ベイルアウト ― 2014年07月21日 12:10
ベイルアウト
「ベイルアウト」をグーグルで検索したら、こんなのがトップで出てきた。
(射出座席)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%84%E5%87%BA%E5%BA%A7%E5%B8%AD
「航空機から非常時に脱出するための装置。作動させると、搭乗者は座席ごとロケットモーター等によって機外へと射ち出され、パラシュートで降下する。主に戦闘機など小型の軍用機に装備されている。」
まいったな、ダイビングの話が出てくるかと思って検索したのに。
航空機の射出座席は、イジェクション・シートというらしい。
(Ejection seat)
http://en.wikipedia.org/wiki/Ejection_seat
緊急脱出装置である。
(ベイルアウトとは以下のことを表す。)
http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%99%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88
「・戦闘機などからの緊急脱出のこと
・経済において緊急援助、企業の救済のこと
・相場における短期売買戦略の一種。ベイルアウトトレード。」
はあ、経済用語でもあるわけだ。
世間では、ダイビングにおけるベイルアウトというのは、殆ど知られていないということになる。
「ダイビングでの「ベイルアウト」とは、器材を持って水深-3~6mぐらいに飛び込み着底後に全装備装着後、浮上して一定の時間立ち泳ぎをするITCなどで行う項目です。」
とあるのは、このページ。
(ダイビング上達クリニック:☆上級編 ☆-3~6mスキンベイルアウト1997 12/25第13号)
http://www.geocities.co.jp/Colosseum/1662/DIV/s13.html
いやあ、こっちも知らなかったな。
須賀次郎氏のホームページには、こんな記事がある。
(重大事故を起こしたことがある講習プログラム)
http://homepage2.nifty.com/j-suga/annzenn-1.html
「①フリーアセントもしくはベイルアウト
水中でスクーバ器材を脱ぎ捨ててフィン・マスク・スノーケルだけを着けた状態で浮上する。
これは潜水艦からの脱出で行われる手法のコピーであり、一般のスクーバダイビングでは、たとえ空気がなくなってもこんなことはほとんどやらないし、危険も大きい。」
そもそも、ベイルアウトとは、どんな意味なのだろうか。
(Bailout)
http://en.wikipedia.org/wiki/Bailout
「The term is maritime in origin being the act of removing water from a sinking vessel using a smaller bucket.」
アカ汲みのことかあ!。
(アカ汲み)
http://fujikawakudari.blog.fc2.com/blog-entry-123.html
「※アカ汲みとは船底に溜まった水を汲み取ること。」
プレジャーボートの場合は、デッキに排水口があって、二重底になっている船底に水が入りさえしなければ、雨が降ったからといって沈没することはない。
手漕ぎボートなどでは、いきなりむき出しの船底=甲板状態なので、排水するしかないわけだ。
ベイルアウトねえ。
(NAUIマスタースクーバー講習)
http://www.jic-japan.co.jp/diving/log/log3065_2014_07_01.html
どこを探しても、こんな記事ばっかし・・・。
「NAUIは、アメリカ海軍の指導団体からレジャー団体に移行したと云う経緯があり、そのためにダイブマスター以上の講習項目にベイルアウトは必須となっていました」
「講習で行うベイルアウトとは、船もしくは潜水艦からの緊急脱出を想定して行います。
具体的に云うと、ウエットスーツ以外の重、軽器全てを手に持ち、水深3~5mに飛び込み、着定後に水底でまずタンクのバルブを開け呼吸を確保し、落ち着いて全器材を装着したら(ITCでは一歩も動かずマスクは片手で)水面に浮上して、BCのエアを抜き切った上で10分間の立ち泳ぎをし終了です」
