🐼自信がなければ期限を切ったりはしない:はずだったんだがな:我笛吹けどH3は飛ばず2022年01月21日 22:40

自信がなければ期限を切ったりはしない:はずだったんだがな:我笛吹けどH3は飛ばず


(H3ロケット試験機1号機、2021年度の打ち上げを見合わせ)
https://sorae.info/space/20220121-h3.html

「今回の再延期の発表は、問題の対応に一定の目途がついたものの、確実な打ち上げを実施するためとしており、新たな不具合や問題が発生したことなどは、発表されていません。」

ホントかあ?。

じゃあ、これは何なんだあ?。

(H3ロケット第1段エンジン(LE-9)の開発状況について)
https://www.jaxa.jp/press/2022/01/files/20220121-1.pdf

「試験機2号機以降で使用する3D造型噴射器については、実証データを増すとともに最終設計での機能・性能を検証するため、技術データ取得燃焼試験を追加実施する予定。」

燃焼室の異常高温による開口部(穴!)の発生については、1号機は飛ばせそうだが、2号機以降の目途は全く立っていないということなのではないか。

2号機から使う予定の3Dプリンターで作られた燃料噴射装置で、穴が開かないような運用に変更した後の試験はこれからだ。

そもそも、機械加工した燃料噴射装置じゃ何故ダメなのかが分からない(1号機はテストフライトの位置付けだからな)。

2号機以降が飛ばない可能性も十分ある。

トラブル本命の燃料側ターボポンプは、もっと悲惨だ。

少しまとめる。

・液体水素ターボポンプ(FTP)
・・今までの問題(第2段動翼:タービンブレードのひび割れ)→全面設計変更で改善
・・新たな問題→第1段タービンディスク部に振動(<さらにさらに追加>参照)

・液体酸素ターボポンプ(OTP)
・・新たな問題→振動応答(課題として顕在化していない、タービン入口部の流れの不均一性等に起因すると推定)を新たに把握

新たな不具合や問題の発生がないなどというのは嘘っぱちだ。

そりゃあ、S社のように打ち上げては壊しするのがいいとは言わないけど、問題を解決しようとすればするほど新たな問題が表面化してくる感じだ。

タービンなどの回転体に固有振動が出ることは普通だし、その共振域を避けて運用することも特殊な対応じゃない。

しかし、そういうのは、もっと早くから対策して目途をつけておかなければならないはずだがな。

この後、ロケットに組み込んで試験すれば、また、新たな問題が顕在化する可能性もある。

海の向こうでは、SLSが同じような状況でスタックしている。

何時になったら飛び上がるのか?。

(H3ロケットの試験機1号機の打上げについて)
https://www.jaxa.jp/press/2022/01/20220121-1_j.html

「一方で、ターボポンプの翼の振動データから、その他にも配慮すべき事象も確認され・・・」

新たに生じた問題と言った方が分かりやすいんじゃね?。

LE-9エンジンは、余り素性のいいエンジンじゃない。

大出力化し辛い形式のエンジンを、むりくりパワーアップしようとしている。

もちろん、それが出来れば技術の勝利なんだろうが、そこには当然困難が伴う。

岡田プロマネは、改善できる自信がなければ、1年という期間を切ったりしないと豪語していたからな。

(H3ロケット開発を襲った“魔物”とは?、エンジンに見つかった技術的課題)
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20200924-1332582/2

「だが、H3ロケットを徹底的にいいものに仕上げることが大事だと考えている。2021年度に打ち上げるということも、(今回起きた問題への対処などに)自信がなければ言わない。この目標を狙い、これから起こりうるさまざまなリスクを下げながら、しっかりやっていきたい。全力を尽くして、H3ロケットを運用に入れ、使命を果たせるようにしたい」

今回は、いつまで延期されるかという点については発表がない。

2年になるのか、3年になるのか。

それとも永遠に飛ばないのか。

まさか、飛ばして爆発させるとか(そんなあ!)。

三菱(ターボの方はIHI?)は、できます、って言っちゃったんだろう。

新しいロケットエンジンは難しい。

海の向こうでは、ブルーオリジンも苦労している。

我笛吹けど、汝ら飛ばずというところかな・・・。

<以下追加>ーーーーーーーーーー

(JAXA新型ロケット「H3」1号機打ち上げを2022年度以降に延期 新型エンジンの開発状況は)
https://news.yahoo.co.jp/byline/akiyamaayano/20220121-00278394

