🐱バルカン:主役の交代 ― 2023年06月15日 23:35
バルカン:主役の交代
ULAのバルカンロケットが、1段目のエンジンの試験点火を行ったことは既に書いた。
(バルカン:全基点火試験クリア)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2023/06/10/9593325
エリックバーガーが、再びセントールV(上段ロケット)の問題を取り上げ、初打ち上げの時期が数か月延びる公算が高いとの記事を上げている。
浮沈子的には、まず、追加で割り当てられた打ち上げ契約の内訳の割合と、その後の運用基準に注目した。
(バルカンはエンジンテストを成功させるも、上段の異常により打ち上げはしばらく遅れる)
https://arstechnica.com/space/2023/06/vulcan-rocket-completes-critical-test-but-launch-slipping-toward-end-of-2023/
「先週金曜日の発表で、宇宙システム軍団は最近、2社の打ち上げ会社に12のフェーズ2ミッションを割り当てたと述べた。これらの打ち上げは、United Launch Alliance と SpaceX の間で 60 対 40 の分割ではなく、均等に分割されました。」
「バルカンが将来のミッションに参加できない場合に備えて、プログラム関係者は、フェーズ2契約により、他のプロバイダーにミッションを再割り当てすることが可能であると述べた」
つまり、S社が過半数の契約を取ることも有り得るわけだ。
米軍の衛星打ち上げミッションにおける、主役の交代が始まっている。
これは、打ち上げビジネスに留まらないだろう。
その後の情報が流れてこないスターシールドにしても、従来の軍事衛星ビジネスを根底から覆すものだ。
打ち上げは衛星ビジネスの基盤だが、メインの収益ではないからな。
サービスを提供する衛星打ち上げてなんぼの商売だ。
長年の懸案だったBE-4エンジンの点火試験に成功し、意気軒高となるはずだったバルカンだが、一方で上段のセントールVでケチが付いちまったようだが、修正の手間は結構大変そうだ。
「極薄の高性能鋼の外皮は、ドームの上部近くでもう少し厚くする必要がある」
「修正措置と再テストが必要だ」
「すでにフロリダ州ケープカナベラルの発射場に納入されている飛行型のセントールステージも改造が必要かどうかは不明だ。その場合、このテストと修正作業には数か月かかる可能性」
「2人の情報筋は、追加の作業が必要なため、この飛行は今年の第4四半期までには行われない可能性が高いとアルスに示唆」(この飛行=バルカンの初飛行:米軍の認定には、あともう1回(合計2回)の飛行が必要)
やれやれ・・・。
が、バルカンはいつか(最短で年末か?)必ず飛ぶ。
巨大なフェアリングの中に、秘密の軍事衛星を抱えてな(早くて来年?)。
しこたま固体燃料ブースター着けて、デルタ4ヘビーを上回る打ち上げ能力を備え、ゆくゆくは長期間にわたる宇宙空間での運用(セントール上段の改良による)や1段目ブースターのエンジンユニットの回収能力も付与されると言われている(いつからなのかなあ?)。
しかし、満を持してS社のライバルとして復活した時に相手にしなければならない打ち上げロケットは、既にファルコンズじゃない(そうなのかあ?)。
1段目のエンジンを共用し、初めから再使用を狙っている(しかも、2段目の完全再使用まで!)ブルーオリジンのニューグレンでもない(そもそも、米軍に指定されていないしな)。
言わずと知れた、部屋の中のゾウであるスターシップだ。
もたもたしているうちに、そのリリースのタイミングになっちまう。
(SpaceX、次のStarship試験飛行にShip 25とBooster 9を選択)
https://www.teslarati.com/spacex-picks-ship-25-booster-9-for-next-starship-test-flight/
「Booster 9が期待通りに動作し、発射台に問題がなければ、SpaceXはペースを上げてテスト飛行を行う道が開けるだろう。」
まあ、相変わらず獲らぬ狸のなんとやらだがな。
中国の軍事衛星による宇宙活動の活発化を受けて、米軍もまた、打ち上げ計画の見直しを迫られることになるだろう。
打ち上げ能力だけを見ても、U社とS社の差は歴然だ。
