地中海至上主義 ― 2017年01月15日 23:47
地中海至上主義
地磁気逆転という、今では小学生でも知っている現象は、地質学的に確認され、その概念を提唱した松山基範(まつやま もとのり)の名前を取って、最終逆転境界はブルンー松山境界と呼ばれている。
(シリーズ「南極・北極研究の最前線」 第7回)
http://kyokuchi.or.jp/?page_id=4233
浮沈子的には、まだ良く分からない気分なのだが、この時期が正確にはいつなのかについて、若干の議論があるようだな。
「本研究の特に画期的な点は,ブルン-松山境界に非常に近い火山灰層に注目したこと,新たに超高分解能で地層の古地磁気を測定したこと,および火山灰中のジルコン粒を一つずつ大量に測定したことで,これらの全ての面で既存の研究を上回る精度で地磁気逆転の年代を決めたことが今回の成果に繋がった」
この火山灰層を含む地層というのが、今話題の「千葉セクション」ということになる。
(チバニアン!?)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2016/03/06/8040771
以前、このブログでも取り上げている。
どうやら、決定時期は来年にずれ込みそうなもようだ。
(磁気逆転の77万~12万年前の年代命名で日伊がバトル 「チバニアン」に暗雲 地質年代の命名争い年内にも決着へ)
http://www.sankei.com/smp/life/news/170109/lif1701090006-s1.html
「イタリアは地中海のイオニア海に由来する「イオニアン」の名称を提案するが、地磁気のデータがどう評価されるかは不透明で、勝敗はもつれそうだ。国際地質科学連合への申請期限は5月末。数カ月後に最有力候補地が選ばれ、来年にも正式決定する見通しだ。」
「恐竜が絶滅した6600万年前以降の年代名は、大半が地中海沿岸の地名に由来する。日本チームを率いる岡田誠茨城大教授(古地磁気学)は「日本の名前を地球の歴史に刻み、地中海至上主義のような状況を変えたい」と話している。」
以前の記事から、6600万年以降の年代名をピックアップしてみよう。
「Stage:Numerical Age (Ma):GSSP Location(国名等):批准年(初回)
Cenozoic Era(新生代):
Quaternary System(第四紀):
・Holocene Series(完新世):
Holocene Stage:0.011784:Greenland:2008
Pleistocene Series(更新世):
・チバニアン?:0.77?:日本:(提案中)
(Ionian Stage:0.781:Italy:(提案中))
・Calabrian Stage:1.80:Italy:1985
・Gelasian Stage:2.58:Italy:1996」
グリーンランド(デンマーク?)1、イタリア2(提案中1)、日本1(うち提案中1)
「Neogene System(新第三紀):
Pliocene Series(鮮新世):
・Piacenzian Stage:3.6:Italy:1997
・Zanclean Stage:5.333:Italy:2000
Miocene Series(中新世):
・Messinian Stage:7.246:Morocco:2000
・Tortonian Stage:11.63:Italy:2003
・Serravallian Stage:13.82:Malta:2007
・Aquitanian Stage:23.03:Italy:1996」
モロッコ1、マルタ1、イタリア4
「Paleogene System(古第三紀):
Oligocene Series(漸新世):
・Rupelian Stage:33.9:Italy:1992
Eocene Series(始新世):
・Lutetian Stage:47.8:Spain:2011
・Ypresian Stage:56.0:Egypt:2003
Paleocene Series(暁新世):
・Thanetian Stage:59.2:Spain:2008
・Selandian Stage:61.6:Spain:2008
・Danian Stage:66.0:Tunisia:1991」
イタリア1、スペイン3、エジプト1、チュニジア1
言われてみれば、確かに地中海周辺が多い。
