専用ではないかもしれないが真空中で作動している。
しかし、まあ、打ち上げロケットの2段目以降に使われる真空中作動に特化したメインエンジンが回収されて再使用されるという話は、たぶん、史上初になるに違いない。
(SpaceXは、Starship用のRaptor真空エンジンバリアントの最初のコピーのテストを開始します)
https://www.elonx.cz/spacex-zacina-testovat-prvni-exemplar-vakuove-varianty-motoru-raptor-pro-lod-starship/
それがどーしたということなんだが、品質管理や設計の最適化という観点から、浮沈子的には注目している。
回収して現物をつぶさに調べ、過剰品質や逆に破損しやすい部分を特定したり、それらを改善して最適化することができるからな。
更には、そのプロセスを繰り返して、耐久性、信頼性の向上につなげることもできる。
通常の工業製品は、そうして生産管理されているわけで、別に目新しい話じゃない。
従来、使い捨てにしていたロケットを、再使用することによって、当たり前の生産プロセスに持ち込むだけの話なわけだ。
失敗すれば損失が大きい打ち上げロケット(概ねロケットの値段より高いペイロードを積んでたりするしな)の場合、どうしても過剰品質になりがちなわけで、それが使い捨てと相まってコストの増加につながっている。
いや、使い捨てにするから、耐久性を抑えてコスト削減になっているということもあるかも知れない。
いずれにしても、使い捨てにせずに、再使用できるものならそれに越したことはないのだ。
従来は、回収手段が限られていて、再使用するためのコストもかさんでしまい、耐久性の向上自体もマイナスにしか作用しなかったかもしれない。
じゃあ、何回くらい再使用すれば適性なのかという話もある。
材料特性や応力との関係、熱や振動による脆化、化学的変化などなど、考慮すべき点は多い。
部品のコストと、再使用に当たっての検査やメンテナンスコストも考慮する必要がある。
メンテするなら、換えちまった方が安いということなら、その方が早い。
ベンツのプロペラシャフトに噛ませてあったコンパニオンプレートの話を思い出すな。
わざと壊れやすい部品を入れて、そこが集中的に壊れるようにして、劣化を見て交換し、システム全体の長寿命化を図る。
もちろん、それだけが対応方法ではないだろうけど、機械の王国時代の発想としては秀逸と感じる。
全部がちがちに作ってしまって、壊れる時は何の前ぶれもなく、壊滅的に壊れるというのはマズい。
最悪、壊れても、安全側に壊れてくれた方がいい。
タイヤのパンクとかは、操縦可能なレベルで空気が抜けて、事故に繋がらないように起こるのがいい。
301ステンレス鋼から、304Lステンレス鋼に変えようとしているスターシップは、その辺りを狙っているのかも知れない(ド派手な爆発を見られなくなるのは寂しいけどな)。
神ならぬ人の作りしものは、必ず壊れる。
それは、おそらく真理だ。
自然の在り様に手を加え、身勝手に神の造形を弄れば、それは禍となって自らに降りかかるのだ。
人間の知恵が未熟であるだけではなく、自然に手を加えるということの本質に係ることだからな。
遺伝子を弄り、放射線耐性や無重力耐性を上げようとかしても、そう上手くはいかないだろう。
どこかで、手痛いしっぺ返しを食らうことになる。
壊れるということを前提として、それを管理しながら運用し、適切にメンテナンスを行ったり部品を交換しながら延命させ、ある時点で見切りをつけて全とっかえするというのは耐久消費財として健全な姿だ。
使い捨てが悪いわけではない。
適性なメンテナンスコストの方が、製造にかかる費用に対して極端に高い場合は使い捨てでもやむを得ない。
使い捨てにすることによるコスト削減や、品質向上が期待される場合もあるからな。
一概には言えない。
最近は、使い捨てにしてリサイクルする際のコストも織り込んで評価しなければならないし、環境負荷を資源レベルやエネルギーレベルで見なければならなくなってきている。
打ち上げロケットだって、そのうち省エネとか言いだすに決まってるのだ(そうなのかあ?)。
環境負荷が低いのは水素酸素燃料だが、エネルギー密度の観点からは最適とは言えないしな(炭化水素系の燃料では、エンジンの耐熱性の問題から酸素リッチで燃やせなかったために、仕方なく水素にした経緯もある)。
その兼ね合いが難しい。
時代時代で、適用できる技術は異なるし、それは常に変化し続けている。
再使用ロケットが志向されたのは、スペースシャトルからだが、様々な理由でとん挫した。
安全性、経済性、実効性。
そう、実効性が乏しかったことが、最大の理由かもしれない。
それは、地球低軌道までしか行けなかったし、打ち上げ能力にも限界があった。
ISSを建造するというアプリケーションに特化したロケットだったといってもいい。
ロシアモジュールが、それぞれ独立した宇宙機として操縦でき、自分でドッキングして宇宙ステーションをつぎはぎで作って行っているのに対して、米国その他のモジュールは、運んでもらって人手でくっつけなければならないドンガラに過ぎない(そんなあ!)。
そういうことができたのは、シャトルの広大なカーゴベイのおかげだ。
もちろん、サターンVを片っ端から打ち上げれば、ISSは建造できたかもしれないが、べらぼーなコストになったかもな。
使い捨てか、再使用かは、2者択一ではない。
常に流動的で、組み合わせ可能で、最適化を追求されるべきだ。
SLS(コアモジュール、固体燃料ブースター、第2段目)は使い捨てだが、ペイロードであるオリオン宇宙船の一部(CM)は再使用されるしな。
ファルコン9だって、2段目や衛星分離機構などは使い捨てだ。
フェアリングは、今のところグレーゾーン。
スターシップが、完全再使用を目指していることは画期的だし、実現すれば大した話だ。
真空専用エンジンの最適化だけではなく、スペースシャトルの夢を継ぐことになる。
開発過程についても、特徴的と感じる。
使い捨てロケットは、SLSの開発に見るように、地上で徹底的にテストして、完成品として世に送り出す(送り出すと、使い捨てされるだけ!)。
何度も飛ばして、ぶっ壊しながら作るわけではない。
ファルコン9だって、徹底した地上試験を行い、性能を確認して開発された使い捨てロケットが出自となっている。
使い捨てロケット→再使用ロケットなわけで、初めから再使用を目論んだ開発を行ったわけではない(ケストレルやマーリンエンジンは、当初から再使用を前提とした開発だったらしい)。
そうはいっても、再使用指向はファルコン1の開発当初からあったわけだから、何らかの特徴的な開発プロセスがあるかもしれない(未確認)。
まあいい。
スターシップは、最初から完全再使用を目指しているから、プロトタイプはホッピングからスタートしている。
従来の使い捨てロケットの開発から見れば、異様な風景だ(SLSは、ホッピングできないしな:着陸脚ないし)。
別の観点から見れば、スターシップという宇宙船(本番機)の開発は、まだ、始まってすらいないかもしれない。
現在は、プロトタイプを開発しているというだけの話だ。
しかし、完全再使用の場合、どこまでがプロトタイプで、どこからが本番機かというのは区別し難いかもしれない。
材料がフィックスし、機体構造に連続的な改良を続けていくのであれば、一連の開発ということになる。
エンジンは、くっつければいいだけのユニットだからな。
少なくとも、エンジンの数がころころ変わっていくのを見ると、そう感じざるを得ない。
実際に、プロトタイプから本番機に連続的に移行するかどうかは分からない。
機体構造から模索しているところを見ると、そう考えるのが順当だろうが、ステンレス鋼を加工して作っているのは、仮の姿という可能性もある。
つまり、あれはプロトタイプだけの材料・構造というわけだ。
当初指向していた複合材料は、プロトタイプ用としては確かに高価だからな。
浮沈子は、どこかのタイミングで、全く異なる材料と構造から本番機が作られる可能性は、否定できないと考えている。
だって、あのカッコのままのロケットが離陸するシーンは、想像し難いからな。
まあ、どうでもいいんですが。
現在のプロトタイプの延長線上に、本番機が来るとすれば、ロケット開発の手法自体を変えることになる。
再使用されたスペースシャトルの場合、確かにエンタープライズというプロトタイプはあった。
(スペースシャトル・エンタープライズ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%BA
「このエンタープライズは滑空実験機であり、ファン達の望んだ「宇宙船エンタープライズ号」の誕生とはならなかった。」
実は、爆発して飛び散ってしまったチャレンジャーも、実験機だった。
(スペースシャトル・チャレンジャー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC
「滑空試験機エンタープライズと同時に製造された地上試験機を改造している」
しかし、まあ、機体構造はそのままで、改造で本番機に出来たようだし、エンタープライズも本番機に改造しようかという話もあったり、一部、部品取りに使われたということだから、いってみれば、逆に本番機を試験に使っていたようなものだろう。
爆発を繰り返しながら、材料を変えたり構造開発を詰めていっているスターシップとは発想が異なる気がするな。
静的に不安定なスペースシャトルを実現する時に、最大の懸念はおそらく滑空して着陸できるかということだったに違いない(耐熱タイルもヤバかったろうけどな)。
そこの部分は、徹底的にテストするぞ、と。
幸いなことに、滑空でトラブルを起こしたという話は聞かない(ドリームチェイサーは、車輪出なかったけどな)。
開発済みの本番機をテストに回して確認するという、スターシップとは逆の発想だと思うけどな。
先日調べたHAL/Sで書かれた制御プログラムの確認は、エンタープライズで行われたということだ。
真空エンジンの記事に刺激されて書き始めたんだが、話が逸れまくった。
(SpaceXの2番目の飛行実証済みのスターシップは、次の「テストタンク」に道を開きます)
https://www.teslarati.com/spacex-second-flight-proven-starship-next-test-tank/
「現在、SpaceXは本日と明日(9月8日)にCDT午前8時から午後8時まで予定されています。明日はSN7.1テストを開始する最も早い機会です。」
304Lステンレス鋼のタンクの2度目の試験が、単にプロトタイプ専用として行われているのか、本番機までを想定した開発として行われているのかについては分からない。
ラプターエンジン制作との兼ね合いで、プロトタイプでは、スターシップには3機しか積まず、スーパーヘビーも最大20機程度までと言われている。
それをそのまま素直に取れば、本番機は構造からして異なると考えることもできる。
最大1000回使いまわすというスーパーヘビーが、ステンレス鋼の溶接構造で作られると本気で考える方が不自然かも知れない。
プロトタイプだけではないのか。
耐熱について、それ程考慮しなくて済むスーパーヘビーこそ、ステンレス鋼にする意味は薄い。
本番機は、従来通りアルミ合金か複合材料にした方がいいような気がする。
スターシップは、多くても100回程度の再使用回数だし、耐熱性を考慮しなければならないからどうなるかは分からない。
S社は、何を考え、どうしようとしているのか。
浮沈子は、明日、本番機はステンじゃないって発表があっても、全然驚かないけどな・・・。
ILC申請取り下げ:半年もたって明らかにされる不都合な現実 ― 2020年09月09日 08:36
ILC申請取り下げ:半年もたって明らかにされる不都合な現実
どうやら、直接的には新型コロナのせいではないようだな。
(国際リニアコライダー 「次世代加速器」取り下げ 政府基本構想申請 早期実現困難)
https://mainichi.jp/articles/20200909/ddm/012/040/078000c
「文科省の作業部会は2月、ロードマップ策定に向けた申請の受け付けを開始。ILCの誘致を推進する中核機関、高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)が書面審査に向けて書類を提出したが、3月に取り下げた。」
「(ILCを推進する)国際将来加速器委員会から『推進の枠組みを再構築すべきだ』との提言があり、申請時に描いた青写真と異なることになったため」
3年ごとに作成されるロードマップは、予算が付くかどうかの重要な関所だ。
その前に、マスタープランの重点大型研究計画になるとか、ヒアリングを受けるとかいう関所があるが、ILCはヒアリングこそ受けたものの、結果的には重点事項にならなかった。
重点大型研究計画にならなくても、ロードマップに乗る可能性もあるらしいが、例外的な扱いな感じらしい。
(ILC計画 ロードマップ掲載可能性 ほぼゼロ)
http://ilc.tankonews.jp/modules/d3blog/details.php?bid=918
「ロードマップは予算付けのための審査であり、マスタープランの重点リストを基に審査する。今回のように学術的価値と実現性の審査を受け、重点リストの選外になったプロジェクトを再度拾い上げ、審査することはないだろう」
(ILC、文科省構想に申請へ(選定のハードルは高く))
http://ilc.tankonews.jp/modules/d3blog/details.php?bid=923
「推進派の研究者サイドは文部科学省が策定する「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想(ロードマップ2020)」に選定されるための書面審査に臨む見通しだ。日本時間21日、米国で行われているILC関連の国際会議で、文部科学省側がロードマップの審査対象であることを報告」
「過去の例を見ると、ロードマップ掲載計画は10件にも満たない上、重点計画と比べ審査要件のハードルも高く設定されている。」
この胆江日日新聞は、きちんと取材していて、甘い見通しでヨイショ記事を書いたりする地元メディアとは一線を画している。
毎日の記事は、今のところスクープ状態だが、3月に取り下げていたのが半年近くも経ってから表沙汰になるというのはどういうことなんだろうか。
この間、地元では様々な誘致活動が行われ、限りなく小さくなった実現(そうなのかあ?)に向けて取り組んできたわけだからな。
浮沈子的には、ILC自体を我が国が誘致することはないと思っているし、20年くらいの事業期間が終われば、放射化した設備や排水の管理や処理などの迷惑施設になる。
跡地(トンネル)を、核廃棄物管理施設にされる懸念もあり(ちょっと浅すぎる気もするし)、不要不急の科学者のオモチャを作る必要性は元々ない。
中国や欧州では、次世代加速器の構想が立ち上がっていて、米国で没になった施設の尻拭いをさせられる義理はない。
加えて、直接の話ではないだろうが、新型コロナによる社会経済情勢の激変の影響は否定できないだろう。
世界中で金が回らなくなり、各国の政府拠出がままならなくなっている。
まあ、誘致する我が国の公共事業的には、経済活性化という名目で、逆の目が出る可能性もあるけどな。
他の国は、ただ金が出ていくだけで旨味はない。
単なる文化事業に、この危急存亡の時期に莫大な金を出す余裕はないだろう。
金の出どころを、どこかに求めなければなるまい。
