スピード4 ― 2014年08月07日 12:24
スピード4
8月4日までの累計で、932人の死者を計上した。
(Ebola virus disease update - West Africa)
http://www.who.int/csr/don/2014_08_06_ebola/en/
(エボラ出血熱、死者932人に=WHO)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0G61NE20140806?rpc=223&rpc=188
次回の更新の際には、1000人を超えることになるかもしれない。
浮沈子的に気になっているのは、医療従事者の感染が相次いで報告されていることだ。
(エボラ出血熱 医療従事者も感染相次ぐ)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140804/k10013522621000.html
「現地では、感染が広がり続けるなか、医師や看護師などが死亡する事例も相次いでおり、WHO=世界保健機関によりますと、これまでに60人以上の医療従事者が死亡したということです。」
この状況には2つの懸念がある。
一つは、医療スタッフ自身の知識不足や訓練の不足である。
しかし、さらに懸念されるのは、エボラの感染リスクが、従来の想定を超えているのではないかということだ。
体液などとの接触がなければ感染しないとされているが、飛沫ではなく、飛沫核の状態(空気感染)でのリスクもあるのではないか。
(感染経路:追加)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%B5%8C%E8%B7%AF
そういった感染のリスクの変化を、最も敏感に反映するのが治療スタッフへの感染である。
彼らは、常に患者と接しているので、感染リスクの変化は、直接感染の増大に繋がってくる。
(国際社会が連携し感染防止態勢を)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140807/k10013611351000.html
「医療従事者への感染が拡大しているのは、防護服や隔離施設などが整っていないことが原因」
本当にそうなのか。
「体液や血液に含まれるウイルスに直接触れないかぎり感染しない」
本当にそうならば、ベテランの医師や、米国から派遣された医師、看護師の感染はなぜ起こったのか。
マスクやグローブなどで、簡単に防げるはずの感染が、医療従事者への留まることのない感染を引き起こしているのはなぜなのか。
これは、設備の問題ではなく、今回のウイルスに対する感染リスクの評価の問題なのではないか。
(エボラ熱死者932人に、現場の医師らから緊急支援の要請相次ぐ)
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPKBN0G62KO20140806
「現場では人員が今すぐにでも必要となっている。それはオフィスの中や会議室ではなく、ゴム手袋をはめた人たちだ」
ゴム手袋だけではなく、飛沫感染(空気感染ではない)では、ゴーグルやマスクも必要だろう。
簡易なガウンでも、あったほうがいい。
だが、正しいガウンテクニックを身に着けていなければ、形だけのものになって、汚染された面を素手で触ってしまったりもする。
きちんと訓練された、錬度の高い医療スタッフを潤沢に現場投入する必要がある。
スタッフの疲労や過度のストレスは、ミスを招く。
ウイルスの感染リスクの変化ではなく、それが原因で医療従事者の感染が増えているとすれば、これは明らかな人災である。
「死者の数が最も急速に増加しているリベリアでは、院長がエボラ熱により死亡した病院が閉鎖された。」
感染者が頼りとすべき病院自体が閉鎖に追い込まれるということは、感染自体が野放しになり、治療の手が差し伸べられることのない、過酷な自然終息に委ねられることになる。
感染地域の隔離も、今回のように、首都での感染が進行している場合は、完全に行うことは不可能だ。
「サウジアラビア保健省は、出張先のシエラレオネでエボラ熱に感染した疑いがもたれていた男性が6日に死亡したと明らかにした。」
散発的に飛び火する感染者を、完璧にトレースし、飛び火した先での感染拡大を行うことができるのだろうか。
「ナイジェリア保健省は6日、同国でエボラ熱により先月死亡した米国籍のパトリック・ソーヤー氏の治療に当たっていた看護師が死亡したと発表。別の5人もアフリカ最大都市でもあるラゴスの隔離病棟で治療を受けているとした。」
「ラゴスの保健当局は、医師がストライキを行っており、ソーヤー氏に接触した70人を追跡するため、ボランティアが直ちに必要だと指摘。これまでに追跡できた人数は27人だとしている。」
ナイジェリアは、たった一人の感染者を受け入れたことが原因で、エボラの第4の感染国として定着してしまった。
医療従事者の感染が先行しているが、感染の可能性があるルートを押え切れていない中、新たな発生が懸念される。