今じゃ、こんなことやらないだろう。
まだ、やってんだろうか?。
PADIでは、水中でバディ役と器材を交換するというスキルがあると聞いている。
とにかく、水中での緊急時に、コントロールされた浮上を行い、水面に上がることだという理解でいいんだろう(たぶん)。
緊急スイミングアセントも広義のベイルアウトになるのかも知れないが、これはもう、本当に他にどうしようもない時の最後の手段だ。
(26. エアがなくなったときの対応 - 緊急時の浮上方法
バックアップ空気源(オクトパス)を使って浮上/コントロールされた緊急スイミング・アセントで浮上)
http://www.padi.co.jp/visitors/program/skill/allskill.asp
「※ 緊急スイミング・アセントは、エア切れのとき、バディが近くにいない場合に自分一人で行なう緊急浮上法です。」
浮沈子は、「自信なし」にポチッ!。
なぜ、こんな記事を書き始めたかというと、今読んでいるPADIのレクリエーショナルレベルのリブリーザーのマニュアルには、とにかく何かあったらBOV(ベイルアウトバルブ)に切り替えて浮上せよという記述が多くて、いささか辟易しているからである。
ディリュエントガスのマニュアルインフレーターを捥がれたタイプRのリブリーザー(CCR)では、他に手段がないということもある。
とにかく、ベイルアウト!。
しかし、問題なのは、そのベイルアウトは安全に行えるのだろうか?、ということである。
そもそもが、緊急事態なので、心臓バクバク、呼吸は小鳥のように速く(小鳥の呼吸が速いかどうかは知りませんが)、当然、ガスの消費はものすごいことになってしまうんだろう。
まあ、緊急事態がしょっちゅう起これば、ベイルアウト慣れして、落ち着いて浮上することが出来るようになるかも知れない。
「ちぇっ、またかよ・・・(ブクブクブク)。」
しかし、だが、たぶん、きっと、それって本末転倒のような気がしないでもない。
というわけで、何かあった時のために、練習する必要がある最大のスキルがベイルアウトということになる。
航空機から飛び降りるというのは、確かに炎上しているエンジンや、捥げた翼じゃ助からないから、仕方なくやるんだろうし、電気系統がお釈迦になったCCRダイビングから生還するには、もともと僅かしかな貴重なガスを水中に吐き散らかしながら、オープンサーキットで浮上するしかない。
どんな状況下でも、それを安全に確実にやってのけることが出来るからこそ、安心して何時壊れるかもしれない、ガラスのように繊細なCCRなんかでダイビングができようというものである。
普通のオープンサーキットでの浮上と異なるのは、呼吸回路というやっかいな浮き袋を抱えて浮上しなければならないということである。
アドバンスのスキルをやった方なら経験があるかもしれないが、リフトバッグというマーカーブイのような空気袋(画像参照)にガスを入れ、ウエイトなんかを吊り下げて水面にコントロール浮上させるという芸がある。
(■リフトバッグを利用する方法)
http://www.net-diver.org/rankup/sp/manual/s&r_sp/s&r_11.html
リフトバッグの上の方には、リリースバルブが付いていて、中の空気量を調整(といっても、減らすだけですが)しながら、かつ、ダイバー自身の浮力もBCや呼吸でコントロールしながら浮上するということになる。
CCRでベイルアウト浮上するというのは、これと似たところがある。
通常のCCRの浮上は、呼吸回路内のガスをマスクから逃がしながら、ミニマムボリューム(ミニマムループ:PADI語、ミニマムループボリュームが正式らしい)で浮上してくるわけだが、トラブルが発生している時の呼吸回路内のガスを吸うわけにはいかない。
酸素が少な過ぎたり、多過ぎたり、しこたま二酸化炭素が多くなっていたり、コースティックカクテルという水酸化物が大量に発生している呼吸回路の内容物を吸ったら、イチコロである。
呼吸回路を自分の肺に接続することなく(つまり、マウスピースを咥えずに)、その体積をコントロールしつつ、オープンサーキットでの浮上を完結しなければならないのだ。
通常浮上の練習も併せて、6ダイブで完結する基礎コースで、そんなに簡単にこのスキルを身につけるなんて出来るんだろうか。
