浮力調整装置 ― 2014年07月01日 10:30
浮力調整装置
CCRの浮力調整が、特に困難ということはないのだが、オープンサーキットの呼吸による浮力調整に慣れたダイバーにとっては、器材運用の最大のネックの一つであることは間違いない。
さらに、ダイバーの高齢化や、ビギナーダイバーがいきなりCCRを使い始めることを想定すると、自動浮力調整装置の実現が待たれる。
本稿は、CCRの基本機能を発展させて、浮力調整をコンピューター制御によって行おうとする仕組の概要を記す。
CCRは、深度を検知するセンサー、ディリュエントガス、手動で深度を調整するBC、各種の情報を表示する液晶モニターなどを構成要素として持っている。
また、これらのデバイスを監視し、一部を制御するコンピューターを備えている。
実際のリブリーザーの浮力調整の操作に於いては、BCへの給気またはBCからの排気を行って凡その中性浮力を得た後、呼吸回路内のガスの体積を微妙に増減させて動的に浮力調整を行っている。
今回、考察するのは、この呼吸回路内の微調整に係る部分を自動調整し、機械的に中性浮力を維持することである。
その前提としては、BCによって、概ね適正な浮力調整が行われていることが必要である。
また、浮上や潜行など、BC内のガスを出し入れしなければならない大きな浮力の変化を伴う場合は、この機能を実現することはできない。
微小浮力調整に必要なデバイスは、ディリュエントガスのソレノイドバルブ、呼吸回路から排気を行うための電磁弁、コントロールに必要な演算を行うプロセッサー及びそのためのアプリケーション等であるが、コンピューターに自動浮力調整の開始及び解除を指示するための何らかのスイッチが必要となるかもしれない。
あるいは、デフォルトで条件を設定し、ある条件(深度の変化が少ない状況が一定時間以上経過するなど)を満たすと、自動で浮力調整が起動し、ダイバーのBC操作等により深度の変化が生じると解除されるといった仕組もあり得る。
ともあれ、浮力調整が起動すると、深度センサーの変化を元に、コンピューターは呼吸回路内の適切なガスの量を維持するために、ディリュエントガスを噴射、または電磁弁を開いて呼吸回路内のガスを水中に排出する。
通常、深度が一定ならば、環境圧と呼吸回路内の圧力はバランスしているため、排気に当たっては何らかの方法で能動的な加圧を行う必要がある。
ダイバー自身が行うマニュアルの操作では、排気は、ダイバーの肺を胸筋の動きによって加圧し、鼻腔から、マスクという逆止弁を介して行う。
仮に排気のための装置が複雑高価になるようなら、この部分はダイバーによるマニュアル操作とし、そのための指示をヘッドアップディスプレイのライトの点滅等でダイバーに知らせることによって行うことも考えられる。
微小浮力調整の必要な浮力の変化は、CCRの場合、消費された酸素の加給、二酸化炭素の除去、呼気中の水蒸気の凝結により、連続的または断続的に起こっていて、動的に管理しなければならない。
BCによる浮力調整は、ガス量の変動が大きく、浮力の変化を動的にコントロールすることが困難である。
カウンターラング内のガスの体積を調整する方法は、そのガス源をディリュエントガスに依存するので、PO2の変化を招き、酸素側のソレノイドバルブの作動を引き起こす。
呼吸ガスの管理上も好ましくない。
したがって、可能ならば、BC内のガスの体積を変化させるのが上策である。
元々、BCのガスはディリュエントを使用しているので、ガスの量の管理には問題はない。
排気についても、BC内のガスは、常に上方へは排気可能であり、さらに多少の浸水は許容する。
微小な給気を可能とするソレノイドバルブからのガスをBCへと送り込み、小径の電磁弁を作動させて排気すれば、呼吸回路で調整するよりも良好な結果が得られる可能性がある。
さらに、呼吸回路やBCとは別個の浮力体を携行し、中圧ホースと制御信号(及び動作電力)を送る形にすれば、オプション品としての販売も可能となる。
繰り返しになるが、この仕組は、あくまで微小浮力の調整が目的であり、使用するシーンは限られている。
潜水プロファイル全ての浮力を管理するには、給気側に電磁弁を配する必要があり、誤作動等によるリスクが高まることを考慮しなければならない。
別体型の浮力調整機の場合、バンジー等によって、排気時の動作をスムーズに行うことも考えられる。