(エボラ ナイジェリアで新たに7人感染か)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140806/k10013606521000.html
「死亡した男性と同じ旅客機に乗り合わせた人や治療に当たった医療従事者のうち、新たに7人がエボラ出血熱と疑われる症状を示していることが分かりました。」
すでに医療従事者以外の感染も疑われている。
この事態は、世界の全ての国々が共有すべきことを示唆している。
つまり、機内感染を防ぐ術はないということ、そして、その事態が発生した時に、その先の感染経路を完全にコントロールするというのは、不可能だということだ。
こうした状況は、他の感染症でも同じだが、エボラの場合は、そのアットーテキな死亡率が事態を複雑かつ先鋭なものにしている。
航空機によるワンワールド時代の高致死率の感染症のアウトブレイク(流行)は、従来の感染症の常識を覆して、人類に対する新たな危機を生み出す。
今回の事態が、そのことを明確にしたことは重要だ。
各国の感染症対策の従事者が、喉もと過ぎて熱さを忘れるようなことがあれば、次のアウトブレイクは悲惨な結果になるかもしれない。
まあ、今回のアウトブレイクが無事に終息して、人類が文明社会を維持できていれば、という仮定の話なんだが・・・。
(エボラ熱は世界に拡散するのか リベリア感染に学ぶ阻止策とは)
http://www.huffingtonpost.jp/2014/08/01/ebola_n_5640448.html
この記事が報じている飛び火する感染に対する認識は、浮沈子はいささか楽観的過ぎると感じている。
(ナイジェリア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%82%A2
世界は、ナイジェリアへの感染が実際に起こり、今尚拡大していることの重要性を、もっと深刻に受け止めるべきではないのか。
この国の人口は、1億7千万人を超え、アフリカ最大の国である。
もちろん、今回の流行地域とは国境を接しているわけではない。
「経済は南アフリカをも上回るアフリカ最大の規模である。」
「石油生産量世界12位、輸出量世界8位の世界有数の産油国」
「政府歳入の80%、GDPの40%を石油に頼る過度の石油依存により、カカオを除く在来の輸出農業は衰退。さらに政治の腐敗、放漫財政とオイルブーム後の巨額の累積債務のため、経済は低迷を続けている」
「2003年の15歳以上の人口の識字率は約68%(男性:75.7%、女性:60.6%)であると見積もられている」
明治期の我が国と同程度の識字率である。
基本的には教育言語である英語なので、意外に高いといえるかもしれない。
「年間に製作される映画の本数は約800本と、インドに続き世界二位である。人口10億人以上のインドとほぼ同数の作品が製作されているわけなので、人口比あたりの映画制作数では間違いなく世界一位である。」
(ナイジェリア連邦共和国(Federal Republic of Nigeria)基礎データ)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/nigeria/data.html#01
さて、感染地域の隔離状態はどうなっているのだろうか。
(エボラ出血熱の死者887人に 感染地域隔離へ軍隊派遣)
http://www.huffingtonpost.jp/2014/08/04/health-ebola-who_n_5648672.html
「シエラレオネは感染者の多い地域を隔離するために数百人の兵士と医療関係者を同国東部に派遣した。」
「リベリアでも北部で一部地域を隔離しており、サーリーフ大統領は3日、閣議を招集して危機対策を協議した。ブラウン情報相はロイターに「状況はおそらく改善する前に悪化する」と述べ、支援が必要と訴えた。」
「状況はおそらく改善する前に悪化する」というのは、なかなかの名言だが、事態を的確に表現しているともいえる。
地域の隔離(人や物の流通の遮断と援助物資の搬入)に当たっている軍隊への感染という、最悪の事態を引き起こす可能性だってある。
それがなかったとしても、感染地域内での感染者の増加や、それに伴う死者の増加には有効な手段が取られているとはいえない。
個々の部分は、従来の対策を強化するしかなく、それには各国の支援が必要なのだ。
自国の医療資源だけでは、対応は困難である。
だが、感染地域の隔離を断行したことは、事態の悪化を制御するための重要な一歩だ。
少なくとも、発生地域における感染のスピードを落とすことに繋がる。
散発的に起こる飛び火感染のリスクに、どう対応するかというのは、状況次第だな。
基本的には、完全な渡航禁止というのが最も効果的ではある。
そうでない場合には、搭乗時の健康チェックの強化、乗務員を含む搭乗者全員、機内清掃を含む空港関係者全員(意外な盲点?)の追跡調査を確実に行うことが重要だ。
しかし、我が国を含め、そんな体制が採られている国はどこにもない。
エボラにとっては、航空機時代というのは、全地球的に拡散するチャンスなのである。
