静止軌道商業打ち上げから撤退する我が国の基幹ロケット2019年12月06日 00:48

静止軌道商業打ち上げから撤退する我が国の基幹ロケット
静止軌道商業打ち上げから撤退する我が国の基幹ロケット


世界の衛星打ち上げは、政府系(軍需含む)が3分の2を占めている(これまでのところ)。

スターリンクみたいな掟破りが増えてくれば、今後どうなるかは分からんけどな。

従来の統計とか、需要予測は根底から覆ってしまう。

H3ロケットのコストを調べていて、たぶん、半分近くは固体燃料ブースターだろうと見当をつけた話は既に書いた。

(4.8度って、真冬じゃん!?)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2019/11/29/9182714

「2本のブースター付けないと、飛び上がることさえできないH2Aに対して、新型エンジン3基掛けでブースターを使用しない設えのやつが半額の50億円になると言われている(ウィキの記述では、40億円とも)。」

「固体燃料ブースターの価格は非公表だが、打ち上げロケットとしてコンプリートしたイプシロンの価格(目標額で30億円)を考えると、1本20億円くらいするのかもしれない(計算上は、ほぼ辻褄が合う)。」

そうすると、どう考えてもH3単体でGTOには上げられない衛星が多くなる。

つーか、最近の静止軌道衛星は1機当たりの重量が激増していて、今月上げる予定のスカパーなんかは6.8トンもある。

おそらくは、H3にブースター4本付けた仕様でも上がらないのではないか。

(H3ロケット)
https://ja.wikipedia.org/wiki/H3%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88#%E5%A4%96%E9%83%A8%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%AF

「ロングコースト静止移行軌道:6,500 kg 以上(H3-24S/L)」

「以上」だからな・・・。

分からんけどな・・・。

分かっているのは、その時のおよその値段で、ざっくり130億円ということになる(50億円+20億円×4本)。

まあ、多少割引があったとしても、100億円を切って打ち上げれば商売にはならない。

ファルコン9がいくらで上げるかは分からないけど、現状(ブロック5)の使い捨てでも70億円くらいで上げているだろう(未確認)。

打ち上げ実績とか、スケジュールを考えると、商売として成り立つとは思えない。

重工は、そこで、ブースターに依存しない打ち上げスタイルをスタンダードに選んだ。

エンジンは3つになるけど、まあ、自前だしな。

政府系の需要は予算次第だから、競争はない。

軍事衛星も、当初はアリアンで上げようとしていたけど、結局H3で上げることにしたようだ(輸送中にアンテナぶっ壊しちまって、作り直しだったしな。あれって、まさか、H3で上げるために、わざとやったとか・・・)。

「2022年度:Xバンド防衛通信衛星3号機(きらめき3号)」

まあいい。

いずれにしても、国内競争は少なくともないわけだし、政策的にも外国のロケットに頼んで上げてもらうよりは、予算付けて重工に上げてもらった方がいいしな。

少なくともそっちでの競争を意識することはない。

商業衛星の打ち上げになると、そうは言っていられない。

じゃあ、それがどういうことになるかといえば、静止軌道への打ち上げ需要は頭打ちで、重工が参入する余地は少ない。

むしろ、非静止軌道(太陽同期軌道とか)の需要は、衛星の小型高性能化の進展で伸びると見られている。

(世界の宇宙産業動向)
http://www.sjac.or.jp/common/pdf/kaihou/201809/20180904.pdf

資料14ページには、「2017年までの商業打ち上げ実績とその後10年間の商業打ち上げ予測」(図10)が出ている。

H3は、毎年、政府系3機と民需3機で儲けが出るようにするらしいから、伸びしろが少ない静止軌道でキビシー競争に挑むより、脈がありそうな非静止軌道に進出しようとしているわけだ(そうなのかあ?)。

政府系だって、静止軌道は年に1回あるかないか(ぱっと思い当たるのは、みちびきとひまわりだけ)。

(H-IIAロケット:衛星打ち上げ実績:GTO以遠のみ抽出)
https://ja.wikipedia.org/wiki/H-IIA%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88#%E8%A1%9B%E6%98%9F%E6%89%93%E3%81%A1%E4%B8%8A%E3%81%92%E5%AE%9F%E7%B8%BE