これらの方式に共通する設計思想は、コントロールをCCRのコンピューターに依存する点である。
深度計やガス源、計算資源、電力源をCCR側と共用し、最小限のデバイスを追加して、限られた条件の下で実装を図ろうということである。
コアの技術は、これまで経験と勘に頼っていた浮力コントロールを、コンピューターに外部化し、中性浮力近傍のダイバーの労力を軽減して、その注意力を他の危険回避に振り向けることによって、総合的な安全強化を図るものである。
この機能を実現するために、既存の資源を侵害枯渇させることがないように、電源、コンピューターの計算能力、メモリー、その他のデバイスには、必要な増強を施す。
実装方法については、さらに詳細な検討が必要であるが、浮沈子は十分実現可能であると考えており、将来は潜行浮上を含めたトータルな浮力調整を、ジョイスティックを操作するだけで実現することも想定している(DPVとの連動もありか)。
3次元加速度センサー、水圧センサー等を利用して、水中での現在位置を推定することは現段階でも可能である。
現在位置を3次元的に特定して、水中マップのデータと照合し、行きたい場所を指示すれば、そこへ自動的に移動する仕組を構築することもできるだろう。
そんなダイビングの、どこが面白いのか、そんなもんが、ファンダイビングといえるのか。
それは、現在のダイバーが判断することではない。
現在のダイバーは、経験を積み、勘を磨き、必死こいて泳げばいいのだ。
かつて、BCが登場する前、ハーネスだけで潜り、フィンキックと肺の容積のコントロールで浮力調整をしたように。
我々がかつてのダイビングを見るように、未来のダイバーは、現在の我々を見ることだろう。
BCに手動で給気したり、水面を仰いで安全確認しながら浮上したり(これは、変わらないだろうが)、中性浮力に悩んだり、浮上速度や潜行速度を気にしたりするダイビングを見て、なんと思うだろうか。
それらは、ダイビングの楽しさの本質ではない。
美しい、珍しい魚を見たり、水中での浮遊感を味わったり、3次元の空間を、自由に移動したりすることが楽しいのだ。
光の殆ど届かない深い海の底へ行ったり、どこまで続くか想像もつかない水中洞窟を探検したり、巨大な沈船の中を彷徨ったりすることが楽しいのだ。
ダイビングの安全、危機管理を、コンピューターに委ね、潜水技術も可能な限り委ねて、レジャーとしての楽しみの本質だけ追求して、なぜ悪いのか。
BCに浮力の調整を頼るのと、何がどう違うというのか。
覚えが悪く、直ぐに忘れ、過ちを犯し、あろうことか、都合が悪くなると他人のせいにする(ん?、誰のことかなあ?)。
そんな、人間などという不安定なデバイスに、安全管理や危機管理を期待して、本当にいいのか。
本気で安全を追求する気があるのか。
実際問題として、当面の対策としては、人間を教育・訓練していくしか手立てはないだろう。
しかし、同時並行で、安全に繋がる器材の開発や、ゲレンデの整備も必要だ。
電波法の規制で、小型のダイバ-用電波発信機が使えないと聞いた。
水中で酸素(21パーセントを超える酸素濃度のナイトロックス含む)を吸うことについて、当局の規制が未だにあるという。
電波発信機はともかく、CCRは水中で純酸素とディリュエントガスから、ナイトロックスやトライミックスなどをブレンドしてダイバーに吸わせる機械だ。
本来なら、取締りの対象となってもおかしくない、グレーゾーンの器材である。
ちょっとアウトローな気分になりながら、先進の器材でダイビングするのもいいかも知れない。
浮力調整装置は、日の目を見ないで終わる可能性が高い。
浮沈子は、CCRの浮力調整に苦心したが、今思えば、楽しい日々でもあった。
ダイビングの安全確保や危機管理にしても、限られた資源の中で、どうやりくりして実現するかを考えたり、試してみたりすることが楽しいのだ。
こんなニッチで儲からない商売に、投資をしようなどという日本企業が出てこないのは、ある意味で健全であるな。
水中という隔絶した世界に、限られたガスしか持ち込めないことに慣れているダイバーは、きっと、浮力調整装置なんかには見向きもしないだろう。
それはそれでいい。
CCRの可能性は、きっと他にもある。
浮沈子には、まだ見えていないだけかもしれない。
CCRの未来は輝いている。
眩しくて、見えないだけなんだろうな。
