🐼一粒の塩:或いは背水の陣:ULAの正念場 ― 2021年09月04日 22:37
一粒の塩:或いは背水の陣:ULAの正念場
ブルーオリジンの開発するBE-4エンジンが、遅れている話は先月書いた。
(再使用という名の毒:ULAはBE-4で飛べるのか)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2021/07/09/9396200
「英語の慣用句に、「バスの下に投げる」(Throw under the bus)というのがあるそうだ。」
「ULAは最終的にこれらのエンジンを再利用する可能性がありますが、今のところ、消耗モードで飛行します。したがって、ULAとスペースフォースのエンジニアは、便宜の名の下に、再利用しにくい最終設計を求めています。」
同じアルスの記事に引用されていたんだが、今日は引用元の記事を読んだ。
(ULAはその目玉であるアトラスVの販売を停止し、ロケットの引退への道を切り開きました)
https://www.theverge.com/2021/8/26/22641048/ula-boeing-lockheed-end-sales-atlas-v-rocket-russia-rd180
「ULAがさらに購入する計画がないため、RD-180プログラムは終了する可能性が高いとブルーノ氏は語った。彼はロシアの申し出を一粒の塩で受け止め、RD-180の国営メーカーであるエネゴマシュが閉鎖後にエンジン生産ラインとテスト体制を再開できるかどうかについて懐疑的でした。」
今日の慣用句のお勉強は、「take ~ with a grain of salt」だな。
([連載] 英語フレーズ 第6回 "Take something with a grain of salt")
https://beo.jp/en-phrase/take-something-with-a-grain-of-salt/
「半信半疑で聞く、疑ってかかる」
由来が詳しかったので引用した。
「“乾いたクルミとイチジクをふたつずつ。ルーの葉っぱを20枚。それらをすり潰して、塩粒を付け足す。この混合物を口にすれば、どんな毒でも解毒できる。” 上記の様に、「博物誌」では解毒剤になるというニュアンスで使われていました。」
「それが、17世紀頃になると、「塩粒をかけて何かを受け入れる」→「疑いをもって物事を受け入れる」という意味で使われるようになっていったのです。」
“To be careful about believing that something is completely true”(ワクチンさえうてば、新型コロナは克服できる:浮沈子訳?)
まあ、どうでもいいんですが。
「これらのペンタゴンミッションでは、ULAは主に次世代の低コストのバルカンロケットを使用し、アトラスVの代わりに使用します。バルカンはジェフベゾスのブルーオリジンが開発中のBE-4エンジンを使用します」(ザバージの記事:以下同じ)
「エンジンのターボポンプの開発上の問題と、エンジンのテスト発射中に発生する過度の振動が遅延の主な要因でした、とブルーノ氏は言いましたが、その後解決されました。」
「今私たちのペースを上げているのは、ハードウェアを構築することだけです」
先月の記事でも見たように、年内に納入されることはなさそうだ。
アトラスVは、もう、新たな契約は取らないだろう。
残る29回の打ち上げが終わって(3年くらいはかかるでしょうが)、それまでにバルカンが飛べなければ、ULAには打ち上げるロケットが無くなる。
背水の陣。
退路を断つ。
後がない・・・。
国防総省が打ち上げるロケットは、別にある。
「BE-4の遅延が来年も続く場合、宇宙軍は「バックアップオプション」を考え出す必要があるかどうかを検討している」
「明らかに私たちは懸念していますが、私たちはULAと関わっており、彼らはそれを実現するためにBlue Originと深く関わっています」
「SpaceXにシフトすることが含まれる可能性」
年内に飛行用BE-4が納入されることについては、一粒の塩を振り掛けなければならないが、RD-180をぶった切ったということは、3年以内には確実に新しいロケットをゲットできることを確信したに違いない。
アトラスVは、カウントダウンを始める。
そのことは、バルカンロケットの完成に対する最大のプレッシャーだ。
先月の記事でも書いたように、ブルーオリジン(ジェフベゾス)は再使用可能なエンジンに拘っている。
とりもなおさず、自社のニューグレンロケットへの拘泥があるからだ。
それは、ある意味で、ULAに対する対抗措置でもある。