「No.:構成:打上げ日:積荷・重量:打上費用:
・試験機1号機:202:2001年8月29日:ロケット性能確認用ペイロード2型(VEP-2)・3.3 tほか:96億円
・試験機2号機:2024:2002年2月4日:つばさ(MDS-1)・480 kgほか:106億円
・3号機:2024:2002年9月10日:こだま(DRTS)・2.8 tほか:102億円
・7号機:2022:2005年2月26日:ひまわり6号(MTSAT-1R)・3.3 t:120億円(6号機失敗を受けての機体改修費用を含む)
・9号機:2024:2006年2月18日:ひまわり7号(MTSAT-2)・4.65 t:104億円
・11号機:204:2006年12月18日:きく8号(ETS-VIII)・5.8 t:119億円
・13号機:2022:2007年9月14日:かぐや(SELENE)・3.02 t:110億円
・14号機:2024:2008年2月23日:きずな(WINDS)・4.85 t:109億円
・17号機:202:2010年5月21日:あかつき (PLANET-C)・500 kgほか:98億円
・18号機:202:2010年9月11日:みちびき (QZS-1)・4.1 t:不明
・25号機:202:2014年10月7日:ひまわり8号(Himawari-8)・3.5 t:105億円(ひまわり9号と折半)
・26号機:202:2014年12月3日:はやぶさ2 (Hayabusa2)・600 kgほか:不明
・29号機:204:2015年11月24日:Telstar 12 VANTAGE・4.9 t:不明
・31号機:202:2016年11月2日:ひまわり9号(Himawari-9)・3.5 t:105億円(ひまわり8号と折半)
・32号機:204:2017年1月24日:きらめき2号(DSN-2)・非公開:不明
・34号機:202:2017年6月1日:みちびき2号機 (QZS-2)・4.0 t:不明
・35号機:204:2017年8月19日:みちびき3号機 (QZS-3)・4.7 t:不明
・36号機:202:2017年10月10日:みちびき4号機 (QZS-4)・4.0 t:不明」

スパイ衛星は低軌道だし、科学系の地球観測衛星も低軌道。

それだって、こうのとりの後継機を打ち上げるくらいしか、重量物の打ち上げもないしな。

後は、アルテミス絡みの月軌道くらいか。

それなら、ブースターやめて、太陽同期軌道(500km)に4トン上げる程度で十分だろう・・・。

使い勝手のいいロケットの真の意味は、そこにあるのではないか。

静止軌道への商業打ち上げレースからの撤退。

身の程を知るいい判断だな(そんなあ!)。

GTO以遠のリストを作っていて、202構成と204構成の差額を見ると、ブースターの単価が見えることに気付いた。

・試験機1号機:202:96億円
・11号機:204:119億円
・17号機:202:98億円
・25号機:202:105億円(ひまわり9号と折半)
・31号機:202:105億円(ひまわり8号と折半)

2本増やしても、ざっくり20億円くらいにしかならない(ホントかあ?)。

34号機から36号機の合計が342億円だから、204が128億円、202が107億円(2機)とすれば、辻褄も合う(そうなのかあ?)。

想定していた金額の半分だな。

H3で、1本10億円なら、GTO90億円で6.5トンか・・・。

やっぱ、勝負にならないな。

民需静止軌道からの撤退は、ほぼ確実だ。

H2Aでは、激安(たぶん)で売ったカナダの衛星だけ。

H3で、1機でも取れたらめっけもんだな。

「打ち上げ予定:
2020年度:
・先進レーダ衛星-試験機1号機

2021年度:
・次期技術試験衛星-試験機2号機
・HTV-X(2021年度以降)

2022年度:
・Xバンド防衛通信衛星3号機(きらめき3号)
・温室効果ガス観測技術衛星3号機(GOSAT3)
・Inmarsat - イギリスのインマルサット社より受注の商業打ち上げ(2022年度以降)
・準天頂衛星システム5号機

2023年度:
・準天頂衛星システム6号機
・準天頂衛星システム7号機

2024年度:
・MMX (火星衛星探査計画、戦略的中型1)
・戦略的中型2

2025年度:
・情報収集衛星光学9号機
・情報収集衛星光学多様化1号機
・情報収集衛星レーダ多様化1号機

2026年度:
・情報収集衛星光学多様化2号機」

「Inmarsat - イギリスのインマルサット社より受注の商業打ち上げ(2022年度以降)」(再掲)

おっと、何かの間違いで、もう取ってたか・・・。

(インマルサット打ち上げ受注:追加)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2017/10/07/8696613

「衛星は仏エアバス ディフェンス アンド スペース社が製造中で、2020年にH-IIAロケットで打上げ予定」

「あんな高いロケットに、顧客が付くというのが信じられない・・・。」

2年前に記事にしたのを忘れていた(いつものことですが)。

H2Aでの打ち上げだったはずだが、いつの間にかH3に代わってたわけだ(別の衛星かも:追加)。

「今回の契約は、いわば名刺代わりで、H3での打ち上げこそが、インマルサットの狙うところなのかもしれない。」

「打ち上げ時期の調整、リスク分散と競争性の確保、打ち上げ業界の育成と、環境要因が複合的に働いたと見るのが正しい(たぶん)。」

(インマルサット-6 F1、2(GX 6A、6B))
https://space.skyrocket.de/doc_sdat/inmarsat-6.htm

「インマルサット-6 F1(インマルサットI-6 F1、GX 6A) :2020年:H-2A-204?」

ガンターでは、まだH2Aのままだしな(やっぱ、別の衛星か?)。

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