人類にとって最悪の事態としては、拡散先で新たな自然宿主に巡り会うことだろう。
安定した宿主を得て、世界中で散発的なアウトブレイクが発生するという事態になれば、これは本当に厄介なことになる。
地域に固有の感染症が、人類が普遍的に感染する、どこにでもある感染症になってしまう。
そんなことになれば、まあ、このブログを書き続けることさえおぼつかなくなるだろう。
今回のアウトブレイクで特徴的なことの一つが、従来の感染地域から離れた西アフリカで発生したということであることは、既に触れた。
(スピード2)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/07/31/7402793
「浮沈子が気になる、今回のアウトブレイクの特徴は、2つ。
ひとつは、西アフリカでの初めての流行であること。
もうひとつは、過去に例がないほど大規模な流行になっていること。」
既に、自然宿主の拡大が始まっているのかもしれない。
今回の流行が大規模になっている原因の一つが、そこにあるとすれば、自然宿主との遮断を行わない限り、同地域でのアウトブレイクは散発的に発生するだろうし、映画の世界のように、自然宿主そのものが拡散すれば、世界のどこでも高い致死率のエボラが発生することになる。
(アウトブレイク (映画))
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88%E3%83%96%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%AF_(%E6%98%A0%E7%94%BB)
「ダニエルズはウイルスの致死率の高さと感染者を死にいたらしめるスピードの早さに危機感を抱き、軍上層部とCDCに勤務する元妻のロビーに警戒通達の発令を要請するが、双方から却下されてしまう。」
「そんな折、アフリカから一匹のサルがアメリカに密輸入された。密売人のジンボはカリフォルニア州沿岸の田舎町シーダー・クリークのペットショップに売りつけようとするが失敗し、持て余したサルを森に放す。」
エボラの自然宿主は、現在でも特定されていない。
(エボラウイルス属)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%9C%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E5%B1%9E
「自然界での正確な分布は不明だが、アフリカ大陸で最初の感染が報告された事、5種のうち4種が人獣共通感染症であることから、アフリカの野生生物がホストであると考えられている。」
人類にとっての脅威というのは、確かに重要な部分ではあるが、ウイルスにはそんな価値観は通用しない。
彼らは、自然の摂理に従って、感染し、増殖し、再び感染することを繰り返すだけである。
生体の仕組を利用しなければ増殖できないウイルスが、有限の生命を有する宿主と渡り合うには、感染し続けなければならない。
宿主の免疫系と折り合いが付かずに、淘汰されてしまうもの(感染の失敗)、うまく折り合いをつけて、宿主の免疫系と折り合いを付け、生体内での増殖のスピードのコントロールにも成功して、安定した生活環を獲得するもの(自然宿主)、免疫系をすり抜けたのはいいが、増殖のコントロールに失敗して、せっかく感染した宿主をぶっ殺してしまうもの(病的な感染:ヒトとエボラの関係)。
それでも、次から次へと感染を拡大させていければ、その種が絶滅するまでは生き残ることが出来る。
しかし、なんで、そんな危ない橋を渡るのかといえば、種を超えて安定した自然宿主を獲得するためには、多少のリスクを冒しても、高速で移動し、集団で生活し、濃厚な接触を繰り返して種の内部での感染を広げ、さらには他の宿主への橋渡しをしてくれる宿主への病的な感染の橋を渡る必要があるのかもしれない。
もちろん、これは結果的にそう見えるというだけの話で、ウイルスに意思があるとか、そういう話ではない。
人類が滅亡する前に、次の自然宿主を見つけられれば、エボラにとって、人類に感染した価値は十分にあったといえるだろう。
まあ、人類にとっては、迷惑この上ない話ではある。
この感染症にどう対応するかということは、本質的にはそういうことだ。
感染症というのは、エボラに限らず、生命の本質的な問題を人類に突きつけている。
他の生命(まあ、ウイルスは生命とは言い難いが)の存在と、無関係ではいられない人類の立ち位置を明確にしてくれる。
食料として食ってしまったり、ペットとして愛玩するだけが、他の種との係わり合いではないのだ。
終末期の感染だけを考えていればいいわけではない。
感染初期から、発症し動けなくなるまでの間に感染を広げるスピード、そして、航空機による飛び火感染のスピードが加わる。
航空機関係の感染の可能性がある、全ての人々の追跡調査を含めた保健対策のスピードが追いつけなくなった時、感染者数は、現在の感染者の400万倍になる。
70億・・・。
そうして、今回のアウトブレイクは終息する。
8月4日までの累計で、932人の死者を計上した。
