宇宙船の価格は適性か ― 2021年04月26日 08:52
宇宙船の価格は適性か
(星出さん搭乗のクルードラゴン運用2号機は何がすごい?注目ポイントを解説)
https://sorae.info/column/20210424-crew2.html
良くまとまっているいい記事だが、気になるところがあったので突っ込んでみたい(おまいに言われたくない!)。
「これまで有人宇宙機で再使用した機体を用いたのはアメリカのスペースシャトルが唯一でしたが、二例目の成功となります。」
「民間が開発・運用する宇宙船での再使用は今回が初めてです。」
少なくともバートルータンが作った弾道ロケット(スペースシップワン)は、既に宇宙空間に進出した民間の再使用宇宙船といえる。
(スペースシップワン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%AF%E3%83%B3
「2004年6月に高度約100 kmの宇宙空間に向けた弾道飛行を成功させ、世界で初めての民間企業による有人宇宙飛行を実現した。」
「さらに、2004年9月29日、10月4日には、民間宇宙船開発に対する賞金制度「Ansari X Prize」の受賞条件を最も早く達成し、賞金1000万ドルを同社は獲得した。なお、受賞条件は以下の通り。」
「・・・
・2週間以内に同一機体を再使用し、宇宙空間に再度到達する」
ファルコン9は、この条件さえクリアしていないしな。
しかも、クルードラゴンの再使用有人宇宙船(の有人初飛行)が実現する16年前とか17年前ということになる(デモ2は2020年5月30日打ち上げ、再使用ロケットによる飛行は今月23日だからな)。
(Crew Dragon Demo-2)
https://ja.wikipedia.org/wiki/Crew_Dragon_Demo-2
「打ち上げ日:2020年5月30日19時22分45秒 (UTC)」
弾道飛行するのは宇宙船じゃないということなら、アランシェパードは浮かばれないな。
(アラン・シェパード)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%89
「「マーキュリー3号(フリーダム7)」でアメリカ人として初めて宇宙へ出た。ただし、その飛行は15分28秒の弾道飛行であった。」
「1998年7月21日に74歳で没した。」
まあ、どうでもいいんですが。
「カプセル再使用はこれからの実績で変わってくるところです。現在のところ、1人あたり5,500万ドル(57億7,500万円)という数字が報じられています。単純に4倍すれば2億2,000万ドル(231億円)となりますが、シャトルに比べれば非常に安価だと言えるでしょう。」
クルードラゴンは7人乗りで、貨物も大して積めない(有人での貨物輸送能力は未公表?:カーゴドラゴンは3.3トン)。
ハッブル宇宙望遠鏡やISSの部品(日本のきぼうモジュールなども)を運んだスペースシャトル(LEOへの貨物輸送能力は24.4トン)と比較するのは、5ナンバーのワンボックス乗用車と大型トラックを比較するようなもんだな(自動車としての価格差は10倍くらいか)。
「事故後は追加対策が必要になったため約10億ドル(1,050億円)に膨らんでしまったのです。」(スペースシャトルの最高時の価格)
イーロンマスクは、1.61億ドルでクルードラゴンを打ち上げると言っていたから、必ずしも安いとは言えないだろう(10倍すると16.1億ドルだからな)。
ソユーズ宇宙船との比較もある。
「ソユーズを使用した場合の費用は宇宙飛行士1人につき8600万ドル(約90億3,000万円)という実績が明らかになっています。」
製造コストと、販売価格を比較しても仕方ない。
スペースシャトルの引退後は、他に代替手段がないわけで、ロシアが吹っ掛けてきたことは間違いないからな(以前は、半分程度の価格だったと言われている:後述)。
まあ、3人しか乗れない軽自動車のようなソユーズ宇宙船と、7人乗りのクルードラゴンの比較で言えば、順当な価格といえなくもない。
ついでに、記事には登場しないが、問題のスターライナーの価格も挙げておく。
(NASAのレポートによると、ボーイングの座席価格はSpaceXより60%高い)
https://arstechnica.com/science/2019/11/nasa-report-finds-boeing-seat-prices-are-60-higher-than-spacex/
「政府が初めてシートあたりの価格を発表しました。スターライナーが9,000万ドル、ドラゴンが5,500万ドルです。」
