直列の怪2014年01月19日 19:45

直列の怪


浮沈子が、ブログネタを漁る漁場の一つが、最近重くなって見づらくなった「レスポンス」。

その記事を引用する。

(ボーイング787のバッテリートラブル、太田国交相「安全運航に支障なし」)
http://response.jp/article/2014/01/17/215208.html

「太田国交相は「8つのバッテリーセルのうち、1つのセルで安全弁の作動が確認された。発熱したのは1つに限定されている可能性が高い。バッテリーの機能は一定程度維持できていたものと考えており、万一運航中に発生した場合でも必要な電源を供給できる」と述べた。」

てっきり、朝日の誤報に違いないと思っていた浮沈子は、深く反省しなければならない。

突込みが甘かったのは、浮沈子のほうであった。

タレスが供給するバッテリーシステムでは、直列接続のうち、1個のセルがコケテも、回路に電力を供給可能になっているらしい。

ここまで、具体的に発言したとなると、その辺の情報も取得している可能性がある。

誰に頼まれたわけでもなく、勝手に書いているこのブログは、しかし、公衆の面前で罵倒したことになり、名誉毀損の謗りは免れまい。

また、別の記事では、米国から調査に来るのはFAAではなく、米国運輸安全委員会(NTSB)であった。

(米国運輸安全委員会、JALの787メインバッテリー不具合を調査するため調査官を派遣)
http://response.jp/article/2014/01/17/215149.html

度重なる失態に、浮沈子は顔から火が出そうだ(ゴジラー!)。

ちょっと、言い訳をしたい。

NTSBをFAAと取り違えたのには訳がある。

(B787トラブルで米当局が日本に調査官派遣)
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140116/fnc14011611190009-n1.htm

引用した記事の題名には、「米当局」とある。

内容を読めば、NTSBと明記されているのだが、NTSBは、発火の原因調査を行い、FAAに勧告するのが仕事のお役所で、米運輸省とは独立した存在である。

ある意味では、当局とはいえない。

もちろん、こういう真っ当な組織は、我が国にはない。

業界と政治家と官僚の癒着を摘発し、市民の安全を守るために税金を使ってくれるなんて、夢のような話だ!。

浮沈子は、日本を大東亜戦争に追い込み、開戦時には、真珠湾攻撃を事前に知りながら米太平洋艦隊に通知もせず、味方の軍隊に大損害を与え、終戦時には、敗戦が決定的な状況にある我が国に、わざわざタイプを変えた原爆を2発も落として人体実験を行った米国を、決して尊敬したり羨んだりする気にはなれない。

屈辱に塗れた我が国の国民として、死ぬまで切歯扼腕するのみである。

しかしながら、この国の歴史の中には、人類がこの国を作っていなかったら、決して生まれなかったであろうと思われるような、素晴らしい話がいくらもある。

NTSBは、その一つであり、浮沈子が知る限り、世界のどこを見渡しても、これほどの陣容と独立した権限を持って、規制当局に対峙するチェック組織は存在しない。

議会とか、財務監査組織なんて、実質的には機能していない。

FAAが動かずに、NTSBが動いたというのは、だから、米国としては当然かもしれないし、我が国の航空局(米国のFAAに相当)が調査官を受け入れたことも、なかなか見上げた話である、(断れなかっただけかあ?)。

NTSBに対応する部局がないから(運輸安全委員会は?)、というのが実際の話ではある(たぶん)。

NTSBが、本来なら、まず窓口とすべき運輸安全委員会を飛ばして航空局に調査官を送り込むこと自体が、運輸安全委員会が機能していないことの象徴だなあ。

まあいい。

謎の直列のほうは、どうなんだろうか?。

(直列回路と並列回路)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B4%E5%88%97%E5%9B%9E%E8%B7%AF%E3%81%A8%E4%B8%A6%E5%88%97%E5%9B%9E%E8%B7%AF

まずは、基礎からおさらい。

「2つの端子を持つ部品を数珠繋ぎに接続した回路を直列回路(series circuit)・・・」

「直列回路では、電流の経路が1つであり、同じ電流が各部品を順に流れる。」

「直列回路は、カスケード結合(cascade-coupled)またはデイジーチェイン結合(daisychain-coupled)とも呼ばれる。直列回路に入った電流は回路内の全部品を流れることになる。つまり、直列回路上の各部品を流れる電流は同じである。」