(Ebola virus disease update - West Africa)
http://www.who.int/csr/don/2014_08_06_ebola/en/
(エボラ出血熱、死者932人に=WHO)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0G61NE20140806?rpc=223&rpc=188
次回の更新の際には、1000人を超えることになるかもしれない。
浮沈子的に気になっているのは、医療従事者の感染が相次いで報告されていることだ。
(エボラ出血熱 医療従事者も感染相次ぐ)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140804/k10013522621000.html
「現地では、感染が広がり続けるなか、医師や看護師などが死亡する事例も相次いでおり、WHO=世界保健機関によりますと、これまでに60人以上の医療従事者が死亡したということです。」
この状況には2つの懸念がある。
一つは、医療スタッフ自身の知識不足や訓練の不足である。
しかし、さらに懸念されるのは、エボラの感染リスクが、従来の想定を超えているのではないかということだ。
体液などとの接触がなければ感染しないとされているが、飛沫ではなく、飛沫核の状態(空気感染)でのリスクもあるのではないか。
(感染経路:追加)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9F%E6%9F%93%E7%B5%8C%E8%B7%AF
そういった感染のリスクの変化を、最も敏感に反映するのが治療スタッフへの感染である。
彼らは、常に患者と接しているので、感染リスクの変化は、直接感染の増大に繋がってくる。
(国際社会が連携し感染防止態勢を)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140807/k10013611351000.html
「医療従事者への感染が拡大しているのは、防護服や隔離施設などが整っていないことが原因」
本当にそうなのか。
「体液や血液に含まれるウイルスに直接触れないかぎり感染しない」
本当にそうならば、ベテランの医師や、米国から派遣された医師、看護師の感染はなぜ起こったのか。
マスクやグローブなどで、簡単に防げるはずの感染が、医療従事者への留まることのない感染を引き起こしているのはなぜなのか。
これは、設備の問題ではなく、今回のウイルスに対する感染リスクの評価の問題なのではないか。
(エボラ熱死者932人に、現場の医師らから緊急支援の要請相次ぐ)
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPKBN0G62KO20140806
「現場では人員が今すぐにでも必要となっている。それはオフィスの中や会議室ではなく、ゴム手袋をはめた人たちだ」
ゴム手袋だけではなく、飛沫感染(空気感染ではない)では、ゴーグルやマスクも必要だろう。
簡易なガウンでも、あったほうがいい。
だが、正しいガウンテクニックを身に着けていなければ、形だけのものになって、汚染された面を素手で触ってしまったりもする。
きちんと訓練された、錬度の高い医療スタッフを潤沢に現場投入する必要がある。
スタッフの疲労や過度のストレスは、ミスを招く。
ウイルスの感染リスクの変化ではなく、それが原因で医療従事者の感染が増えているとすれば、これは明らかな人災である。
「死者の数が最も急速に増加しているリベリアでは、院長がエボラ熱により死亡した病院が閉鎖された。」
感染者が頼りとすべき病院自体が閉鎖に追い込まれるということは、感染自体が野放しになり、治療の手が差し伸べられることのない、過酷な自然終息に委ねられることになる。
感染地域の隔離も、今回のように、首都での感染が進行している場合は、完全に行うことは不可能だ。
「サウジアラビア保健省は、出張先のシエラレオネでエボラ熱に感染した疑いがもたれていた男性が6日に死亡したと明らかにした。」
散発的に飛び火する感染者を、完璧にトレースし、飛び火した先での感染拡大を行うことができるのだろうか。
「ナイジェリア保健省は6日、同国でエボラ熱により先月死亡した米国籍のパトリック・ソーヤー氏の治療に当たっていた看護師が死亡したと発表。別の5人もアフリカ最大都市でもあるラゴスの隔離病棟で治療を受けているとした。」
「ラゴスの保健当局は、医師がストライキを行っており、ソーヤー氏に接触した70人を追跡するため、ボランティアが直ちに必要だと指摘。これまでに追跡できた人数は27人だとしている。」
ナイジェリアは、たった一人の感染者を受け入れたことが原因で、エボラの第4の感染国として定着してしまった。
医療従事者の感染が先行しているが、感染の可能性があるルートを押え切れていない中、新たな発生が懸念される。
(エボラ ナイジェリアで新たに7人感染か)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140806/k10013606521000.html