できるんだろうな。
PADIが出来るといっているんだから。
PADIの養成するダイバーは優秀だし・・・。
きっと、出来るに違いない・・・。
・・・んなもん、出来るわけないじゃん!。
既に、数百回のCCRでの浮上(大部分がプール講習ですが)を経験し、何十回ものベイルアウトのトレーニングを重ねてきた浮沈子がいうのだから、間違いない(もっとも、オープンウォーターの経験は、まだ100本に届かず・・・)。
どんな時でも、完全に、確実に、安定してベイルアウト出来るということは、CCRによる中性浮力やトリムなどのスキルよりも、100倍重要である。
これさえ出来れば、ほかのことは出来なくても、CCRダイバーの認定をくれてやってもいいかもしれない。
だって、絶対に死なないから。
もちろん、浮かんできたのはいいが、流されちゃったとか、浮いた途端に心臓発作とか、マーフィーの法則に従って一定の確率で事故は起こるが、それは、まあ、CCR固有の事故ではない。
一般的なダイバーが遭遇する程度の確率である。
浮沈子は、このスキルは、CCRダイバーの基礎中の基礎、まずマスターしなければならない一丁目一番地であると確信している。
CCRダイビングの保険のようなものである。
この保険は、しかし、なかなか曲者で、ベイルアウト用のガスが十分に残っている時だけにトラブルが発生してくれるわけではなく、マウスピースの故障とか、ベイルアウト用のシリンダーがいきなり具合が悪くなるとか、ガスがなかったとか、バルブが壊れたとか、レギュレーターがイカレたとか、そんな時に限って、普段は「オレ様が付いているから大丈夫」などと大口叩いていたバディが、どっかに行っちまってるということになるわけだな。
どんな時でも、完全に、確実に、安定してベイルアウト出来るということは、決して簡単に実現できるわけではないのだ。
ベイルアウトガスを、3リッター(機種によっては2リッター)のディリュエントシリンダーに依存したとしよう(PADIは、それでいけると判断している)。
水中で、いったいどのくらいのガスが消費されるのだろうか。
こういうときのために、自分のガスの消費量RMV(毎分換気量)というのを計っておくのがいい。
(ダイビングの基本!? 自分の空気消費量を知ろう!)
http://oceana.ne.jp/column/31109
簡単のため、水面で毎分20リッター(大食い!)吸っているとすると、10mでは毎分40リッター、20mでは60リッターの貴重な呼吸ガスが、海の藻屑と消えている・・・。
リブリーザーの基礎コースでは、18mまでとなっているが、簡単のため、20mということにしておくと、2リッタータンクに200気圧詰めて持っていったガスは、水面換算ではたったの400リットルに過ぎず、20mでぼーっと吸っていると、僅か7分足らずでスカになる。
実際には、潜水して20mに行くまでにカウンターラングやBCDの容積を維持するのに使われたり、その後の浮力調整や、マスククリアにも使われるので、400リットル丸々は使えない。
100リットルは天引きしておいた方が無難だ(呼吸回路で30リッター、BCDで30リッター、その他で40リッター)。
残り300リッターで、水深20mでは、ちょうど5分でスカになる。
毎分9mの浮上速度を維持し、水深5mで3分間も安全停止をやっていると、どんどんガスは減ってくる。
もっとも、浅いところでは、ガスの消費は少なくなるので、たとえ2リットルのディリュエントシリンダーでも、通常はスカになることはない。
PADIだって、そのくらいの計算はしている。
しかし、それは、あくまで机上の計算で、直ちに浮上できるかどうか、浮上のコントロールがうまくいくか、運動量はどのくらいなのか、水面で吸う必要はないのかなど、様々な条件が加わる。
18mまで、ベイルアウト用オフボードシリンダーを持たせずに運用するというのは、結構ギリギリの判断なのだ。
この場合、バディのガスを予備の呼吸源として使うこともある。
しかし、相手もおそらく2リッターか3リッターの、ミニボトル並のディリュエントしかない。
浮沈子だったら、絶対にやらないな!。
まあ、こんなこと書いてると、柏崎さんに見つかって、認定してもらえなくなるかもしれないので、公式にはマニュアルどおりにオクトパスを渡すということにしておこう・・・。
