強靭な翼がボディを破壊するB777Xの怪2019年12月02日 01:02

強靭な翼がボディを破壊するB777Xの怪
強靭な翼がボディを破壊するB777Xの怪


地上で見る飛行機は、胴体に翼が付いているように見える(目の錯覚とかではなく、実際、そうですけど)。

しかし、飛んでいる時は逆なわけで、翼に胴体がぶら下がっている。

まあ、胴体だって多少は揚力を発生させているかもしれないけど、空の上で飛行機の何百トンもの重量を支えているのは、翼の方だ。

一昨日、777Xの強度試験における破断の記事を書いたが、シアトルタイムズの元記事を読むと、更に気になる記述が出ていた。

(ボーイング777Xの胴体は9月のストレステスト中に劇的に分裂しました:標題から自動翻訳のまま:以下同じ)
https://www.seattletimes.com/business/boeing-aerospace/boeing-777xs-fuselage-split-dramatically-during-september-stress-test/

「ボーイングが1995年にオリジナルの777モデルをテストしたとき、アルミニウムの翼が限界荷重の1.54倍でカチッと音がするまでそれは動き続けました。787では、1.5で停止し、複合翼を再び下に戻すことを選択しました。一対の複合翼を破壊すると、空中に不健康な繊維が放出される可能性があります。そのため、777Xにも複合翼があり、これが今回の計画でした。」

「詳細に詳しい人によると、中央胴体、翼のすぐ後ろ、および着陸装置の車輪が格納されている井戸の下で、極端な圧縮荷重により飛行機のアルミニウムの皮が曲がって破裂しました。」

「写真は、機体の外皮が飛行機の側面の一部を分割し、乗客のドアの周りに伸びる曲がりくねった構造の領域を示しています。」

「事件の翌日、不完全な情報に基づいて、シアトルタイムズと他のメディアは、貨物ドアが吹き飛ばされたと誤って報告しました。」

「外側に蝶番を付けている飛行機の貨物ドアとは異なり、旅客機の乗客用ドアは、内側にのみ開くプラグタイプのドアであり、閉じている穴よりも大きくなっています。しかし、777Xウィングのすぐ後ろにあるその乗客のドアの周りの構造が非常に損傷していたため、圧力がドアを吹き飛ばし、床に落ちました。」

なるほど、貨物室のドアではなく、客室のドアがぶっ壊れてしまったというのは初耳だ。

イメージ的には最悪だな(貨物室のドアだったらいいってもんじゃないけど・・・)。

現行の777は、翼の方が先に壊れた模様だ。

「1995年にオリジナルの777モデルをテストしたとき、アルミニウムの翼が限界荷重の1.54倍でカチッと音がするまでそれは動き続けました。」(再掲)

そう、従来は、1.5倍の負荷を軽くクリアしていたわけで、限界性能を確認するために、壊れるまで負荷を掛け続けたわけだ。

20世紀は、機械の王国の世紀だからな。

もちろん、777は、キャティアと呼ばれるプログラムの中で設計された。

木製(未確認)のモックアップは、主翼など一部しか作られず、ネットワークで世界中を結び、昼夜兼行で設計が行われた。

(THE MAKINGスペシャル版 (1)ボーイング777のできるまで:動画出ます。)
https://www.youtube.com/watch?v=fZuJvvHKIDg&feature=emb_logo

「大型機でありながら、双発エンジン搭載というのがこの機体の最大の特徴です。日本・オーストラリア・イギリスなど世界中の技術が結集。ボーイング777が完成するまでを克明に追います。」

それでも、限界負荷試験は実機で行われ、見事に合格している。

映像では、主翼と胴体の結合部分に弾力性を持たせていることが紹介されている(26分56秒辺りから)。

また、今回破断した主翼後部にかけては、ランディングギアの格納庫があることも分かる(32分23秒辺り)。

「中央胴体、翼のすぐ後ろ、および着陸装置の車輪が格納されている井戸の下で、極端な圧縮荷重により飛行機のアルミニウムの皮が曲がって破裂しました。」(再掲)

787シリーズの負荷試験を行う際には、複合素材を用いた翼の破壊を懸念して、合格ラインに達したら、ぶっ壊れる前に中止するという選択をした。

「787では、1.5で停止し、複合翼を再び下に戻すことを選択しました。一対の複合翼を破壊すると、空中に不健康な繊維が放出される可能性があります。」(再掲)

壊れるまで負荷を掛けたら、787も、ひょっとしたらボディ側が破損した可能性もある。

複合素材を使った主翼の強靭さが、接合部を通じて想定外の力をボディに及ぼしてぶっ壊したわけだ。

「翼が上向き、胴体が下向き:
テストがクライマックスに近づくと、重くされたプーリーがジェットの巨大なカーボン複合材の翼を静止位置から28フィート以上上に曲げました。」