高い固体燃料ブースターを2本も使い、再使用しないアトラスV N22で、この価格に収めているというのは驚きですらある。
エリックバーガー(や、NASAの監察官)は問題視しているようだが、浮沈子的には、B社は決して吹っ掛けてはいない(記事にある通り、持ち出し=B社としての投資もあるだろうしな)。
記事には、ソユーズ宇宙船のシート当たりの販売価格についても言及がある。
「全体として、NASAは2006年から2020年までに完了および計画された70のミッションに対して、ロシアに1席あたりの平均コスト5,540万ドルを支払いました。」
「2017年以来、NASAは平均7,970万ドルを支払いました。」
それ以前の価格は、4000万ドル以下かも知れない(未確認)。
全体として見れば、S社が破格の値段を出しているわけではないのだ(むしろ、再使用ロケットを使いながら、使い捨てよりも高いということになるかも:シャトルほどじゃないけど)。
また、スペースシャトルが打ち上げ後2分くらいの間に緊急脱出手段を持たなかったのは、それだけ信頼性が高いと評価されていたからだ(当初は、射出座席や乗員モジュールの切り離しも検討されたようです)。
結果的には、固体燃料ロケットのチョンボでチャレンジャーが吹っ飛んだけどな。
浮沈子的には、耐熱タイルこそがシャトルを退役に追い込んだ原因だと見ている(打ち上げ時などにおける損傷を回避できなかったからな)。
コロンビア事故は、起こるべくして起こり、運用を続けていれば再発の恐れがあったということになる。
クルードラゴンを含む他の全ての宇宙船が、打ち上げ時の緊急脱出システムを持っている。
ソユーズ宇宙船にも、スターライナーにもある。
特別の話じゃない(有人宇宙船で持たなかったのはスペースシャトルだけかも:未確認:ソ連のブランにはあったのかな)。
(ブラン (オービタ))
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3_(%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%BF)
「緊急脱出システムを持たないスペースシャトルと違い、ブランには搭乗人員全員分の射出座席を搭載し、また主エンジンを搭載していないためにロケットの不調の際にはエネルギアを切り離し、姿勢制御エンジンなどを用いて自力で滑走路に帰還することもできるようになっていた。」
これも、まあ、どうでもいいんですが。
また、カプセルの再使用は、オリオン宇宙船(未就役)、スターライナー(開発中)でも行われる予定だ。
クルードラゴンの運用で、唯一特記すべき事項は、1段目の再使用ということになるけど、これは有人宇宙船とは直接関係ない話なのではないかあ?(通常の人工衛星打ち上げやら、カーゴドラゴンでもそうだしな)。
余禄に過ぎない(そうなのかあ?)。
スペースシャトルと同じで、完全再使用じゃないしな(2段目は使い捨て:宇宙船としても、非与圧区画(再突入時の耐熱パネル保護を兼ねる)であるトランク部分は使い捨てだ)。
まあ、ソラエの記事は、ヨイショ記事だから仕方ないけど、でっち上げとまではいわなくても、かなり無理している気がする。
浮沈子的には、クルードラゴンは想定より高いし、性能を考えればスペースシャトルは高くないし、スターライナーは逆に割安に感じる。
SLSやオリオン宇宙船だって、同じ手順で同じようなものを作ろうとすれば、似たようなコストになるだろう(未確認)。
ソユーズ宇宙船(有人)は、もう、1000回くらい飛んでるからな(未確認)。
開発コストは知らないけど、とっくに元は取っているに違いない。
製造コストなんて、100万円くらいかもしれないし(そんなあ!?)。
まあいい。
135回しか飛ばなかったスペースシャトル、有人では3回しか飛んでいないクルードラゴン、人を乗せては一度も飛んでいないスターライナーを、同じ土俵で比較するというのも無理があるかも知れない(まともに比べられるのは、クルードラゴンとスターライナーだけだ)。
時代も、半世紀以上違うからな。
宇宙船の価格は、その時代においては常に適正なわけだ。
100年も経てば、シート当たりのコストは1万円(90ドルくらい)を切っているに違いない(テキトーです)。
5500万ドルだろうが、9000万ドルだろうが、全部ひっくるめてベラボーに高かったということになるだけの話だ。
100年後、この記事を読めば、浮沈子が言わんとしていることは自ずと理解されるだろう・・・。
(星出さん搭乗のクルードラゴン運用2号機は何がすごい?注目ポイントを解説)