「死亡した男性と同じ旅客機に乗り合わせた人や治療に当たった医療従事者のうち、新たに7人がエボラ出血熱と疑われる症状を示していることが分かりました。」
すでに医療従事者以外の感染も疑われている。
この事態は、世界の全ての国々が共有すべきことを示唆している。
つまり、機内感染を防ぐ術はないということ、そして、その事態が発生した時に、その先の感染経路を完全にコントロールするというのは、不可能だということだ。
こうした状況は、他の感染症でも同じだが、エボラの場合は、そのアットーテキな死亡率が事態を複雑かつ先鋭なものにしている。
航空機によるワンワールド時代の高致死率の感染症のアウトブレイク(流行)は、従来の感染症の常識を覆して、人類に対する新たな危機を生み出す。
今回の事態が、そのことを明確にしたことは重要だ。
各国の感染症対策の従事者が、喉もと過ぎて熱さを忘れるようなことがあれば、次のアウトブレイクは悲惨な結果になるかもしれない。
まあ、今回のアウトブレイクが無事に終息して、人類が文明社会を維持できていれば、という仮定の話なんだが・・・。
(エボラ熱は世界に拡散するのか リベリア感染に学ぶ阻止策とは)
http://www.huffingtonpost.jp/2014/08/01/ebola_n_5640448.html
この記事が報じている飛び火する感染に対する認識は、浮沈子はいささか楽観的過ぎると感じている。
(ナイジェリア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%82%A2
世界は、ナイジェリアへの感染が実際に起こり、今尚拡大していることの重要性を、もっと深刻に受け止めるべきではないのか。
この国の人口は、1億7千万人を超え、アフリカ最大の国である。
もちろん、今回の流行地域とは国境を接しているわけではない。
「経済は南アフリカをも上回るアフリカ最大の規模である。」
「石油生産量世界12位、輸出量世界8位の世界有数の産油国」
「政府歳入の80%、GDPの40%を石油に頼る過度の石油依存により、カカオを除く在来の輸出農業は衰退。さらに政治の腐敗、放漫財政とオイルブーム後の巨額の累積債務のため、経済は低迷を続けている」
「2003年の15歳以上の人口の識字率は約68%(男性:75.7%、女性:60.6%)であると見積もられている」
明治期の我が国と同程度の識字率である。
基本的には教育言語である英語なので、意外に高いといえるかもしれない。
「年間に製作される映画の本数は約800本と、インドに続き世界二位である。人口10億人以上のインドとほぼ同数の作品が製作されているわけなので、人口比あたりの映画制作数では間違いなく世界一位である。」
(ナイジェリア連邦共和国(Federal Republic of Nigeria)基礎データ)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/nigeria/data.html#01
さて、感染地域の隔離状態はどうなっているのだろうか。
(エボラ出血熱の死者887人に 感染地域隔離へ軍隊派遣)
http://www.huffingtonpost.jp/2014/08/04/health-ebola-who_n_5648672.html
「シエラレオネは感染者の多い地域を隔離するために数百人の兵士と医療関係者を同国東部に派遣した。」
「リベリアでも北部で一部地域を隔離しており、サーリーフ大統領は3日、閣議を招集して危機対策を協議した。ブラウン情報相はロイターに「状況はおそらく改善する前に悪化する」と述べ、支援が必要と訴えた。」
「状況はおそらく改善する前に悪化する」というのは、なかなかの名言だが、事態を的確に表現しているともいえる。
地域の隔離(人や物の流通の遮断と援助物資の搬入)に当たっている軍隊への感染という、最悪の事態を引き起こす可能性だってある。
それがなかったとしても、感染地域内での感染者の増加や、それに伴う死者の増加には有効な手段が取られているとはいえない。
個々の部分は、従来の対策を強化するしかなく、それには各国の支援が必要なのだ。
自国の医療資源だけでは、対応は困難である。
だが、感染地域の隔離を断行したことは、事態の悪化を制御するための重要な一歩だ。
少なくとも、発生地域における感染のスピードを落とすことに繋がる。
散発的に起こる飛び火感染のリスクに、どう対応するかというのは、状況次第だな。
基本的には、完全な渡航禁止というのが最も効果的ではある。
そうでない場合には、搭乗時の健康チェックの強化、乗務員を含む搭乗者全員、機内清掃を含む空港関係者全員(意外な盲点?)の追跡調査を確実に行うことが重要だ。
しかし、我が国を含め、そんな体制が採られている国はどこにもない。
エボラにとっては、航空機時代というのは、全地球的に拡散するチャンスなのである。
人類にとって最悪の事態としては、拡散先で新たな自然宿主に巡り会うことだろう。