CCRの浮力調整が、特に困難ということはないのだが、オープンサーキットの呼吸による浮力調整に慣れたダイバーにとっては、器材運用の最大のネックの一つであることは間違いない。
さらに、ダイバーの高齢化や、ビギナーダイバーがいきなりCCRを使い始めることを想定すると、自動浮力調整装置の実現が待たれる。
本稿は、CCRの基本機能を発展させて、浮力調整をコンピューター制御によって行おうとする仕組の概要を記す。
CCRは、深度を検知するセンサー、ディリュエントガス、手動で深度を調整するBC、各種の情報を表示する液晶モニターなどを構成要素として持っている。
また、これらのデバイスを監視し、一部を制御するコンピューターを備えている。
実際のリブリーザーの浮力調整の操作に於いては、BCへの給気またはBCからの排気を行って凡その中性浮力を得た後、呼吸回路内のガスの体積を微妙に増減させて動的に浮力調整を行っている。
今回、考察するのは、この呼吸回路内の微調整に係る部分を自動調整し、機械的に中性浮力を維持することである。
その前提としては、BCによって、概ね適正な浮力調整が行われていることが必要である。
また、浮上や潜行など、BC内のガスを出し入れしなければならない大きな浮力の変化を伴う場合は、この機能を実現することはできない。
微小浮力調整に必要なデバイスは、ディリュエントガスのソレノイドバルブ、呼吸回路から排気を行うための電磁弁、コントロールに必要な演算を行うプロセッサー及びそのためのアプリケーション等であるが、コンピューターに自動浮力調整の開始及び解除を指示するための何らかのスイッチが必要となるかもしれない。
あるいは、デフォルトで条件を設定し、ある条件(深度の変化が少ない状況が一定時間以上経過するなど)を満たすと、自動で浮力調整が起動し、ダイバーのBC操作等により深度の変化が生じると解除されるといった仕組もあり得る。
ともあれ、浮力調整が起動すると、深度センサーの変化を元に、コンピューターは呼吸回路内の適切なガスの量を維持するために、ディリュエントガスを噴射、または電磁弁を開いて呼吸回路内のガスを水中に排出する。
通常、深度が一定ならば、環境圧と呼吸回路内の圧力はバランスしているため、排気に当たっては何らかの方法で能動的な加圧を行う必要がある。
ダイバー自身が行うマニュアルの操作では、排気は、ダイバーの肺を胸筋の動きによって加圧し、鼻腔から、マスクという逆止弁を介して行う。
仮に排気のための装置が複雑高価になるようなら、この部分はダイバーによるマニュアル操作とし、そのための指示をヘッドアップディスプレイのライトの点滅等でダイバーに知らせることによって行うことも考えられる。
微小浮力調整の必要な浮力の変化は、CCRの場合、消費された酸素の加給、二酸化炭素の除去、呼気中の水蒸気の凝結により、連続的または断続的に起こっていて、動的に管理しなければならない。
BCによる浮力調整は、ガス量の変動が大きく、浮力の変化を動的にコントロールすることが困難である。
カウンターラング内のガスの体積を調整する方法は、そのガス源をディリュエントガスに依存するので、PO2の変化を招き、酸素側のソレノイドバルブの作動を引き起こす。
呼吸ガスの管理上も好ましくない。
したがって、可能ならば、BC内のガスの体積を変化させるのが上策である。
元々、BCのガスはディリュエントを使用しているので、ガスの量の管理には問題はない。
排気についても、BC内のガスは、常に上方へは排気可能であり、さらに多少の浸水は許容する。
微小な給気を可能とするソレノイドバルブからのガスをBCへと送り込み、小径の電磁弁を作動させて排気すれば、呼吸回路で調整するよりも良好な結果が得られる可能性がある。
さらに、呼吸回路やBCとは別個の浮力体を携行し、中圧ホースと制御信号(及び動作電力)を送る形にすれば、オプション品としての販売も可能となる。
繰り返しになるが、この仕組は、あくまで微小浮力の調整が目的であり、使用するシーンは限られている。
潜水プロファイル全ての浮力を管理するには、給気側に電磁弁を配する必要があり、誤作動等によるリスクが高まることを考慮しなければならない。
別体型の浮力調整機の場合、バンジー等によって、排気時の動作をスムーズに行うことも考えられる。
これらの方式に共通する設計思想は、コントロールをCCRのコンピューターに依存する点である。
深度計やガス源、計算資源、電力源をCCR側と共用し、最小限のデバイスを追加して、限られた条件の下で実装を図ろうということである。