https://sorae.info/column/20210424-crew2.html
良くまとまっているいい記事だが、気になるところがあったので突っ込んでみたい(おまいに言われたくない!)。
「これまで有人宇宙機で再使用した機体を用いたのはアメリカのスペースシャトルが唯一でしたが、二例目の成功となります。」
「民間が開発・運用する宇宙船での再使用は今回が初めてです。」
少なくともバートルータンが作った弾道ロケット(スペースシップワン)は、既に宇宙空間に進出した民間の再使用宇宙船といえる。
(スペースシップワン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%B7%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%AF%E3%83%B3
「2004年6月に高度約100 kmの宇宙空間に向けた弾道飛行を成功させ、世界で初めての民間企業による有人宇宙飛行を実現した。」
「さらに、2004年9月29日、10月4日には、民間宇宙船開発に対する賞金制度「Ansari X Prize」の受賞条件を最も早く達成し、賞金1000万ドルを同社は獲得した。なお、受賞条件は以下の通り。」
「・・・
・2週間以内に同一機体を再使用し、宇宙空間に再度到達する」
ファルコン9は、この条件さえクリアしていないしな。
しかも、クルードラゴンの再使用有人宇宙船(の有人初飛行)が実現する16年前とか17年前ということになる(デモ2は2020年5月30日打ち上げ、再使用ロケットによる飛行は今月23日だからな)。
(Crew Dragon Demo-2)
https://ja.wikipedia.org/wiki/Crew_Dragon_Demo-2
「打ち上げ日:2020年5月30日19時22分45秒 (UTC)」
弾道飛行するのは宇宙船じゃないということなら、アランシェパードは浮かばれないな。
(アラン・シェパード)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%89
「「マーキュリー3号(フリーダム7)」でアメリカ人として初めて宇宙へ出た。ただし、その飛行は15分28秒の弾道飛行であった。」
「1998年7月21日に74歳で没した。」
まあ、どうでもいいんですが。
「カプセル再使用はこれからの実績で変わってくるところです。現在のところ、1人あたり5,500万ドル(57億7,500万円)という数字が報じられています。単純に4倍すれば2億2,000万ドル(231億円)となりますが、シャトルに比べれば非常に安価だと言えるでしょう。」
クルードラゴンは7人乗りで、貨物も大して積めない(有人での貨物輸送能力は未公表?:カーゴドラゴンは3.3トン)。
ハッブル宇宙望遠鏡やISSの部品(日本のきぼうモジュールなども)を運んだスペースシャトル(LEOへの貨物輸送能力は24.4トン)と比較するのは、5ナンバーのワンボックス乗用車と大型トラックを比較するようなもんだな(自動車としての価格差は10倍くらいか)。
「事故後は追加対策が必要になったため約10億ドル(1,050億円)に膨らんでしまったのです。」(スペースシャトルの最高時の価格)
イーロンマスクは、1.61億ドルでクルードラゴンを打ち上げると言っていたから、必ずしも安いとは言えないだろう(10倍すると16.1億ドルだからな)。
ソユーズ宇宙船との比較もある。
「ソユーズを使用した場合の費用は宇宙飛行士1人につき8600万ドル(約90億3,000万円)という実績が明らかになっています。」
製造コストと、販売価格を比較しても仕方ない。
スペースシャトルの引退後は、他に代替手段がないわけで、ロシアが吹っ掛けてきたことは間違いないからな(以前は、半分程度の価格だったと言われている:後述)。
まあ、3人しか乗れない軽自動車のようなソユーズ宇宙船と、7人乗りのクルードラゴンの比較で言えば、順当な価格といえなくもない。
ついでに、記事には登場しないが、問題のスターライナーの価格も挙げておく。
(NASAのレポートによると、ボーイングの座席価格はSpaceXより60%高い)
https://arstechnica.com/science/2019/11/nasa-report-finds-boeing-seat-prices-are-60-higher-than-spacex/
「政府が初めてシートあたりの価格を発表しました。スターライナーが9,000万ドル、ドラゴンが5,500万ドルです。」