今回はインテグレーテッド講習なので、初めからベイルアウト用のシリンダーを携行しているわけで、問題はないんだが。
ベイルアウト用シリンダーを持たずにダイビングすることを考えた時、一番いいのは、バディがオープンサーキットの場合かもしれない。
10リッターもの「巨大な」ベイルアウト用のタンクを、スペアで持ち込んでいるのと同じである。
やつら(オープンサーキットダイバー)は、50気圧くらい残して浮上する習慣があるので、残圧はたっぷりある(500リットルも使わずに返すわけだ!。CCRのディリュエントより、多い!)。
ベイルアウトだけを考えた時、CCRダイバーにとって心強いのは、同じCCRダイバーではなく、「巨大な」ベイルアウトガスシリンダーを携行しているオープンサーキットダイバーということになる。
その意味では、相棒としてベストなのは、ダブルタンクで潜っているサイドマウントダイバーであろう。
うまくすると、100気圧くらい残っている片方のシリンダーを、ヒョイとはずして渡してくれるかもしれない(ヤッター!)。
マーク6のスキルでは、ベイルアウトの際、カウンターラングのオーバープレッシャーバルブ(OPV)を反時計回りに回して、排気抵抗を最小にしておくように指導される。
インスピでは、そんなことはやらずに、バルブについている紐を引っ張ってガスを抜く(浮沈子はそう習いました)。
コツは、バルブを水面に向けておくこと。
もともと、パンパンでない状態で抜くわけだから、袋の口(バルブ)を上に向けておかないと、うまくいかない。
もしも、OPVが故障して、ガスが抜けなかったらどうするのか。
先日、マーク6(セブン)で、テック40の講習を受けた柏崎さんによれば、CCRのマウスピースを頭上に掲げて、開けて抜くんだそうだ。
うーん、やったことはないが、口に咥えてないマウスピースを開放するというのは、浮沈子にはかなり抵抗があるな。
しかし、理屈としてはそのとおりで、トラブルに対応する引き出しは、多いほどいい。
今度、試してみよう!。
もちろん、メインの浮力コントロールデバイスであるBCDからの排気や、ダイバーの呼吸による調整(オープンサーキットなので、面白いほど利きます)、ドライスーツの排気なども合わせて行うわけで、ベイルアウトの手順は複雑だ。
安全停止を伴う時には、そのハチャメチャな状態でホバリングしなければならず、可能であればマーカーブイの射出もしなければならない。
CCRのベイルアウトは、浮沈子に言わせれば、あらゆる潜水技術の集大成、てんこ盛り、大忙しの大晦日状態(?)なのである。
CCR基礎コースの講習を受けた、経験本数6本のダイバーが、この複雑怪奇で扱いのややっこしい器材を制御下において、安定的に完璧に確実に浮上できるものなのだろうか。
浮沈子のように耳抜きに問題を抱えているダイバーは、リバースブロックという厄介な事象にも対応しなければならない。
浮上速度の目安となるラインなどの目標があるところならまだしも、ブルーウォーターでの浮上になれば、水深計とにらめっこになる。
バディが傍にいて、深度のコントロールを任せて、バディを目安にして浮上するというのがいいかも。
使える資源はフルに動員して、安全にアセントしなければならない。
なにしろ、ベイルアウトというのは、ひゃくまんえん以上のCCRがお釈迦になったかもしれないという意味でも緊急事態なのである。
しかし、そんな器材のことよりも、自分自身をまず、安全に浮上させることに集中すべきだ。
形あるものは全て壊れていく運命にある。
物は、お金で贖うことができるが、生身の人間の命は掛け替えのないものだ。
まして、他ならぬ自分の命である・・・。
何度も何度も練習し、落ち着いて手順をこなし、余裕を持って浮上する。
水面に達し、浮力を確保(場合によっては、BCDにオーラルで給気)し、無事にエキジットしてナンボである。
PADIのテキストには、52ページからベイルアウトのことが書かれている。
77ページにも、重要なことが書かれている。
躊躇なくベイルアウトし、そのことを責めてはならないということだ。
ダイビングは、所詮遊びである。
その中で、CCRなどのリブリーザーを使ったダイビングは、依然として道楽の域を出ない。
何かあったら、とにかくベイルアウト。
それでいいのだ。
