インフライトアボートテストで1段目停止後に行う理由とスターライナーが行えないわけ2020年01月19日 13:21

インフライトアボートテストで1段目停止後に行う理由とスターライナーが行えないわけ
インフライトアボートテストで1段目停止後に行う理由とスターライナーが行えないわけ


ファルコン9は、液体燃料ロケットだ(ケロシンと液体酸素)。

固体燃料を使ったブースターは使わない。

基本的には、アポロを飛ばしたサターン5型と同じだ。

液体燃料ロケットは、燃料の供給を止めれば噴射は止まる。

比較的制御は行いやすいだろう。

固体燃料ロケットは、そうはいかない。

オモチャのロケット花火と、基本原理は同じだからな。

一度火を点けたら、途中で止めるわけにはいかないのだ。

その代わり、高出力を簡単に得られ、エネルギー密度も高い。

バージンギャラクティックが開発しているスペースシップツーのハイブリッドエンジンは、両者のいいとこどりをしている。

酸化剤を火が着いてる固体燃料(とりあえず、最初はちょっと燃やしとかないとな)に吹き付けることで燃焼させ、酸化剤の加減で出力を調整したり、燃焼を止めたりすることができる(正確には知りませんが)。

(ハイブリッドロケット)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88

「推力が必要な時には弁を開けることで燃焼室内に液体推進剤を供給し、点火装置を用いて点火する。」

ははあ、点火装置があるのか・・・。

まあ、どうでもいいんですが。

長らくの疑問だったクルードラゴンの脱出システムが、一段目の燃焼が終わってから起動するというのは、液体燃料ロケットだけで構成されているので、十分な安全性があるからということらしいと分かった(そうなのかあ?)。

これは、何かにそう書いてあったということではなく、浮沈子の妄想に過ぎないことをお断りしておく。

だって、何かあったら燃焼を止めることができるからな。

つーか、何かあったら、燃焼が止まるということになる(何事もなければ、燃え続けてるわけだし)。

それでも、例えば実際にあった2段目の爆発のように、予期せぬ事態が起こればそんなことは言ってらんない。

あらゆる事態に対応できる緊急脱出システムなんて、やはり存在しないのかもな(けん引式でも、けん引ロケットが離脱した後のトラブルは、別途考慮する必要がある)。

ロシアのソユーズは、液体燃料ブースター(つーか、それが1段目という位置づけらしいけど)の燃焼中に緊急脱出に成功している。

まあ、正確には、ブースターの切り離しに失敗しちまったわけだから、似たようなもんかもしれないが、2段目(真ん中のロケット)は1段目と同時燃焼しているから、少なくとも加速中の脱出だったということになる。

(砕け散った「コロリョフの十字架」 - いったいなにが起きたのか?)
https://news.mynavi.jp/article/soyuz-1/

「4基の第1段機体のうち、ブロークDが分離できず、そして第2段に衝突したか、ロケット全体の姿勢を乱すなどしたという説が有力」

詳細は、鳥嶋さんの5回に渡る力の入った連載をお読みいただきたい。

で、次なる疑問は、もう一方のスターライナーは、なぜインフライトアボートテストを行わないかということだ。

打ち上げに使われるアトラスV N22ロケットは、型式からも分かるように固体燃料ブースターを2基搭載している(N:フェアリングなし、2:ブースター2基、2:上段ロケット(セントール)のエンジン2基)。

本来なら、こっちこそ、インフライトアボートテストで、緊急時の脱出能力を実証しておく必要がある。

でもやらない・・・。

似たような話は、チャレンジャー爆発事故を起こしたスペースシャトルにも当てはまる。

まあ、あっちは、そもそも固体燃料ブースター燃焼中は、緊急脱出手段を持たないという選択だからな。

話にならない。

オリオン宇宙船は同じ様な構成(そもそもSLSはスペースシャトルの部品を寄せ集めて作っている)だが、こっちは、ちゃんとした加速時の緊急脱出試験を行っている。

(オリオンテストの成功により、NASAは火星ミッションに近づきました)
https://www.nasa.gov/press-release/successful-orion-test-brings-nasa-closer-to-moon-mars-missions

