真の困難を知る者の控えめなコメント2019年12月21日 17:17

真の困難を知る者の控えめなコメント
真の困難を知る者の控えめなコメント


大言壮語を吐くことで知られたイーロンマスク(彼が慎み深く控えめという評価は聞かないな・・・)。

人類を火星に連れて行くとか、太陽系は俺様のものだとか(そんなこと、言ってたっけえ?)。

(ボーイングのスターライナー宇宙飛行士カプセルが宇宙ステーションに到達するための主要なテストに失敗)
https://uk.reuters.com/article/uk-space-exploration-boeing-idUKKBN1YO1A3

「ボーイングのライバルへの同情のメッセージの中で、マスク氏はツイッターで「軌道は難しい」と述べ、「着陸と次のミッションへの迅速な回復を願っています」と付け加えた。」

ザマアみろとか、それ見たことかとか、それに類する言葉はない。

クルードラゴンで、同じくISSへの有人飛行を目指しているスペースXも、開発過程で多くの困難に直面してきた。

グインショットウェルによれば、パワードランディングからパラシュート着陸への変更、座席の角度の修正に伴う搭乗人員の減少、パラシュートの重量軽減と展開の不具合への対応、今年4月の地上での打ち上げ打ち切りテストの際の爆発、エトセエトセ・・・。

当初、3年前(2017年)に予定されていた有人打ち上げは、早くても来年2月以降とされている。

ボーイングの方も順風満帆に開発してきたわけではない。

燃料系統のバルブの不良や、パラシュート展開の不具合は同じように起こっている。

基本コンセプトは陸上への着陸だが、いざという時に水上へ着水させるための改良も施されているはずだ(未確認)。

打ち上げシステムについては、アトラスVを有人用に改良するという課題もこなしている。

空力の対応のために、不格好なスカートを付けてみたりしてな。

ISSへの有人宇宙船の開発という点ではライバルだが、同じゴールを目指す同士でもある。

両社は切磋琢磨しながら、融通の利かないNASAの技術者を相手に、開発にしのぎを削ってきたわけだ。

一発で無人飛行を決めたスペースXだからな(まあ、その後に爆発したけど)。

ここは、チクリと嫌みの一つも言いたいところだろうが、そういう反応はない。

NASAとの付き合いも長く、スペースシャトルの軌道船も手掛けたボーイングと異なり、スペースXは新参者だ。

当初の提案も浮世離れしていて、保守的なNASAの技術陣とのやり取りは難しかったに違いないが、それを乗り越えて宇宙船を形にしてきた。

浮沈子的には面白みのない、ただのカプセルになっちまった感じだがな。

まあ、どうでもいいんですが。

その開発過程で、彼らが学んだのは、有人飛行の困難さと、それに伴うシステムとしての複雑さだろう。

アボートシステムは、無人輸送機にはない。

打ち上げロケットの冗長性も、無人機には求められていない。

パラシュートの安全性、冗長性も別物だ。

そして、それら全ては重量の増加の要素をはらみ、それを回避しようとすれば、新たな問題を生み出しかねない。

システムの複雑さは増すばかりだし、それに伴うテストの手間は、等比級数的に増大するに違いないのだ。

NASAは、当初、有人システムの開発は1社だけで行うとしていた。

結果的には、2社が選定され、競争する形になったが、別にどちらかが早く開発できたからと言って、ボーナスが出るわけでもない(たぶん)。

スペースXが、当初からコンサバティブな提案だったら、もっと早く開発できたかもしれないけど、そのプロセスの中で何かが見落とされて大きな事故につながったかもしれない。

同時開発の形はとっていても、おそらく別個のシステムとして独立に進められたんだろう。

途中経過について、逐一フォローしていたわけじゃないけど、例えばアボートテストにしても、スペースXはMaxQ辺りでの動的打ち切りテストを行うが、ボーイングは行わないしな。

「着陸と次のミッションへの迅速な回復を願っています」(再掲)

開発の苦労を知る者として、揶揄するようなコメントは控え、同情と期待を寄せる態度が印象的だ。

ロイターの記事には、気になる記述もある。

「ブリデンスティーンは、金曜日の事故の調査結果に応じて、ボーイングが最初のクルーのスターライナー便に直接進むことを許可する可能性を排除しないと述べた。」

昨日今朝読んだ記事にも、同じ様なことが書かれている。

(ケープカナベラルからの打ち上げ後、ボーイングクルーカプセルが揺れ動く)
https://spaceflightnow.com/2019/12/20/boeing-crew-capsule-falters-after-launch-from-cape-canaveral/