使い捨て専用エンジンをバルカン用に先行してリリースし、その後、自社資金でニューグレン用の再使用エンジンの開発を続ければ、敵に塩を送ることになりかねない。
BE-4の値上げ交渉をして、断られたというから、余計に足を引っ張りたくなっているのかもな(未確認)。
使い捨てエンジンを売って、その金で再使用エンジンを開発することは困難なんだろう。
空軍の打ち上げや月面着陸宇宙船用のロケットを開発する公的資金も断たれて、ブルーオリジンは窮地に立たされている。
このままでは、ニューグレンの開発はとん挫しかねない。
エンジン屋として、ULAの下請けとして細々と食いつないでいくしかないのだ(そうなのかあ?)。
ああ、ニューシェパードとかもあったし、そういえば、プロジェクトカイパーも、アマゾンの資金で始めるみたいだけどな。
打上げは、たぶん、使い捨てエンジンのバルカンロケットに頼むんだろう。
バルカンが、そのうち、エンジンユニットを切り離して回収・再使用するという話もあるけど、それは話としてあるだけで、実際どうなるかは分からない。
米国の打ち上げが、スペースX一色となり、ULAが独占的地位どころか、そのおこぼれを拾わされる羽目になる時代が近づいている。
後発のロケット打ち上げ会社は、あと10年くらいしなければ、まともな打ち上げはできないかもしれない。
しかも、彼らが拾う市場は、ULAのさらに落穂ひろいだ。
ロケットラボくらいかなあ・・・。
再使用打ち上げロケットは、21世紀のパスポートだ。
ベゾスには、そのことは分かっている。
だからこそ、恥も外聞もなく、スペースシップの真似をしてでも、完全再使用へのこだわりを見せている。
BE-4の遅延は、全て、そこに繋がっている。
21世紀の宇宙開発でメインストリームに残るのか、サプライヤーとして傍流に終わるのかの境目だ。
RDー180を切ることがULAにとって正念場であること以上に、再使用型BR-4に拘り続けることがブルーオリジンにとっての死活問題になる。
ベゾスは、あらゆる手段を使ってきている。
それが必要だと感じているからな。
ビジネスだから、出来ることはやる。
やり尽くす。
ULAは、どうするんだろうな・・・。
ブルーオリジンの開発するBE-4エンジンが、遅れている話は先月書いた。
(再使用という名の毒:ULAはBE-4で飛べるのか)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2021/07/09/9396200
「英語の慣用句に、「バスの下に投げる」(Throw under the bus)というのがあるそうだ。」
「ULAは最終的にこれらのエンジンを再利用する可能性がありますが、今のところ、消耗モードで飛行します。したがって、ULAとスペースフォースのエンジニアは、便宜の名の下に、再利用しにくい最終設計を求めています。」
同じアルスの記事に引用されていたんだが、今日は引用元の記事を読んだ。
(ULAはその目玉であるアトラスVの販売を停止し、ロケットの引退への道を切り開きました)
https://www.theverge.com/2021/8/26/22641048/ula-boeing-lockheed-end-sales-atlas-v-rocket-russia-rd180
「ULAがさらに購入する計画がないため、RD-180プログラムは終了する可能性が高いとブルーノ氏は語った。彼はロシアの申し出を一粒の塩で受け止め、RD-180の国営メーカーであるエネゴマシュが閉鎖後にエンジン生産ラインとテスト体制を再開できるかどうかについて懐疑的でした。」
今日の慣用句のお勉強は、「take ~ with a grain of salt」だな。
([連載] 英語フレーズ 第6回 "Take something with a grain of salt")
https://beo.jp/en-phrase/take-something-with-a-grain-of-salt/
「半信半疑で聞く、疑ってかかる」
由来が詳しかったので引用した。
「“乾いたクルミとイチジクをふたつずつ。ルーの葉っぱを20枚。それらをすり潰して、塩粒を付け足す。この混合物を口にすれば、どんな毒でも解毒できる。” 上記の様に、「博物誌」では解毒剤になるというニュアンスで使われていました。」
「それが、17世紀頃になると、「塩粒をかけて何かを受け入れる」→「疑いをもって物事を受け入れる」という意味で使われるようになっていったのです。」
“To be careful about believing that something is completely true”(ワクチンさえうてば、新型コロナは克服できる:浮沈子訳?)
