安全はボーイングの核心だが、その対象は乗客ではない2020年01月16日 10:39

安全はボーイングの核心だが、その対象は乗客ではない


組織の意思決定は様々なレベルで行われ、競争したりけん制し合ったりして相互に調整され、概ね妥当な方向性を得るが、内外の様々な圧力によって捻じ曲げられ、想定されない決定が行われることもあり得る。

組織の規模がデカくなれば、その社会的影響は凄まじいからな。

ヘッドクォーターによる組織内統治や、最高意思決定機関による監督は、巨大組織が方向性を誤らないようにするためには絶対必要な仕掛けだ。

ボーイングに絡む一連の出来事を見ていると、現代における巨大組織が内包する危機の姿が浮き彫りにされているように感じる。

(日本でほとんど報じられないボーイング737MAXの恐ろしい真実)
https://www.mag2.com/p/news/435226

昨年3月からこの問題をずーっと追いかけている浮沈子にいわせれば、報道自体は十分行われていると思うんだがな。

他のニュースが多いからじゃないのかあ?。

我が国に飛来していたMaxはあったけど、我が国のキャリアが保有していたMaxはなかったしな。

世間の関心が低いのは仕方ない。

記事では、浮沈子的関心が高いMCASの内容については余り書かれていないが、最近話題の、シミュレーターを巡る社内メールについてはよく纏められている。

「新規のソフトウェアを導入したフライトシミュレーションが不具合を連発したため、このままでは安全に飛行できない。普通ならシステムを再構築して追加のフライトシミュレーションを導入すべきなのに、そうすると費用も時間もかかってしまう上に、FAAによる認可時期が先送りされてしまい、各国の航空会社との契約に問題が生じてしまう。そのため、ボーイング社は、追加のフライトシミュレーションを導入せずに、安全性に問題があるまま事実を隠蔽して認可を取得し、737MAXを売りさばいた」

シミュレーターを改善すればいいように読むことも出来るが、当然、そんなことはない!(Max自身を改善しなきゃな・・・)。

「もしもボーイング社が、問題点を隠蔽せず、きちんと追加のフライトシミュレーションを導入し、安全性を確認していたら、こんな事故など起こらなかったのではないでしょうか?」

そもそもシミュレーターは、航空機の欠陥を暴くための機械じゃないしな。

この記事を書いたブロガーの認識が違うような気がする。

しかし、おかげで、新たな問題が見えてきた。

社内メールで指摘されていたのは、フライトシミュレーターの欠陥なのか、それとも実機の飛行特性なのか。

その点が、何となく曖昧な気がする。

浮沈子は今まで、B社が移行訓練を簡略化し、コストを抑えてMaxを売りさばくためにシミュレーター訓練を不要とする営業戦略を取っていたのだと思っていた。

従来のNGシリーズから、簡単に乗り換えられてお得ですよって・・・。

この記事が言うように、フライトシミュレーター自体に何らかの欠陥があって、その修正を回避する必要から、移行訓練を簡略化した可能性もある。

逆に、シミュレーターはMACSの特性を正確に反映し、実機の欠陥をあまりにも忠実に再現していたため、こんなもんを機種転換の前提条件にしたら絶対売れないと考えて、敢えてシミュレーターの導入を避けたのかも知れない。

だとしたら、犯罪級の判断が行われたということになる。

(ボーイング、操縦士の訓練を要請したライオン・エアを馬鹿呼ばわり 1年後に墜落事故)
https://jp.sputniknews.com/incidents/202001157014377/

「今、このいまいましいライオン・エアは、あたかも彼らが愚かであるかのように、MAXで飛行するためのシミュレーターを必要としている。 私はこれに対処する方法を見つけようとしててんてこ舞いしている。 馬鹿野郎たちだ」

「それから間もなく、ボーイングはライオン・エアの操縦士のシミュレーター訓練を拒否した。」

これから数千機を売りさばこうとしているにしては、Maxのシミュレーターの数は極めて少ない。

導入に当たって、シミュレーターの欠陥が足かせになって、移行訓練が簡略化されたのか、シミュレーターが、余りに正確に実機の欠陥を再現したから、バレるのを恐れて移行訓練から外したのか。