安定した宿主を得て、世界中で散発的なアウトブレイクが発生するという事態になれば、これは本当に厄介なことになる。
地域に固有の感染症が、人類が普遍的に感染する、どこにでもある感染症になってしまう。
そんなことになれば、まあ、このブログを書き続けることさえおぼつかなくなるだろう。
今回のアウトブレイクで特徴的なことの一つが、従来の感染地域から離れた西アフリカで発生したということであることは、既に触れた。
(スピード2)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/07/31/7402793
「浮沈子が気になる、今回のアウトブレイクの特徴は、2つ。
ひとつは、西アフリカでの初めての流行であること。
もうひとつは、過去に例がないほど大規模な流行になっていること。」
既に、自然宿主の拡大が始まっているのかもしれない。
今回の流行が大規模になっている原因の一つが、そこにあるとすれば、自然宿主との遮断を行わない限り、同地域でのアウトブレイクは散発的に発生するだろうし、映画の世界のように、自然宿主そのものが拡散すれば、世界のどこでも高い致死率のエボラが発生することになる。
(アウトブレイク (映画))
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88%E3%83%96%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%82%AF_(%E6%98%A0%E7%94%BB)
「ダニエルズはウイルスの致死率の高さと感染者を死にいたらしめるスピードの早さに危機感を抱き、軍上層部とCDCに勤務する元妻のロビーに警戒通達の発令を要請するが、双方から却下されてしまう。」
「そんな折、アフリカから一匹のサルがアメリカに密輸入された。密売人のジンボはカリフォルニア州沿岸の田舎町シーダー・クリークのペットショップに売りつけようとするが失敗し、持て余したサルを森に放す。」
エボラの自然宿主は、現在でも特定されていない。
(エボラウイルス属)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%9C%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E5%B1%9E
「自然界での正確な分布は不明だが、アフリカ大陸で最初の感染が報告された事、5種のうち4種が人獣共通感染症であることから、アフリカの野生生物がホストであると考えられている。」
人類にとっての脅威というのは、確かに重要な部分ではあるが、ウイルスにはそんな価値観は通用しない。
彼らは、自然の摂理に従って、感染し、増殖し、再び感染することを繰り返すだけである。
生体の仕組を利用しなければ増殖できないウイルスが、有限の生命を有する宿主と渡り合うには、感染し続けなければならない。
宿主の免疫系と折り合いが付かずに、淘汰されてしまうもの(感染の失敗)、うまく折り合いをつけて、宿主の免疫系と折り合いを付け、生体内での増殖のスピードのコントロールにも成功して、安定した生活環を獲得するもの(自然宿主)、免疫系をすり抜けたのはいいが、増殖のコントロールに失敗して、せっかく感染した宿主をぶっ殺してしまうもの(病的な感染:ヒトとエボラの関係)。
それでも、次から次へと感染を拡大させていければ、その種が絶滅するまでは生き残ることが出来る。
しかし、なんで、そんな危ない橋を渡るのかといえば、種を超えて安定した自然宿主を獲得するためには、多少のリスクを冒しても、高速で移動し、集団で生活し、濃厚な接触を繰り返して種の内部での感染を広げ、さらには他の宿主への橋渡しをしてくれる宿主への病的な感染の橋を渡る必要があるのかもしれない。
もちろん、これは結果的にそう見えるというだけの話で、ウイルスに意思があるとか、そういう話ではない。
人類が滅亡する前に、次の自然宿主を見つけられれば、エボラにとって、人類に感染した価値は十分にあったといえるだろう。
まあ、人類にとっては、迷惑この上ない話ではある。
この感染症にどう対応するかということは、本質的にはそういうことだ。
感染症というのは、エボラに限らず、生命の本質的な問題を人類に突きつけている。
他の生命(まあ、ウイルスは生命とは言い難いが)の存在と、無関係ではいられない人類の立ち位置を明確にしてくれる。
食料として食ってしまったり、ペットとして愛玩するだけが、他の種との係わり合いではないのだ。
終末期の感染だけを考えていればいいわけではない。
感染初期から、発症し動けなくなるまでの間に感染を広げるスピード、そして、航空機による飛び火感染のスピードが加わる。
航空機関係の感染の可能性がある、全ての人々の追跡調査を含めた保健対策のスピードが追いつけなくなった時、感染者数は、現在の感染者の400万倍になる。
70億・・・。
そうして、今回のアウトブレイクは終息する。
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