米軍の追加の需要を吸収しきれるのか。
それは、現実的な話として、どっちの会社のどのロケットが担うことになるのか。
当面は、ファルコンヘビーの垂直組み立て棟の完成が待たれるところだが、バンデンバーグの打ち上げ施設の借り上げも行われたことだしな。
スターシップが運用開始となれば、仮に2段目がまだ使い捨て(完全回収の試験運用中)であったとしても、そちらに置き換えられていくに違いない。
スターリンク衛星の打ち上げが、当面2段目使い捨てで行われることを考えても、その運用期間が長引くことも考えられる。
もちろん、米軍のスパイ衛星などを打ち上げるのに、何の問題もないだろう(ラプター2エンジンさえ、まともに動けばね!)。
バルカンは、そのスターシップと競合することになりかねない。
相手は、部屋の中のゾウだからな(タヌキじゃない!)。
セントール上段の改良についても、既に宇宙空間における水素燃料等の長期運用に関する開発を表明しているブルーオリジン(アルテミス5のHLS絡みですが)も、強力なライバルになるだろうし、もちろん、スターシップはそれを前提としてアルテミス3、4のHLSを運用する(2段目の燃料はメタンですが)。
ニューグレンが、米軍の次期打ち上げロケットに選定されるようなことになれば、バルカンは居場所を失う可能性さえある。
一寸先は闇の宇宙開発。
ULAが1社独占で我が世の春を謳歌していたのは、ついこの間のことだ。
飛ぶ鳥を落とす勢いのS社だって、いつどうなるか分からない。
10年後には、地上から消えちまってる可能性だってある(そうなのかあ?)。
火星辺りを探してみたら、ひょっとして見つかるかもしれないけどな・・・。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
(SpaceXとULAは別のミッションのバッチを取得しますが、バルカンの遅れにより一部のミッションがファルコンに移行する可能性があります)
https://www.elonx.cz/spacex-a-ula-ziskaly-dalsi-varku-misi-zdrzeni-vulcanu-by-ale-mohlo-vest-k-presunu-nekterych-misi-na-falcon/
イジーハダチが、ULAのバルカンの遅れについて書いている。
「私個人としては、軍は数か月の遅延の可能性を受け入れることができると信じています。しかし、最初の2回のバルカンミッションのうちの1回で失敗があった場合は話が別になり、すでに次の打ち上げに大幅な遅れが生じることになる。しかし、確かに私たちの誰もそれを望んでいません。」
セントール上段の改良(構造体=タンクの肉厚を部分的に増やすなど)が必要と判断された場合、遅延が長期に及ぶ可能性があるが、仮にそのままで初めの2階の打ち上げに突入したとしても、そこで事故が発生すれば比較にならないほどの遅延に見舞われることになる。
進むも遅延、退くも遅延だな・・・。
記事の見解の通りなら、米軍はセントールVの改良を待つだろうが、そうならない可能性もある。
米軍の今後の打ち上げの大部分をS社が独占する事態は、現実のものとなっている。
暫くの間は、その可能性が続く。
セントールが改良を必要とせず、現状のままの状態で打ち上げられ、何の問題もなくミッションをこなせることが実証されれば話は変わる。
トリーブルーノの淡い期待通り、年内に軍の要求する2回の認証飛行を終え、来年早々の軍事ミッションに臨むことができる。
が、おそらくそうはなるまい。
まあ、どうでもいいんですが。
S社の独占という事態も避けたいところだ。
その場合、採用が見送られたノースロップグラマン(オメガ(OmegA))かブルーオリジン(ニュー・グレン(New Glenn))が復活する可能性もある(そうなのかあ?)。
まあ、それを待つくらいなら、ULAの尻を叩いた方が早いともいう。
特に、オメガの場合、上段にはセントールを採用する可能性が高いからな。
意味ねー・・・。
ニューグレンなんて、本当に飛ぶのかどうかも怪しい。
中国が本気出して宇宙の軍事利用を進め、米軍の活動を脅かす事態になれば別だが、そうでない限りコップの中の嵐に留まる。
バルカンは間違いなく飛ぶだろう。
初飛行が年内に行われなくても、おそらく問題にはなるまい。
そのための代替契約だし、S社にはそれを実施する能力がある。