16年代中、14年代が地中海諸国だ(違うのは、グリーンランドと、今回日本が提案中の案件だけ)。
まあ、モロッコはビミョーだけどな。
地質学の研究の厚みが違うんだろう。
浮沈子とかは、別にどこでも、学術的に有用なら構わないと思っている。
変なご当地主義が入り込まないように、しっかりと議論してもらいたいものだ。
当初は2016年中に決まると思われていたけど、正式決定は来年にずれ込みそうだ。
こんな、ジミーでカルトな話が一般紙に掲載されること自体が不思議な気がする。
観光資源として期待する向きもあるかもしれない(付近には、ホント何もないしな)。
養老温泉とは、ちょっと離れている。
河原からアクセスするので足場も悪い。
変な感じになるよりは、日本が外れてしまった方がいい気もする(非国民!)。
「地磁気のデータがなく苦戦していた南部モンテルバーノ・イオニコの地層で、放射性元素を調べる間接的な手法で地磁気逆転を推定できたと学会で発表。ここは環境データなどは日本より充実しており、総合評価で上回ったとの見方が強まった。」
なんか、イタリアでいいような気もするけどな。
地質年代の決定だから、地磁気が直接観測できるかどうかは、二次的要素のような気がしている。
「海底で連続的に積もってできた安定性があり、当時の環境や地磁気の変化が分かるなどの条件を複数満たす必要がある。」
地磁気は、複数の要件の一つに過ぎない。
が、まあ、あとからとってつけたような環境データを追加することで、全体としての評価が高まるならそれはそれでいい。
「日本は環境データを補強するため、地層に含まれる花粉などを調べた新たな論文の作成に入っており、今月中にも学術誌に投稿する。」
「チームは「かなり詳細なデータで、これで日本に目立った弱点はなくなる」と自信をみせる。」
なんか、主客逆転のような気もするんだがな。
そうはいっても、極東の島国の地層が、国際標準模式地として認定され、ゴールデンスパイクが打ち込まれることになれば目出度い話ではある。
しかし・・・。
地中海至上主義的認定には、それなりの理由があるはずだろう。
最近の地質年代において、地中海で代表的な地層が多く認定されているということは、それだけ造山運動などの地殻の動きが活発ということもある。
(地中海:地中海の形成)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E4%B8%AD%E6%B5%B7#.E5.9C.B0.E4.B8.AD.E6.B5.B7.E3.81.AE.E5.BD.A2.E6.88.90
別に、文化論的に捉えるような問題じゃない。
人類の財産としての代表的地層として、相応しいものを選ぶべきだ。
それが地球市民としての、正しい期待の持ち方というべきだろう・・・。
(国際標準模式層断面及び地点:追加)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%A8%99%E6%BA%96%E6%A8%A1%E5%BC%8F%E5%B1%A4%E6%96%AD%E9%9D%A2%E5%8F%8A%E3%81%B3%E5%9C%B0%E7%82%B9
「GSSPを設定するには以下の5つの条件が必要とされる。
1境界の名称と層序階級
・GSSPの定義を簡潔に明文化すること
2 GSSPの地理的位置および地層の状態
・地理的な位置を地図座標を用いて示すこと
・岩層層序など地質学的な位置づけを示すこと
・模式境界の正確な場所および層準を明確な点として示すこと
・模式境界の層準を挟んで層序の欠落がないこと
・模式層序・境界位置を含む層序断面に十分な厚みがあり、上下に地層が連続していること
・露頭までの道路状態、その国の政治状況、土地の所有権に問題がなく露頭まで容易に近づけること
・露頭の保護・保全のための対策が行われていること
3 一次・二次指標
・GSSPを特徴づける対比指標には、最も重要な地質学的事件(特定の化石種の出現など)を充てること
・他の一次指標および二次指標を示すこと
・火山灰層や天文学的周期性(ミランコビッチ・サイクルなど)により数値年代が決定可能であること
・地域的な対比や世界的な対比が示されること
4 選定過程の概要の提示
5 公式な出版物(IUGSの季刊誌Episodes、でなければICSの季刊誌Lethaiaなど適切な科学雑誌)への掲載