カイパー衛星に100億ドルをポンと出すアマゾンとか、叩き売りに出されたワンウェブを買い取ったインドのファンドとかな(ILCの事業費は70億ドルくらい)。
線形加速器が、金儲けに繋がることを証明できれば、民間資金を導入することも可能かもしれない。
ネーミングライツ程度(アマゾン加速器とかあ?)では、運営費の足しくらいにしかならないから、もっと上手い理屈を考えなければならない。
トンネル事業としては、イーロンマスクのトンネル会社に頼むという話もある(セルンは、その気だしな)。
我が国の土木会社に金が落ちるスキームを作れば、多少は持ちだしてくれるかもしれない。
学園都市を作るということなら、建築関係でも民間資金導入の余地はありそうな気がする。
しかし、継続的な収益事業として投資対象にしづらいことは間違いないだろうな。
ILCは、筋から行って、公共事業として行うべきものだ。
そこに投じる金が出ないなら、今は見送るのが正しい。
100年くらい経てば、チャンスは巡ってくるかもしれない(そんなあ!)。
施設建設の意義が、その頃まで残っていればの話だ。
ヒッグス粒子の精密な解明や、次の次の加速器に必要な条件を見つけたりすることが、他の方法(超巨大円形加速器で電子・陽電子ぶつけるとか)で解決されればそれでおしまいだからな(そうなのかあ?)。
ILCは、我が国で行うかどうかに関わりなく、先のない、パーシャルな実験施設だ(その意味では、全ての巨大実験施設が同じですが)。
始まる前から終わりが見えている。
コンパクトで扱いやすいと言えばそうだが、時期ものだからな。
今期のロードマップ申請を見送った判断は正しい。
中国を含め、全世界のペースが落ちてくれば、競争の観点からも影響は出ない。
素人受けが難しい事業だから、順番が後になることは仕方ないだろう。
そうしているうちに、チャンスがあれば再挑戦ということになる。
要素技術の開発(どこでやるにしても役に立つしな)や、事業の細部の煮ツメ、事業終了後の施設活用の議論など、こういう時だからこそやるべきことはある。
そのうち、その議論を踏まえて、別のところ(我が国ではない)でやるというところが出てくるかもしれないし(ねーよ!)。
今は、新型コロナでそれどころじゃないだろうが、インドとかどうなんだろうな。
まあ、どうでもいいんですが。
ILCは、ババ抜きのババのような存在になっちまった。
意義は分かるが、人気なく、金ばっかかかる。
それをひくなら、国際協力の枠組み無くしては出来ない。
人類の総意として、事業を進める必要があるのだ。
うーん、火星移民より難しいかもな・・・。
<以下追加>----------
(ILC誘致 正念場 「期限22年まで」 国際協力後ろ盾 岩手県・研究者ら、政府に決断促す)
https://www.kahoku.co.jp/special/spe1116/20200831_01.html
「ここから3年過ぎたら駄目。東北からねじを巻きたい」
「22年までに」
2022年というのは、次期ロードマップの策定時期に当たる。
地元のとりまとめに当たっている新組織「東北ILC事業推進センター」の代表である鈴木厚人岩手県立大学長(素粒子物理学)が、半年も前の高エネ研の申請取り下げを知らなかったとは考えづらい。
報じている河北新報でさえ、「今後2年を正念場と見て「外圧」もてこにしながら、煮え切らない日本政府に決断をせっついている。」と書いている。
地元マスコミを含め、申請を取り下げたことは、関係者間では公然の秘密だったのではないか。
ヒアリング→重点リスト→ロードマップマップ→予算化(事業化)という王道からは既にドロップアウトし、起死回生を狙うしかない状況の中で、ロードマップへの申請を取り下げたわけで、事実上の撤退だ(未確認)。
そのくせ、「文科省は大型プロジェクト推進に関するロードマップを策定中だが、ILCが載るかどうかは不透明だ。」という認識を示している。
怪しい・・・。
もちろん、ロードマップから落ちても、スーパーでタイムリーな事業であれば予算化の脈はあるかも知れないが、これまで(2017年のロードマップ作製からの3年間:この時は見送られた)さんざんたなざらしにされ、科学界から総スカンを食らっている状況(そうなのかあ?)の中では、余程のウルトラCを繰り出さなければ実現にこぎつけることは難しい(たぶん)。
ここは一つ、ライバルと目されている中国の支援を取り付けるなどの裏技を駆使して、大どんでん返しを狙ってはどうか(それが可能かとか、それだけはやりたくないとか、セルンがそっぽ向くとか言わずに・・・)。
人類全体で取り組むなら、中国にだって協力を求めていいだろう?。
ひょっとすると、国際将来加速器委員会から『推進の枠組みを再構築すべきだ』との提言は、そういう展開を踏まえているのかもしれない(未確認)。
欧州だって、中国だって、こういう情勢の中では苦しいのだ。
北上にILCができるかどうかは、地元にとっては大問題だろうが、世界の素粒子物理学者にとっては大した問題ではない(そうなのかあ?)。
中国に出来ようが、月面に出来ようが、火星に出来ようが関係ないかもしれない(宇宙の法則はどこでも同じだろうしな)。
白いネコでも黒いネコでも、ILCを作ってくれるネコがいいネコというワケだな(そんなあ!)。
ロードマップへの搭載が見送られた中、この件は暫くは静かになるだろう。
推進の枠組みを再構築(ウルトラC、究極の裏技、ネコの動員エトセエトセ)するための雌伏の期間が続く。
臥薪嘗胆。
この際だから、月面にでも作ってはどうか。
米国は、素粒子物理学の高価な実験機器を作る代わりに、宇宙開発に投資して大きな成果を得た。
欧州はセルンなどに投資し続け、不動の地位を築いている。
中国に作ることに抵抗があるなら、月面に作れば問題は少ない(別の問題は山のようにあるが)。
湯水のように金をつぎ込む宇宙開発と、ワケの分からない素粒子物理学が合体して、人類共通の利益のために協力して投資することになる。
SLSの出番も増えて、B社も満足だろう。
スターシップが出来れば、100トンの電磁石だって運べる(重量未確認)。
ISSを作ったように、世界が協力してILSを作るわけだ(あん時は中国外したけどな)。
宇宙開発経費を導入することが出来れば、金目の問題は雲散霧消する(そう上手くいくのかあ?)。
SLSの開発に、200億ドル以上をぶち込んできたわけだからな。
総額で70億ドルなんて、はした金だろう(うーん、比較すると結構デカいな:ちょうど、クルードラゴンとスターライナーの開発費を合わせた程度の規模になる)。
しかし、何の目的もなく作っちまったSLSや、万が一完成すれば過剰な運搬能力を持て余すに決まってるスターシップに、価値ある目的を与えることが出来る。
未来への投資(=目先のことには全く役に立たない)という意味では、これ以上のものはないだろう。
月の地下には、大規模な空洞があると言われている。
(月の地下に長さ50キロの空洞 探査機「かぐや」で判明)
https://www.asahi.com/articles/ASKBK7GP0KBKUBQU01N.html
「月の地下に、長さ約50キロに及ぶ長大な空洞があることが、日本の月探査機「かぐや」の観測データから判明した。」
溶岩が流れた後に出来た空洞といわれているが、ここを利用することが出来れば大規模なトンネルを掘る必要もない。
「発見された空洞は、溶岩の通り道となった「溶岩チューブ」とみられる。」
「幅100メートルほどの空洞が約50キロにわたって続いている」
概ね直線的な広がりが予想されていて、円形加速器には不向きだが、線形加速器の設置にはもってこいだ(ILCの長さは、当初は30kmくらい:拡張期で50kmだから、ちょうどいいか)。
真空度については、地上で実現できるより高いだろう(未確認)。
レゴリスには手を焼くだろうが、それさえ解決すれば、真空空洞作る手間だって省けるかもしれない。
研究が終わった後の跡地の問題で揉めることもない。
まあ、どうでもいいんですが。
電気についての記述は、古代ギリシャ時代のタレスにさかのぼることができる(電気自体は、それ以前にもよく知られていたようです)。
(電気:古代)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%B0%97#%E5%8F%A4%E4%BB%A3
「紀元前600年ごろミレトスのタレスは一連の静電気についての記述を残しているが、彼は琥珀をこすって生じる力は磁力だと信じており、磁鉄鉱のような鉱物がこすらなくても発揮する力と同じものだと考えた」
まあ、現代の素粒子の標準理論なんて、未来の人類から見れば、お笑い種にしかならない程度の理解に違いない(宇宙の存在の5パーセントしか説明できないしな)。
「タレスがそれを磁力だと考えたことは間違っていたが、後に電気と磁気には密接な関連があることが判明している。古代ギリシア人は、琥珀のボタンが髪の毛のような小さい物を引きつけることや、十分に長い間琥珀をこすれば火花をとばせることも知っていた。」
(タレス)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%AC%E3%82%B9
「最期は体育競技を観戦していて、炎熱と渇き、または老衰によって死亡したとされる。」
熱中症には気を付けないとな・・・。
現代の人類は、電気の流れを制御して、電動アシスト自転車を漕ぎ、洞窟(レストランが入っているビル)の奥の暗闇を照らし、電磁調理器で調理されたランチを食い、半導体で良きに計らった電気で動くコンピューターを使って与太ブログを書き散らし、空中線に電力掛けて飛ばした電波でネットに垂れ流している(その先は長いので割愛する)。
やれやれ・・・。
羊毛で琥珀を擦っているタレスと似たようなもんかもな。
最先端の素粒子物理学も、2000年くらい経てば人類の日常生活に大変革を起こしているかもしれない。
全てを素粒子に分解しちまって、光速の頸木を引き千切ってぶっ飛ばし、何光年も離れた星系に転送できるようになったりしてな。
人類は、電磁波(電波)なんか使って宇宙人を探しているが、十分進化した地球外生命体は、そんなもん使ってるはずがないということに、何故思い至らないのか。
大きな太鼓を叩けば、宇宙人にも聞こえるに違いないと考えるようなもんだ。
しかし、それに代わる通信手段を知らないんだから仕方ない。
大規模線形加速器が、そういう話と関わるかどうかは知らない。
だからこその、未来への投資なのに違いない・・・。
<さらに追加>----------
(大型加速器ILC、実現遠のく 基本構想の申請取り下げ)
https://www.asahi.com/articles/ASN9964JLN99ULBJ005.html
「高エネルギー加速器研究機構(KEK)が8日、国が優先的に進める大型研究の基本構想「ロードマップ」への申請を取り下げたと発表した。」
KEKが発表したから報道になったのか・・・。
「もっと強力な組織を作るべきだとの提案が国際将来加速器委員会からあった」
中国を入れろという話じゃなかったんだな。
まあいい。
「取り下げによって議論が進むことは当面なくなった。」
しかし、取り下げてから半年間、知らずに奔走した関係者にしてみれば、いったい何だったのかということになるだろう。
巨大科学の時代には、物事は純粋な学術的関心だけでは進まない。
専門的なことは専門家が評価するんだろうが、それを市民が容認できる話に咀嚼していかなければならない。
それでなくても、この新型コロナの時代に、海外から多くの研究者やその家族がどっと押し寄せると聞いただけで、新型コロナの免疫が薄い(文字通り?)東北地方は震えあがるかもな(そうなのかあ?)。
それこそ偏見かも知れないが、理由なき感情ではないだろう。
ほとぼりが冷めるまで、一呼吸置くことは必要かもしれない。
月面リニアコライダーの話は、浮沈子の単なる妄想に過ぎないが、現実の話は地に足が付いた議論が必要だ。
ハッキリ言って、ILCは地味な器械だ。
華がない。
標準理論を構成する最後のピースであるヒッグス粒子を見つけるぞとか、世界最大の衝突エネルギーを実現するぞとか、派手な脅しが効かない玄人好みのカルトな実験機だ。
一連の実験が終わった後の拡張性にも欠ける(詳細は未確認)。
多少長さを長くして、衝突エネルギーを増やすことくらいしかできない。
放射化した実験機器や、排水をどうするかについては、しっかりとした計画と実施を担保する体制が必要だ。
山ぶち抜いてトンネル掘れば、地下水への影響も懸念される。
リニア新幹線で静岡県が着工に猛反対しているしな。
なにより、そのトンネルの跡地利用が最大の懸念だ。
核廃棄物の一時保管庫、ひいては恒久的な処分施設になりかねない(深さが足りなければ、そこから掘り下げるかもしれないしな)。
耳障りのいい話ばかりが聞こえてくるが、実体は迷惑施設なんではないのかあ?。
それを、文化の衣でくるんで、本質を覆い隠しているような気がする。
喧伝されているような話ばかりならいいが、ネガな部分にも目を向けていかないとな。
コアとなる事業は、建設に10年、実験自体は10年から20年程度で終わる(たぶん)。
解体と、延々と続く後処理の期間がどれくらいかかるかは知らないが、数十年単位で続くかもしれない。
貧しい時代の我が国の科学は、無駄を排し、効率よく、成功の可能性高く、国威発揚に繋がる華やかなのが好まれた。
実りがあるかどうかの保証もなく、失敗するかもしれず、ノーベル賞に繋がる派手な成果もなく、ひっそりと日陰の花に終わるかも知れないジミーな科学を実践する余裕はなかった。
豊かになって、世界に貢献できるようになり、真の意味での重要な分野に踏み込んで、人類の未来に投資できるようになったのかも知れない。
その意味では、ILCは我が国の科学の在り方にとって、踏み絵になるともいえる。
火中の栗、ババ抜きのババ・・・。
しかし、誰かがそれを拾わなければならないのかも知れない。
腹を括って引き受けるのか、荷が重いからと言って避けるのか。
美味しそうなトッピングを施したりせずに、ネガティブな部分を含めて、すべてを白日の下に曝してオープンに議論すべきだろう。
少なくとも、申請を取り下げてから半年もして公表する無様は、常識的に有り得ない。
様々な事情があったのかも知れないが、門外漢には異様に映る。
このこと一つ取ってみても、この手の真に困難な事業に取り組む準備が、我が国に出来ているとは思えない。
日本は、まだ貧乏国家の裾を引きずっている。
世界に毅然として立つ独立国として、国際社会における尊敬を集める一員としての本質的な資格に欠けると言われても仕方ないかも知れない。
核融合実証炉イータをフランスに持っていかれ、ILCを押し付けられて面白くないのかも知れないが、そんなことはどこ吹く風と、涼しい顔して引き受けられなくてどーする?。
そういう官僚的駆け引きが前面に出て振り回されているうちは、この手の事業を行う資格などないだろう。
物事があるべき姿であれば、水が高きから低きに流れるように、スムーズに滞りなく進むに違いないのだ。
天の時、地の利、人の和とはよく言ったものだと、あらためて感心する。
少なくとも今は、その時ではないということだろう。
地の利はあったとしても、人の和はない。
国際社会は、組織作りという表現で、それを期待しているのかも知れないな・・・。
どうやら、直接的には新型コロナのせいではないようだな。
(国際リニアコライダー 「次世代加速器」取り下げ 政府基本構想申請 早期実現困難)
https://mainichi.jp/articles/20200909/ddm/012/040/078000c