問題は、垂直組み立て棟だけだがな。
いつになったら具体化するのかな・・・。
ULAのバルカンロケットが、1段目のエンジンの試験点火を行ったことは既に書いた。
(バルカン:全基点火試験クリア)
http://kfujito2.asablo.jp/blog/2023/06/10/9593325
エリックバーガーが、再びセントールV(上段ロケット)の問題を取り上げ、初打ち上げの時期が数か月延びる公算が高いとの記事を上げている。
浮沈子的には、まず、追加で割り当てられた打ち上げ契約の内訳の割合と、その後の運用基準に注目した。
(バルカンはエンジンテストを成功させるも、上段の異常により打ち上げはしばらく遅れる)
https://arstechnica.com/space/2023/06/vulcan-rocket-completes-critical-test-but-launch-slipping-toward-end-of-2023/
「先週金曜日の発表で、宇宙システム軍団は最近、2社の打ち上げ会社に12のフェーズ2ミッションを割り当てたと述べた。これらの打ち上げは、United Launch Alliance と SpaceX の間で 60 対 40 の分割ではなく、均等に分割されました。」
「バルカンが将来のミッションに参加できない場合に備えて、プログラム関係者は、フェーズ2契約により、他のプロバイダーにミッションを再割り当てすることが可能であると述べた」
つまり、S社が過半数の契約を取ることも有り得るわけだ。
米軍の衛星打ち上げミッションにおける、主役の交代が始まっている。
これは、打ち上げビジネスに留まらないだろう。
その後の情報が流れてこないスターシールドにしても、従来の軍事衛星ビジネスを根底から覆すものだ。
打ち上げは衛星ビジネスの基盤だが、メインの収益ではないからな。
サービスを提供する衛星打ち上げてなんぼの商売だ。
長年の懸案だったBE-4エンジンの点火試験に成功し、意気軒高となるはずだったバルカンだが、一方で上段のセントールVでケチが付いちまったようだが、修正の手間は結構大変そうだ。
「極薄の高性能鋼の外皮は、ドームの上部近くでもう少し厚くする必要がある」
「修正措置と再テストが必要だ」
「すでにフロリダ州ケープカナベラルの発射場に納入されている飛行型のセントールステージも改造が必要かどうかは不明だ。その場合、このテストと修正作業には数か月かかる可能性」
「2人の情報筋は、追加の作業が必要なため、この飛行は今年の第4四半期までには行われない可能性が高いとアルスに示唆」(この飛行=バルカンの初飛行:米軍の認定には、あともう1回(合計2回)の飛行が必要)
やれやれ・・・。
が、バルカンはいつか(最短で年末か?)必ず飛ぶ。
巨大なフェアリングの中に、秘密の軍事衛星を抱えてな(早くて来年?)。
しこたま固体燃料ブースター着けて、デルタ4ヘビーを上回る打ち上げ能力を備え、ゆくゆくは長期間にわたる宇宙空間での運用(セントール上段の改良による)や1段目ブースターのエンジンユニットの回収能力も付与されると言われている(いつからなのかなあ?)。
しかし、満を持してS社のライバルとして復活した時に相手にしなければならない打ち上げロケットは、既にファルコンズじゃない(そうなのかあ?)。
1段目のエンジンを共用し、初めから再使用を狙っている(しかも、2段目の完全再使用まで!)ブルーオリジンのニューグレンでもない(そもそも、米軍に指定されていないしな)。
言わずと知れた、部屋の中のゾウであるスターシップだ。
もたもたしているうちに、そのリリースのタイミングになっちまう。
(SpaceX、次のStarship試験飛行にShip 25とBooster 9を選択)
https://www.teslarati.com/spacex-picks-ship-25-booster-9-for-next-starship-test-flight/
「Booster 9が期待通りに動作し、発射台に問題がなければ、SpaceXはペースを上げてテスト飛行を行う道が開けるだろう。」
まあ、相変わらず獲らぬ狸のなんとやらだがな。
中国の軍事衛星による宇宙活動の活発化を受けて、米軍もまた、打ち上げ計画の見直しを迫られることになるだろう。
打ち上げ能力だけを見ても、U社とS社の差は歴然だ。