高い固体燃料ブースターを2本も使い、再使用しないアトラスV N22で、この価格に収めているというのは驚きですらある。
エリックバーガー(や、NASAの監察官)は問題視しているようだが、浮沈子的には、B社は決して吹っ掛けてはいない(記事にある通り、持ち出し=B社としての投資もあるだろうしな)。
記事には、ソユーズ宇宙船のシート当たりの販売価格についても言及がある。
「全体として、NASAは2006年から2020年までに完了および計画された70のミッションに対して、ロシアに1席あたりの平均コスト5,540万ドルを支払いました。」
「2017年以来、NASAは平均7,970万ドルを支払いました。」
それ以前の価格は、4000万ドル以下かも知れない(未確認)。
全体として見れば、S社が破格の値段を出しているわけではないのだ(むしろ、再使用ロケットを使いながら、使い捨てよりも高いということになるかも:シャトルほどじゃないけど)。
また、スペースシャトルが打ち上げ後2分くらいの間に緊急脱出手段を持たなかったのは、それだけ信頼性が高いと評価されていたからだ(当初は、射出座席や乗員モジュールの切り離しも検討されたようです)。
結果的には、固体燃料ロケットのチョンボでチャレンジャーが吹っ飛んだけどな。
浮沈子的には、耐熱タイルこそがシャトルを退役に追い込んだ原因だと見ている(打ち上げ時などにおける損傷を回避できなかったからな)。
コロンビア事故は、起こるべくして起こり、運用を続けていれば再発の恐れがあったということになる。
クルードラゴンを含む他の全ての宇宙船が、打ち上げ時の緊急脱出システムを持っている。
ソユーズ宇宙船にも、スターライナーにもある。
特別の話じゃない(有人宇宙船で持たなかったのはスペースシャトルだけかも:未確認:ソ連のブランにはあったのかな)。
(ブラン (オービタ))
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3_(%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%BF)
「緊急脱出システムを持たないスペースシャトルと違い、ブランには搭乗人員全員分の射出座席を搭載し、また主エンジンを搭載していないためにロケットの不調の際にはエネルギアを切り離し、姿勢制御エンジンなどを用いて自力で滑走路に帰還することもできるようになっていた。」
これも、まあ、どうでもいいんですが。
また、カプセルの再使用は、オリオン宇宙船(未就役)、スターライナー(開発中)でも行われる予定だ。
クルードラゴンの運用で、唯一特記すべき事項は、1段目の再使用ということになるけど、これは有人宇宙船とは直接関係ない話なのではないかあ?(通常の人工衛星打ち上げやら、カーゴドラゴンでもそうだしな)。
余禄に過ぎない(そうなのかあ?)。
スペースシャトルと同じで、完全再使用じゃないしな(2段目は使い捨て:宇宙船としても、非与圧区画(再突入時の耐熱パネル保護を兼ねる)であるトランク部分は使い捨てだ)。
まあ、ソラエの記事は、ヨイショ記事だから仕方ないけど、でっち上げとまではいわなくても、かなり無理している気がする。
浮沈子的には、クルードラゴンは想定より高いし、性能を考えればスペースシャトルは高くないし、スターライナーは逆に割安に感じる。
SLSやオリオン宇宙船だって、同じ手順で同じようなものを作ろうとすれば、似たようなコストになるだろう(未確認)。
ソユーズ宇宙船(有人)は、もう、1000回くらい飛んでるからな(未確認)。
開発コストは知らないけど、とっくに元は取っているに違いない。
製造コストなんて、100万円くらいかもしれないし(そんなあ!?)。
まあいい。
135回しか飛ばなかったスペースシャトル、有人では3回しか飛んでいないクルードラゴン、人を乗せては一度も飛んでいないスターライナーを、同じ土俵で比較するというのも無理があるかも知れない(まともに比べられるのは、クルードラゴンとスターライナーだけだ)。
時代も、半世紀以上違うからな。
宇宙船の価格は、その時代においては常に適正なわけだ。
100年も経てば、シート当たりのコストは1万円(90ドルくらい)を切っているに違いない(テキトーです)。
5500万ドルだろうが、9000万ドルだろうが、全部ひっくるめてベラボーに高かったということになるだけの話だ。
100年後、この記事を読めば、浮沈子が言わんとしていることは自ずと理解されるだろう・・・。
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