宇宙のCCR2015年07月05日 22:01

宇宙のCCR
宇宙のCCR


(生命維持システム(LSS))
http://iss.jaxa.jp/eva/eva0202.html

「生命維持システム(Life Support System: LSS)は、宇宙服の内部気圧と温度をコントロールし、呼吸用の酸素や電力を供給する他、通信機能を提供するシステムであり、宇宙服の背中に取り付けられています。」

まあ、いろいろパッケージになってるわけだな。

「水酸化リチウムカートリッジは、水酸化リチウム、活性炭、微粒子フィルターの3層から成り、呼吸用酸素の浄化のために次の機能を果たします。」

「・活性炭層での微量成分(有害ガス)の吸着
・水酸化リチウム層での二酸化炭素の吸着
・微粒子フィルターでの固体の微粒子や水酸化リチウムの塵の拡散防止」

単に二酸化炭素を除去してるだけじゃないんだ。

浮沈子が注目したのは、次の記述である。

「キャニスターの再生はクエストエアロック内の再生装置で高温の空気で加熱することで再利用されます。」

そう、ISSでは、二酸化炭素除去装置は、もはや使い捨てではないのだ。

こちらには、こんな記述もある。

(プリブリーズ(Pre-breathe))
http://iss.jaxa.jp/eva/eva03.html

「プリブリーズの手順は、船外活動をスペースシャトルから行う場合と、ISSから行う場合とでは若干異なりますが、純酸素を呼吸しながら体内組織に溶け込んでいる窒素を追い出す点では同じです。」

「スペースシャトルから船外活動する際のプリブリーズ:
マスクを装着して100%の酸素を約60分呼吸した後、スペースシャトルの船内気圧を1気圧(約101kPa)から約0.7気圧(約70.3kPa)に下げ、12時間以上その状態に保ちます。」

「0.7気圧への減圧後は、マスクを外して普通に呼吸します。なお、この方法だとEVAクルーが船外へ出るまでは、他のクルーも0.7気圧の環境で過ごすことになります。」

「宇宙服内の窒素を追い出し、100%の酸素を40~75分間呼吸した後、宇宙服を約0.3気圧(約30kPa)に減圧します。」

14時間以上も掛けて、プレブリージングを行うことを考えれば、300秒のそれなんて、屁のようなもんだな。

しかし、もちろん、二酸化炭素除去装置の作動確認のためではなく(最後の手順には含まれるんでしょうが)、減圧のための手順である。

「ISSから船外活動する際のプリブリーズ:
研究の結果、運動をしながらプリブリーズを行うと、体内に溶け込んでいる窒素の排出が早まることが判りました。」

「酸素マスクを装着して純酸素を呼吸するプリブリーズ中にエクササイズ(自転車こぎ)を行う新しい「エクササイズ・プリブリーズ」を採用することにより、2時間20分でプリブリーズを終了させることができるようになりました。」

まあ、ダイビングの減圧でそんなことしたら、窒素(やヘリウム)が気泡化して大変なことになる(たぶん)。

「エクササイズ・プリブリーズの手順は以下のようなものです。」

「酸素マスクを着用し、1気圧(約101kPa)の状態で自転車こぎを10分間行う。(上半身は筋力トレーニングを行う)」

「エアロック内を約0.7気圧(約70.3kPa)に減圧し20分間維持(エクササイズ・プリブリーズ開始からここまでで80分)」

「宇宙服(EMU)の装着」

「EMUの装着が完了するとエアロック内は1気圧に戻される。」

「EMUを装着した状態で60分間のプリブリーズ(約0.3気圧(約30kPa)で100%酸素を呼吸)を行う。」

「エアロック内を30分かけて減圧し、ハッチを開けて船外へ出る。」

いやあ、大変ですなあ。

もちろん、大深度潜水を長時間行った場合の減圧は、これに匹敵するだろうし、飽和潜水にいたっては、週単位の減圧を行うわけだから、どっちがどっちとはいえない。


しかし、たった1気圧の差を埋め、空気呼吸から純酸素呼吸に切り替えるために、大変な手数を掛けることになるわけだ。

船外活動(Extravehicular Activity: EVA)というのは、大変なことなんだと感心する。

この記事自体は、2002年といささか古いが、宇宙ではいろいろなことが行われていたんだと認識を新たにする。

これらの装備や運用の中には、ダイビングにとっても参考になるものがあるに違いない。

一例を挙げれば、ヘルメットにつけたカメラがある。

(EMUライト/EMU TVカメラ)
http://iss.jaxa.jp/eva/eva02015.html#11

「EMU TVカメラはヘルメットに取り付けて使用するTVカメラで、関係者は船外活動実施者の視野と同じような映像を見ることができます。」

「映像は無線でスペースシャトルやスペースシャトルもしくはISS経由で地上に送られます。初期段階のスペースシャトルミッションの船外活動で試行的に使用された後、使われなくなっていましたがISS組み立て開始後に改良されたタイプが再び使われるようになりました。」