「ベイルアウト」をグーグルで検索したら、こんなのがトップで出てきた。
(射出座席)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%84%E5%87%BA%E5%BA%A7%E5%B8%AD
「航空機から非常時に脱出するための装置。作動させると、搭乗者は座席ごとロケットモーター等によって機外へと射ち出され、パラシュートで降下する。主に戦闘機など小型の軍用機に装備されている。」
まいったな、ダイビングの話が出てくるかと思って検索したのに。
航空機の射出座席は、イジェクション・シートというらしい。
(Ejection seat)
http://en.wikipedia.org/wiki/Ejection_seat
緊急脱出装置である。
(ベイルアウトとは以下のことを表す。)
http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%99%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88
「・戦闘機などからの緊急脱出のこと
・経済において緊急援助、企業の救済のこと
・相場における短期売買戦略の一種。ベイルアウトトレード。」
はあ、経済用語でもあるわけだ。
世間では、ダイビングにおけるベイルアウトというのは、殆ど知られていないということになる。
「ダイビングでの「ベイルアウト」とは、器材を持って水深-3~6mぐらいに飛び込み着底後に全装備装着後、浮上して一定の時間立ち泳ぎをするITCなどで行う項目です。」
とあるのは、このページ。
(ダイビング上達クリニック:☆上級編 ☆-3~6mスキンベイルアウト1997 12/25第13号)
http://www.geocities.co.jp/Colosseum/1662/DIV/s13.html
いやあ、こっちも知らなかったな。
須賀次郎氏のホームページには、こんな記事がある。
(重大事故を起こしたことがある講習プログラム)
http://homepage2.nifty.com/j-suga/annzenn-1.html
「①フリーアセントもしくはベイルアウト
水中でスクーバ器材を脱ぎ捨ててフィン・マスク・スノーケルだけを着けた状態で浮上する。
これは潜水艦からの脱出で行われる手法のコピーであり、一般のスクーバダイビングでは、たとえ空気がなくなってもこんなことはほとんどやらないし、危険も大きい。」
そもそも、ベイルアウトとは、どんな意味なのだろうか。
(Bailout)
http://en.wikipedia.org/wiki/Bailout
「The term is maritime in origin being the act of removing water from a sinking vessel using a smaller bucket.」
アカ汲みのことかあ!。
(アカ汲み)
http://fujikawakudari.blog.fc2.com/blog-entry-123.html
「※アカ汲みとは船底に溜まった水を汲み取ること。」
プレジャーボートの場合は、デッキに排水口があって、二重底になっている船底に水が入りさえしなければ、雨が降ったからといって沈没することはない。
手漕ぎボートなどでは、いきなりむき出しの船底=甲板状態なので、排水するしかないわけだ。
ベイルアウトねえ。
(NAUIマスタースクーバー講習)
http://www.jic-japan.co.jp/diving/log/log3065_2014_07_01.html
どこを探しても、こんな記事ばっかし・・・。
「NAUIは、アメリカ海軍の指導団体からレジャー団体に移行したと云う経緯があり、そのためにダイブマスター以上の講習項目にベイルアウトは必須となっていました」
「講習で行うベイルアウトとは、船もしくは潜水艦からの緊急脱出を想定して行います。
具体的に云うと、ウエットスーツ以外の重、軽器全てを手に持ち、水深3~5mに飛び込み、着定後に水底でまずタンクのバルブを開け呼吸を確保し、落ち着いて全器材を装着したら(ITCでは一歩も動かずマスクは片手で)水面に浮上して、BCのエアを抜き切った上で10分間の立ち泳ぎをし終了です」
今じゃ、こんなことやらないだろう。
