事業者の提案2017年01月26日 19:44

事業者の提案


怪しい衛星「きらめき2号機」。

三菱電機の衛星バスを使って、NECが開発するという異例の展開。

(DS2000)
https://ja.wikipedia.org/wiki/DS2000

「DS2000とは三菱電機が製造する静止衛星用の標準衛星プラットフォーム(標準衛星バス)である。」

「主に商用静止通信衛星や商用静止放送衛星の受注を想定しているが、気象観測衛星等にも使用可能である。他の静止衛星用標準衛星プラットフォームと比較し、リチウムイオン二次電池を標準搭載する等、電源系機器の小型化が図られている。」

「仕様:
・発生電力 : 最大 12 kW
・打ち上げ時質量 : 最大 5.8 t
・トランスポンダ : 60 (ノミナル)
・衛星寿命 : 15年
・太陽電池 : 高効率シリコン太陽電池またはマルチジャンクションGaAs太陽電池
・二次電池 : ニッケル・水素蓄電池またはリチウムイオン二次電池
・電源バス : 100V安定化電源
・三軸姿勢安定方式 : ゼロモーメンタム方式またはバイアスモーメンタム方式
・リアクションホイール搭載数 : 4台
・構造 : CFRP製セントラルシリンダー方式
・熱制御方式 : ヒートパイプ
・アポジキックエンジン : R-4D × 1
・南北制御用イオンエンジン(オプション) : XIES × 2 × 2系統」

「採用実績:
名称:打ち上げ機:打ち上げ日時(UTC):乾燥重量:打上時質量(Wet重量):発生電力:備考
・こだま(DRTS):H-IIA2024:2002年9月18日:1,300kg:2.8t:2.1kW
・ひまわり7号(MTSAT-2):H-IIA2024:2006年2月18日04:55:1,700kg:4.65t:3.8kW
・きく8号(ETS-VIII):H-IIA204:2006年12月18日04:32:2,800kg:5.8t:7.5kW:原型機だが、H-IIA204の開発遅延によって打ち上げがひまわり7号より後となった。
・SUPERBIRD C2(SUPERBIRD 7):アリアン5 ECA:2008年8月14日20:44:2,000kg:4,820kg:7.2kW:DS2000を採用した初の商業衛星
・みちびき(QZS-1):H-IIA202:2010年9月11日11:17:1,700kg:4,100kg:5.3kW
ST-2:アリアン5 ECA:2011年5月20日20:38:1,900kg:5,090kg:11kW:シンガポール/台湾の会社から受注
・Turksat 4A:プロトン-M:2014年2月14日21:09:-:4,850kg:-:トルコの会社から受注
・ひまわり8号:H-IIA202:2014年10月7日05:16:1,300kg:約3,500kg:約2.6kW
・Turksat 4B:プロトンM:2015年10月16日20:40:トルコの会社から受注
・SUPERBIRD-8(きらめき1号):アリアン5 ECA:2015年第4四半期(当時の予定?)→2018年(予定)、製造管理:NEC、防衛省次期Xバンド衛星通信整備事業のうちの1基
・ひまわり9号:H-IIA:2016年11月2日06:20:1,300kg:約3,500kg:約2.6kW
・Es'hail-2:ファルコン9:2016年末(予定):-:5,300kg:-:カタールの国営衛星通信事業者Es'hailSat(エスヘイルサット)社から受注」

不人気と言いつつ、結構使われている感じだ。

衛星寿命が近づく中、2機のXバンド防衛通信衛星を整備する際、当時の三菱電機は防衛省に対する過大請求が問題になり、指名停止を食らっていた。

(三菱電機:不祥事・事件:日本政府(国)に対しての過大請求参照)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E8%8F%B1%E9%9B%BB%E6%A9%9F#.E4.B8.8D.E7.A5.A5.E4.BA.8B.E3.83.BB.E4.BA.8B.E4.BB.B6

「防衛省は三菱電機が電子システム事業がミサイル設計や衛星関連などの契約料金を水増し請求したことに関して、2012年1月27日に指名停止処分とした」

PFIの委員会でも、そのことが取り上げられている。

(Xバンド衛星通信中継機能等の整備・運営事業 有識者等委員会 議事録)
http://www.mod.go.jp/j/procurement/xband/pdf/gijiroku_20130311.pdf

「委員:
三菱電機が指名停止措置となったと聞いているが、今後の事業の進め方についてどのような影響があるのか報告してもらいたい。」(第2回:以下、同じ)

「三菱電機は本事業における有力な潜在的応募者の一つと認識していたが、一次審査の締切日までに指名停止措置が解除されない場合、本事業への参画が難しくなり、本事業への応募者が1グループになる可能性も排除できないと考える。」

実際、1グループだけの応募となり、三菱電機は衛星バスの提供をNECの下で行うこととなった。

下請け承認については、第5回、第6回にも記載がある。

「委員:指名停止期間中の企業であっても下請承認の申請があれば、承認する場合があるとの事であるが、それは法令上問題がないのか。」(第5回:以下、同じ)