「トラブル発生時には、船内のクルーや地上の専門家がこのカメラからの映像を見ることにより、状況を素早く把握することができます。」

「また、船外活動クルーが見ているのと同じ映像を見ながら直接作業指示が出せるため、予定外の作業の追加や作業状況の確認が行えるなど、運用性は大きく改善されました。」

業務潜水の世界でも、こういうハイテクな設備が普及すれば、大いに作業効率や安全性の向上に寄与するだろう。

レジャーダイビングの世界にも、ハイテクな仕掛けがどんどん入ってくるに違いない。

浮沈子が個人的に欲しいと思っているのは、これ。

(EVA時のセルフレスキュー用推進装置(SAFER))
http://iss.jaxa.jp/eva/eva0204.html#9

「自ら飛行して宇宙船に帰還できるようにするための小型の推進装置」

「ハンドコントローラを宇宙服の胸の表示制御モジュール(DCM)部に装着することにより、片手で6自由度の制御を行うことができます。」

「SAFERは、13分間窒素ガスのスラスター(24基装備)を噴射することができ、元の場所に帰還したり、EVAクルーの姿勢を安定状態に戻すことができます。」

これで、フィンワークがへたっぴとか言われることもなく、水中を自由に動き回れるわけだ(重いけどな:38kg)。

まあいい。

宇宙空間と同じで、水中に持ち込んでしまいさえすればこっちのもんだ!。

水中スクーターの改良版ということで、アポロとか作んないかな。

二酸化炭素除去装置については、こんなページもあった。

(船外活動に制限時間はありますか?)
http://fanfun.jaxa.jp/faq/detail/211.html

「一般的には、酸素に関しては余裕があるため、酸素の残量はあまり影響しません。(必要であれば、エアロック内で酸素を補充することも可能です。)
むしろ、二酸化炭素の発生量とクルーの疲労の方が、残作業に大きく影響します。」

(第2章 有人宇宙活動に向けた生命維持システムの研究開発)
http://www.jspacesystems.or.jp/library/archives/jaros/space%20utilization%20view/h18_chapter2.pdf

「3.1.1 CO2 除去
大きく CO2 除去剤を再利用するか否かで、非再生型と再生型に分かれる。
○非再生型
*水酸化リチウム
吸着能力は高いが、使い捨て。送風以外の電力を要しない。キャニスタ等を含め約 2~3kg/人日が必要量である。再生型は 20~30kg/人なので、ミッション期間が10 日を超えるあたりから再生型が有利になる。初期の宇宙船やシャトルで主装置として運用された他、ISSでは緊急用バックアップとされている。
2LiOH+CO2 -> Li2CO3+H2O」

「○再生型
*固体アミン(液体アミンも有る。詳細は不明)
化学反応で除去するため、重量効率は再生型では最も高い。しかし、実用では結局反応面積が限られるため、極端に良いわけではない。水蒸気を必要とする。アミン臭がすると言われている。よって長期間運用には向かないであろう。
Amine+H2O+CO2 <-> Amine-H2O+CO2 <-> Amine-H2CO3
本方式はスペースシャトルのミッション延長用に実用化されている。ESAはEMを開発中である。旧宇宙開発事業団でEMの開発実績が有り、環境科学技術研究所では運用中である。
アミン自体が水を吸着するため、水溶性の有害ガス除去が可能だと期待されている。これにより現ISSでは3機能(CO2 除去、凝縮による水分除去、有害ガス除去)で行われているものが統合出来ると期待されている。」

「*ゼオライト
ゼオライトは二酸化炭素より、水分の吸着能力が高いため、図8に示すように前段に除湿が必須。よって連続動作には4筒((除湿筒+CO2 除去筒)x2)が必要となる。また脱着時に加熱と真空排気が必要。しかしゼオライト自身は無害であるため、長期運用には安全性の面でメリットが有る。Skylabで初めて用いられ、ISSで運用されているVozdukh(ロシア)とCDRA(米国)10)にも用いられている。旧航空宇宙技術研究所で研究実績が有り、JAXAでも研究を継続している。
今後は、真空排気を活用した低加熱タイプが要求され、ゼオライトの選択によって3機能の統合が目指されるであろう。」

「*酸化銀
ISSの宇宙服に用いられている。Metoxと呼ばれている。使用済みのMetoxキャニスターはISS内で熱処理され、再生される。
Ag2O+H2O+CO2 <-> 2AgOH+CO2 <-> Ag2CO3+H2O」

酸化銀かあ。

(酸化銀)
https://kotobank.jp/word/%E9%85%B8%E5%8C%96%E9%8A%80-70376

「湿った状態では二酸化炭素を吸収する。」

生成物の炭酸銀を見る。

(炭酸銀(I))
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%AD%E9%85%B8%E9%8A%80(I)

「熱分解により酸化銀(I)を経て単体の銀を与える。」

「比較的不安定であり、高純度の炭酸銀(I)の長期単離保存は容易でない。」

運用にはノウハウが必要なようだな。

CCRのスクラバーも、その辺の植え込みに捨てるとかじゃなくって、回収して再生利用とかするとカッコイイんだがな。

ただし、メトックスキャニスター(画像参照)にしても、再生には14時間とか掛かるらしいし、加熱にも電力を食うようだ。

(Z series (space suits))
https://en.wikipedia.org/wiki/Z_series_(space_suits)

「The Metox canister can be reused post-EVA but to do so takes fourteen hours and requires auxiliary equipment, crew time and significant electricity.」

まあ、当分の間は、怪しげな白い粉のお世話になるしかないだろうな。

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