「会見の印象ではあるが、岡田PMの説明は全体に対応に手間のかかる、エンジン内の不安要素をひとつひとつ潰していくことに時間がかかっている、と感じられた。」

秋山さんらしい丁寧な解説記事だが、慌てて上げたのでミスプリも多い(たぶん、修正されると思われるのでここでは書かない)。

確実に前進しているという印象だが、その歩みは遅い。

対応は手堅く、冒険的な要素はないけど、どこかで見極めて飛ばすしかないだろう。

一方で、使い捨てとはいえ、動いている間に壊れてしまっては元も子もない。

過剰な性能や耐久性はいらない(重くなっちゃうしな)。

燃焼が終わった3秒後に壊れてくれるのが丁度いい(そうなのかあ?)。

逆に、1秒前に壊れてしまっては、ペイロード(この場合は2段目以降)を軌道に上げることはできない。

針の穴を通すビミョーな匙加減が必要なわけだ。

今回新たに発見された要素も、きちんと評価して、対応すべきとされて、その結果、延期という形になった。

そうでない話が、他にもあったかどうかは知らない。

たぶん、あったかも知れない。

それらは、対応の必要なしと評価され、部外者には知られることなく、無視されるか継続監視されることになる。

今回の会見や資料に出ているのは、氷山の一角と認識すべきだろう。

国家の基幹ロケットのメインエンジンの信頼性や性能は重要だ。

国の宇宙政策に対する影響は計り知れない。

それが、安定して高性能を発揮し、アプリケーションとしての衛星や探査機を次々と打ち上げてくれるから、偉い人たちは世界で大きな顔が出来るわけだからな(そういうことかあ?)。

少々投入の時期が遅れても、いきなりぶっ壊れて、空中でド派手な花火となるよりは余程いい。

「打ち上げを待っている「だいち3号」は、国土全体を観測するという重要なミッションを控えていて遅延が歓迎されるわけではないが、ここは待つしかない正念場のようだ。」

来年度に上がるかどうかはビミョーだな・・・。

<さらに追加>ーーーーーーーーー

(JAXA 日本の新たな主力ロケット「H3」の打ち上げ延期 正式発表)
https://www.asablo.jp/app?cmd=edit&target_fqdn=kfujito2.asablo.jp&target_path=/blog/2022/01/21/9457922

「新型エンジンにある燃料を送り込む機器などで生じた最初のトラブルはほぼ対処できたが、その後、機器の内部で新たな振動が確認され、対策をする必要が生じた」

JAXAも新たな問題として認識している感じなんだがな。

「打ち上げビジネスで海外と競争できるロケットを目指しています。」

政府系の打ち上げ費用は、税金で賄われるから公表されるが、S社など透明性が高い企業でも、民間の打ち上げコストは闇の中だ。

そっちで競争力を発揮して、その分のツケを政府系の打ち上げで辻褄を合わせたりするわけだから、納税者はたまらんな(まあ、そういうのは、どこの国でも同じですが)。

SLSと違って、H3には公共事業としての公平性や普遍性の位置付けはない。

三菱重工の宇宙航空機部門のおひざ元(名古屋周辺?)とか、IHIの拠点(福島県?)には恩恵があるかも知れないけどな(未確認)。

まあいい。

我が国の3周遅れの宇宙開発が、世界市場でまともに競争できると信じている人は、当事者を含めて誰もいないだろう。

途上国の衛星打ち上げにしたって、援助絡みで打ち上げるのがオチだ。

市場で競争して勝ち取ったわけじゃない。

ポストH3は、ひょっとすると1段目の再使用を狙うかも知れない。

ものになるとしても、2030年代だろう。

その頃には、目標としていたファルコンシリーズは、そろそろ引退ということになっているに違いない(スターシップの有人化が見えてくるからな)。

そんな先のことを心配しても仕方ない。

S社ネタを追いかけていると、ULAやブルーオリジンがもどかしく感じられるけど、彼らにしたって、我が国に比べればはるか彼方を走っているわけだからな。

戦後、航空機や宇宙ロケットの開発を禁じられ、出足を削がれた恨みはあるが、初の人工衛星を打ち上げた頃は、中国と同等だったわけだからな。

今や、中国は米国の後ろにピタリと付けている。

2030年代には、民間主導の新たな宇宙ステーションが稼働を始めるかもしれない。

H3は、そんな時代を飛ぶことになるロケットなわけだ。

やれやれ・・・。

<さらにさらに追加>ーーーーーーーーーー

(H3ロケット 1 段エンジン LE-9 ターボポンプの開発)
https://www.ihi.co.jp/var/ezwebin_site/storage/original/application/47ef12dc1c5243831583c126ed553e17.pdf

岡田プロマネの過去の自信に満ちた発言を探して、鳥嶋さんの記事に辿り着いたんだが、ついでに引用元を読み直したら、IHIのターボポンプの記事の中に以下の記述を見つけた。

「4. LE-9 エンジンターボポンプ単体試験:
・・・
4. 3 自励振動の抑制:
FTP は実機型の試験に先立ち,原型モデルでのターボポンプ試験を実施している.」

「原型モデル試験では,ロータ系がアキシャル方向に大きく振動する事象が発生した.」

今回、認定試験モデルでフラッタ(自励振動)が確認されたわけだが、原型モデルでも発生してたわけだ(同じ現象かどうかは未確認)。

「振動の要因はロータ位置調整機構の減衰比不足による自励振動と推定される.」

「このため,実機型では減衰比を設計評定としてターボポンプの内部循環設計を実施した結果,原型モデルで発生していた自励振動は抑制され,安定した定常性能を示すことを確認した.」