「文科省の作業部会は2月、ロードマップ策定に向けた申請の受け付けを開始。ILCの誘致を推進する中核機関、高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)が書面審査に向けて書類を提出したが、3月に取り下げた。」
「(ILCを推進する)国際将来加速器委員会から『推進の枠組みを再構築すべきだ』との提言があり、申請時に描いた青写真と異なることになったため」
3年ごとに作成されるロードマップは、予算が付くかどうかの重要な関所だ。
その前に、マスタープランの重点大型研究計画になるとか、ヒアリングを受けるとかいう関所があるが、ILCはヒアリングこそ受けたものの、結果的には重点事項にならなかった。
重点大型研究計画にならなくても、ロードマップに乗る可能性もあるらしいが、例外的な扱いな感じらしい。
(ILC計画 ロードマップ掲載可能性 ほぼゼロ)
http://ilc.tankonews.jp/modules/d3blog/details.php?bid=918
「ロードマップは予算付けのための審査であり、マスタープランの重点リストを基に審査する。今回のように学術的価値と実現性の審査を受け、重点リストの選外になったプロジェクトを再度拾い上げ、審査することはないだろう」
(ILC、文科省構想に申請へ(選定のハードルは高く))
http://ilc.tankonews.jp/modules/d3blog/details.php?bid=923
「推進派の研究者サイドは文部科学省が策定する「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想(ロードマップ2020)」に選定されるための書面審査に臨む見通しだ。日本時間21日、米国で行われているILC関連の国際会議で、文部科学省側がロードマップの審査対象であることを報告」
「過去の例を見ると、ロードマップ掲載計画は10件にも満たない上、重点計画と比べ審査要件のハードルも高く設定されている。」
この胆江日日新聞は、きちんと取材していて、甘い見通しでヨイショ記事を書いたりする地元メディアとは一線を画している。
毎日の記事は、今のところスクープ状態だが、3月に取り下げていたのが半年近くも経ってから表沙汰になるというのはどういうことなんだろうか。
この間、地元では様々な誘致活動が行われ、限りなく小さくなった実現(そうなのかあ?)に向けて取り組んできたわけだからな。
浮沈子的には、ILC自体を我が国が誘致することはないと思っているし、20年くらいの事業期間が終われば、放射化した設備や排水の管理や処理などの迷惑施設になる。
跡地(トンネル)を、核廃棄物管理施設にされる懸念もあり(ちょっと浅すぎる気もするし)、不要不急の科学者のオモチャを作る必要性は元々ない。
中国や欧州では、次世代加速器の構想が立ち上がっていて、米国で没になった施設の尻拭いをさせられる義理はない。
加えて、直接の話ではないだろうが、新型コロナによる社会経済情勢の激変の影響は否定できないだろう。
世界中で金が回らなくなり、各国の政府拠出がままならなくなっている。
まあ、誘致する我が国の公共事業的には、経済活性化という名目で、逆の目が出る可能性もあるけどな。
他の国は、ただ金が出ていくだけで旨味はない。
単なる文化事業に、この危急存亡の時期に莫大な金を出す余裕はないだろう。
金の出どころを、どこかに求めなければなるまい。
カイパー衛星に100億ドルをポンと出すアマゾンとか、叩き売りに出されたワンウェブを買い取ったインドのファンドとかな(ILCの事業費は70億ドルくらい)。
線形加速器が、金儲けに繋がることを証明できれば、民間資金を導入することも可能かもしれない。
ネーミングライツ程度(アマゾン加速器とかあ?)では、運営費の足しくらいにしかならないから、もっと上手い理屈を考えなければならない。
トンネル事業としては、イーロンマスクのトンネル会社に頼むという話もある(セルンは、その気だしな)。
我が国の土木会社に金が落ちるスキームを作れば、多少は持ちだしてくれるかもしれない。
学園都市を作るということなら、建築関係でも民間資金導入の余地はありそうな気がする。
しかし、継続的な収益事業として投資対象にしづらいことは間違いないだろうな。
ILCは、筋から行って、公共事業として行うべきものだ。
そこに投じる金が出ないなら、今は見送るのが正しい。
100年くらい経てば、チャンスは巡ってくるかもしれない(そんなあ!)。
施設建設の意義が、その頃まで残っていればの話だ。
ヒッグス粒子の精密な解明や、次の次の加速器に必要な条件を見つけたりすることが、他の方法(超巨大円形加速器で電子・陽電子ぶつけるとか)で解決されればそれでおしまいだからな(そうなのかあ?)。
ILCは、我が国で行うかどうかに関わりなく、先のない、パーシャルな実験施設だ(その意味では、全ての巨大実験施設が同じですが)。
始まる前から終わりが見えている。
コンパクトで扱いやすいと言えばそうだが、時期ものだからな。
今期のロードマップ申請を見送った判断は正しい。
中国を含め、全世界のペースが落ちてくれば、競争の観点からも影響は出ない。
素人受けが難しい事業だから、順番が後になることは仕方ないだろう。
そうしているうちに、チャンスがあれば再挑戦ということになる。
要素技術の開発(どこでやるにしても役に立つしな)や、事業の細部の煮ツメ、事業終了後の施設活用の議論など、こういう時だからこそやるべきことはある。
そのうち、その議論を踏まえて、別のところ(我が国ではない)でやるというところが出てくるかもしれないし(ねーよ!)。
今は、新型コロナでそれどころじゃないだろうが、インドとかどうなんだろうな。
まあ、どうでもいいんですが。
ILCは、ババ抜きのババのような存在になっちまった。
意義は分かるが、人気なく、金ばっかかかる。
それをひくなら、国際協力の枠組み無くしては出来ない。
人類の総意として、事業を進める必要があるのだ。
うーん、火星移民より難しいかもな・・・。
<以下追加>----------
(ILC誘致 正念場 「期限22年まで」 国際協力後ろ盾 岩手県・研究者ら、政府に決断促す)
https://www.kahoku.co.jp/special/spe1116/20200831_01.html
「ここから3年過ぎたら駄目。東北からねじを巻きたい」
「22年までに」
2022年というのは、次期ロードマップの策定時期に当たる。
地元のとりまとめに当たっている新組織「東北ILC事業推進センター」の代表である鈴木厚人岩手県立大学長(素粒子物理学)が、半年も前の高エネ研の申請取り下げを知らなかったとは考えづらい。
報じている河北新報でさえ、「今後2年を正念場と見て「外圧」もてこにしながら、煮え切らない日本政府に決断をせっついている。」と書いている。
地元マスコミを含め、申請を取り下げたことは、関係者間では公然の秘密だったのではないか。
ヒアリング→重点リスト→ロードマップマップ→予算化(事業化)という王道からは既にドロップアウトし、起死回生を狙うしかない状況の中で、ロードマップへの申請を取り下げたわけで、事実上の撤退だ(未確認)。
そのくせ、「文科省は大型プロジェクト推進に関するロードマップを策定中だが、ILCが載るかどうかは不透明だ。」という認識を示している。
怪しい・・・。
もちろん、ロードマップから落ちても、スーパーでタイムリーな事業であれば予算化の脈はあるかも知れないが、これまで(2017年のロードマップ作製からの3年間:この時は見送られた)さんざんたなざらしにされ、科学界から総スカンを食らっている状況(そうなのかあ?)の中では、余程のウルトラCを繰り出さなければ実現にこぎつけることは難しい(たぶん)。
ここは一つ、ライバルと目されている中国の支援を取り付けるなどの裏技を駆使して、大どんでん返しを狙ってはどうか(それが可能かとか、それだけはやりたくないとか、セルンがそっぽ向くとか言わずに・・・)。
人類全体で取り組むなら、中国にだって協力を求めていいだろう?。
ひょっとすると、国際将来加速器委員会から『推進の枠組みを再構築すべきだ』との提言は、そういう展開を踏まえているのかもしれない(未確認)。
欧州だって、中国だって、こういう情勢の中では苦しいのだ。
北上にILCができるかどうかは、地元にとっては大問題だろうが、世界の素粒子物理学者にとっては大した問題ではない(そうなのかあ?)。
中国に出来ようが、月面に出来ようが、火星に出来ようが関係ないかもしれない(宇宙の法則はどこでも同じだろうしな)。
白いネコでも黒いネコでも、ILCを作ってくれるネコがいいネコというワケだな(そんなあ!)。
ロードマップへの搭載が見送られた中、この件は暫くは静かになるだろう。
推進の枠組みを再構築(ウルトラC、究極の裏技、ネコの動員エトセエトセ)するための雌伏の期間が続く。
臥薪嘗胆。
この際だから、月面にでも作ってはどうか。
米国は、素粒子物理学の高価な実験機器を作る代わりに、宇宙開発に投資して大きな成果を得た。
欧州はセルンなどに投資し続け、不動の地位を築いている。
中国に作ることに抵抗があるなら、月面に作れば問題は少ない(別の問題は山のようにあるが)。
湯水のように金をつぎ込む宇宙開発と、ワケの分からない素粒子物理学が合体して、人類共通の利益のために協力して投資することになる。
SLSの出番も増えて、B社も満足だろう。
スターシップが出来れば、100トンの電磁石だって運べる(重量未確認)。
ISSを作ったように、世界が協力してILSを作るわけだ(あん時は中国外したけどな)。
宇宙開発経費を導入することが出来れば、金目の問題は雲散霧消する(そう上手くいくのかあ?)。
SLSの開発に、200億ドル以上をぶち込んできたわけだからな。
総額で70億ドルなんて、はした金だろう(うーん、比較すると結構デカいな:ちょうど、クルードラゴンとスターライナーの開発費を合わせた程度の規模になる)。
しかし、何の目的もなく作っちまったSLSや、万が一完成すれば過剰な運搬能力を持て余すに決まってるスターシップに、価値ある目的を与えることが出来る。
未来への投資(=目先のことには全く役に立たない)という意味では、これ以上のものはないだろう。
月の地下には、大規模な空洞があると言われている。
(月の地下に長さ50キロの空洞 探査機「かぐや」で判明)
https://www.asahi.com/articles/ASKBK7GP0KBKUBQU01N.html
「月の地下に、長さ約50キロに及ぶ長大な空洞があることが、日本の月探査機「かぐや」の観測データから判明した。」
溶岩が流れた後に出来た空洞といわれているが、ここを利用することが出来れば大規模なトンネルを掘る必要もない。
「発見された空洞は、溶岩の通り道となった「溶岩チューブ」とみられる。」
「幅100メートルほどの空洞が約50キロにわたって続いている」
概ね直線的な広がりが予想されていて、円形加速器には不向きだが、線形加速器の設置にはもってこいだ(ILCの長さは、当初は30kmくらい:拡張期で50kmだから、ちょうどいいか)。
真空度については、地上で実現できるより高いだろう(未確認)。
レゴリスには手を焼くだろうが、それさえ解決すれば、真空空洞作る手間だって省けるかもしれない。
研究が終わった後の跡地の問題で揉めることもない。
まあ、どうでもいいんですが。
電気についての記述は、古代ギリシャ時代のタレスにさかのぼることができる(電気自体は、それ以前にもよく知られていたようです)。
(電気:古代)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E6%B0%97#%E5%8F%A4%E4%BB%A3
「紀元前600年ごろミレトスのタレスは一連の静電気についての記述を残しているが、彼は琥珀をこすって生じる力は磁力だと信じており、磁鉄鉱のような鉱物がこすらなくても発揮する力と同じものだと考えた」
まあ、現代の素粒子の標準理論なんて、未来の人類から見れば、お笑い種にしかならない程度の理解に違いない(宇宙の存在の5パーセントしか説明できないしな)。
「タレスがそれを磁力だと考えたことは間違っていたが、後に電気と磁気には密接な関連があることが判明している。古代ギリシア人は、琥珀のボタンが髪の毛のような小さい物を引きつけることや、十分に長い間琥珀をこすれば火花をとばせることも知っていた。」
(タレス)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%AC%E3%82%B9
「最期は体育競技を観戦していて、炎熱と渇き、または老衰によって死亡したとされる。」
熱中症には気を付けないとな・・・。
現代の人類は、電気の流れを制御して、電動アシスト自転車を漕ぎ、洞窟(レストランが入っているビル)の奥の暗闇を照らし、電磁調理器で調理されたランチを食い、半導体で良きに計らった電気で動くコンピューターを使って与太ブログを書き散らし、空中線に電力掛けて飛ばした電波でネットに垂れ流している(その先は長いので割愛する)。
やれやれ・・・。
羊毛で琥珀を擦っているタレスと似たようなもんかもな。
最先端の素粒子物理学も、2000年くらい経てば人類の日常生活に大変革を起こしているかもしれない。
全てを素粒子に分解しちまって、光速の頸木を引き千切ってぶっ飛ばし、何光年も離れた星系に転送できるようになったりしてな。
人類は、電磁波(電波)なんか使って宇宙人を探しているが、十分進化した地球外生命体は、そんなもん使ってるはずがないということに、何故思い至らないのか。
大きな太鼓を叩けば、宇宙人にも聞こえるに違いないと考えるようなもんだ。
しかし、それに代わる通信手段を知らないんだから仕方ない。
大規模線形加速器が、そういう話と関わるかどうかは知らない。
だからこその、未来への投資なのに違いない・・・。
<さらに追加>----------
(大型加速器ILC、実現遠のく 基本構想の申請取り下げ)
https://www.asahi.com/articles/ASN9964JLN99ULBJ005.html
「高エネルギー加速器研究機構(KEK)が8日、国が優先的に進める大型研究の基本構想「ロードマップ」への申請を取り下げたと発表した。」
KEKが発表したから報道になったのか・・・。
「もっと強力な組織を作るべきだとの提案が国際将来加速器委員会からあった」
中国を入れろという話じゃなかったんだな。
まあいい。
「取り下げによって議論が進むことは当面なくなった。」
しかし、取り下げてから半年間、知らずに奔走した関係者にしてみれば、いったい何だったのかということになるだろう。
巨大科学の時代には、物事は純粋な学術的関心だけでは進まない。
専門的なことは専門家が評価するんだろうが、それを市民が容認できる話に咀嚼していかなければならない。
それでなくても、この新型コロナの時代に、海外から多くの研究者やその家族がどっと押し寄せると聞いただけで、新型コロナの免疫が薄い(文字通り?)東北地方は震えあがるかもな(そうなのかあ?)。
それこそ偏見かも知れないが、理由なき感情ではないだろう。
ほとぼりが冷めるまで、一呼吸置くことは必要かもしれない。
月面リニアコライダーの話は、浮沈子の単なる妄想に過ぎないが、現実の話は地に足が付いた議論が必要だ。
ハッキリ言って、ILCは地味な器械だ。
華がない。