「事務局:指名停止期間中であっても、省内の基準に従い、真にやむを得ない事情があると契約担当官が判断すれば、下請契約を承認する場合もあり得る。」

「事務局より、指名停止企業への下請負に関する資料を説明。」(第6回)

まあいい。

3号機の調達の際には、大手を振って三菱電機が名乗りを上げることになるんだろう。

期待しよう!(そうなのかあ?)。

第5回の中には、国産ロケットの使用についての記述も出てくる。

「委員:1号機・2号機で異なる打上げロケットを使用する提案となっているが、国産ロケットは防衛省の要求事項と考えればよく、加算項目の対象ではないとの理解でよいか。」

「事務局:国の宇宙基本計画に基づき、要求水準書では、他の要求水準を満足する限り国産ロケットを使用することを求めている。応募者の提案は必須項目を満たすための対応と理解している。」

議事要旨なので、実際のやり取りは分からないが、この通りだとしたら、お役所得意のすれ違い答弁というやつだな。

仕様書に当たるPFIの要求水準書を見ると、事務局の表現とはビミョーに異なる。

「事業者は、他の要求水準を効率的に満足させることを前提に、国産ロケットを優先的に使用することを追求する。」

要求水準書は、案を含めて3回作成されているが、この部分については変更がない。

さすがに、ワケワカの要求水準なので、質問が殺到している。

(Ⅹバンド衛星中継機能等の整備・運営事業に関する実施方針への質問に対する回答)
http://www.mod.go.jp/j/procurement/xband/pdf/kaitou.pdf

「No.85:質問:
「本事業衛星の設計寿命は15年以上とし、それに必要な推進燃料等を搭載すること」とありますが、例えば国産ロケットでは設計寿命を満足させられない等の明確かつ合理的な要因があった場合、寿命確保のため海外のロケットを利用することは可能です
か。」

「回答:
運用開始時期その他の業務要求水準をすべて満足することを使用の前提とし、その上で国産ロケットの使用を追求してください。なお、国産ロケットでも15年以上の設計寿命を確保することは可能と認識しています。」

「No.123:質問:
「国産ロケットを優先的に使用することを追及する」とあるが、入札公告時に国産ロケット使用時の評価点が具体的に示されると考えて良いか。」

「回答:
事業者選定基準は、入札公告において示します。」

「No.124:質問:
「他の要求水準を効率的に満足させることを前提に、国産ロケットを優先的に使用することを追求する」において、「効率的に満足」の意味に経済性は含まれますか?つまり衛星寿命に代表される技術的要求条件を国産ロケットが満足する場合においても、同じく技術要求条件を満足する外国ロケットとの間に大きな価格差があれば、外国ロケットが使用されることはありえるでしょうか?それとも、いかに大きな価格差があろうとも、技術的な要求条件が満足される限り国産ロケットの使用が規定されている、と理解するべきでしょうか?」

「回答:
本事業の入札価格は提供されるサービス全体の対価であるため、衛星調達費用の一部を構成するに過ぎない打上げ費用の多寡のみをもって打上げ手段が決定されるとは想定していません。なお、本事業では総合評価方式を採用する予定であり、国産ロケットの使用如何にかかわらず予定価格を超えた入札は失格となるため、予定価格の範囲ですべての業務要求水準を満足する必要があります。」

「No.125:質問:
事業者が国産ロケットを優先的に使用することを追求することを前提とした場合、公平性が阻害される恐れがあると考えますが、打ち上げ手段の調達に関しては官給扱いにするお考えはないのでしょうか。」

「回答:
衛星打上企業の選定は応募者の提案によります。なお、衛星打上げ手段を官給しないことにより公平性が阻害されるとの認識はありません。」

「No.126:質問:
実施方針には「設計寿命は15年以上」、③には「運用期間は、初期機能確認終了時点から15年以上」とありますが、設計寿命を15年以上確保しても、衛星の重量と国産ロケットの打ち上げ能力との関係により、運用期間を15年以上確保することが困難となる可能性もあります。ここでいう「他の要求水準を効率的に満足させること」は、海外のより能力の高いロケットを採用することで運用期間15年を満足すべしと解釈してもよろしいでしょうか。」

「回答:
御理解のとおりではありません。なお、国産ロケットを採用しても15年以上の運用期間を確保することは可能と認識しています。」

「No.127:質問:
「国産ロケットを優先的に使用することを追求する」とありますが、国産ロケットの使用は評点には関係しない(国産と外国産とで性能・品質・価格とも同じであれば評点は同じ)との理解でよろしいでしょうか。」

「回答:
事業者選定基準は、入札公告において示します。」

「No.128:質問:
「事業者は、他の要求水準を効率的に満足させることを前提に、国産ロケットを優先的に使用することを追及する。」とありますが、国産ロケット選定は、価格提案(ロケット価格、保険費用等の増加)の優位性より優先されますか。」