「NASAの商用乗組員プログラムの副マネージャーであるスティーブスティッチは、金曜日、操縦されていないテスト飛行でのドッキングの成功は乗組員の任務を進めるための前提条件ではないと述べました。」

「ボーイングとSpaceXの両方が、ドッキングを実証する無人テスト飛行を行うミッションを提案しました」

「それが要件だとは言いません。持っているのはいいことですが、乗務員のフライトの要件だとは言いません。」

「乗組員のミッションの重要な部分を考えると、打ち上げと着陸です。そのため、そのデータを収集し、この問題の根本原因を理解してから、次のミッションに関連する次のステップを確認する必要があります。」

つまり、無人の打ち上げを行わずに、この大チョンボの後に、いきなり有人飛行させるつもりのようだ(そうなのかあ?)。

今回、テストされなかったISSへの接近やドッキング、離脱や、高高度軌道からの大気圏再突入のマニューバリング、その他、軌道上で行われる予定の数々の試験は、有人飛行(一応、試験飛行ということになってるようですが)において、ぶっつけ本番で行う可能性があるということだ。

マジか!?。

「スターライナーでの飛行を楽しみにしています。安全上の懸念はありません。」(ロイターの記事より)

「私たちが搭乗していたなら、この状況で何をすべきかについて、より多くの選択肢をフライトコントロールチームに与えることができたでしょう」(ロイターの記事より)

そりゃあ、そう言うだろうさ・・・。

俺たちは、実験用のラットと同じじゃないぞと。

厳しい訓練を受けた有能な宇宙飛行士が、アホな技術者のチョンボをカバーして、米国の栄光(ここ、重要です!)を取り戻して見せるぞと。

その能力も、勇気もあるってところを見せないとな。

浮沈子は、現在のNASAなら、やりかねないと考えている。

マジで、やるかも知れない。

イーロンマスクは、おそらく、そこまで読んでいるんだろう。

そして、不可知のリスクが潜在している可能性を排除しきれないことも。

何度も爆発事故を引き起こし、パワードランディングで激突を繰り返してきたスペースXだからな。

そのことは、骨身にしみて分かっている。

「軌道は難しい」(再掲)

今日のこの記事を書きながら、先日書いた記事を思い出した。

(死滅回遊魚か季節来遊魚か、まあ、どっちでもいいんですが)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2019/12/16/9190146

「「日本の宇宙開発も今後、国家としてのビジョンを明確に持つべきだと話した。」
具体的に何を指しているのかは分からないが、端的に言えば、宇宙に行って死んで来いということだな(そうなのかあ?)。
その屍にビビって、ぬくぬくとした日常に埋もれて滅びるか、それを乗り越えて新天地を得るか(確率低いですが)。
リスクを避け、課題を先送りし、真に守るべきものを守れなければ、この星で生きていくことさえできない。
そのために必要ならば、犠牲を厭わない姿勢を見せろと。
腹を括れということだな。」

米国は、この手の状況を、意図せず作り出してしまったのかも知れない。

スターライナーの次回のフライトが、星条旗の元、いきなり有人で行われることがあるとすれば、まさにツボにハマった形になるわけだ。

米国は、英雄を求めている。

B社も、NASAも、トランプも、それを望んでいるに違いない。

何より、ネズミと一緒にされている(!)宇宙飛行士たち自身が切望している(そうなのかあ?)。

開発の遅れは、米国のロシア宇宙船ソユーズへの依存を長引かせる。

財政的な支出だって大きいだろうが、それよりも何よりも、ロシアへの依存の継続こそが象徴的な話だからな。

アトラスVの1段目のエンジンはロシア製だけどな。

まあいい。

それも、そのうち、後継バルカンロケットのBE-4エンジンに置き換えられていくんだろう。

米国の、米国による、米国からの、米国のための有人宇宙飛行を一日も早く達成するために、一定の合理性があれば、いきなり有人飛行へと突き進む可能性は低くない。

動機は十分だしな。

ひょっとすると、来年2月以降に予定されているスペースXより早く行われる可能性さえある。

危険な発想だが、お国柄だからな。

浮沈子は、やりかねないと見ている。

来年は、大統領選挙だしな。

政治の風が吹いている。

生臭い風だ・・・。

血生臭い風にならないように、祈るしかないか・・・。

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