標準理論を構成する最後のピースであるヒッグス粒子を見つけるぞとか、世界最大の衝突エネルギーを実現するぞとか、派手な脅しが効かない玄人好みのカルトな実験機だ。
一連の実験が終わった後の拡張性にも欠ける(詳細は未確認)。
多少長さを長くして、衝突エネルギーを増やすことくらいしかできない。
放射化した実験機器や、排水をどうするかについては、しっかりとした計画と実施を担保する体制が必要だ。
山ぶち抜いてトンネル掘れば、地下水への影響も懸念される。
リニア新幹線で静岡県が着工に猛反対しているしな。
なにより、そのトンネルの跡地利用が最大の懸念だ。
核廃棄物の一時保管庫、ひいては恒久的な処分施設になりかねない(深さが足りなければ、そこから掘り下げるかもしれないしな)。
耳障りのいい話ばかりが聞こえてくるが、実体は迷惑施設なんではないのかあ?。
それを、文化の衣でくるんで、本質を覆い隠しているような気がする。
喧伝されているような話ばかりならいいが、ネガな部分にも目を向けていかないとな。
コアとなる事業は、建設に10年、実験自体は10年から20年程度で終わる(たぶん)。
解体と、延々と続く後処理の期間がどれくらいかかるかは知らないが、数十年単位で続くかもしれない。
貧しい時代の我が国の科学は、無駄を排し、効率よく、成功の可能性高く、国威発揚に繋がる華やかなのが好まれた。
実りがあるかどうかの保証もなく、失敗するかもしれず、ノーベル賞に繋がる派手な成果もなく、ひっそりと日陰の花に終わるかも知れないジミーな科学を実践する余裕はなかった。
豊かになって、世界に貢献できるようになり、真の意味での重要な分野に踏み込んで、人類の未来に投資できるようになったのかも知れない。
その意味では、ILCは我が国の科学の在り方にとって、踏み絵になるともいえる。
火中の栗、ババ抜きのババ・・・。
しかし、誰かがそれを拾わなければならないのかも知れない。
腹を括って引き受けるのか、荷が重いからと言って避けるのか。
美味しそうなトッピングを施したりせずに、ネガティブな部分を含めて、すべてを白日の下に曝してオープンに議論すべきだろう。
少なくとも、申請を取り下げてから半年もして公表する無様は、常識的に有り得ない。
様々な事情があったのかも知れないが、門外漢には異様に映る。
このこと一つ取ってみても、この手の真に困難な事業に取り組む準備が、我が国に出来ているとは思えない。
日本は、まだ貧乏国家の裾を引きずっている。
世界に毅然として立つ独立国として、国際社会における尊敬を集める一員としての本質的な資格に欠けると言われても仕方ないかも知れない。
核融合実証炉イータをフランスに持っていかれ、ILCを押し付けられて面白くないのかも知れないが、そんなことはどこ吹く風と、涼しい顔して引き受けられなくてどーする?。
そういう官僚的駆け引きが前面に出て振り回されているうちは、この手の事業を行う資格などないだろう。
物事があるべき姿であれば、水が高きから低きに流れるように、スムーズに滞りなく進むに違いないのだ。
天の時、地の利、人の和とはよく言ったものだと、あらためて感心する。
少なくとも今は、その時ではないということだろう。
地の利はあったとしても、人の和はない。
国際社会は、組織作りという表現で、それを期待しているのかも知れないな・・・。
取れぬ脂肪の皮算用:確かに「皮」下脂肪だからな ― 2020年09月11日 15:19
取れぬ脂肪の皮算用:確かに「皮」下脂肪だからな
今年当初の計画では、今頃60kgの壁が見えているはずだったのだが、そんなもんは影も形も見えず、70kgを出たり入ったりしている(概ね出てるけど)。
ダイエットは、1日にして成らず。
9か月かけても難しい。
昨日、フィットネスの体脂肪計で測定したら、体重は1kgくらい前月から減っていたんだが、筋肉量が減ってしまっていた。
めまいとか、夏バテとか言いながら、部屋でごろごろしては爆食を重ねたツケが回ってきたわけだな。
動かずに食えば、必ず太る。
質量保存の法則が変わらない限り、宇宙の真理のままにリバウンド状態が継続する。
昨年の今頃は、コンスタントに65kgの壁の下にいて、62kgの最低瞬間体重を記録していた。
少なくとも、現在の状況はプラス6kgという感じだな。
それでも、新型コロナの自粛からフィットネスが再開してから、3か月余りで5kg程度は戻した。
11kgのリバウンドかあ。
やれやれ・・・。
まだ、暑い日もあるので、無理せずにちんたら続け、来年の目標達成に向けて下準備しなければならない(先送り決定!)。
年内は、とりあえず65kgの壁が切れればいい。
来月は、小笠原で爆食の予定だから少しリバウンドするかもな(予防線張ってどーする?)。
テック45は、なんとか座学の予習を終えられそうだ。
分からないところは多々あれど、また、20年の歳月(下読みしている紙のテキストは2000年版:本番ではデータを使うようです)の間に器材を中心とした変化は大きいが、物理の法則と人間の生理は変わらない。
負担の多いダイビングを行う上での留意事項も、大きく変わってはいない。
遺伝子を弄って、エラ呼吸できるようになったわけじゃないしな(そんなこと出来なくてもいいから、ダイエット遺伝子作ってくれえ!)。
まあ、どうでもいいんですが。
フィットネスでは、水泳教室に励んだ成果が出て、平泳ぎでは壁蹴って一搔き一蹴りして、6ストロークで25メートルを、ほぼコンスタントに泳ぎ切れるようになった(一応、水面浮かんで進むなんてズルしないで)。
クロールは、壁蹴り+3回ドルフィンキックで概ね11ストローク(10から13と幅あり)。
5回ドルフィンキックでは8ストロークで行ったこともあるが、あれはまぐれだ(シングルで泳げたのは、その1回きり)。
泳いでいる時は2ビートだが、たまに4ビートになる(体幹が安定しない)。
ブレスは相変わらずできない(クロールはノーブレ)。
シングルがコンスタントに出るようにしたい。
平泳ぎは5ストロークを目指しているが、一搔き一蹴りを成功させるのがポイントだな。
一搔きを改善して、2mくらい伸ばしたからな。
あと1m伸ばせれば、ストロークの技術を改善して5ストロークは実現可能とみている(いつもの希望的観測)。
上手く行った時は、最後の一掻きは3mくらいしか残っていないこともあった(まぐれかあ?)。
傾向として、潜り過ぎているのは分かっている。
水面近くを、水平に移動しているのが理想だが、浮いてしまうのが嫌で、頭を突っ込み過ぎてしまう。
上手く進んでいる時は、浮くんじゃないかというギリギリのところを泳いでいる時だから、その深度をキープできるように頭の突っ込みを改善する必要がある。
キックの精度も問題だな。
毎回、蹴る方向(上下)がブレる。
水面を潜り抜けるイメージが出来ていない・・・。
まあいい。
新型コロナの影響で、水泳大会は当分ないからな。
毎日が、おひとり様水泳大会・・・。
ライバルは昨日の自分だ(一昨日の自分には、もはや勝てない?)。
今月の水泳教室は、未だ蝶になれないバタフライ。
今週は、腕を回さずに後ろまで搔き、一搔き毎に立つ練習をたっぷりやった。
第2キックとのタイミング合わせが目的だが、ババ達は大苦戦だったな(他人事じゃないんじゃね?)。
有難いことに、自分の無様は見ないで済む(インストラクターって大変だなあ:水泳では他人事です)。
週に一度の水泳教室が楽しみになっている。
この歳になって、今まで取り組もうともしなかった新しいことに、日々チャレンジし続ける。
半分強制されなければ、一生手を出すことはないだろう。
テック45だって、小笠原で酸素吸うつもりにならなければ、取り組んでいたかどうか。
取らぬテックの皮算用かも(取れると決まってるわけじゃないし)。
さてと、与太ブログはこの辺にして、最終章のナレッジレビューでもやるとするか・・・。
今年当初の計画では、今頃60kgの壁が見えているはずだったのだが、そんなもんは影も形も見えず、70kgを出たり入ったりしている(概ね出てるけど)。
ダイエットは、1日にして成らず。
9か月かけても難しい。
昨日、フィットネスの体脂肪計で測定したら、体重は1kgくらい前月から減っていたんだが、筋肉量が減ってしまっていた。
めまいとか、夏バテとか言いながら、部屋でごろごろしては爆食を重ねたツケが回ってきたわけだな。
動かずに食えば、必ず太る。
質量保存の法則が変わらない限り、宇宙の真理のままにリバウンド状態が継続する。
昨年の今頃は、コンスタントに65kgの壁の下にいて、62kgの最低瞬間体重を記録していた。
少なくとも、現在の状況はプラス6kgという感じだな。
それでも、新型コロナの自粛からフィットネスが再開してから、3か月余りで5kg程度は戻した。
11kgのリバウンドかあ。
やれやれ・・・。
まだ、暑い日もあるので、無理せずにちんたら続け、来年の目標達成に向けて下準備しなければならない(先送り決定!)。
年内は、とりあえず65kgの壁が切れればいい。
来月は、小笠原で爆食の予定だから少しリバウンドするかもな(予防線張ってどーする?)。
テック45は、なんとか座学の予習を終えられそうだ。
分からないところは多々あれど、また、20年の歳月(下読みしている紙のテキストは2000年版:本番ではデータを使うようです)の間に器材を中心とした変化は大きいが、物理の法則と人間の生理は変わらない。
負担の多いダイビングを行う上での留意事項も、大きく変わってはいない。
遺伝子を弄って、エラ呼吸できるようになったわけじゃないしな(そんなこと出来なくてもいいから、ダイエット遺伝子作ってくれえ!)。
まあ、どうでもいいんですが。
フィットネスでは、水泳教室に励んだ成果が出て、平泳ぎでは壁蹴って一搔き一蹴りして、6ストロークで25メートルを、ほぼコンスタントに泳ぎ切れるようになった(一応、水面浮かんで進むなんてズルしないで)。
クロールは、壁蹴り+3回ドルフィンキックで概ね11ストローク(10から13と幅あり)。
5回ドルフィンキックでは8ストロークで行ったこともあるが、あれはまぐれだ(シングルで泳げたのは、その1回きり)。
泳いでいる時は2ビートだが、たまに4ビートになる(体幹が安定しない)。
ブレスは相変わらずできない(クロールはノーブレ)。
シングルがコンスタントに出るようにしたい。
平泳ぎは5ストロークを目指しているが、一搔き一蹴りを成功させるのがポイントだな。
一搔きを改善して、2mくらい伸ばしたからな。
あと1m伸ばせれば、ストロークの技術を改善して5ストロークは実現可能とみている(いつもの希望的観測)。
上手く行った時は、最後の一掻きは3mくらいしか残っていないこともあった(まぐれかあ?)。
傾向として、潜り過ぎているのは分かっている。
水面近くを、水平に移動しているのが理想だが、浮いてしまうのが嫌で、頭を突っ込み過ぎてしまう。
上手く進んでいる時は、浮くんじゃないかというギリギリのところを泳いでいる時だから、その深度をキープできるように頭の突っ込みを改善する必要がある。
キックの精度も問題だな。
毎回、蹴る方向(上下)がブレる。
水面を潜り抜けるイメージが出来ていない・・・。
まあいい。
新型コロナの影響で、水泳大会は当分ないからな。
毎日が、おひとり様水泳大会・・・。
ライバルは昨日の自分だ(一昨日の自分には、もはや勝てない?)。
今月の水泳教室は、未だ蝶になれないバタフライ。
今週は、腕を回さずに後ろまで搔き、一搔き毎に立つ練習をたっぷりやった。
第2キックとのタイミング合わせが目的だが、ババ達は大苦戦だったな(他人事じゃないんじゃね?)。
有難いことに、自分の無様は見ないで済む(インストラクターって大変だなあ:水泳では他人事です)。
週に一度の水泳教室が楽しみになっている。
この歳になって、今まで取り組もうともしなかった新しいことに、日々チャレンジし続ける。
半分強制されなければ、一生手を出すことはないだろう。
テック45だって、小笠原で酸素吸うつもりにならなければ、取り組んでいたかどうか。
取らぬテックの皮算用かも(取れると決まってるわけじゃないし)。
さてと、与太ブログはこの辺にして、最終章のナレッジレビューでもやるとするか・・・。
737MAX受注!?:そろそろ運航再開かも ― 2020年09月12日 09:04
737MAX受注!?:そろそろ運航再開かも
いろいろな意味で、新型コロナの影響を受けている話は多い。
そういえば、あれはどーなったシリーズ(そんなのあったかあ?)の一つである737MAXの記事が出ていた。
(米ボーイング、8月に今年初の737MAX受注 キャンセル継続)
https://jp.reuters.com/article/boeing-deliveries-idJPKBN25Z2WA
「発注したのはポーランドのエンターエアENTP.WAで、737─8型機を2機発注。契約には2機を追加するオプションも付いている。」
「この他、複数の不特定顧客が737MAX型機を3機発注した。」
「一方、同機の注文取り消しは17件で、年初からの取り消し総数は445件に拡大した。」
オプションを除けば、差し引きは今年だけでマイナス440件ということになる。
737MAXに関連しては、先日、MD-11の記事を読んだ。
(MD-11はやはり欠陥機か? (その1))
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-entry-363.html
「MD-11はかなり危険な機体で、全損事故率が100万便あたり3.45回(2005年までのデータですので今回の事故は含みません)という非常に高い値になっています。これは第4世代機としてダントツNo.1で、2位となっているA310の2倍を超えます。」
「ハイテクに依存しながら熟成が足りなかった操縦システムが問題なのではないか」
この航空機の飛行特性は良好とは言えない(業界では有名なんだそうです)。
「MD-11はこうした水平尾翼のダウンフォースを減らし、空気抵抗を減らして燃費を向上させることに重きが置かれました。」
「MD-11は燃費を優先して空力的な安定性を犠牲にした機体」
それをカバーするために、いろいろ仕掛をしているのだ。
(MD-11はやはり欠陥機か? (その2))
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-entry-364.html
「そこで、MD-11には重心をアクティブに移動できるシステムが採用されました。これは「CGコントロール」と呼ばれるもので、水平尾翼内にも燃料タンクを設置して主翼にあるメインの燃料タンクとパイプで繋ぎ、その一部を後方に移して重心を移動できるようにするというシステムです。」
注目するのはここからだな。
「このように下向きの力と揚力とのせめぎ合いを小さくするよう設計されたMD-11はピッチングが生じやすく、機体が不安定になりがちです。そこで、コンピュータによって補正を行い、安定を保つよう制御してやろうと考えられました。」
戦闘機メーカーが考えそうな話だ・・・。
「しかし、様々なセンサを用いて機体のバランスをモニタし、コンピュータが安定を保つように補正をかけると、そのセンシングから補正信号の出力までに若干のタイムラグが生じます。パイロットの操縦に対しても補正が入ると、そのタイムラグからパイロットはついついオーバーコントロールをしてしまいがちになる」
「つまり、パイロットが操縦桿を引いて機首上げを意図しても操縦システムのタイムラグですぐに機体は反応せず、必要以上に操縦桿を引き続けてしまうことで過剰な機首上げ動作となってしまい、それを抑えるために機首下げを行っても、同様のタイムラグで結果的に過剰な機首下げとなってしまい、これを繰り返す過修正のループに入ってしまった」