この段階では、何らかの振動減衰機構が組み込まれている。

JAXA資料では、振動対策として、

①加振源の調整
②固有値の調整
③減衰力の強化(IHIの記事によれば、実機型ではLE-7Aに比べて軸長が短縮されているので削除とある。)

が示されている。

実機型のターボポンプに施した設計変更が不十分だったのか、はたまた、他の原因で起こったのかは知らない。

IHIの記事を読むと、手抜きとコスト削減のオンパレードのように感じる(そうなのかあ?)。

まるで、ベンツがコスト削減を宣伝していた頃の記事を読むようだ。

この時点(2017年ころ?)までは、新たな設計開発手法が功を奏し、順風満帆だったわけだ。

「最適化設計アプローチ」とやらで頭でっかちになっちまって、手間暇かけて現物動かしてデータを集めるプロセスが軽視されているのではないか。

世の中が計算通りに動くなら、天気予報はもっと当たってもいいと思うんだがな・・・。

<また追加>ーーーーーーーーーー

(H3ロケット、初号機打ち上げ再延期 主エンジンに新たな課題)
https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20220124_n01/

内容的に目新しいことはないんだが、読みやすい良質の記事だったのでリンクした。

「燃焼室の穴は、燃焼中に高温を繰り返すことで内壁が変形して生じたことが判明。温度を抑えるなどして対策を確立した。ターボポンプの羽根は特定の状態で振動が増幅する「共振」が原因であることが判明し、羽根の設計を変更して解決した。」

「ところが、ターボポンプ内のタービンの土台部分に異常な振動が生じていることが、新たに発覚。また並行して、酸化剤として用いる酸素用のターボポンプも調べたところ、別のタイプの振動が判明した。」

「新たに発覚」とか、「別のタイプの振動が判明」したわけだから、ソラエの記事にある「新たな不具合や問題が発生したことなどは、発表されていません。」という記述は妥当じゃない。

JAXAの発表も、他の媒体の受け止めも、既知の問題の解決のプロセスの中で、「新たな不具合や問題が発生した」という点では一致している。

そうでなければ、今回の延期を正当化することはできないに違いない。

「エンジン開発の全体からすると、あと一歩。慎重かつ確実に仕留めないといけない。皆目見当がつかないという状況ではない。」

うーん、1年前も同じようなニュアンスだったからなあ・・・。

「第2段エンジンで用いてきた日本独自の燃焼方式「エキスパンダーブリード式」をLE9に初採用する。従来の「2段燃焼式」に比べ、燃費をわずかに犠牲にする代わりに部品数を大幅に減らし、仕組みや制御を簡素化。H3の低コスト化の切り札とする狙いがある。」

LE-9の特徴を端的に表現している。

他国が手を出さないのは、高出力化に伴う技術的な壁があることが分かっているからだ。

それを乗り越えることが出来れば、低コストで本質的に安全なエンジンが手に入るけど、たとえば更に高出力化を狙うとかいうわけにはいかないかも知れない(未確認)。

今回も、ピンポイントで最適設計し、ギリギリのところを狙っている。

敢えて言えば、先がないエンジンなわけだ。

H3止まり・・・。

機械的、熱的負荷が小さいということは、単純に考えれば再使用エンジンにも向いている気がするけど、その辺りの話は聞こえてこないからな。

有人化を見据えているという話は出ているが、ロケット自体の設計から始めなければならないし、現在は3基のクラスターを組んでいるけど、必要な出力を得るには、4基とか5基に増やさなければならないだろう。

仮に3基のままで、固体燃料ブースターの使用を前提とするなら、SLSのように、その加速を上回る緊急脱出ロケットを装備しなければならない。

H3やLE-9の開発は、岡田プロマネが言うように、大詰めを迎えようとしている。

「技術に向き合い、志は変わらず、一点の曇りもなく打ち上げの日を迎えたい」

美しい言葉だが、物理の神さまがそれに感じ入って手加減してくれるわけではないからな。

このロケットやエンジンは、どっちかと言えば商売の神様の方に色目を使っている。

部品点数を減らし、制御を簡略化し、製造工程も見直し、材料も安物で間に合わせる・・・。

もちろん、コストを削減することは、悪いことではない。

高い技術力がなければ、必要とされる信頼性を確保しつつ、それを実現することはできない。

開発工程でも、最適化設計で手間を省こうとしている。

魔物は、そこに潜んでいたという感じだな(そうなのかあ?)。

実機をぶん回してデータ取りをしなければ、最終的なゴーサインは出せない。

使い捨てだから、通常は回収して解析するわけにもいかないしな。

とりあえず飛ばしてから考えるという、S社的アプローチは無しだ。

で、たぶん、今回新たに判明したFTPやOTPの振動を解決し、燃焼室の温度制御を実現する燃料噴射装置の3D成形バージョンが投入される頃になると、またまた新たな問題が噴出しているかもしれないのだ。

やれやれ・・・。