まあ、どうでもいいんですが。
「これらのペンタゴンミッションでは、ULAは主に次世代の低コストのバルカンロケットを使用し、アトラスVの代わりに使用します。バルカンはジェフベゾスのブルーオリジンが開発中のBE-4エンジンを使用します」(ザバージの記事:以下同じ)
「エンジンのターボポンプの開発上の問題と、エンジンのテスト発射中に発生する過度の振動が遅延の主な要因でした、とブルーノ氏は言いましたが、その後解決されました。」
「今私たちのペースを上げているのは、ハードウェアを構築することだけです」
先月の記事でも見たように、年内に納入されることはなさそうだ。
アトラスVは、もう、新たな契約は取らないだろう。
残る29回の打ち上げが終わって(3年くらいはかかるでしょうが)、それまでにバルカンが飛べなければ、ULAには打ち上げるロケットが無くなる。
背水の陣。
退路を断つ。
後がない・・・。
国防総省が打ち上げるロケットは、別にある。
「BE-4の遅延が来年も続く場合、宇宙軍は「バックアップオプション」を考え出す必要があるかどうかを検討している」
「明らかに私たちは懸念していますが、私たちはULAと関わっており、彼らはそれを実現するためにBlue Originと深く関わっています」
「SpaceXにシフトすることが含まれる可能性」
年内に飛行用BE-4が納入されることについては、一粒の塩を振り掛けなければならないが、RD-180をぶった切ったということは、3年以内には確実に新しいロケットをゲットできることを確信したに違いない。
アトラスVは、カウントダウンを始める。
そのことは、バルカンロケットの完成に対する最大のプレッシャーだ。
先月の記事でも書いたように、ブルーオリジン(ジェフベゾス)は再使用可能なエンジンに拘っている。
とりもなおさず、自社のニューグレンロケットへの拘泥があるからだ。
それは、ある意味で、ULAに対する対抗措置でもある。
使い捨て専用エンジンをバルカン用に先行してリリースし、その後、自社資金でニューグレン用の再使用エンジンの開発を続ければ、敵に塩を送ることになりかねない。
BE-4の値上げ交渉をして、断られたというから、余計に足を引っ張りたくなっているのかもな(未確認)。
使い捨てエンジンを売って、その金で再使用エンジンを開発することは困難なんだろう。
空軍の打ち上げや月面着陸宇宙船用のロケットを開発する公的資金も断たれて、ブルーオリジンは窮地に立たされている。
このままでは、ニューグレンの開発はとん挫しかねない。
エンジン屋として、ULAの下請けとして細々と食いつないでいくしかないのだ(そうなのかあ?)。
ああ、ニューシェパードとかもあったし、そういえば、プロジェクトカイパーも、アマゾンの資金で始めるみたいだけどな。
打上げは、たぶん、使い捨てエンジンのバルカンロケットに頼むんだろう。
バルカンが、そのうち、エンジンユニットを切り離して回収・再使用するという話もあるけど、それは話としてあるだけで、実際どうなるかは分からない。
米国の打ち上げが、スペースX一色となり、ULAが独占的地位どころか、そのおこぼれを拾わされる羽目になる時代が近づいている。
後発のロケット打ち上げ会社は、あと10年くらいしなければ、まともな打ち上げはできないかもしれない。
しかも、彼らが拾う市場は、ULAのさらに落穂ひろいだ。
ロケットラボくらいかなあ・・・。
再使用打ち上げロケットは、21世紀のパスポートだ。
ベゾスには、そのことは分かっている。
だからこそ、恥も外聞もなく、スペースシップの真似をしてでも、完全再使用へのこだわりを見せている。
BE-4の遅延は、全て、そこに繋がっている。
21世紀の宇宙開発でメインストリームに残るのか、サプライヤーとして傍流に終わるのかの境目だ。
RDー180を切ることがULAにとって正念場であること以上に、再使用型BR-4に拘り続けることがブルーオリジンにとっての死活問題になる。
ベゾスは、あらゆる手段を使ってきている。
それが必要だと感じているからな。
ビジネスだから、出来ることはやる。
やり尽くす。
ULAは、どうするんだろうな・・・。
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