成田でのフェデックスの事故は、浮沈子も記憶にある。
(フェデックス80便着陸失敗事故)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B980%E4%BE%BF%E7%9D%80%E9%99%B8%E5%A4%B1%E6%95%97%E4%BA%8B%E6%95%85
「疲労に伴うパイロットエラー(フレア動作の遅れとその後の操作ミス)、及び主脚取り付け部の構造設定不適切による左主翼の破断」
事故調査報告書では、ウインドシアーは事故原因とはされていないようだ。
「“玉乗り”と呼ばれるほど、ほかの航空機と比べて安定性の悪い航空機。着陸時の軌道修正も困難だった」
「前身であるDC-10型機同様、第2エンジンが胴体上の垂直尾翼付け根に位置し、その結果、機体の重心が他機種よりも後寄り、かつ高めであり、空気抵抗を減らし燃費を良くするために水平尾翼の面積を減らしていることが挙げられている(MD-11型の水平尾翼の面積は、DC-10型機よりさらに3割ほど小さくなっている)。尾翼の小型化に起因する操縦性の悪化は、コンピュータ制御で克服する設計であった(マクドネル・ダグラス MD-11#LSASを参照)。」
ウィキでは、燃料の移動やPIO(パイロット誘導振動)についても触れられている。
LSASってなによ?。
(マクドネル・ダグラス MD-11:LSAS)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%89%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%80%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%B9_MD-11#LSAS
「ongitudinal Stability Augmentation Systemの略」
「縦安定増加装置」
うーん、どっかで聞いたような名前だな。
(フライトデッキおよびフライトコントロール)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0737MAX#%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AD%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB
「操縦特性向上システム (MCAS: Maneuvering Characteristics Augmentation System)」
MCASは、こういう流れの中で生まれた(たぶん)。
センサーを仕込んで電子制御によって操縦特性を改善する(誤魔化す?)手法が、戦闘機から旅客機に導入されてきた。
もちろん、エアバスは、その前からフライバイワイヤーで飛ばしている。
しかし、それで飛行特性を弄ったりはしていない(未確認)。
電子の帝国が航空機の世界にも君臨し、機械の王国を蹂躙している。
20世紀と21世紀の違いは、そこにあると浮沈子は見ている(まあ、誰が見ても明らかだがな)。
エンジンの燃焼から自動運転、ゆくゆくは交通システムの制御まで、自動車の世界は既に電子制御なしには語れなくなっている。
機械としての自動車が、車載コンピューターのデバイスに成り下がるのは時間の問題だ。
新型コロナで需要が低迷している現在、737MAXが運航再開しても世界が大きく変わることはない。
MCASは改善され、ついでに見つけたトラブルの種も徹底的に取り払われて、安心して乗れる飛行機になるに違いない(そうなのかあ?)。
こういう事例は、少なくとも今世紀中くらいは続くことになるんだろうな。
未成熟な技術が大衆化する時代には、技術の女神は人身御供を要求する。
大きな事故が起これば、社会の関心を集め、根本的な改善が施される。
その余地がなければ、その技術は消え去る。
(KLM、V字型次世代機「Flying-V」プロトタイプ初飛行)
https://www.aviationwire.jp/archives/210301
「2040年以降の実用化を目指す次世代旅客機「Flying-V(フライングV)」のプロトタイプが、8月に初飛行した」
プロトタイプと言えば、スターシップのような本番機サイズの巨大な航空機を想像するところだが、ダクト付きのファンをモーターで回して飛ばす、2m位のサイズの模型飛行機に過ぎない。
地上シーンでは、ランディングギアも引き込み出来そうな感じで動かしていたが、飛んでいる映像では降着装置は出っぱなしだ。
奇妙奇天烈なV字航空機が実際に導入されるとしても、人類が火星に到達して以降の話とされる(予定では、2030年代に行くことになっているからな)。
詳細は不明だが、どうみても静的安定性が確保されているようには見えない(テキトーです)。
構造的には、巨大な翼(胴体?)への応力が気になるところだが、まあ、複合素材への補強で何とかするんだろう(まさかステンレスじゃないだろうし)。
エンジンおろしたりする際に整備性が悪いとか、ストレッチしてバリエーション増やすのがむずいとかいう些末な問題はある(些末かあ?)。
「空気抵抗を軽減する設計と機体の軽量化により、現行の低燃費航空機と比べて約20%の燃料削減を実現できるとしている。」
全ては、燃費の改善ということに繋がっているんだそうだが、大陸間弾道旅客機がメタン燃料で宇宙から降ってくる時代に、空力改善による2割の燃費を節約するためにコンサバな設計から逸脱した航空機を運航するだろうか?。
少なくとも、電子制御については完璧にしておいてもらわんとな・・・。
いろいろな意味で、新型コロナの影響を受けている話は多い。
そういえば、あれはどーなったシリーズ(そんなのあったかあ?)の一つである737MAXの記事が出ていた。
(米ボーイング、8月に今年初の737MAX受注 キャンセル継続)
https://jp.reuters.com/article/boeing-deliveries-idJPKBN25Z2WA
「発注したのはポーランドのエンターエアENTP.WAで、737─8型機を2機発注。契約には2機を追加するオプションも付いている。」
「この他、複数の不特定顧客が737MAX型機を3機発注した。」
「一方、同機の注文取り消しは17件で、年初からの取り消し総数は445件に拡大した。」
オプションを除けば、差し引きは今年だけでマイナス440件ということになる。
737MAXに関連しては、先日、MD-11の記事を読んだ。
(MD-11はやはり欠陥機か? (その1))
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-entry-363.html
「MD-11はかなり危険な機体で、全損事故率が100万便あたり3.45回(2005年までのデータですので今回の事故は含みません)という非常に高い値になっています。これは第4世代機としてダントツNo.1で、2位となっているA310の2倍を超えます。」
「ハイテクに依存しながら熟成が足りなかった操縦システムが問題なのではないか」
この航空機の飛行特性は良好とは言えない(業界では有名なんだそうです)。
「MD-11はこうした水平尾翼のダウンフォースを減らし、空気抵抗を減らして燃費を向上させることに重きが置かれました。」
「MD-11は燃費を優先して空力的な安定性を犠牲にした機体」
それをカバーするために、いろいろ仕掛をしているのだ。
(MD-11はやはり欠陥機か? (その2))
http://ishizumi01.blog28.fc2.com/blog-entry-364.html
「そこで、MD-11には重心をアクティブに移動できるシステムが採用されました。これは「CGコントロール」と呼ばれるもので、水平尾翼内にも燃料タンクを設置して主翼にあるメインの燃料タンクとパイプで繋ぎ、その一部を後方に移して重心を移動できるようにするというシステムです。」
注目するのはここからだな。
「このように下向きの力と揚力とのせめぎ合いを小さくするよう設計されたMD-11はピッチングが生じやすく、機体が不安定になりがちです。そこで、コンピュータによって補正を行い、安定を保つよう制御してやろうと考えられました。」
戦闘機メーカーが考えそうな話だ・・・。
「しかし、様々なセンサを用いて機体のバランスをモニタし、コンピュータが安定を保つように補正をかけると、そのセンシングから補正信号の出力までに若干のタイムラグが生じます。パイロットの操縦に対しても補正が入ると、そのタイムラグからパイロットはついついオーバーコントロールをしてしまいがちになる」
「つまり、パイロットが操縦桿を引いて機首上げを意図しても操縦システムのタイムラグですぐに機体は反応せず、必要以上に操縦桿を引き続けてしまうことで過剰な機首上げ動作となってしまい、それを抑えるために機首下げを行っても、同様のタイムラグで結果的に過剰な機首下げとなってしまい、これを繰り返す過修正のループに入ってしまった」
成田でのフェデックスの事故は、浮沈子も記憶にある。
(フェデックス80便着陸失敗事故)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B980%E4%BE%BF%E7%9D%80%E9%99%B8%E5%A4%B1%E6%95%97%E4%BA%8B%E6%95%85
「疲労に伴うパイロットエラー(フレア動作の遅れとその後の操作ミス)、及び主脚取り付け部の構造設定不適切による左主翼の破断」
事故調査報告書では、ウインドシアーは事故原因とはされていないようだ。
「“玉乗り”と呼ばれるほど、ほかの航空機と比べて安定性の悪い航空機。着陸時の軌道修正も困難だった」
「前身であるDC-10型機同様、第2エンジンが胴体上の垂直尾翼付け根に位置し、その結果、機体の重心が他機種よりも後寄り、かつ高めであり、空気抵抗を減らし燃費を良くするために水平尾翼の面積を減らしていることが挙げられている(MD-11型の水平尾翼の面積は、DC-10型機よりさらに3割ほど小さくなっている)。尾翼の小型化に起因する操縦性の悪化は、コンピュータ制御で克服する設計であった(マクドネル・ダグラス MD-11#LSASを参照)。」
ウィキでは、燃料の移動やPIO(パイロット誘導振動)についても触れられている。
LSASってなによ?。
(マクドネル・ダグラス MD-11:LSAS)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%89%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%80%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%B9_MD-11#LSAS
「ongitudinal Stability Augmentation Systemの略」
「縦安定増加装置」
うーん、どっかで聞いたような名前だな。
(フライトデッキおよびフライトコントロール)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0737MAX#%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AD%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E3%83%95%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB
「操縦特性向上システム (MCAS: Maneuvering Characteristics Augmentation System)」
MCASは、こういう流れの中で生まれた(たぶん)。
センサーを仕込んで電子制御によって操縦特性を改善する(誤魔化す?)手法が、戦闘機から旅客機に導入されてきた。
もちろん、エアバスは、その前からフライバイワイヤーで飛ばしている。
しかし、それで飛行特性を弄ったりはしていない(未確認)。
電子の帝国が航空機の世界にも君臨し、機械の王国を蹂躙している。
20世紀と21世紀の違いは、そこにあると浮沈子は見ている(まあ、誰が見ても明らかだがな)。
エンジンの燃焼から自動運転、ゆくゆくは交通システムの制御まで、自動車の世界は既に電子制御なしには語れなくなっている。
機械としての自動車が、車載コンピューターのデバイスに成り下がるのは時間の問題だ。
新型コロナで需要が低迷している現在、737MAXが運航再開しても世界が大きく変わることはない。
MCASは改善され、ついでに見つけたトラブルの種も徹底的に取り払われて、安心して乗れる飛行機になるに違いない(そうなのかあ?)。
こういう事例は、少なくとも今世紀中くらいは続くことになるんだろうな。
未成熟な技術が大衆化する時代には、技術の女神は人身御供を要求する。
大きな事故が起これば、社会の関心を集め、根本的な改善が施される。
その余地がなければ、その技術は消え去る。
(KLM、V字型次世代機「Flying-V」プロトタイプ初飛行)
https://www.aviationwire.jp/archives/210301
「2040年以降の実用化を目指す次世代旅客機「Flying-V(フライングV)」のプロトタイプが、8月に初飛行した」
プロトタイプと言えば、スターシップのような本番機サイズの巨大な航空機を想像するところだが、ダクト付きのファンをモーターで回して飛ばす、2m位のサイズの模型飛行機に過ぎない。
地上シーンでは、ランディングギアも引き込み出来そうな感じで動かしていたが、飛んでいる映像では降着装置は出っぱなしだ。
奇妙奇天烈なV字航空機が実際に導入されるとしても、人類が火星に到達して以降の話とされる(予定では、2030年代に行くことになっているからな)。
詳細は不明だが、どうみても静的安定性が確保されているようには見えない(テキトーです)。
構造的には、巨大な翼(胴体?)への応力が気になるところだが、まあ、複合素材への補強で何とかするんだろう(まさかステンレスじゃないだろうし)。
エンジンおろしたりする際に整備性が悪いとか、ストレッチしてバリエーション増やすのがむずいとかいう些末な問題はある(些末かあ?)。
「空気抵抗を軽減する設計と機体の軽量化により、現行の低燃費航空機と比べて約20%の燃料削減を実現できるとしている。」
全ては、燃費の改善ということに繋がっているんだそうだが、大陸間弾道旅客機がメタン燃料で宇宙から降ってくる時代に、空力改善による2割の燃費を節約するためにコンサバな設計から逸脱した航空機を運航するだろうか?。
少なくとも、電子制御については完璧にしておいてもらわんとな・・・。
H3開発延期:LE-9エンジンが穴だらけ:タービンブレードにも亀裂 ― 2020年09月12日 16:54
H3開発延期:LE-9エンジンが穴だらけ:タービンブレードにも亀裂
(H3ロケット初打ち上げ、来年度に延期 エンジンに亀裂)
https://www.asahi.com/articles/ASN9C5VLDN9CULBJ00G.html
「挑戦している部分で、経験を超えた未知のことが最後に出てきてしまった」
2月くらいまでは、快調に飛ばしてたんだがな。
(LE-9エンジン×3基の燃焼試験が初公開、H3ロケットのBFTは全て無事に完了!)