まだ、やってんだろうか?。
PADIでは、水中でバディ役と器材を交換するというスキルがあると聞いている。
とにかく、水中での緊急時に、コントロールされた浮上を行い、水面に上がることだという理解でいいんだろう(たぶん)。
緊急スイミングアセントも広義のベイルアウトになるのかも知れないが、これはもう、本当に他にどうしようもない時の最後の手段だ。
(26. エアがなくなったときの対応 - 緊急時の浮上方法
バックアップ空気源(オクトパス)を使って浮上/コントロールされた緊急スイミング・アセントで浮上)
http://www.padi.co.jp/visitors/program/skill/allskill.asp
「※ 緊急スイミング・アセントは、エア切れのとき、バディが近くにいない場合に自分一人で行なう緊急浮上法です。」
浮沈子は、「自信なし」にポチッ!。
なぜ、こんな記事を書き始めたかというと、今読んでいるPADIのレクリエーショナルレベルのリブリーザーのマニュアルには、とにかく何かあったらBOV(ベイルアウトバルブ)に切り替えて浮上せよという記述が多くて、いささか辟易しているからである。
ディリュエントガスのマニュアルインフレーターを捥がれたタイプRのリブリーザー(CCR)では、他に手段がないということもある。
とにかく、ベイルアウト!。
しかし、問題なのは、そのベイルアウトは安全に行えるのだろうか?、ということである。
そもそもが、緊急事態なので、心臓バクバク、呼吸は小鳥のように速く(小鳥の呼吸が速いかどうかは知りませんが)、当然、ガスの消費はものすごいことになってしまうんだろう。
まあ、緊急事態がしょっちゅう起これば、ベイルアウト慣れして、落ち着いて浮上することが出来るようになるかも知れない。
「ちぇっ、またかよ・・・(ブクブクブク)。」
しかし、だが、たぶん、きっと、それって本末転倒のような気がしないでもない。
というわけで、何かあった時のために、練習する必要がある最大のスキルがベイルアウトということになる。
航空機から飛び降りるというのは、確かに炎上しているエンジンや、捥げた翼じゃ助からないから、仕方なくやるんだろうし、電気系統がお釈迦になったCCRダイビングから生還するには、もともと僅かしかな貴重なガスを水中に吐き散らかしながら、オープンサーキットで浮上するしかない。
どんな状況下でも、それを安全に確実にやってのけることが出来るからこそ、安心して何時壊れるかもしれない、ガラスのように繊細なCCRなんかでダイビングができようというものである。
普通のオープンサーキットでの浮上と異なるのは、呼吸回路というやっかいな浮き袋を抱えて浮上しなければならないということである。
アドバンスのスキルをやった方なら経験があるかもしれないが、リフトバッグというマーカーブイのような空気袋(画像参照)にガスを入れ、ウエイトなんかを吊り下げて水面にコントロール浮上させるという芸がある。
(■リフトバッグを利用する方法)
http://www.net-diver.org/rankup/sp/manual/s&r_sp/s&r_11.html
リフトバッグの上の方には、リリースバルブが付いていて、中の空気量を調整(といっても、減らすだけですが)しながら、かつ、ダイバー自身の浮力もBCや呼吸でコントロールしながら浮上するということになる。
CCRでベイルアウト浮上するというのは、これと似たところがある。
通常のCCRの浮上は、呼吸回路内のガスをマスクから逃がしながら、ミニマムボリューム(ミニマムループ:PADI語、ミニマムループボリュームが正式らしい)で浮上してくるわけだが、トラブルが発生している時の呼吸回路内のガスを吸うわけにはいかない。
酸素が少な過ぎたり、多過ぎたり、しこたま二酸化炭素が多くなっていたり、コースティックカクテルという水酸化物が大量に発生している呼吸回路の内容物を吸ったら、イチコロである。
呼吸回路を自分の肺に接続することなく(つまり、マウスピースを咥えずに)、その体積をコントロールしつつ、オープンサーキットでの浮上を完結しなければならないのだ。
通常浮上の練習も併せて、6ダイブで完結する基礎コースで、そんなに簡単にこのスキルを身につけるなんて出来るんだろうか。
できるんだろうな。
PADIが出来るといっているんだから。