「回答:
No.127の回答を御参照ください。」

「No.129:質問:
国産ロケット打上に際して、射場等の国有施設(JAXA殿所有施設)の利用に伴い、JAXA法等による利用制限は発生しますか。」

「回答:
打上げに使用する射場等は応募者の提案によるため、応募者にて御確認ください。」

「No.130:質問:
「事業者は、他の要求水準を効率的に満足させることを前提に、国産ロケットを優先的に使用することを追及する。」とありますが、衛星打上企業を選定するリスク(衛星打上企業の破産等によりロケット調達ができない等)は国にリスクを負担頂けますか。」

「回答:
衛星打上企業の選定は応募者の提案によるため、事業者がリスク負担するものとします。」

「No.131:質問:
国産ロケットを優先的に使用するとありますが、やむを得ない(費用が合わない、衛星打上企業が打ち上げ失敗のリスクを負担できない等)場合、海外産ロケットを使用しても構わないでしょうか。」

「回答:
運用開始時期その他の業務要求水準をすべて満足することを使用の前提とし、その上で国産ロケットの使用を追求してください。」

ざっと以上だが、ふざけた話だな。

2機のうち、今回打ち上げた2号機がH2Aで上がった背景には、こんなやり取りがあったわけだ。

なお、No.127及びNo.128の回答にある業者選定基準も見てみた。

(Xバンド衛星通信中継機能等の整備・運営事業 事業者選定基準)
http://www.mod.go.jp/j/procurement/xband/materials/s5.pdf

「加算項目、審査のポイント及び配点:本事業衛星の調達に関する業務:
・本事業衛星の打上げについて、運用開始時期と整合した確実性の高い計画となっており、また不測の事態にも対応した具体的な方策等が講じられているか」

実際の評価がどうであったかの個別の採点は公表されていないようだが(たぶん)、国産ロケットの文字は、どこにもない。

評価の対象にはならなかったと考えるのが普通だろう。

スカパーが、H2Aを使うにあたって、防衛省専用衛星とし、相乗りを行わなかったのは、浮沈子から見れば、当てつけのように見えるんだがな。

軽くしなくちゃ、15年の寿命の衛星を打ち上げる能力がH2Aにないということの証明だろう。

防衛省にしてみれば、別に相乗りは条件ではないし、専用衛星として提案すればいいだけだから、そんなことは知ったこっちゃないだろうし、質問の回答にもあるように、要求水準を満たす国産衛星が成功したわけだから(まあ、15年経ってみないと分かりませんが)、PFI事業として国産ロケットの使用を追求したことは問題なかったということになったわけだ。

浮沈子は、1号機の事故による遅延(?)は、相乗りを許し、経済的インセンティブを引き出そうとしたPFIの在り方そのものが引き金になっていると思うんだがな。

トランスポンダーを事前に別系統で調達するなど、イレギュラーな方法を取ってまで現有機の代替を急いだわけだが、アダになった。

スーパーバードC2代替機となる3号機は、とてもH2Aでは無理だろう。

時期的には、H3でもギリギリ行けるかもしれないが、初期の打ち上げということで、リスクは高い。

まあ、その頃は、アリアンも次期型になってるかもしれないし、価格的にはファルコン9で決まりだろうから、要求水準書の国産ロケットにかかる記述がどうなるかは見ものだな。

防衛関連だから、国産に拘り、管理可能な状況に置きたいというのは分かる。

打ち上げ自体は、一発ものだし、後に何かが残るわけではない。

機密保持だけちゃんとできれば、それでいいんだろう。

1号機の機密保持は、大丈夫だったんだろうか?。

(防衛省の損傷した通信衛星、18年6月ごろに打ち上げ延期=関係者)
http://jp.reuters.com/article/japan-satellite-idJPKCN0ZZ0C8

「今年(2016年)7月に1号機を軌道上に乗せる予定だったが、打ち上げ地の南米仏領ギアナへ空輸中、気圧差でコンテナが損傷。」

「現地で内部を調べたところ、アンテナに変形がみつかった。」

ホントかあ?。

破壊工作で、データとか抜き取られて、ヤバイ話になってんじゃないのかあ?。

まあ、どうでもいいんですが。

ロケットでの打ち上げは、事業の一部でしかない。

国際競争力に劣る三菱電機のDS2000(衛星バス:なんか、ゲーム機みたいな名前だな:ちなみに、ニンテンドーDSは、2004年の発売)も、数ある選択肢の一つなんだろう。

国産でということになれば、選択の余地はないのかもしれない。

それにしても、透明性の確保と言いながら、実に不透明な(分かり辛い)ロケットの選択だな。

いや、選択したのは、事業者の方だけどな(そういうことになってるだけ?)。

PFIという衣の下から、チラチラと鎧が見えてるような気がするのは、浮沈子だけなんだろうか・・・。

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