https://news.mynavi.jp/article/20200219-977534/
「日本はH-IIBロケットで2基クラスタの経験はあったものの、第1段の大型エンジンで3基クラスタというのはH3ロケットが初めて。未知の領域だったと言えるが、岡田プロマネは「案外スムーズにいった」と、安堵の表情を見せる。」
H2Bの開発の際、非回転対称3基クラスターに対する懸念が出され、途中で断念した(増強型(H2A212):液体燃料ブースターを付ける構想だったようだな)。
それをあっさりとクリアし、いよいよ種子島で認定エンジンの燃焼試験を始めた矢先のトラブルということになった。
好事魔多し・・・。
エキスパンダーブリードサイクルエンジンは、我が国のお家芸と言ってもいい。
(エキスパンダーブリードサイクル)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB#%E3%82%A8%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB
「日本だけが実用化している高信頼性エンジンサイクルで、液体酸素/液体水素上段エンジンであるLE-5A/LE-5Bで採用」
高出力化に当たっては、燃焼室の拡大(縦長)や熱効率の改善(回収熱量の増加)、ターボポンプの改良(IHI)により達成することを見込んでいた。
その、根本のところでケチが付いたわけだ。
(初号機打ち上げ、21年度に延期 H3ロケット、エンジンに不具合―JAXA)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020091100799&g=soc
「エンジンの燃焼室内壁に最大で幅0.5ミリ、長さ1センチの穴が14カ所見つかった。また、燃焼室に液体水素を送り込むポンプのタービン羽根2枚にひびも見つかった。」
(次期基幹ロケット「H3」初号機打ち上げ、21年度に延期 主エンジン不具合)
https://mainichi.jp/articles/20200911/k00/00m/040/210000c
「タービンは振動に伴う金属疲労が、燃焼室の内壁は冷却機能が足りずに設計値より高温になったことがそれぞれ原因とみられる。」
燃料噴射器が、機械加工によるものと3Dプリンターによるものとで特性が異なり、後者では共振が発生することは既に分かっている。
「以前の燃焼試験において、ターボポンプで共振の問題が発生したことから、まず初号機で搭載するタイプ1では、共振領域を避けて運転することとし、先行して認定。噴射器は従来の機械加工のものを使い、手堅く進める。」
「続くタイプ2で抜本的な対策を行い、共振領域自体を無くす設計とする。噴射器も3Dプリンタ製のものを採用し、これでLE-9の開発が完了となる。タイプ2は2号機での適用を目指しているとのこと。」
今回の発表では、この2号機の延期も含まれていることから、噴射器の問題だけではないということは明らかだな。
(第8回 H3ロケット用LE-9認定型#1エンジン燃焼試験結果)
http://www.rocket.jaxa.jp/rocket/engine/le9/2020/200526.html
・試験日:2020年5月26日
・試験場所:宇宙航空研究開発機構 種子島宇宙センター(鹿児島県)
・試験目的:LE-9エンジン認定型の機能・性能の確認
・着火時刻:16時45分
・試験時間:225.5秒(243.0)
・メイン燃焼圧力:10.87MPa(10.65)
・液体水素ターボポンプ回転数:40,990rpm(40,582)
・液体酸素ターボポンプ回転数:17,261rpm(16,986)
・備考:液体水素ターボポンプの入口圧力が予め設定していた下限値に達したため、自動停止しました。」
この認定型のエンジンは、もっぱら種子島で試験され、徐々に燃焼時間を伸ばしてきた。
H3ロケット用LE-9認定型#1エンジン燃焼試験結果:
・第1回(2020年2月13日):101.4秒
・第2回(2020年2月21日):95.0秒
・第3回(2020年3月31日):100.0秒
・第4回(2020年4月7日):6.55秒(試験設備の異常により手動停止)
・第5回(2020年4月17日):210.0秒
・第6回(2020年4月25日):120.1秒(液体水素ターボポンプの入口圧力が予め設定していた下限値に達したため、自動停止:予定時間140秒)
・第7回(2020年4月30日):240.0秒
・第8回(2020年5月26日):225.5秒(液体水素ターボポンプの入口圧力が予め設定していた下限値に達したため、自動停止:予定時間243秒)
水素側ターボポンプの入口圧力の低下が、何か本質的な部分に関わるのかは知らない。
第8回目の燃焼試験が、通常より過酷な条件で行われたという報道もある。
(H3ロケットの打ち上げ1年延期 主エンジンに穴やひび:共同通信配信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/5073b040d537763592cede2b1b70dec995c0d7dd
「通常運転よりも高い過酷な温度での燃焼に耐えられるかどうかの実験で、壁の温度は約千度まで上昇」
読売は、タービンの設計変更、燃焼室の冷却機能の強化に踏み込んで書いている。
(「H3」1号機打ち上げ、21年度に延期…燃焼試験後にタービンのひび見つかる)
https://www.yomiuri.co.jp/science/20200911-OYT1T50178/
「ひびが見つかったのは、タービンの動翼の一部。エンジンを運転中に振動が大きくなる「共振」が起き、強度が低下したとみられる。対策として、タービンを設計し直し、効果を検証する。」
「燃焼室の内壁からも、14か所の穴(最大幅0・5ミリ、長さ1センチ程度)が確認された。内壁が1000度近くまで高温になり、変形したとみられる。冷却機能を強化し、内壁の温度上昇の低減を図る。」
設計を変更し、制作、試験、検証を繰り返していく中で、新たな問題が発生しないとは限らない。
燃焼室をスケールアップした予備実験や、LE-Xの開発(水素側ターボポンプは米国開発)だけでは見えてこなかった問題が出てきたわけだ。
「エンジンの技術的な課題への対応は、万全を期すべきだと判断した」
再使用エンジンと銘打って開発したエンジンが、ホッピングテストで火を噴いても大成功と報じられるどっかのロケット開発とは、文化が違うと感じる。
まあ、どうでもいいんですが。
一発必中、目指すは100パーセントの成功だからな。
壊してみなきゃわからんことは、開発中に解決しておくことだ。
そこは、物理の法則が変わらない限り同じともいえる。
調べていく中で、こんな記事もあった。
(ロケット開発エンジニアが大学で挑む「燃焼メカニズム」の解明とは【帝京大学】)
https://univ-journal.jp/column/202032500/
「真子教授が着目したのは‶燃焼振動”という現象。燃焼室内で生じる熱と圧力が互いに変動を強め合うことで発生する共鳴現象であり、圧力変動が大きくなるとエンジンを破壊してしまうリスクも高まるという。」
「『LE-9』に採用される燃焼方式は、重大な故障が起こりにくいため信頼性が高く、パーツ数が少ない分だけコストダウンを図れるというメリットがあります。その一方で生じやすいのが燃焼振動であり、この現象の解明に注力しています」
「燃焼振動抑制デバイス‶レゾネータ”の開発を進めており、スピーカーから出る音によって共鳴現象を発生させ、狙った周波数帯の音を吸収する最適な構造や並べ方を検証している。」
どっかで聞いたような話だな。
サターン5型のFー1エンジンでも、燃焼の不安定性に起因する問題が発生している。
(F-1ロケットエンジン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/F-1%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%B3
「技術者たちは最後の手段として、稼働中の燃焼室の中で小さな爆発(彼らは『爆弾』と呼び、RDX、C4または黒色火薬が使用された)を発生させる手法を編み出した。」
べらぼーめ・・・。
「不規則な燃焼に対応するための様々な形式の同心円状のインジェクター(燃料噴射機)を試験することが可能になった。これらの問題に1959年から1961年にかけて取り組んだ結果、最終的にエンジンの燃焼はきわめて安定するようになり、人為的に不安定を誘導した場合でも1/10秒以内で減衰するようになった。」
F-1エンジンの場合は、解決に2年掛かっている。
今回の延期が、十分な対策を取るための必要十分期間を満足しているかどうかは知らない。
パーツパーツで行われたり、予備開発で得たデータはあっても、組んでみて負荷を掛けて初めて現れる現象もあるということだな。
技術的な詳細については、浮沈子にはさっぱりだが、状況は楽観的とは程遠い。
メインエンジンの新規開発という、最大のチャレンジ項目でのつまずきだからな。
本来なら、この要素の技術的目途が立ってからロケット全体の開発が始まる。
重工は、要素技術とサブスケールの段階で見切り発車した。
コスト削減圧力、お家芸への過信、世代交代による技術伝承の分断、スケジュールありきの民間事業の特性などなど。
それぞれの要請には、それなりの正当性があるが、それらを統合した時に何が出るかは完全には予想できない。
たまたま、こんな記事が出ていて印象的だ。
(チャーリー・ボルデンは静かな部分を大声で言います:SLSロケットは消えます)
https://arstechnica.com/science/2020/09/former-nasa-administrator-says-sls-rocket-will-go-away/
2014年:
「正直にしましょう。市販の重量物運搬車はありません。Falcon 9 Heavyがいつか登場するかもしれません。それは今、設計図にあります。SLSは本物です。」
2016年:
「打ち上げロケットについて語るなら、国民に対する私たちの責任は、大型打ち上げロケットのように、一般の人々ができない、またはしたくないことを処理することだと信じています」
「私はまだ大型ロケットに商業投資をするのが好きではない。」
その後:
・2017年に打ち上げが予定されていたSLSロケットが2021年末まで延期(21年中には上がらない方に1票だな)
2018年2月:
・ファルコンヘビーの打ち上げ
2020年:
「SLSはなくなるでしょう。バイデン政権や次期トランプ政権の間になくなる可能性があります...ある時点で商業組織が追いつくためです。彼らは本当に、NASAがSLSよりもはるかに安い価格で飛ぶことができるSLSのような重量物打ち上げロケットを構築しようとしています。それがまさにそれが機能する方法です。」
まあ、記事を書いているエリックバーガーはSLSに懐疑的だからな。
SLSのライバルがスターシップ/スーパーヘビーだという指摘もある。
「NASAはSpaceXの次のロケットであるスーパーヘビーブースターと競合しています。SpaceXは、スーパーヘビーロケットの単一セグメントを構築していません。これは、SLSより大きく、より強力で、非常に安価で、再利用可能です。しかし、2021年に10年前のSLSの前に、車両が軌道に打ち上げられる可能性があります。」
浮沈子的には、その可能性はゼロだと確信しているけど、そして、テスト飛行で仮にサブオービタル(弾道軌道)飛行することがあったとしても、有人仕様の信頼性を担保された運用ベースのSLS(+オリオン宇宙船)とは、そもそも比較の対象にならない。
2020年代に、スターシップ/スーパーヘビーが無人貨物輸送システムとしての実績を積むことができるかどうかも怪しいと見ている(何機吹っ飛ぶことやら・・・)。
開発に掛かるコストが膨れ上がり(現在50億ドルと予想)、400億ドル(SLS+オリオン宇宙船)を超え、資金ショートで断念されるリスクも、依然としてゼロではない。
それでも、スターリンクなどの関連事業の収益をつぎ込んで、開発を続けるかもしれないけどな。
昨年のスターホッパーから、今年8月のSN5によるホッピング飛行の経緯を見ていると、こんなもんで10年以内に有人飛行が可能になると考える方が不自然な気がする(これまで何回吹っ飛んだことか、そして、これから何百回吹っ飛ぶことか・・・)。
まあいい。
つまり、ロケット開発は先が見えないバクチだということだ(吹っ飛ぶからって、バクチクではない!)。
賭けに勝てば英雄だし、負ければただのスクラップだ。
ソ連も、ロシアになってからも、米国だって、開発途上で消えていったロケットのリストは長い。
H3が、開発途上で消えていったGXロケットや、過剰コストが仇になって廃止に追い込まれたMーVロケットに連なるかどうかは未定だ。
ここまで来て廃止はないだろうと思うが、一寸先は闇だからな。
400億ドルかけたロケットと宇宙船のシステムも、競争に敗れれば惜しげもなく捨てられる。
一発打ち上げられるたびに、H3ロケットの開発費用(1900億円)より高くつくしな(20億ドル:約2200億円)。
70トンのペイロードを地球低軌道に上げるSLSと、数トン程度のH3(最大低軌道打ち上げ能力は未確認)を比較するのは間違っているし、開発済みのRS-25を使うのと、新規開発のLE-9とを同列に考えることはできない。
どちらも使い捨てロケットで、固体燃料ブースターを付けて飛ばすところくらいだな。
ブースターなしで上がるH3-30仕様が、どのくらいの割合になるかは分からない。
意外と多いのではないか。
その場合の1段目の推力は、LE-9頼りだ。
初の3基掛け、大型打ち上げロケットでは初の液体燃料エンジンのみでの打ち上げになる。
今回の燃焼障害の原因と対策が適切に講じられ、所定の延長期間内で試験が終了し、新たな日程で初打ち上げが行われるのを期待しよう。
ロケット開発がハイリスクなものだということを、改めて教えられた気がする。
廃物利用なSLSでさえ、その実現には10年以上の歳月を掛けている。
スターシップ/スーパーヘビーで2023年に月に行けるなんて、誰が信じるかよ・・・。
<以下追加>----------
(JAXA、「H3」ロケット打ち上げ延期の理由)
https://newswitch.jp/p/23778
「燃焼室内壁を高温作動条件で試験すると、設計値よりも燃焼室内壁が高温になることが分かった。」
「エンジンの燃焼室内の開口は、燃焼室を冷やす水素が通る冷却溝付近で14カ所見つかった。」
「定常時の局所的な熱の流入と、起動と停止過渡時の一時的な冷却不足が原因と推定された。冷却の強化や起動と停止パターンの見直し、燃焼室内壁の温度低減を試みる。」
具体的な対策については触れられていない。
「タービンの疲労破面は、外部からの振動でより内部の振動が強まり、金属疲労の蓄積が進行したと考えられる。タービンの設計を変え、翼振動試験を行う。」
技術系のメディアらしく、「エンジンが穴だらけ」→「エンジンの燃焼室内の開口」、「タービンブレードにも亀裂→タービンの疲労破面」など、それらしい言葉を使っているが、たとえば燃焼室内壁の高温化とブレードの振動の関係など、浮沈子が知りたいことは書いていない。
機動・停止時の過渡特性を問題にしているが、これも想定外なんだろうな。
穴が開いたのは、水素が通る冷却溝付近というのは、この記事で初めて知った。
(H3 ロケット1段用 LE-9 エンジンの燃焼安定性向上:参考記事)
https://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/534/534036.pdf
「図1:
燃焼室内筒:冷却効率を高めるため、板厚数mm程度の薄肉構造とする。」