地磁気逆転という、今では小学生でも知っている現象は、地質学的に確認され、その概念を提唱した松山基範(まつやま もとのり)の名前を取って、最終逆転境界はブルンー松山境界と呼ばれている。
(シリーズ「南極・北極研究の最前線」 第7回)
http://kyokuchi.or.jp/?page_id=4233
浮沈子的には、まだ良く分からない気分なのだが、この時期が正確にはいつなのかについて、若干の議論があるようだな。
「本研究の特に画期的な点は,ブルン-松山境界に非常に近い火山灰層に注目したこと,新たに超高分解能で地層の古地磁気を測定したこと,および火山灰中のジルコン粒を一つずつ大量に測定したことで,これらの全ての面で既存の研究を上回る精度で地磁気逆転の年代を決めたことが今回の成果に繋がった」
この火山灰層を含む地層というのが、今話題の「千葉セクション」ということになる。
(チバニアン!?)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2016/03/06/8040771
以前、このブログでも取り上げている。
どうやら、決定時期は来年にずれ込みそうなもようだ。
(磁気逆転の77万~12万年前の年代命名で日伊がバトル 「チバニアン」に暗雲 地質年代の命名争い年内にも決着へ)
http://www.sankei.com/smp/life/news/170109/lif1701090006-s1.html
「イタリアは地中海のイオニア海に由来する「イオニアン」の名称を提案するが、地磁気のデータがどう評価されるかは不透明で、勝敗はもつれそうだ。国際地質科学連合への申請期限は5月末。数カ月後に最有力候補地が選ばれ、来年にも正式決定する見通しだ。」
「恐竜が絶滅した6600万年前以降の年代名は、大半が地中海沿岸の地名に由来する。日本チームを率いる岡田誠茨城大教授(古地磁気学)は「日本の名前を地球の歴史に刻み、地中海至上主義のような状況を変えたい」と話している。」
以前の記事から、6600万年以降の年代名をピックアップしてみよう。
「Stage:Numerical Age (Ma):GSSP Location(国名等):批准年(初回)
Cenozoic Era(新生代):
Quaternary System(第四紀):
・Holocene Series(完新世):
Holocene Stage:0.011784:Greenland:2008
Pleistocene Series(更新世):
・チバニアン?:0.77?:日本:(提案中)
(Ionian Stage:0.781:Italy:(提案中))
・Calabrian Stage:1.80:Italy:1985
・Gelasian Stage:2.58:Italy:1996」
グリーンランド(デンマーク?)1、イタリア2(提案中1)、日本1(うち提案中1)
「Neogene System(新第三紀):
Pliocene Series(鮮新世):
・Piacenzian Stage:3.6:Italy:1997
・Zanclean Stage:5.333:Italy:2000
Miocene Series(中新世):
・Messinian Stage:7.246:Morocco:2000
・Tortonian Stage:11.63:Italy:2003
・Serravallian Stage:13.82:Malta:2007
・Aquitanian Stage:23.03:Italy:1996」
モロッコ1、マルタ1、イタリア4
「Paleogene System(古第三紀):
Oligocene Series(漸新世):
・Rupelian Stage:33.9:Italy:1992
Eocene Series(始新世):
・Lutetian Stage:47.8:Spain:2011
・Ypresian Stage:56.0:Egypt:2003
Paleocene Series(暁新世):
・Thanetian Stage:59.2:Spain:2008
・Selandian Stage:61.6:Spain:2008
・Danian Stage:66.0:Tunisia:1991」
イタリア1、スペイン3、エジプト1、チュニジア1
言われてみれば、確かに地中海周辺が多い。
16年代中、14年代が地中海諸国だ(違うのは、グリーンランドと、今回日本が提案中の案件だけ)。
まあ、モロッコはビミョーだけどな。