PADIの養成するダイバーは優秀だし・・・。
きっと、出来るに違いない・・・。
・・・んなもん、出来るわけないじゃん!。
既に、数百回のCCRでの浮上(大部分がプール講習ですが)を経験し、何十回ものベイルアウトのトレーニングを重ねてきた浮沈子がいうのだから、間違いない(もっとも、オープンウォーターの経験は、まだ100本に届かず・・・)。
どんな時でも、完全に、確実に、安定してベイルアウト出来るということは、CCRによる中性浮力やトリムなどのスキルよりも、100倍重要である。
これさえ出来れば、ほかのことは出来なくても、CCRダイバーの認定をくれてやってもいいかもしれない。
だって、絶対に死なないから。
もちろん、浮かんできたのはいいが、流されちゃったとか、浮いた途端に心臓発作とか、マーフィーの法則に従って一定の確率で事故は起こるが、それは、まあ、CCR固有の事故ではない。
一般的なダイバーが遭遇する程度の確率である。
浮沈子は、このスキルは、CCRダイバーの基礎中の基礎、まずマスターしなければならない一丁目一番地であると確信している。
CCRダイビングの保険のようなものである。
この保険は、しかし、なかなか曲者で、ベイルアウト用のガスが十分に残っている時だけにトラブルが発生してくれるわけではなく、マウスピースの故障とか、ベイルアウト用のシリンダーがいきなり具合が悪くなるとか、ガスがなかったとか、バルブが壊れたとか、レギュレーターがイカレたとか、そんな時に限って、普段は「オレ様が付いているから大丈夫」などと大口叩いていたバディが、どっかに行っちまってるということになるわけだな。
どんな時でも、完全に、確実に、安定してベイルアウト出来るということは、決して簡単に実現できるわけではないのだ。
ベイルアウトガスを、3リッター(機種によっては2リッター)のディリュエントシリンダーに依存したとしよう(PADIは、それでいけると判断している)。
水中で、いったいどのくらいのガスが消費されるのだろうか。
こういうときのために、自分のガスの消費量RMV(毎分換気量)というのを計っておくのがいい。
(ダイビングの基本!? 自分の空気消費量を知ろう!)
http://oceana.ne.jp/column/31109
簡単のため、水面で毎分20リッター(大食い!)吸っているとすると、10mでは毎分40リッター、20mでは60リッターの貴重な呼吸ガスが、海の藻屑と消えている・・・。
リブリーザーの基礎コースでは、18mまでとなっているが、簡単のため、20mということにしておくと、2リッタータンクに200気圧詰めて持っていったガスは、水面換算ではたったの400リットルに過ぎず、20mでぼーっと吸っていると、僅か7分足らずでスカになる。
実際には、潜水して20mに行くまでにカウンターラングやBCDの容積を維持するのに使われたり、その後の浮力調整や、マスククリアにも使われるので、400リットル丸々は使えない。
100リットルは天引きしておいた方が無難だ(呼吸回路で30リッター、BCDで30リッター、その他で40リッター)。
残り300リッターで、水深20mでは、ちょうど5分でスカになる。
毎分9mの浮上速度を維持し、水深5mで3分間も安全停止をやっていると、どんどんガスは減ってくる。
もっとも、浅いところでは、ガスの消費は少なくなるので、たとえ2リットルのディリュエントシリンダーでも、通常はスカになることはない。
PADIだって、そのくらいの計算はしている。
しかし、それは、あくまで机上の計算で、直ちに浮上できるかどうか、浮上のコントロールがうまくいくか、運動量はどのくらいなのか、水面で吸う必要はないのかなど、様々な条件が加わる。
18mまで、ベイルアウト用オフボードシリンダーを持たせずに運用するというのは、結構ギリギリの判断なのだ。
この場合、バディのガスを予備の呼吸源として使うこともある。
しかし、相手もおそらく2リッターか3リッターの、ミニボトル並のディリュエントしかない。
浮沈子だったら、絶対にやらないな!。
まあ、こんなこと書いてると、柏崎さんに見つかって、認定してもらえなくなるかもしれないので、公式にはマニュアルどおりにオクトパスを渡すということにしておこう・・・。
今回はインテグレーテッド講習なので、初めからベイルアウト用のシリンダーを携行しているわけで、問題はないんだが。