コアの技術は、これまで経験と勘に頼っていた浮力コントロールを、コンピューターに外部化し、中性浮力近傍のダイバーの労力を軽減して、その注意力を他の危険回避に振り向けることによって、総合的な安全強化を図るものである。
この機能を実現するために、既存の資源を侵害枯渇させることがないように、電源、コンピューターの計算能力、メモリー、その他のデバイスには、必要な増強を施す。
実装方法については、さらに詳細な検討が必要であるが、浮沈子は十分実現可能であると考えており、将来は潜行浮上を含めたトータルな浮力調整を、ジョイスティックを操作するだけで実現することも想定している(DPVとの連動もありか)。
3次元加速度センサー、水圧センサー等を利用して、水中での現在位置を推定することは現段階でも可能である。
現在位置を3次元的に特定して、水中マップのデータと照合し、行きたい場所を指示すれば、そこへ自動的に移動する仕組を構築することもできるだろう。
そんなダイビングの、どこが面白いのか、そんなもんが、ファンダイビングといえるのか。
それは、現在のダイバーが判断することではない。
現在のダイバーは、経験を積み、勘を磨き、必死こいて泳げばいいのだ。
かつて、BCが登場する前、ハーネスだけで潜り、フィンキックと肺の容積のコントロールで浮力調整をしたように。
我々がかつてのダイビングを見るように、未来のダイバーは、現在の我々を見ることだろう。
BCに手動で給気したり、水面を仰いで安全確認しながら浮上したり(これは、変わらないだろうが)、中性浮力に悩んだり、浮上速度や潜行速度を気にしたりするダイビングを見て、なんと思うだろうか。
それらは、ダイビングの楽しさの本質ではない。
美しい、珍しい魚を見たり、水中での浮遊感を味わったり、3次元の空間を、自由に移動したりすることが楽しいのだ。
光の殆ど届かない深い海の底へ行ったり、どこまで続くか想像もつかない水中洞窟を探検したり、巨大な沈船の中を彷徨ったりすることが楽しいのだ。
ダイビングの安全、危機管理を、コンピューターに委ね、潜水技術も可能な限り委ねて、レジャーとしての楽しみの本質だけ追求して、なぜ悪いのか。
BCに浮力の調整を頼るのと、何がどう違うというのか。
覚えが悪く、直ぐに忘れ、過ちを犯し、あろうことか、都合が悪くなると他人のせいにする(ん?、誰のことかなあ?)。
そんな、人間などという不安定なデバイスに、安全管理や危機管理を期待して、本当にいいのか。
本気で安全を追求する気があるのか。
実際問題として、当面の対策としては、人間を教育・訓練していくしか手立てはないだろう。
しかし、同時並行で、安全に繋がる器材の開発や、ゲレンデの整備も必要だ。
電波法の規制で、小型のダイバ-用電波発信機が使えないと聞いた。
水中で酸素(21パーセントを超える酸素濃度のナイトロックス含む)を吸うことについて、当局の規制が未だにあるという。
電波発信機はともかく、CCRは水中で純酸素とディリュエントガスから、ナイトロックスやトライミックスなどをブレンドしてダイバーに吸わせる機械だ。
本来なら、取締りの対象となってもおかしくない、グレーゾーンの器材である。
ちょっとアウトローな気分になりながら、先進の器材でダイビングするのもいいかも知れない。
浮力調整装置は、日の目を見ないで終わる可能性が高い。
浮沈子は、CCRの浮力調整に苦心したが、今思えば、楽しい日々でもあった。
ダイビングの安全確保や危機管理にしても、限られた資源の中で、どうやりくりして実現するかを考えたり、試してみたりすることが楽しいのだ。
こんなニッチで儲からない商売に、投資をしようなどという日本企業が出てこないのは、ある意味で健全であるな。
水中という隔絶した世界に、限られたガスしか持ち込めないことに慣れているダイバーは、きっと、浮力調整装置なんかには見向きもしないだろう。
それはそれでいい。
CCRの可能性は、きっと他にもある。
浮沈子には、まだ見えていないだけかもしれない。
CCRの未来は輝いている。
眩しくて、見えないだけなんだろうな。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。
※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。