社内メールからは、どちらにしても、この航空機がヤバイ旅客機だということが伝わってくる。

浮沈子は、シミュレーターの欠陥であって欲しいと願っている。

だって、後者(シミュレーターが正確過ぎて、実機の欠陥が露呈する方)だったら、スプートニクの記事にあるような話は悲しすぎるからな。

欠陥シミュレーターの調達に苦労し、結果的に実機の訓練が不十分なまま事故に至ったのなら、それはそれでとんでもない話だけど、まだ納得がいく。

どちらにしても、B社内部では、MCASの誤作動による操縦上の問題が明確に認識されていたということは変わらない。

本来なら、シミュレーターに問題があろうが無かろうが、実機のシステムの改善を行ってからリリースするという方向に進まなければならなかったはずだ。

「737MAXのフライトシミュレーターは失速防止システムが作動しまくっている。あまりにも酷い状況だが、私はFAAに嘘をついてしまった。」

「737MAXのために新規に設計された失速防止システム「MCAS」が、センサーの誤情報に基づいて作動してしまい、飛行中に機体が急降下して、パイロットによる操縦ができなくなるという問題が連発していたそうです。しかし、ボーイング社は、この問題を隠蔽し、納期ありきで安全性に問題があるまま欠陥機を売りさばいたのです。」

「この旅客機(737MAX)は、道化師が設計したもので、それを監督しているのが猿たち(FAA)だ」

サルは、このウソを見破れなかった。

サルだからな・・・。

そして、737Maxの事故後に、サルが進化してまともになったという保証はどこにもない。

現在、再稼働に当たって、シミュレーターを導入することが推奨されているというが、そのシミュレーターを作っている道化師(ピエロ)がエースになったという話も聞かない(製造は、別会社が行っているようです)。

新たに導入されるシミュレーターが、正確に飛行特性を再現できるのかについては、いったい、誰が保障してくれるのか。

あってはならない話だが、そのシミュレーターに意図的な細工が施され、改良されたとされるMaxに残る致命的欠陥を隠蔽するツールとして使われないという保証はどこにあるのか。

FAAとB社の当事者達は、当時とほとんど同じで、組織の改編が行われたわけでもなく、制度の見直しがなされたわけでもない。

内外の圧力は、早期の飛行再開に向けてむしろ高まっている。

(737MAXの運航が再開された場合、ボーイング新CEOに700万ドル)
https://jp.sputniknews.com/us/202001157013450/

「米航空機メーカー、ボーイングの最高経営責任者(CEO)に就任したデイヴィッド・カルフーン氏は、旅客機737 MAXの運航が再開された場合、700万ドルの報酬を受け取る。ビジネス・インサイダー(Business Insider)が、ボーイングの情報を引用して報じた。」

経済的なインセンティブを与えられたCEOが、乗客の安全を第一にした判断を下すかどうか。

巨大組織の意思決定のプロセスが、今度こそまともに機能するかどうかが問われている。

MCASの欠陥は、見えない瑕疵ではなかった。

改良されたMCASでも、機体構造上の特性に十全に対応できるとは限らず、複数のトラブルが絡んで機能しなくなれば、MCASのない裸のMaxの機首上げしやすい空力特性を、パイロットが手動で制御することになる。

導入されるシミュレーターが、それを正確に再現できなければ、何のための移行訓練かという話になる。

さらには、改良されたとされるMCAS自身に、新たなバグを抱え込んだ可能性も否定できない(実際、開発途中でFAAが見つけたしな)。

隠れた瑕疵を暴くための努力を尽くすことは必要だが、それには限界もある。

現代の航空機の安全は、残念ながら最終的には十分な訓練を受けたパイロットの技量に委ねられている。

完全自動操縦なわけじゃない。

人の作りしものは全て壊れる。

その中には、人が作り出した巨大組織も含まれてるに違いないのだ・・・。

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