ベイルアウト用シリンダーを持たずにダイビングすることを考えた時、一番いいのは、バディがオープンサーキットの場合かもしれない。
10リッターもの「巨大な」ベイルアウト用のタンクを、スペアで持ち込んでいるのと同じである。
やつら(オープンサーキットダイバー)は、50気圧くらい残して浮上する習慣があるので、残圧はたっぷりある(500リットルも使わずに返すわけだ!。CCRのディリュエントより、多い!)。
ベイルアウトだけを考えた時、CCRダイバーにとって心強いのは、同じCCRダイバーではなく、「巨大な」ベイルアウトガスシリンダーを携行しているオープンサーキットダイバーということになる。
その意味では、相棒としてベストなのは、ダブルタンクで潜っているサイドマウントダイバーであろう。
うまくすると、100気圧くらい残っている片方のシリンダーを、ヒョイとはずして渡してくれるかもしれない(ヤッター!)。
マーク6のスキルでは、ベイルアウトの際、カウンターラングのオーバープレッシャーバルブ(OPV)を反時計回りに回して、排気抵抗を最小にしておくように指導される。
インスピでは、そんなことはやらずに、バルブについている紐を引っ張ってガスを抜く(浮沈子はそう習いました)。
コツは、バルブを水面に向けておくこと。
もともと、パンパンでない状態で抜くわけだから、袋の口(バルブ)を上に向けておかないと、うまくいかない。
もしも、OPVが故障して、ガスが抜けなかったらどうするのか。
先日、マーク6(セブン)で、テック40の講習を受けた柏崎さんによれば、CCRのマウスピースを頭上に掲げて、開けて抜くんだそうだ。
うーん、やったことはないが、口に咥えてないマウスピースを開放するというのは、浮沈子にはかなり抵抗があるな。
しかし、理屈としてはそのとおりで、トラブルに対応する引き出しは、多いほどいい。
今度、試してみよう!。
もちろん、メインの浮力コントロールデバイスであるBCDからの排気や、ダイバーの呼吸による調整(オープンサーキットなので、面白いほど利きます)、ドライスーツの排気なども合わせて行うわけで、ベイルアウトの手順は複雑だ。
安全停止を伴う時には、そのハチャメチャな状態でホバリングしなければならず、可能であればマーカーブイの射出もしなければならない。
CCRのベイルアウトは、浮沈子に言わせれば、あらゆる潜水技術の集大成、てんこ盛り、大忙しの大晦日状態(?)なのである。
CCR基礎コースの講習を受けた、経験本数6本のダイバーが、この複雑怪奇で扱いのややっこしい器材を制御下において、安定的に完璧に確実に浮上できるものなのだろうか。
浮沈子のように耳抜きに問題を抱えているダイバーは、リバースブロックという厄介な事象にも対応しなければならない。
浮上速度の目安となるラインなどの目標があるところならまだしも、ブルーウォーターでの浮上になれば、水深計とにらめっこになる。
バディが傍にいて、深度のコントロールを任せて、バディを目安にして浮上するというのがいいかも。
使える資源はフルに動員して、安全にアセントしなければならない。
なにしろ、ベイルアウトというのは、ひゃくまんえん以上のCCRがお釈迦になったかもしれないという意味でも緊急事態なのである。
しかし、そんな器材のことよりも、自分自身をまず、安全に浮上させることに集中すべきだ。
形あるものは全て壊れていく運命にある。
物は、お金で贖うことができるが、生身の人間の命は掛け替えのないものだ。
まして、他ならぬ自分の命である・・・。
何度も何度も練習し、落ち着いて手順をこなし、余裕を持って浮上する。
水面に達し、浮力を確保(場合によっては、BCDにオーラルで給気)し、無事にエキジットしてナンボである。
PADIのテキストには、52ページからベイルアウトのことが書かれている。
77ページにも、重要なことが書かれている。
躊躇なくベイルアウトし、そのことを責めてはならないということだ。
ダイビングは、所詮遊びである。
その中で、CCRなどのリブリーザーを使ったダイビングは、依然として道楽の域を出ない。
何かあったら、とにかくベイルアウト。
それでいいのだ。
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