サイドマウントの壁(その2) ― 2014年03月06日 23:21
サイドマウントの壁(その2)
伊豆の某ダイビングプールで、シングルタンクの特訓中。
まあ、その内容の詳細をここに書くわけにはいかない(企業秘密ですな)。
6リッターの細身のステージボトルを1本抱えて、3.5m(一部4.75m)の狭いプールを泳ぐ(というより、漂う)。
この水深でも、浮沈子のガス消費量は激しく、30分弱の練習で、殆んど泳いでいないのにも拘らず100バール(600リットル)のガスを消費している。
2クールの練習の合間には、ガスを足さなければならない。
左側1本なので、泳いでいても何か違和感がある。
それを解消すべく、明日もまた特訓は続く。
で、練習が終わって昼飯を食いながら、シングルタンクのサイドマウントなんて、何のメリットもないじゃん!?、と例によって食い下がってみた(もちろん、畏れながらお伺いするの意)。
その答えが意外だったので、断りもなく書かせていただく(以下は、浮沈子の推測を含めて書いています)。
そもそも、ダブルタンクのサイドマウントというのは、洞窟潜水のコンフィギュレーションをそのまま持ち込んだため、レクリエーショナルダイビングの世界には馴染まない部分がある。
しかし、PADIの中にもそういう話があるというから穏やかではない。
もともと、シングルタンクの運用についても、講習の中には含まれている。
しかし、やはりメインはダブルタンクで、シングルタンクはオマケなのだ。
(サイドマウントで潜るメリットは?)
http://www.padi.co.jp/visitors/program/spcon/smd_2.asp
「③スタイルに多様性がある
サイドマウントは、1本のタンクで行なうことも可能で、レクリエーションダイビングの適応性を広げる素晴らしい方法になります。体力に不安のあるダイバーにとっては、1本のタンクのサイドマウントは、エントリー&エグジットをより容易にしてくれるでしょう。」とある。
このコンフィギュレーションは、世界で使用されているアルミタンクのオペレーションにおいても同じだ(というか、それがベース)。
浮沈子がタイのピピ島での、ダブルタンクのサイドマウントダイビングで感じたように、タンクの受け渡しから水中でのガスマネジメント、遊泳時の抵抗含めて、ダブルタンクの運用はシングルタンク(サイドマウント)に比べて確かに負担だ。
小柄なダイバーに12リッター(9リッターとかでも)のタンク2本をぶら下げて泳ぐことを強要するというのも現実的ではない。
理想は、やはり6リッター2本ということになるが、そんな現地サービスは聞いたことがない(テクニカル対応なら、ステージボトルがゴロゴロしているので問題ないでしょうが)。
そこでシングルタンクという、メリットは(たぶん)全くないが、現実的な解決が出てきたのだと思っていた。
そうじゃないって!?。
現場では、むしろ、シングルタンクをスタンダードにするという話があるという。
ダブルタンクも一応やるけど、実際には、シングルだよね、ってかあ!?。
まあ、PADIとしては、一定の確率でテクニカルダイビングに進んでくれればいいわけで、シングルタンクでサイドマウントに慣れてもらって、テクニカルになってから、本格的にダブルタンクのサイドマウントに取り組んでくれても構わないわけだな。
(サイドマウントの壁)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/03/05/7237874
シングルタンクのサイドマウントにメリットはない!、と断言した浮沈子としては、本当のところどうなの?、というのは気になるところだ。
BCの形状による要素が大きいと思われる、ホリゾンタルスタイルが取りやすいとか、そのために遊泳時の抵抗が軽減され、ガス消費量が若干少ないとか、残圧の確認がしやすいとか、そういったサイドマウントの本質的でない部分を評価する向きがあることは聞いている。
しかし、それは、バックマウントだって実現は可能だ。
コンフィギュレーションを工夫したり(背中に浮力体があるBC)、残圧を電波で飛ばしてダイコンで確認できるようにすれば、よりスマートに解決できる。
エントリー&エキジットも今と同じでいい。
絶対にタンクの重さを感じないで潜りたい!、エントリーの時に、BC着てバックロールするまでの一瞬でもいやだ!、という超ワガママダイバーでもない限り、シングルタンクのサイドマウントにするメリットはないということには、何の変わりもない。
しかし、逆に考えれば、ダブルでなければならないという頚木を外せば、サイドマウントへの障壁をかなり下げることができる。
浮沈子が一番の問題点と考える、エントリー&エキジット時のタンクのハンドリングの問題にしても、シングルタンクならば相当程度解消される可能性がある。
そもそも、PADIが、なぜサイドマウントを推進し出したのか。
これは、テックレックの戦略の一環だと言うのが浮沈子の見立てだ。