米軍の追加の需要を吸収しきれるのか。
それは、現実的な話として、どっちの会社のどのロケットが担うことになるのか。
当面は、ファルコンヘビーの垂直組み立て棟の完成が待たれるところだが、バンデンバーグの打ち上げ施設の借り上げも行われたことだしな。
スターシップが運用開始となれば、仮に2段目がまだ使い捨て(完全回収の試験運用中)であったとしても、そちらに置き換えられていくに違いない。
スターリンク衛星の打ち上げが、当面2段目使い捨てで行われることを考えても、その運用期間が長引くことも考えられる。
もちろん、米軍のスパイ衛星などを打ち上げるのに、何の問題もないだろう(ラプター2エンジンさえ、まともに動けばね!)。
バルカンは、そのスターシップと競合することになりかねない。
相手は、部屋の中のゾウだからな(タヌキじゃない!)。
セントール上段の改良についても、既に宇宙空間における水素燃料等の長期運用に関する開発を表明しているブルーオリジン(アルテミス5のHLS絡みですが)も、強力なライバルになるだろうし、もちろん、スターシップはそれを前提としてアルテミス3、4のHLSを運用する(2段目の燃料はメタンですが)。
ニューグレンが、米軍の次期打ち上げロケットに選定されるようなことになれば、バルカンは居場所を失う可能性さえある。
一寸先は闇の宇宙開発。
ULAが1社独占で我が世の春を謳歌していたのは、ついこの間のことだ。
飛ぶ鳥を落とす勢いのS社だって、いつどうなるか分からない。
10年後には、地上から消えちまってる可能性だってある(そうなのかあ?)。
火星辺りを探してみたら、ひょっとして見つかるかもしれないけどな・・・。
<以下追加>ーーーーーーーーーー
(SpaceXとULAは別のミッションのバッチを取得しますが、バルカンの遅れにより一部のミッションがファルコンに移行する可能性があります)
https://www.elonx.cz/spacex-a-ula-ziskaly-dalsi-varku-misi-zdrzeni-vulcanu-by-ale-mohlo-vest-k-presunu-nekterych-misi-na-falcon/
イジーハダチが、ULAのバルカンの遅れについて書いている。
「私個人としては、軍は数か月の遅延の可能性を受け入れることができると信じています。しかし、最初の2回のバルカンミッションのうちの1回で失敗があった場合は話が別になり、すでに次の打ち上げに大幅な遅れが生じることになる。しかし、確かに私たちの誰もそれを望んでいません。」
セントール上段の改良(構造体=タンクの肉厚を部分的に増やすなど)が必要と判断された場合、遅延が長期に及ぶ可能性があるが、仮にそのままで初めの2階の打ち上げに突入したとしても、そこで事故が発生すれば比較にならないほどの遅延に見舞われることになる。
進むも遅延、退くも遅延だな・・・。
記事の見解の通りなら、米軍はセントールVの改良を待つだろうが、そうならない可能性もある。
米軍の今後の打ち上げの大部分をS社が独占する事態は、現実のものとなっている。
暫くの間は、その可能性が続く。
セントールが改良を必要とせず、現状のままの状態で打ち上げられ、何の問題もなくミッションをこなせることが実証されれば話は変わる。
トリーブルーノの淡い期待通り、年内に軍の要求する2回の認証飛行を終え、来年早々の軍事ミッションに臨むことができる。
が、おそらくそうはなるまい。
まあ、どうでもいいんですが。
S社の独占という事態も避けたいところだ。
その場合、採用が見送られたノースロップグラマン(オメガ(OmegA))かブルーオリジン(ニュー・グレン(New Glenn))が復活する可能性もある(そうなのかあ?)。
まあ、それを待つくらいなら、ULAの尻を叩いた方が早いともいう。
特に、オメガの場合、上段にはセントールを採用する可能性が高いからな。
意味ねー・・・。
ニューグレンなんて、本当に飛ぶのかどうかも怪しい。
中国が本気出して宇宙の軍事利用を進め、米軍の活動を脅かす事態になれば別だが、そうでない限りコップの中の嵐に留まる。
バルカンは間違いなく飛ぶだろう。
初飛行が年内に行われなくても、おそらく問題にはなるまい。
そのための代替契約だし、S社にはそれを実施する能力がある。
問題は、垂直組み立て棟だけだがな。
いつになったら具体化するのかな・・・。
最近のコメント