「水素(-250℃)」(常圧では気体の温度だが、加圧されているのでたぶん液体(未確認):熱交換して気体になり、タービンを回す)
図2:エンジンサイクル図や図3:燃焼器単体試験の系統図を見ると、水素で燃焼室を冷やしたのち、ターボポンプ駆動後ノズル内部に排気しているような感じだ(フィルム冷却しているという記述もあるしな)。
「エキスパンダブリードサイクルでは,ターボポンプで昇圧された水素の一部を燃焼室の冷却に使用し,その際に獲得した熱エネルギーによりターボポンプを駆動する。ターボポンプ駆動により圧力の下がった水素は,その後ノズル内部に流れ,壁面近くを沿うように流れることでノズル壁面の冷却に使用される(フィルム冷却)。」(別記事を読むと、ポンプで昇圧された水素の一部をターボポンプの駆動に回し、大部分はそのまま燃焼室に送り込むことによって、燃焼室圧力を高くできるところがミソのようです。)
(フィルム冷却)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%A0%E5%86%B7%E5%8D%B4
「スリットや冷却孔から流体を噴射することで火炎が直接構造体に触れないように断熱層を形成することにより冷却空気膜を形成して翼表面を保護する方法。ロケットエンジンやガスタービン等に使用されている」
まあ、これはノズルの冷却だけだ。
ちなみに、この実験では、エンジンの始動・停止時の過渡特性をフルスケールで確認したことになっている(同じ条件ではないかもしれないが、データ取りはしている:表2:燃焼器系単体試験(フルスケール試験)の目的、図5:エンジン作動履歴を参照)。
燃料噴射器については、技術的隘路をクリアした感じだが、思わぬところに伏兵ありということか。
燃焼条件がタイトなエンジンということなのかもしれない。
タービンブレードの亀裂(疲労破面)問題は、固有振動数の問題とかあるから、形状を弄らないといけないだろう(テキトーです)。
穴が開いた(開口した)原因については、どこかの記事に燃焼室の変形によると書いてあった。
確かに薄い内壁(数mm)だから、そういうことかも知れない。
冷却溝付近という、構造的に弱いところで開口した可能性はある。
いずれにしても、起動時等の流量変更だけでなく、構造設計まで弄るということになれば、相当手間がかかりそうだし、影響も大きいかも知れない。
タービンブレードの外乱との関係も気になる。
それぞれ勝手に弄って、組んで動かしたら逆効果だったりしたらどーする?。
まあいい。
1年掛けて、きっちり直してもらわんとな・・・。
<さらに追加>----------
(第4章 ロケットの実際:P12参照)
http://lss.mes.titech.ac.jp/~matunaga/Rocket-Tomita-ch4.pdf
「(4)エキスパンダ・ブリード・サイクル(Expander Bleed Cycle)
エキスパンダ・サイクルは冷却に用いた水素すべてを,タービンを回すために用いているが,タービン側にまわす水素をごく一部にして,ほとんどを cooling jacket から直接エンジン燃焼室に送り込み,ターボ・ポンプを回した水素ガスは捨ててしまうのがエキスパンダ・ブリード・サイクルである」
「ターボ・ポンプを回した水素ガスは圧力が低下するので,エキスパンダ・サイクルではエンジン燃焼室圧力が低くなるが,エキスパンダ・ブリード・サイクルでは,エンジン燃焼室に行くガスは圧力が低下していないので,エンジン燃焼室圧力を高く取ることができる.」
「すなわち,エキスパンダ・ブリード・サイクルのほうがエキスパンダ・サイクルより性能が高く,水素ガスを捨ててしまっても,この方が効率がよい.」
「ただし,エキスパンダ・サイクルの場合もそうであるが,燃焼室の冷却との熱交換での水素ガスの温度上昇に限界があるため,水素ガス温度を高くできないので(400~600K)ターボ・ポンプ駆動馬力不足で,大推力のエンジンには適さない.」
「また,エキスパンダ・サイクルも同様であるが液体水素を燃料として用いるエンジンにしか適用できない」
大出力には本質的に向かず、使用燃料も限られるニッチな仕組みのエンジンだな。
このエンジンを、次世代エンジンとして選択したのは、ひとえに経済性の追求(安定性もあるか)だろうが、大推力を実現する必要から、燃焼室の熱交換効率を上げるために、筋の悪い開発をしたのかもしれない。
将来の発展性については、開発当初から意識しているようだ。
再着火性については、もともとLE-5シリーズで実績があるので、再使用の際にも問題はない。
(種子島のロケットエンジン燃焼試験設備が公開2)
https://news.mynavi.jp/article/le9-2/
「現在の使い捨てロケットだけでなく、将来の再使用型輸送機でも使えるようなエンジンを目指していた」
「「爆発しにくい」という特徴は、有人ロケットにも適していると言える。」
先を見据えた開発ではあったわけだ。
開発手法についても、慎重なアプローチをとっている。
(種子島のロケットエンジン燃焼試験設備が公開3)
https://news.mynavi.jp/article/le9-3/
「開発後期での手戻りを避けるために、要素試験やシミュレーション解析を駆使し、起こりそうな問題は事前に1つ1つ排除してきた。」
「高信頼性開発手法により、すでに魔物は退治したのかもしれない。しかしもしかすると、まだどこかに隠れているのかもしれない。今後、燃焼試験をさらに繰り返すことで、そのあたりが徐々に見えてくることになるだろう。」
3年近く前の記事だが、岡田プロマネには魔物の影が見えていたのかもしれないな・・・。
<さらにさらに追加>----------
(航空・宇宙「材料編」)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjws/83/2/83_117/_pdf
資料ページで38ページ末から、LE-7A(たぶん)の燃焼室材料と冷却系統についての記述がある。
「(2)燃焼室
燃焼室は燃焼ガス温度が3000℃をレベルに達するため、金属材料をそのまま適用することはできない。」
「そこで、燃焼室は熱伝導特性に優れたCu合金とし、燃料である液体水素を利用した強制冷却構造を用いている。」
うーん、やっぱ、液体水素なんだ・・・。
「また、Cu合金のみでは、燃焼室の高圧に耐えることが困難であるため、Inconel718製の外筒により保持し、耐圧構造として成立させている。」
(中略)
「Cu合金製内筒とInconel718製外筒及びマニホールド類は電子ビーム溶接で組み立てている。」
燃焼室に応力が掛かって変形し、この溶接が剥がれて強度的に弱い銅製の内筒がじわじわ開口したのか、溶接が健全で外筒の応力がじかに伝わり、一気に開口したのかが気になるところだ(14か所の開口の詳細は不明)。
電子顕微鏡とかで、開口面を見るんだろうな(未確認)。
燃焼室がトラブルのもとになると想定して、事前の要素テストを繰り返したり、可能な限りシミュレーションモデルでぐりぐりしたんだろうが、結果は事前テストやシミュレーションの予想を覆した。
(H3初号機 来年度に延期 主エンジン破損 JAXA)
https://373news.com/_news/?storyid=125617
「燃焼室では内部の壁に長さ1センチ、幅0.5ミリの割れ目が十数カ所発生した。設計通りに壁を冷却できず、局所的に約1000度の高温に達し破損したとみられる。」
「タービンは燃料を送るターボポンプ内にあり、長さ数センチの羽根76枚のうち、2枚にひびが見つかった。想定以上の共振が発生し、金属疲労が蓄積した可能性があるという。」
徐々に詳細が明らかになってくる感じだ。
新たに何か分かれば、別記事にて書く。
(H3ロケット初打ち上げ、来年度に延期 エンジンに亀裂)
https://www.asahi.com/articles/ASN9C5VLDN9CULBJ00G.html
「挑戦している部分で、経験を超えた未知のことが最後に出てきてしまった」
2月くらいまでは、快調に飛ばしてたんだがな。
(LE-9エンジン×3基の燃焼試験が初公開、H3ロケットのBFTは全て無事に完了!)
https://news.mynavi.jp/article/20200219-977534/
「日本はH-IIBロケットで2基クラスタの経験はあったものの、第1段の大型エンジンで3基クラスタというのはH3ロケットが初めて。未知の領域だったと言えるが、岡田プロマネは「案外スムーズにいった」と、安堵の表情を見せる。」
H2Bの開発の際、非回転対称3基クラスターに対する懸念が出され、途中で断念した(増強型(H2A212):液体燃料ブースターを付ける構想だったようだな)。
それをあっさりとクリアし、いよいよ種子島で認定エンジンの燃焼試験を始めた矢先のトラブルということになった。
好事魔多し・・・。
エキスパンダーブリードサイクルエンジンは、我が国のお家芸と言ってもいい。
(エキスパンダーブリードサイクル)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB#%E3%82%A8%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB
「日本だけが実用化している高信頼性エンジンサイクルで、液体酸素/液体水素上段エンジンであるLE-5A/LE-5Bで採用」
高出力化に当たっては、燃焼室の拡大(縦長)や熱効率の改善(回収熱量の増加)、ターボポンプの改良(IHI)により達成することを見込んでいた。
その、根本のところでケチが付いたわけだ。
(初号機打ち上げ、21年度に延期 H3ロケット、エンジンに不具合―JAXA)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020091100799&g=soc
「エンジンの燃焼室内壁に最大で幅0.5ミリ、長さ1センチの穴が14カ所見つかった。また、燃焼室に液体水素を送り込むポンプのタービン羽根2枚にひびも見つかった。」
(次期基幹ロケット「H3」初号機打ち上げ、21年度に延期 主エンジン不具合)
https://mainichi.jp/articles/20200911/k00/00m/040/210000c
「タービンは振動に伴う金属疲労が、燃焼室の内壁は冷却機能が足りずに設計値より高温になったことがそれぞれ原因とみられる。」
燃料噴射器が、機械加工によるものと3Dプリンターによるものとで特性が異なり、後者では共振が発生することは既に分かっている。
「以前の燃焼試験において、ターボポンプで共振の問題が発生したことから、まず初号機で搭載するタイプ1では、共振領域を避けて運転することとし、先行して認定。噴射器は従来の機械加工のものを使い、手堅く進める。」
「続くタイプ2で抜本的な対策を行い、共振領域自体を無くす設計とする。噴射器も3Dプリンタ製のものを採用し、これでLE-9の開発が完了となる。タイプ2は2号機での適用を目指しているとのこと。」
今回の発表では、この2号機の延期も含まれていることから、噴射器の問題だけではないということは明らかだな。
(第8回 H3ロケット用LE-9認定型#1エンジン燃焼試験結果)
http://www.rocket.jaxa.jp/rocket/engine/le9/2020/200526.html
・試験日:2020年5月26日
・試験場所:宇宙航空研究開発機構 種子島宇宙センター(鹿児島県)
・試験目的:LE-9エンジン認定型の機能・性能の確認
・着火時刻:16時45分
・試験時間:225.5秒(243.0)
・メイン燃焼圧力:10.87MPa(10.65)
・液体水素ターボポンプ回転数:40,990rpm(40,582)
・液体酸素ターボポンプ回転数:17,261rpm(16,986)
・備考:液体水素ターボポンプの入口圧力が予め設定していた下限値に達したため、自動停止しました。」
この認定型のエンジンは、もっぱら種子島で試験され、徐々に燃焼時間を伸ばしてきた。
H3ロケット用LE-9認定型#1エンジン燃焼試験結果:
・第1回(2020年2月13日):101.4秒
・第2回(2020年2月21日):95.0秒
・第3回(2020年3月31日):100.0秒
・第4回(2020年4月7日):6.55秒(試験設備の異常により手動停止)
・第5回(2020年4月17日):210.0秒
・第6回(2020年4月25日):120.1秒(液体水素ターボポンプの入口圧力が予め設定していた下限値に達したため、自動停止:予定時間140秒)
・第7回(2020年4月30日):240.0秒
・第8回(2020年5月26日):225.5秒(液体水素ターボポンプの入口圧力が予め設定していた下限値に達したため、自動停止:予定時間243秒)
水素側ターボポンプの入口圧力の低下が、何か本質的な部分に関わるのかは知らない。
第8回目の燃焼試験が、通常より過酷な条件で行われたという報道もある。
(H3ロケットの打ち上げ1年延期 主エンジンに穴やひび:共同通信配信)
https://news.yahoo.co.jp/articles/5073b040d537763592cede2b1b70dec995c0d7dd
「通常運転よりも高い過酷な温度での燃焼に耐えられるかどうかの実験で、壁の温度は約千度まで上昇」
読売は、タービンの設計変更、燃焼室の冷却機能の強化に踏み込んで書いている。
(「H3」1号機打ち上げ、21年度に延期…燃焼試験後にタービンのひび見つかる)
https://www.yomiuri.co.jp/science/20200911-OYT1T50178/
「ひびが見つかったのは、タービンの動翼の一部。エンジンを運転中に振動が大きくなる「共振」が起き、強度が低下したとみられる。対策として、タービンを設計し直し、効果を検証する。」
「燃焼室の内壁からも、14か所の穴(最大幅0・5ミリ、長さ1センチ程度)が確認された。内壁が1000度近くまで高温になり、変形したとみられる。冷却機能を強化し、内壁の温度上昇の低減を図る。」
設計を変更し、制作、試験、検証を繰り返していく中で、新たな問題が発生しないとは限らない。
燃焼室をスケールアップした予備実験や、LE-Xの開発(水素側ターボポンプは米国開発)だけでは見えてこなかった問題が出てきたわけだ。
「エンジンの技術的な課題への対応は、万全を期すべきだと判断した」
再使用エンジンと銘打って開発したエンジンが、ホッピングテストで火を噴いても大成功と報じられるどっかのロケット開発とは、文化が違うと感じる。
まあ、どうでもいいんですが。
一発必中、目指すは100パーセントの成功だからな。
壊してみなきゃわからんことは、開発中に解決しておくことだ。
そこは、物理の法則が変わらない限り同じともいえる。
調べていく中で、こんな記事もあった。
(ロケット開発エンジニアが大学で挑む「燃焼メカニズム」の解明とは【帝京大学】)
https://univ-journal.jp/column/202032500/
「真子教授が着目したのは‶燃焼振動”という現象。燃焼室内で生じる熱と圧力が互いに変動を強め合うことで発生する共鳴現象であり、圧力変動が大きくなるとエンジンを破壊してしまうリスクも高まるという。」
「『LE-9』に採用される燃焼方式は、重大な故障が起こりにくいため信頼性が高く、パーツ数が少ない分だけコストダウンを図れるというメリットがあります。その一方で生じやすいのが燃焼振動であり、この現象の解明に注力しています」
「燃焼振動抑制デバイス‶レゾネータ”の開発を進めており、スピーカーから出る音によって共鳴現象を発生させ、狙った周波数帯の音を吸収する最適な構造や並べ方を検証している。」
どっかで聞いたような話だな。
サターン5型のFー1エンジンでも、燃焼の不安定性に起因する問題が発生している。