地質学の研究の厚みが違うんだろう。
浮沈子とかは、別にどこでも、学術的に有用なら構わないと思っている。
変なご当地主義が入り込まないように、しっかりと議論してもらいたいものだ。
当初は2016年中に決まると思われていたけど、正式決定は来年にずれ込みそうだ。
こんな、ジミーでカルトな話が一般紙に掲載されること自体が不思議な気がする。
観光資源として期待する向きもあるかもしれない(付近には、ホント何もないしな)。
養老温泉とは、ちょっと離れている。
河原からアクセスするので足場も悪い。
変な感じになるよりは、日本が外れてしまった方がいい気もする(非国民!)。
「地磁気のデータがなく苦戦していた南部モンテルバーノ・イオニコの地層で、放射性元素を調べる間接的な手法で地磁気逆転を推定できたと学会で発表。ここは環境データなどは日本より充実しており、総合評価で上回ったとの見方が強まった。」
なんか、イタリアでいいような気もするけどな。
地質年代の決定だから、地磁気が直接観測できるかどうかは、二次的要素のような気がしている。
「海底で連続的に積もってできた安定性があり、当時の環境や地磁気の変化が分かるなどの条件を複数満たす必要がある。」
地磁気は、複数の要件の一つに過ぎない。
が、まあ、あとからとってつけたような環境データを追加することで、全体としての評価が高まるならそれはそれでいい。
「日本は環境データを補強するため、地層に含まれる花粉などを調べた新たな論文の作成に入っており、今月中にも学術誌に投稿する。」
「チームは「かなり詳細なデータで、これで日本に目立った弱点はなくなる」と自信をみせる。」
なんか、主客逆転のような気もするんだがな。
そうはいっても、極東の島国の地層が、国際標準模式地として認定され、ゴールデンスパイクが打ち込まれることになれば目出度い話ではある。
しかし・・・。
地中海至上主義的認定には、それなりの理由があるはずだろう。
最近の地質年代において、地中海で代表的な地層が多く認定されているということは、それだけ造山運動などの地殻の動きが活発ということもある。
(地中海:地中海の形成)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E4%B8%AD%E6%B5%B7#.E5.9C.B0.E4.B8.AD.E6.B5.B7.E3.81.AE.E5.BD.A2.E6.88.90
別に、文化論的に捉えるような問題じゃない。
人類の財産としての代表的地層として、相応しいものを選ぶべきだ。
それが地球市民としての、正しい期待の持ち方というべきだろう・・・。
(国際標準模式層断面及び地点:追加)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%A8%99%E6%BA%96%E6%A8%A1%E5%BC%8F%E5%B1%A4%E6%96%AD%E9%9D%A2%E5%8F%8A%E3%81%B3%E5%9C%B0%E7%82%B9
「GSSPを設定するには以下の5つの条件が必要とされる。
1境界の名称と層序階級
・GSSPの定義を簡潔に明文化すること
2 GSSPの地理的位置および地層の状態
・地理的な位置を地図座標を用いて示すこと
・岩層層序など地質学的な位置づけを示すこと
・模式境界の正確な場所および層準を明確な点として示すこと
・模式境界の層準を挟んで層序の欠落がないこと
・模式層序・境界位置を含む層序断面に十分な厚みがあり、上下に地層が連続していること
・露頭までの道路状態、その国の政治状況、土地の所有権に問題がなく露頭まで容易に近づけること
・露頭の保護・保全のための対策が行われていること
3 一次・二次指標
・GSSPを特徴づける対比指標には、最も重要な地質学的事件(特定の化石種の出現など)を充てること
・他の一次指標および二次指標を示すこと
・火山灰層や天文学的周期性(ミランコビッチ・サイクルなど)により数値年代が決定可能であること
・地域的な対比や世界的な対比が示されること
4 選定過程の概要の提示
5 公式な出版物(IUGSの季刊誌Episodes、でなければICSの季刊誌Lethaiaなど適切な科学雑誌)への掲載
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。
※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。