無限圧40mの壁をブチ破ることにより、ファシリティの収益向上を図り、ダイビング業界の閉塞感を打破しようという、ダイビング産業の構造転換を狙うドラスティックなアプローチである(なんか、危ない気もするんだが・・・)。
元々、ダイビングに、テクニカルもレクリエーショナルもない。
それは、PADIを初めとする指導団体が、ある意味、収益の最大化を図るために、リスクとコストを考慮して、勝手に決めたルールに過ぎない。
無限圧潜水なんて概念は、純酸素を使用して6mまでのダイビングでもなければ、エビデンスなんてないのだ。
ナイトロックスを使ったって、CCRで潜ったって、高気圧環境下で窒素の体内蓄積をゼロにすることはできない(99パーセントのナイトロックスとかいう突っ込みは、無しにしよう!)。
端的に言って、全てのダイビングは減圧ダイビングなのである。
したがってその意味で、全てのダイビングはテクニカルダイビングであり、レクリエーショナルダイビングの教程は不完全で、その不完全さをシングルタンク(の容量)という器材の制限と、深度制限をかけることで誤魔化している(「適性に管理している」ともいう?)に過ぎない。
まあ、運用を考慮した現実的な対応ということもできる。
それがいいか悪いかは別にして、PADIが打ち出したテックレック戦略は、こうした欺瞞をぶち破るレジャーダイビングの革命なのである。
全てのダイビングは、減圧ダイビングであり、テクニカルダイビングである。
この命題に適切に対応していくために、従来のレジャーダイビングからテクニカルダイビングにスムーズに移行させることが重要で、そのためにサイドマウントというコンフィギュレーションは有効だ。
もちろん、テクニカルダイビングに通じる一連の知識や技能が、レクリエーショナルダイビングに普及してくることも大切なことだ。
しかし、いきなり2本持ち(ダブルタンク)というのは、バックマウントからの移行の障害になる。
だから、1本持ち(シングルタンク)によるアプローチの方が、適切な方法論だというである。
サイドマウントの一部のメリットも取り入れられる。
しかし、まあ、この話を進めていくと、オープンサーキットの世界でしかダイビングのパスが見えなくなる。
バックマウントのCCRは、必然的に埒外ということになるのだ。
あれは、ヘンタイの器材なのだよ、だって、サイドマウントじゃないし・・・。
というわけで、浮沈子のサイドマウントCCRは、未来のメジャーなダイビング器材となることは間違いない(ハズなんだが・・・)。
シングルタンクのバックマウントというレクリエーショナルダイビングから、ダブルタンク+ステージボトルによるテクニカルダイビングというワープが必要な移行を、サイドマウントというヘンタイコンフィギュレーションによって実施するパスが成功するかどうか。
「移行プロセス(浮沈子予想):
1 みんなが1本持ちバックマウント(現状)
<導入期>
2 1のダイバーの一部(まあ、ヘンタイだな)が、1本持ちのサイドマウントに移行。
3 新規ダイバーの一部が(騙されて?)サイドマウントから始める(いつのことやら・・・)。
<普及期>
4 1本持ちや2本持ちのサイドマウントが普通になり、1本持ちのバックマウントと共存する(サイドマウント<バックマウント)。
5 新規のダイバーがサイドマウントでダイビングを始めることが珍しくなくなる(バックマウントと選択的に共存)。
<展開期>
6 テクニカルダイビングへの移行が進むが、バックマウントからの移行の方が多い(この頃、バックマウントのダブルタンクって、まだあるんだろうか)。
7 将来のテクニカルへのパスを考慮し、新規ダイバーを初め積極的にサイドマウントを選択する。
<逆転期>
8 テクニカルへの移行はサイドマウントからが主流。
9 新規ダイバーの多くがサイドマウントを選択。
<完了>
10 サイドマウントがスタンダードになり、バックマウントが、スペシャリティになる。」
現行の、バックマウントのダイビングスタイルがなくなることはない。
限られたシチュエーションでは確かに有利で、ショップの収益にも貢献する。
しかし、市場がサイドマウントを選べば、オセロのように一瞬にして転換することも有り得るのではないか。
サイドマウントの普及があるとすれば、テックレック戦略が功を奏し、ダイビングのコペルニクス的展開が起きて、2人に1人がテクニカルダイバー(もちろん、サイドマウント)になる時であろう。
そこへのパスを描く時、レクリエーショナルレベル(その時に、まだ区別されていれば)のバックマウントというのは、出口のない袋小路のように見えるに違いない(バックマウントのテクニカルダイビングが残っていれば別)。
例によって、浮沈子の予想が当る確率は、宝くじ並みなので悪しからず。
しかし、シングルタンクのサイドマウントが、具体的なメリットの有無に拘わらず、戦略的な意味を持っていることは間違いない。
まあ、100年後はみんなサイドマウントCCRで潜っているとしてもだ・・・。