(F-1ロケットエンジン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/F-1%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%B3
「技術者たちは最後の手段として、稼働中の燃焼室の中で小さな爆発(彼らは『爆弾』と呼び、RDX、C4または黒色火薬が使用された)を発生させる手法を編み出した。」
べらぼーめ・・・。
「不規則な燃焼に対応するための様々な形式の同心円状のインジェクター(燃料噴射機)を試験することが可能になった。これらの問題に1959年から1961年にかけて取り組んだ結果、最終的にエンジンの燃焼はきわめて安定するようになり、人為的に不安定を誘導した場合でも1/10秒以内で減衰するようになった。」
F-1エンジンの場合は、解決に2年掛かっている。
今回の延期が、十分な対策を取るための必要十分期間を満足しているかどうかは知らない。
パーツパーツで行われたり、予備開発で得たデータはあっても、組んでみて負荷を掛けて初めて現れる現象もあるということだな。
技術的な詳細については、浮沈子にはさっぱりだが、状況は楽観的とは程遠い。
メインエンジンの新規開発という、最大のチャレンジ項目でのつまずきだからな。
本来なら、この要素の技術的目途が立ってからロケット全体の開発が始まる。
重工は、要素技術とサブスケールの段階で見切り発車した。
コスト削減圧力、お家芸への過信、世代交代による技術伝承の分断、スケジュールありきの民間事業の特性などなど。
それぞれの要請には、それなりの正当性があるが、それらを統合した時に何が出るかは完全には予想できない。
たまたま、こんな記事が出ていて印象的だ。
(チャーリー・ボルデンは静かな部分を大声で言います:SLSロケットは消えます)
https://arstechnica.com/science/2020/09/former-nasa-administrator-says-sls-rocket-will-go-away/
2014年:
「正直にしましょう。市販の重量物運搬車はありません。Falcon 9 Heavyがいつか登場するかもしれません。それは今、設計図にあります。SLSは本物です。」
2016年:
「打ち上げロケットについて語るなら、国民に対する私たちの責任は、大型打ち上げロケットのように、一般の人々ができない、またはしたくないことを処理することだと信じています」
「私はまだ大型ロケットに商業投資をするのが好きではない。」
その後:
・2017年に打ち上げが予定されていたSLSロケットが2021年末まで延期(21年中には上がらない方に1票だな)
2018年2月:
・ファルコンヘビーの打ち上げ
2020年:
「SLSはなくなるでしょう。バイデン政権や次期トランプ政権の間になくなる可能性があります...ある時点で商業組織が追いつくためです。彼らは本当に、NASAがSLSよりもはるかに安い価格で飛ぶことができるSLSのような重量物打ち上げロケットを構築しようとしています。それがまさにそれが機能する方法です。」
まあ、記事を書いているエリックバーガーはSLSに懐疑的だからな。
SLSのライバルがスターシップ/スーパーヘビーだという指摘もある。
「NASAはSpaceXの次のロケットであるスーパーヘビーブースターと競合しています。SpaceXは、スーパーヘビーロケットの単一セグメントを構築していません。これは、SLSより大きく、より強力で、非常に安価で、再利用可能です。しかし、2021年に10年前のSLSの前に、車両が軌道に打ち上げられる可能性があります。」
浮沈子的には、その可能性はゼロだと確信しているけど、そして、テスト飛行で仮にサブオービタル(弾道軌道)飛行することがあったとしても、有人仕様の信頼性を担保された運用ベースのSLS(+オリオン宇宙船)とは、そもそも比較の対象にならない。
2020年代に、スターシップ/スーパーヘビーが無人貨物輸送システムとしての実績を積むことができるかどうかも怪しいと見ている(何機吹っ飛ぶことやら・・・)。
開発に掛かるコストが膨れ上がり(現在50億ドルと予想)、400億ドル(SLS+オリオン宇宙船)を超え、資金ショートで断念されるリスクも、依然としてゼロではない。
それでも、スターリンクなどの関連事業の収益をつぎ込んで、開発を続けるかもしれないけどな。
昨年のスターホッパーから、今年8月のSN5によるホッピング飛行の経緯を見ていると、こんなもんで10年以内に有人飛行が可能になると考える方が不自然な気がする(これまで何回吹っ飛んだことか、そして、これから何百回吹っ飛ぶことか・・・)。
まあいい。
つまり、ロケット開発は先が見えないバクチだということだ(吹っ飛ぶからって、バクチクではない!)。
賭けに勝てば英雄だし、負ければただのスクラップだ。
ソ連も、ロシアになってからも、米国だって、開発途上で消えていったロケットのリストは長い。
H3が、開発途上で消えていったGXロケットや、過剰コストが仇になって廃止に追い込まれたMーVロケットに連なるかどうかは未定だ。
ここまで来て廃止はないだろうと思うが、一寸先は闇だからな。
400億ドルかけたロケットと宇宙船のシステムも、競争に敗れれば惜しげもなく捨てられる。
一発打ち上げられるたびに、H3ロケットの開発費用(1900億円)より高くつくしな(20億ドル:約2200億円)。
70トンのペイロードを地球低軌道に上げるSLSと、数トン程度のH3(最大低軌道打ち上げ能力は未確認)を比較するのは間違っているし、開発済みのRS-25を使うのと、新規開発のLE-9とを同列に考えることはできない。
どちらも使い捨てロケットで、固体燃料ブースターを付けて飛ばすところくらいだな。
ブースターなしで上がるH3-30仕様が、どのくらいの割合になるかは分からない。
意外と多いのではないか。
その場合の1段目の推力は、LE-9頼りだ。
初の3基掛け、大型打ち上げロケットでは初の液体燃料エンジンのみでの打ち上げになる。
今回の燃焼障害の原因と対策が適切に講じられ、所定の延長期間内で試験が終了し、新たな日程で初打ち上げが行われるのを期待しよう。
ロケット開発がハイリスクなものだということを、改めて教えられた気がする。
廃物利用なSLSでさえ、その実現には10年以上の歳月を掛けている。
スターシップ/スーパーヘビーで2023年に月に行けるなんて、誰が信じるかよ・・・。
<以下追加>----------
(JAXA、「H3」ロケット打ち上げ延期の理由)
https://newswitch.jp/p/23778
「燃焼室内壁を高温作動条件で試験すると、設計値よりも燃焼室内壁が高温になることが分かった。」
「エンジンの燃焼室内の開口は、燃焼室を冷やす水素が通る冷却溝付近で14カ所見つかった。」
「定常時の局所的な熱の流入と、起動と停止過渡時の一時的な冷却不足が原因と推定された。冷却の強化や起動と停止パターンの見直し、燃焼室内壁の温度低減を試みる。」
具体的な対策については触れられていない。
「タービンの疲労破面は、外部からの振動でより内部の振動が強まり、金属疲労の蓄積が進行したと考えられる。タービンの設計を変え、翼振動試験を行う。」
技術系のメディアらしく、「エンジンが穴だらけ」→「エンジンの燃焼室内の開口」、「タービンブレードにも亀裂→タービンの疲労破面」など、それらしい言葉を使っているが、たとえば燃焼室内壁の高温化とブレードの振動の関係など、浮沈子が知りたいことは書いていない。
機動・停止時の過渡特性を問題にしているが、これも想定外なんだろうな。
穴が開いたのは、水素が通る冷却溝付近というのは、この記事で初めて知った。
(H3 ロケット1段用 LE-9 エンジンの燃焼安定性向上:参考記事)
https://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/534/534036.pdf
「図1:
燃焼室内筒:冷却効率を高めるため、板厚数mm程度の薄肉構造とする。」
「水素(-250℃)」(常圧では気体の温度だが、加圧されているのでたぶん液体(未確認):熱交換して気体になり、タービンを回す)
図2:エンジンサイクル図や図3:燃焼器単体試験の系統図を見ると、水素で燃焼室を冷やしたのち、ターボポンプ駆動後ノズル内部に排気しているような感じだ(フィルム冷却しているという記述もあるしな)。
「エキスパンダブリードサイクルでは,ターボポンプで昇圧された水素の一部を燃焼室の冷却に使用し,その際に獲得した熱エネルギーによりターボポンプを駆動する。ターボポンプ駆動により圧力の下がった水素は,その後ノズル内部に流れ,壁面近くを沿うように流れることでノズル壁面の冷却に使用される(フィルム冷却)。」(別記事を読むと、ポンプで昇圧された水素の一部をターボポンプの駆動に回し、大部分はそのまま燃焼室に送り込むことによって、燃焼室圧力を高くできるところがミソのようです。)
(フィルム冷却)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%A0%E5%86%B7%E5%8D%B4
「スリットや冷却孔から流体を噴射することで火炎が直接構造体に触れないように断熱層を形成することにより冷却空気膜を形成して翼表面を保護する方法。ロケットエンジンやガスタービン等に使用されている」
まあ、これはノズルの冷却だけだ。
ちなみに、この実験では、エンジンの始動・停止時の過渡特性をフルスケールで確認したことになっている(同じ条件ではないかもしれないが、データ取りはしている:表2:燃焼器系単体試験(フルスケール試験)の目的、図5:エンジン作動履歴を参照)。
燃料噴射器については、技術的隘路をクリアした感じだが、思わぬところに伏兵ありということか。
燃焼条件がタイトなエンジンということなのかもしれない。
タービンブレードの亀裂(疲労破面)問題は、固有振動数の問題とかあるから、形状を弄らないといけないだろう(テキトーです)。
穴が開いた(開口した)原因については、どこかの記事に燃焼室の変形によると書いてあった。
確かに薄い内壁(数mm)だから、そういうことかも知れない。
冷却溝付近という、構造的に弱いところで開口した可能性はある。
いずれにしても、起動時等の流量変更だけでなく、構造設計まで弄るということになれば、相当手間がかかりそうだし、影響も大きいかも知れない。
タービンブレードの外乱との関係も気になる。
それぞれ勝手に弄って、組んで動かしたら逆効果だったりしたらどーする?。
まあいい。
1年掛けて、きっちり直してもらわんとな・・・。
<さらに追加>----------
(第4章 ロケットの実際:P12参照)
http://lss.mes.titech.ac.jp/~matunaga/Rocket-Tomita-ch4.pdf
「(4)エキスパンダ・ブリード・サイクル(Expander Bleed Cycle)
エキスパンダ・サイクルは冷却に用いた水素すべてを,タービンを回すために用いているが,タービン側にまわす水素をごく一部にして,ほとんどを cooling jacket から直接エンジン燃焼室に送り込み,ターボ・ポンプを回した水素ガスは捨ててしまうのがエキスパンダ・ブリード・サイクルである」
「ターボ・ポンプを回した水素ガスは圧力が低下するので,エキスパンダ・サイクルではエンジン燃焼室圧力が低くなるが,エキスパンダ・ブリード・サイクルでは,エンジン燃焼室に行くガスは圧力が低下していないので,エンジン燃焼室圧力を高く取ることができる.」
「すなわち,エキスパンダ・ブリード・サイクルのほうがエキスパンダ・サイクルより性能が高く,水素ガスを捨ててしまっても,この方が効率がよい.」
「ただし,エキスパンダ・サイクルの場合もそうであるが,燃焼室の冷却との熱交換での水素ガスの温度上昇に限界があるため,水素ガス温度を高くできないので(400~600K)ターボ・ポンプ駆動馬力不足で,大推力のエンジンには適さない.」
「また,エキスパンダ・サイクルも同様であるが液体水素を燃料として用いるエンジンにしか適用できない」
大出力には本質的に向かず、使用燃料も限られるニッチな仕組みのエンジンだな。
このエンジンを、次世代エンジンとして選択したのは、ひとえに経済性の追求(安定性もあるか)だろうが、大推力を実現する必要から、燃焼室の熱交換効率を上げるために、筋の悪い開発をしたのかもしれない。
将来の発展性については、開発当初から意識しているようだ。
再着火性については、もともとLE-5シリーズで実績があるので、再使用の際にも問題はない。
(種子島のロケットエンジン燃焼試験設備が公開2)
https://news.mynavi.jp/article/le9-2/
「現在の使い捨てロケットだけでなく、将来の再使用型輸送機でも使えるようなエンジンを目指していた」
「「爆発しにくい」という特徴は、有人ロケットにも適していると言える。」
先を見据えた開発ではあったわけだ。
開発手法についても、慎重なアプローチをとっている。
(種子島のロケットエンジン燃焼試験設備が公開3)
https://news.mynavi.jp/article/le9-3/
「開発後期での手戻りを避けるために、要素試験やシミュレーション解析を駆使し、起こりそうな問題は事前に1つ1つ排除してきた。」
「高信頼性開発手法により、すでに魔物は退治したのかもしれない。しかしもしかすると、まだどこかに隠れているのかもしれない。今後、燃焼試験をさらに繰り返すことで、そのあたりが徐々に見えてくることになるだろう。」
3年近く前の記事だが、岡田プロマネには魔物の影が見えていたのかもしれないな・・・。
<さらにさらに追加>----------
(航空・宇宙「材料編」)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjws/83/2/83_117/_pdf
資料ページで38ページ末から、LE-7A(たぶん)の燃焼室材料と冷却系統についての記述がある。
「(2)燃焼室
燃焼室は燃焼ガス温度が3000℃をレベルに達するため、金属材料をそのまま適用することはできない。」
「そこで、燃焼室は熱伝導特性に優れたCu合金とし、燃料である液体水素を利用した強制冷却構造を用いている。」
うーん、やっぱ、液体水素なんだ・・・。
「また、Cu合金のみでは、燃焼室の高圧に耐えることが困難であるため、Inconel718製の外筒により保持し、耐圧構造として成立させている。」
(中略)
「Cu合金製内筒とInconel718製外筒及びマニホールド類は電子ビーム溶接で組み立てている。」
燃焼室に応力が掛かって変形し、この溶接が剥がれて強度的に弱い銅製の内筒がじわじわ開口したのか、溶接が健全で外筒の応力がじかに伝わり、一気に開口したのかが気になるところだ(14か所の開口の詳細は不明)。
電子顕微鏡とかで、開口面を見るんだろうな(未確認)。
燃焼室がトラブルのもとになると想定して、事前の要素テストを繰り返したり、可能な限りシミュレーションモデルでぐりぐりしたんだろうが、結果は事前テストやシミュレーションの予想を覆した。
(H3初号機 来年度に延期 主エンジン破損 JAXA)
https://373news.com/_news/?storyid=125617
「燃焼室では内部の壁に長さ1センチ、幅0.5ミリの割れ目が十数カ所発生した。設計通りに壁を冷却できず、局所的に約1000度の高温に達し破損したとみられる。」
「タービンは燃料を送るターボポンプ内にあり、長さ数センチの羽根76枚のうち、2枚にひびが見つかった。想定以上の共振が発生し、金属疲労が蓄積した可能性があるという。」
徐々に詳細が明らかになってくる感じだ。
新たに何か分かれば、別記事にて書く。
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