「NASAは、テスト宇宙船を簡素化し、パラシュートと関連システムを排除することにより、テストスケジュールを加速し、コストを削減することができました。」

なんだ、パラシュートなしか・・・。

それでも、動画を見ると、SLS代用のピースキーパー(大陸間弾道ロケット)の先端から、けん引用ロケット(カバー付き)に抱えられたカプセルは、明らかに1段目の燃焼中(加速中)の切り離しに成功している。

外連味のない、安全安心の枯れた技術を感じる(けん引ロケットは、使っても使わなくても、毎回使い捨てだけどな:使わないのに捨てちまうのは、使い捨てとは言わない?:まあ、離脱する際にはロケット吹かすから、使ったことになるのかも)。

ピースキーパーの加速力が、SLSに匹敵するかどうかは知らない。

(ピースキーパー (ミサイル))
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC_(%E3%83%9F%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AB)

「ピースキーパーミサイルは固体ロケットのロケットエンジン三段と液体燃料エンジンによるバス、またはPost Boost Vehicle(PBV)と呼ばれる最終段一段の計4段からなっており、固体ロケットによって宇宙空間まで打ち上げられ、液体ロケットによるバスによって各弾頭をそれぞれの目標位置まで運ぶ」

打ち上げ動画を見る限り、使用されたのは固体燃料を使った1段目だけのようだ(未確認)。

「第1段: チオコール SR118 固体燃料ロケット・モーター 推力:2.2 MN (500,000 lbf)」

(NASAのOrionクルーカプセルエースの大きな安全性テスト)
https://www.space.com/nasa-orion-capsule-abort-test-flight.html

「Peacekeeper大陸間弾道ミサイルの再生された第1ステージモーターの頂上で空に飛びます。」

「52秒後、高度約31,000フィート(9,450メートル)で、カプセルの上部に取り付けられた打ち上げ中止システム(LAS)がギアに蹴り込まれました。 」

「LASの打ち切りモーターが発射され、その400,000ポンド。オリオンを引き上げてブースターから引き離し、その過程で約7 Gの力を与える推力。」

結構厳しい加速力で引き離している。

訓練された宇宙飛行士でなければ、ブラックアウトするかもしれない。

(ブラックアウト (航空・宇宙))
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E3%83%BB%E5%AE%87%E5%AE%99)

「プラス方向(体の軸に対し下向き)の大きなGがパイロットにかかった際、心臓より上にある脳に血液が供給できなくなり、完全に視野を失う症状を指す。通常はグレイアウトに引き続いて陥ることが多い。」

「ブラックアウトをきたす高G環境は、脳虚血による失神(G-LOC)に繋がり、大変危険である。」

「戦闘機パイロットや宇宙飛行士が着用する飛行服には、ブラックアウト、グレイアウト、G-LOCと言った症状を防ぐために下半身を空気圧で締め付けて上半身の循環血液量を保つ耐Gスーツが備えられていることが多い。」

NASAの長官は、こういう事態(宇宙飛行士が失神して宇宙船のコントロールができない事態)を想定して、宇宙飛行士が乗っていれば、システムに欠陥があっても人間が何とかするから大丈夫だと言ったんだろうか。

しかも、スターライナーは、データ中継衛星と直ちに接続できず(今のところ、原因不明)、一つ間違えば、大気圏に再突入して燃え尽きてなくなるところだった(未確認)。

頓珍漢もいいところだな(彼は宇宙飛行士でもないし、技術者でもないから仕方ないか・・・)。

で、そのスターライナーが、途中で燃焼を中止できない固体燃料ブースターを2本付けたアトラスV N22で打ち上げられる際に、インフライトアボートテストを行わないのは、金がかかるとか、静的打ち切りテストで十分立証できるとか、そういう話ではなく、単に安全に離脱させることができないからではないかと浮沈子的には見ている(そうなのかあ?)。