伊豆の某ダイビングプールで、シングルタンクの特訓中。
まあ、その内容の詳細をここに書くわけにはいかない(企業秘密ですな)。
6リッターの細身のステージボトルを1本抱えて、3.5m(一部4.75m)の狭いプールを泳ぐ(というより、漂う)。
この水深でも、浮沈子のガス消費量は激しく、30分弱の練習で、殆んど泳いでいないのにも拘らず100バール(600リットル)のガスを消費している。
2クールの練習の合間には、ガスを足さなければならない。
左側1本なので、泳いでいても何か違和感がある。
それを解消すべく、明日もまた特訓は続く。
で、練習が終わって昼飯を食いながら、シングルタンクのサイドマウントなんて、何のメリットもないじゃん!?、と例によって食い下がってみた(もちろん、畏れながらお伺いするの意)。
その答えが意外だったので、断りもなく書かせていただく(以下は、浮沈子の推測を含めて書いています)。
そもそも、ダブルタンクのサイドマウントというのは、洞窟潜水のコンフィギュレーションをそのまま持ち込んだため、レクリエーショナルダイビングの世界には馴染まない部分がある。
しかし、PADIの中にもそういう話があるというから穏やかではない。
もともと、シングルタンクの運用についても、講習の中には含まれている。
しかし、やはりメインはダブルタンクで、シングルタンクはオマケなのだ。
(サイドマウントで潜るメリットは?)
http://www.padi.co.jp/visitors/program/spcon/smd_2.asp
「③スタイルに多様性がある
サイドマウントは、1本のタンクで行なうことも可能で、レクリエーションダイビングの適応性を広げる素晴らしい方法になります。体力に不安のあるダイバーにとっては、1本のタンクのサイドマウントは、エントリー&エグジットをより容易にしてくれるでしょう。」とある。
このコンフィギュレーションは、世界で使用されているアルミタンクのオペレーションにおいても同じだ(というか、それがベース)。
浮沈子がタイのピピ島での、ダブルタンクのサイドマウントダイビングで感じたように、タンクの受け渡しから水中でのガスマネジメント、遊泳時の抵抗含めて、ダブルタンクの運用はシングルタンク(サイドマウント)に比べて確かに負担だ。
小柄なダイバーに12リッター(9リッターとかでも)のタンク2本をぶら下げて泳ぐことを強要するというのも現実的ではない。
理想は、やはり6リッター2本ということになるが、そんな現地サービスは聞いたことがない(テクニカル対応なら、ステージボトルがゴロゴロしているので問題ないでしょうが)。
そこでシングルタンクという、メリットは(たぶん)全くないが、現実的な解決が出てきたのだと思っていた。
そうじゃないって!?。
現場では、むしろ、シングルタンクをスタンダードにするという話があるという。
ダブルタンクも一応やるけど、実際には、シングルだよね、ってかあ!?。
まあ、PADIとしては、一定の確率でテクニカルダイビングに進んでくれればいいわけで、シングルタンクでサイドマウントに慣れてもらって、テクニカルになってから、本格的にダブルタンクのサイドマウントに取り組んでくれても構わないわけだな。
(サイドマウントの壁)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2014/03/05/7237874
シングルタンクのサイドマウントにメリットはない!、と断言した浮沈子としては、本当のところどうなの?、というのは気になるところだ。
BCの形状による要素が大きいと思われる、ホリゾンタルスタイルが取りやすいとか、そのために遊泳時の抵抗が軽減され、ガス消費量が若干少ないとか、残圧の確認がしやすいとか、そういったサイドマウントの本質的でない部分を評価する向きがあることは聞いている。
しかし、それは、バックマウントだって実現は可能だ。
コンフィギュレーションを工夫したり(背中に浮力体があるBC)、残圧を電波で飛ばしてダイコンで確認できるようにすれば、よりスマートに解決できる。
エントリー&エキジットも今と同じでいい。
絶対にタンクの重さを感じないで潜りたい!、エントリーの時に、BC着てバックロールするまでの一瞬でもいやだ!、という超ワガママダイバーでもない限り、シングルタンクのサイドマウントにするメリットはないということには、何の変わりもない。
しかし、逆に考えれば、ダブルでなければならないという頚木を外せば、サイドマウントへの障壁をかなり下げることができる。
浮沈子が一番の問題点と考える、エントリー&エキジット時のタンクのハンドリングの問題にしても、シングルタンクならば相当程度解消される可能性がある。
そもそも、PADIが、なぜサイドマウントを推進し出したのか。
これは、テックレックの戦略の一環だと言うのが浮沈子の見立てだ。
無限圧40mの壁をブチ破ることにより、ファシリティの収益向上を図り、ダイビング業界の閉塞感を打破しようという、ダイビング産業の構造転換を狙うドラスティックなアプローチである(なんか、危ない気もするんだが・・・)。