「同時に、胴体は数百万ポンドの力で前端と後端で下向きに曲げられました。また、飛行機の内部は通常のレベルを超えて約10ポンド/平方インチに加圧されました。これは通常、このテストの要件ではありませんが、ボーイングが行うことを選択したものです。」

「翼と胴体にかかる曲げ力の組み合わせにより、細部が敏感であるため匿名性を求めた人によると、胴体の下部中心線、つまりキールに高い圧縮荷重が発生しました。」

機体は負荷に耐えきれずに破断したわけだ。

ドアが吹っ飛んだのは二次的な問題だというけど、機体の開口部に当たるドア周りは、高い強度を持たせて設計しているはずだからな(未確認)。

それが変形するような状況になったというのは、素人目には尋常でないような気がする。

加圧状況が通常以上になっていたことが原因なのか、それともそうではなかったのか。

「連邦航空局(FAA)の安全技術者は、機関からの許可なしに匿名で話しており、パンクは目標負荷の非常に近くで発生したため、失敗とはほとんど見なされないと述べました。」

「FAAのスポークスマンLynn Lunsford氏によると、安全機関は777Xがテスト失敗後の要件をどのように満たすことができるかについて、ボーイングとの会話を続けています。」

「FAAは、製造業者に設計および認証基準を満たすことを要求しています」と、Lunsford氏は述べています。「彼らがそれをどのように選択するかは、彼ら次第です。」

実機による再テストを行うかどうかの選択は、FAAではなくボーイングが決めるというのだ(そうなのか?)。

FAAじゃ、決められないんだろうな(そんなあ!)。

初期の製造に懸念がある787の構造強度については、別途記事にするかも知れない。

A380やA350、A320などの構造部材にも複合材料が使われている。

それらは、今回のような負荷試験を行い、安全性を「実地に」確認している(たぶん:ここ、重要です!)。

今回のように、今まで先にぶっ壊れると考えられていた主翼が無事で、胴体の方がやられるという事態は、想定の範囲外だったに違いない。

「そのため、777Xにも複合翼があり、これが今回の計画でした。」(再掲)

にもかかわらず、規制当局は「失敗とはほとんど見なされない」とか、「どのように選択するかは、彼ら次第」とか寝言をほざいているのだ。

やれやれ・・・。

今回の壊れ方は、事前に行われたであろうシミュレーションとは異なる壊れ方になった。

壊れると予想されていた主翼は無事で、壊れないと思われていたボディがぶっ壊れた。

それだけでも、構造設計やシミュレーションプログラムのバグが懸念される。

当局のテスト要件に含まれないボディの加圧まで行って、自信満々!(そうなのかあ?)。

挙句の果てにドカンといったわけだ。

飛行機のボディは、軽量化を追求してペナペナに作られている。

もちろん、必要な強度は確保されているんだろうが、それ程のマージンがあるわけじゃない。

ザ・メイキングのなかでも、削ったり溶かしたりして、外板自体はミリ単位でしかない。

複合材料を多用した、21世紀の旅客機のボディ構造がどうなっているかは知らない(未調査)。

(意外と知らない、最新鋭旅客機のすごい技術)
https://toyokeizai.net/articles/-/81044?page=3

「私たちも最初は不安で、どんな壊れ方をするのか確かめるために、材料を用意してたたいて壊してみようという話になりました。ところが、ハンマーでたたいて壊そうとしても、自分の手が痛くなるばかりで一向に壊れない。」

手で持ったハンマーでたたいて壊れないから大丈夫なのかあ?。

「それで『強度も大丈夫、これなら心配ない』と全員で納得した経緯があります」

浮沈子は、絶対納得できないけどな。

まあ、どうでもいいんですが。

仮にだ、B社の素晴らしい(たぶん)シミュレーションプログラムとか構造計算プログラムでボディ側をガッチリ補強したらどうなるのか。

今度は、その強靭なボディが、主翼を破壊してしまうかも知れないじゃないの(そんなあ!)。

そんでもって、今度は主翼を補強して・・・。

複合材料を使った主翼とボディの接続部分が心配になって来るな。

初めに書いたように、アルミ合金だろうが複合材料だろうが、飛行機は翼が飛んでいるのだ。

ボディは、それにぶら下がっている。

その接合部の強度は、安全の要であり、飛行機の生命線だ。

B777Xが就航し、初期トラブルが出尽くして落ち着くまで、浮沈子的には様子を見たいところだ。

現行の777が出た頃、業界内部ではトリプルセブンならぬトラブルセブンと言われていたようだしな。

人の作りしものに完全なものなどない。

予期せぬことが起きるのではないかと、常に用心し、謙虚に向かい合い、保守的に運用するに限る。

物理の神様への貢ぎ物として差し出されてはたまらんからな・・・。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
kfujitoの徒然の筆者のペンネームは、
「○○子」です。
○○を記入してください。

コメント:

トラックバック