NASAは、それでもいいと言ってる。

まあ、ISSに行くと言って打ち上げられたカプセルが、途中でチョンボして戻ってきても、次から人間乗せて飛ばそうという機関だからな。

そのくせ、クルードラゴンのパワードランディングにいちゃもんを付け、パラシュート対策に不満たらたらで、座席数さえ削ってきた(スーパードラコの燃料計バルブのチョンボで爆発したのは自業自得!)。

まあ、それぞれ、もっともな理由があるんだろうが、スターライナーのインフライトアボートテストを行わない言い訳はどうなってるのかは知らない(単に、浮沈子が知らないだけかも)。

オリオンは、代役のロケットとはいえ、実証試験を行っているからな。

同じだと思うのは、浮沈子だけなんだろうか?。

ISSタクシーで使われる宇宙船は、1段目の加速中に緊急離脱しなければならなくなった場合は、どちらも一か八かになる(そういう環境で試験してないからな)。

オリオンは、一応、大丈夫ということになっている。

ソユーズは、2回も実証して見せたしな(1回目は、乗員が負傷したらしい)。

少なくとも2回目には、見事に緊急脱出に成功している。

コンバットプローブン(実戦証明済)なわけだ。

打ち上げロケットなどの信頼性が高く、失敗する可能性が十分低ければ、緊急脱出システム自体のリスクとの比較考量(トレードオフ)となる。

ファルコン9については、少なくとも実績十分とは言えないだろう(ブロック5になってからは、まだ20回程度だしな)。

アトラスVだって、N22仕様で飛んだのは1回だけだ。

まぐれだったかもしれないしな(そんなあ!)。

ISSタクシーの打ち上げは、最初のうちは博打だ。

信頼性は、数をこなす中でのデータ収集や、改良に掛かっている。

精一杯、リスクを減らす観点からも、事前の十分なテストを行い、適切に評価する必要がある。

明日(今夜遅く?)は、そんな感じの背景を思い浮かべながら、クルードラゴンのアボートテストを眺めることになる。

地球の裏側からな・・・。

(Why have SpaceX, Boeing & Blue Origin ditched abort towers?:動画出ます:追加)
https://www.youtube.com/watch?v=0MaeHNU2660

「打ち切りシステムの発売に関しては、商業宇宙業界で新しい傾向があります。乗組員の車両にアボートシステムを搭載している3つの商業会社はすべて、過去にアボートシステムを支配していた古典的な打ち上げアボートタワーを捨てました。」

「SpaceXのクルードラゴンとボーイングのスターライナーカプセルは、どちらも固体ロケットモーターではなく液体燃料のアボートモーターを使用しています。」

「スペースX、ボーイング、ブルーオリジンの搭乗員が乗る車両のタワーを中断させる設計上の考慮事項についてお話します。また、ボーイングとスペースXが一体ではなく液体モーターを使用する理由を評価します。」

結論から言えば、プッシュ型にしたのは脱出システムをシンプルに統合したいため(ブルーオリジンのニューシェパードは、観光用の窓を確保するためですが)、液体にしたのはISSに長期間(最大210日)接続しておくためだそうだ(固体燃料は、宇宙での長期保管に向かないので)。

クルードラゴンは、元々は宇宙船のパワードランディング目的だったけどな。

クルードラゴンのスーパードラコは、有人飛行の1回だけ使用し、貨物輸送に転用される際には使用されない(たぶん)。

スターライナーは、脱出システムをサービスモジュールに搭載しているため、毎回投棄することになる。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
kfujitoの徒然の筆者のペンネームは、
「○○子」です。
○○を記入してください。

コメント:

トラックバック