元々、ダイビングに、テクニカルもレクリエーショナルもない。
それは、PADIを初めとする指導団体が、ある意味、収益の最大化を図るために、リスクとコストを考慮して、勝手に決めたルールに過ぎない。
無限圧潜水なんて概念は、純酸素を使用して6mまでのダイビングでもなければ、エビデンスなんてないのだ。
ナイトロックスを使ったって、CCRで潜ったって、高気圧環境下で窒素の体内蓄積をゼロにすることはできない(99パーセントのナイトロックスとかいう突っ込みは、無しにしよう!)。
端的に言って、全てのダイビングは減圧ダイビングなのである。
したがってその意味で、全てのダイビングはテクニカルダイビングであり、レクリエーショナルダイビングの教程は不完全で、その不完全さをシングルタンク(の容量)という器材の制限と、深度制限をかけることで誤魔化している(「適性に管理している」ともいう?)に過ぎない。
まあ、運用を考慮した現実的な対応ということもできる。
それがいいか悪いかは別にして、PADIが打ち出したテックレック戦略は、こうした欺瞞をぶち破るレジャーダイビングの革命なのである。
全てのダイビングは、減圧ダイビングであり、テクニカルダイビングである。
この命題に適切に対応していくために、従来のレジャーダイビングからテクニカルダイビングにスムーズに移行させることが重要で、そのためにサイドマウントというコンフィギュレーションは有効だ。
もちろん、テクニカルダイビングに通じる一連の知識や技能が、レクリエーショナルダイビングに普及してくることも大切なことだ。
しかし、いきなり2本持ち(ダブルタンク)というのは、バックマウントからの移行の障害になる。
だから、1本持ち(シングルタンク)によるアプローチの方が、適切な方法論だというである。
サイドマウントの一部のメリットも取り入れられる。
しかし、まあ、この話を進めていくと、オープンサーキットの世界でしかダイビングのパスが見えなくなる。
バックマウントのCCRは、必然的に埒外ということになるのだ。
あれは、ヘンタイの器材なのだよ、だって、サイドマウントじゃないし・・・。
というわけで、浮沈子のサイドマウントCCRは、未来のメジャーなダイビング器材となることは間違いない(ハズなんだが・・・)。
シングルタンクのバックマウントというレクリエーショナルダイビングから、ダブルタンク+ステージボトルによるテクニカルダイビングというワープが必要な移行を、サイドマウントというヘンタイコンフィギュレーションによって実施するパスが成功するかどうか。
「移行プロセス(浮沈子予想):
1 みんなが1本持ちバックマウント(現状)
<導入期>
2 1のダイバーの一部(まあ、ヘンタイだな)が、1本持ちのサイドマウントに移行。
3 新規ダイバーの一部が(騙されて?)サイドマウントから始める(いつのことやら・・・)。
<普及期>
4 1本持ちや2本持ちのサイドマウントが普通になり、1本持ちのバックマウントと共存する(サイドマウント<バックマウント)。
5 新規のダイバーがサイドマウントでダイビングを始めることが珍しくなくなる(バックマウントと選択的に共存)。
<展開期>
6 テクニカルダイビングへの移行が進むが、バックマウントからの移行の方が多い(この頃、バックマウントのダブルタンクって、まだあるんだろうか)。
7 将来のテクニカルへのパスを考慮し、新規ダイバーを初め積極的にサイドマウントを選択する。
<逆転期>
8 テクニカルへの移行はサイドマウントからが主流。
9 新規ダイバーの多くがサイドマウントを選択。
<完了>
10 サイドマウントがスタンダードになり、バックマウントが、スペシャリティになる。」
現行の、バックマウントのダイビングスタイルがなくなることはない。
限られたシチュエーションでは確かに有利で、ショップの収益にも貢献する。
しかし、市場がサイドマウントを選べば、オセロのように一瞬にして転換することも有り得るのではないか。
サイドマウントの普及があるとすれば、テックレック戦略が功を奏し、ダイビングのコペルニクス的展開が起きて、2人に1人がテクニカルダイバー(もちろん、サイドマウント)になる時であろう。
そこへのパスを描く時、レクリエーショナルレベル(その時に、まだ区別されていれば)のバックマウントというのは、出口のない袋小路のように見えるに違いない(バックマウントのテクニカルダイビングが残っていれば別)。
例によって、浮沈子の予想が当る確率は、宝くじ並みなので悪しからず。
しかし、シングルタンクのサイドマウントが、具体的なメリットの有無に拘わらず、戦略的な意味を持っていることは間違いない。
まあ、100年後はみんなサイドマウントCCRで潜っているとしてもだ・・・。
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