仮想の中の現実と現実の中の仮想2019年12月02日 11:22

仮想の中の現実と現実の中の仮想


FAAがB777Xの限界強度試験を再度行わずに、補強された構造計算だけで合格を出すという話に噛みついてから、いろいろ考えた。

浮沈子は、専門家じゃないし、下手の考え休むに似たりだが、何も考えないよりはいい。

物理の時間には、公式を覚えたり、それを適用したりして計算するけど、それらは現実の世界とは異なる仮想の条件が与えられていて、その世界で行われる架空の話だ。

現実の世界は、様々な要素が絡み、机上の計算とは異なる結果を生む。

部材の特性とか、接合方法とか、様々な要素を織り込んで、部分的な実地試験のデータとすり合わせて補正して、しかし、それでもインテグレートされた状況での実際の挙動は、組み合わせた状態でやってみなければ分からない。

しかし、何でも実地にやればいいかと言えば、そうとも限らない。

例えば、件の強度試験についても、実際に問題になるのは上空1万メートルとかの環境だが、試験はそういう環境では行われない。

実地試験といったって、完全に再現されるわけじゃないし、強度試験のような場合は、試験自体が実際とは異なる状況下で行われる。

ある意味、実地に行われるシミュレーションだ。

だから、実際に掛かる負荷に対して、余剰の負荷を加えて、まあ、このくらいでいいかという安心マージン(つーのかあ?)を得るわけだ。

1.5倍というのが正解なのかは分からない。

現行の777は、1.54倍で主翼が「ドカン!」といったし、787は複合素材製の主翼がぶっ飛んで人体に有害な繊維がまき散らされることを懸念して1.5倍で止めて撤退した(その前のテストでは、翼と胴体の接合部が破壊されたことも)。

777Xは、残念ながら1.48倍で、翼ではなくボディの方がぶっ壊れた。

上空で想定される最大の力は、それよりも少ないが、試験は地上で行われている。

ボーイングが、敢えて機内を加圧して行ったというのは、少しでも上空での実際の環境を再現して、強度試験のリアリティを高めようという、志の高い話なわけだ。

787では飛行中のキャビンの圧力を、通常、高度3000m相当に与圧するところを、1800m相当に高めている。

おそらく、777Xも同じ程度の与圧を行うんだろう。

現行の777よりも高いわけで、ひょっとしたら787の時も、試験の際に加圧していたかもしれない(未確認)。

B社だって、何でもかんでもテキトーにやって、当局をだまくらかしてぼろ儲けしようとしているわけじゃあない。

やるべきことはキッチリやったうえで、頂くものは頂くという健全な態度がないわけではないのだ。

そうでなければ、市場で生き残ることはできない。

737MAXの件は、まず、メーカーサイドでそこんところが疎かになったこと、加えて、最後の砦であるはずの規制当局が機能しなかったこと、その背景に、メーカーと当局の「プロフェッショナルな関係」があったことが問題なわけだ。

浮沈子は、777Xの話の中に、同じ臭いを嗅いでいる。

強度試験をシミュレーターの中で済ますのが悪いとは言えないかもしれない。

実地試験だって、ある意味、シミュレーションなわけで、だからこそ、機内を加圧して行ったボーイングは、その要件を加えることによりメーカーとしての責任を果たそうとしているわけだ。

黙って、最小限度の項目だけで済まして、ちゃっかり合格するよりは、実際の環境に近い状態でぶっ壊れた方がいいに決まっている。

必要な設計変更を行い、補強し、構造計算して確認する。

終局荷重の98パーセントの負荷でぶっ壊れたことが、実地の再試験を行うかどうかの判断にどの程度影響しているのかは知らない。

シミュレーションで十分だというFAAの技術者の話に呆れ返ったが、必ずしもそうとは言えないかもしれない。

得られたデータを外挿して、補強前の状態でボディ側の破壊をシミュレートできれば、ある意味、プログラムのバグは解消されたという根拠になる(未確認)。

そんでもって、それを使って補強後の状態でのシミュレーションで壊れなければ、合格出していいのかもしれない(未確認)。

しかしだな、やっぱ、実地試験をもう一回やるに越したことはない。

もちろん、加圧下で。

実地試験が、実際の運用環境のシミュレーションに過ぎないとしても、これまでの実績から、それをパスした航空機に重大な構造上の問題が発生していないという正当性があるからな。

当局が定める規制値は、当初は1.5倍とか、テキトーな感じで「エイヤッ!」って決めたのかもしれないけど(そんなあ!)、それに基づく実績を積み重ねることによって、現実の有効値としての意味を持つことになる。

1.48倍じゃ、ダメなわけだ。

その検証方法として適正なのが、実地試験なのか、修正済みのシミュレーターなのかは知らない。

規制当局には、愚直に対応してもらいたいもんだな。

数年後、浮沈子が777Xに乗る時に、ヤバくなければそれでいい。

技術や、それを評価する方法は、時代とともに変化する。

変化しては困るのは、それを行う人間の態度の方だろう。

まあ、それも、そのうち、AIとやらが行うようになるんだろう。

人間は、AIが決めたルールの中で、飼われるだけの存在になるのだ。

浮沈子が生きている間に、そんな時代が来るのかもしれない。

人間が培った技術の終焉、人類の文明の終わり。

そうなったら、この手のブログを書き続ける意味もなくなるだろう。

ああ、そうか、ブログだって、AIに書いてもらえばいいわけだ・・・。

(安全率:追加)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E5%85%A8%E7%8E%87

「航空宇宙の安全率:
航空宇宙工学では、安全率が1.15 - 1.25倍と極めて低い。これは安全のための設備や余裕が、そのまま機体重量に直結し、経済性の悪化につながるためである。」

1.5倍というのは、航空機関係としては高めなんだな・・・。

(航空機構造認証における課題とシミュレーション援用による効率化への期待:追加)
http://www.plum.mech.tohoku.ac.jp/jisedai/seminar2/kuraishi.pdf

メーカーが何を考えているかがよく分る資料だな・・・。

(航空機の安全性~翼の強度試験成功!……でもあんまり喜んでいない。なぜ?~:追加)
http://www.aero.jaxa.jp/publication/column/0209.html

「B777の試験では「153%」とアナウンスされた直後に主翼が大音響と共に破壊しました。」

主翼が先に壊れたことと、153パーセントの負荷だったと記載されている記事。

でも、以下の動画では154と言ってるけどな・・・。

(Boeing 777 Wing Test:追加:動画出ます。)
https://www.youtube.com/watch?v=Ai2HmvAXcU0

2分22秒で、ドカンといっている(映像は複数回繰り返されています)。

(エアバス、A350主翼の終極荷重試験を実施:追加)
https://www.aviationwire.jp/archives/31085

「試験では運用で予想される値の1.5倍の荷重が加えられ、A350の翼端が5メートル以上たわんだ。」

A350は、ちゃんと合格している。

(ボーイング787が信じられないほどの翼の屈曲試験に合格:追加)
https://www.wired.com/2010/03/boeing-787-passes-incredible-wing-flex-test/

787も合格!。

(ボーイング787主翼の破壊試験:追加)
http://subal-m45.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/787-d806.html

でも、初めは壊れてしまったということも(翼と胴体との接合部であることに注意!)。

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