(B787型 バッテリー“熱暴走”)
http://www9.nhk.or.jp/nw9/marugoto/2013/02/0205.html

「8つの電池が直列で繋がっていましたが、その全てが黒焦げの状態でした。
運輸安全委員会は、3番目の電池の損傷が特に大きいとしています。」

今回の事故では、バッテリー(8個のセルを直列繋ぎにした、組電池)の安全弁の一つから、液体が漏れていた、とある。

(全日空787のバッテリーでも熱暴走 運輸安全委)
http://www.aviationwire.jp/archives/15327

この記事にある画像を見る限り、どうみても、普通の直列接続で、焼損したセルをバイパスする仕掛けがあるようには見えない。

するとなにかあ、電解液がセルの外だけでなく、8つのセルを納めたエンクロージャーの外にまで溢れ出した状態であっても、ユアサの供給するセルは、電流を流し続けることが出来るのかあ?。

(リチウムイオン・バッテリーとは)
http://www.jal.com/ja/flight/boeing787/battery/lithium_ion_battery01.html

ほかならぬJALのページだが、ここに出て来る「リチウムイオン・バッテリーの構造」は、小学生が理解するのは、ちと無理で、中学生にならないと「イオン」とか「電解液」といわれても、はあ?、ということになるが、幸い、我が国は中学校までは義務教育なので、大多数の国民には理解されることが期待されている(工学修士の大臣も、きっと、お勉強したのではないでしょうか?)。

「従来の電池と同じように、リチウムイオン・バッテリーは、プラス(+)極、マイナス(-)極、電解液(電解質)の3つの要素から構成されています。
787型機に使用されているリチウムイオン・バッテリーには、プラス(+)極: アルミ+リチウムを含む化合物、マイナス(-)極: 銅+炭素系材料、電解液(電解質): リチウムイオン(Li+)が溶け込んだ有機溶剤が使用されています。」

「こうして作られた電池を「セル」と呼んでいます。航空機や自動車、住宅用蓄電装置に使用する際は、このセルを数個~数百個直列につなぎ、高電圧が得られるようにしています。このセルが過熱すると、内部の電解液が蒸気(煙)となりセルは壊れます。また、この時に電解液が蒸気(煙)となり、セルの外に噴出します。」

電子(正確には正孔)の流れが電流であり、その移動を可能にしている理由は、リチウムイオンがプラス極から電子を貰うからである。

したがって、電解液が溢れ出てリチウムイオンが消滅してしまえば、電流は1mAたりとも流れることはない。

我が国の国土交通大臣は、ちっとは電解液が残っているはずだから、「全く流れなくなってバッテリーの機能が失われ、80項目の改修をしようが何をしようが、787に搭載されるバッテリーはクズ以外の何物でもなく、こんなものを非常電源として搭載されている航空機の運行を認めているオレは、大馬鹿野郎だ!」とは言えなかったのかも知れない。

とすれば、かの1000パーセント男ラフード運輸長官と同じ、門外漢の政治的、場当たり的、国民を小学生「未満」だと馬鹿にしている的、部下の技術官僚が「殿!、ご乱心!?」と焦る的、ついでにラフードさんみたいに辞めちまえばあ?、的発言に違いない。

32ボルト(1セル4V×8個)で150アンペアの電流を流すことが出来るB787に搭載されるバッテリーは、従来のニッケルカドミウムバッテリーとは一線を画す21世紀のバッテリーとして華麗なるデビューを果たし、追随するA350や開発が始まったB777Xにも、軒並み採用されていくはずだった。

(787/777バッテリー主要諸元)
http://www.cordia.jp/blog/wp-content/uploads/2013/02/795316b92fc766b0181f6fef074f03fa.jpg

この夢のバッテリーは、少なくとも今のところ、「悪夢のバッテリー」となってしまっている。

ニッカド電池で12.5倍の電力量を賄うために必要なバッテリーの重量を単純に計算すると、606.25kgになる。

少なくとも、重量的には2セットで約1.2トンで、致命的なものではないかもしれない。

体積がでかくなるといっても、縦横高さが2.32倍(777のニッカドベース)になるだけだ。

再設計し、新たな認可を得ることだけが、将来への禍根を残さない唯一の方法である。

まだ、100機程度の引渡し数なので、回収も現実的な問題だ。

もちろん、規制当局も、その間B787を地上に引き摺り下ろすことはないだろう。

当初に加えて、再飛行までも許可したのだから。

NTSBとFAAを取り違えたことは、慙愧の至りだが、直列発言を誤報呼ばわりした件については、もう少し、事実関係が明らかになってから、このヨタブログの扱いを検討することにしよう。

中学生なら知っているハズの電池の知識があれば、おかしな発言であると容易に気付くハズである。

文部科学大臣から苦言が呈されたかどうか、浮沈子は知らない・・・。

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