CCRと生物 ― 2016年01月29日 13:50
CCRと生物
クローズド・サーキット・リブリーザー(CCR)は、どこか生き物臭い。
えーと、前日にニンニク料理食って、においが呼吸回路に染みついて抜けないとか、そういう話ではないので、念のため。
吐いた息を循環させて、二酸化炭素を取り除き、消費された分の酸素を足すというのが、CCRの機能のコアな部分だ。
つまり、人間がその呼吸により産生する二酸化炭素を除去し、消費する酸素を加える。
表と裏との違いということで、これは、地球環境の中で光合成生物が行っていることと同じだ。
この機能を実現させるために、今は、とりあえず酸素センサーとか、ソフノライム(モレキュラー社の商品名)使ったりしているが、未来のCCRでは、人工葉緑素を高輝度なLEDで照らして、高効率な光合成によって達成するかもしれない(酸素センサーは、やっぱ必要かな)。
地球温暖化も、一気に解決だ。
現在は、そううまくはいかず、いろいろ苦労が絶えない。
二酸化炭素を化学反応によって除去するには、使い捨ての水酸化カルシウムが必要だし、反応する限界がきたら(来る前に!)交換しなければならない。
そっちは、全部取り除いてしまえばいいが、酸素はそうはいかない。
多すぎても、少なすぎても問題が起こる。
一定の値(分圧)を、常に維持しなければならない。
(恒常性)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%81%92%E5%B8%B8%E6%80%A7
「内部環境を一定の状態に保ちつづけようとする傾向のことである」
元々は、生物関係の用語だったが、最近は他でも使いまわされてるようだな。
浮沈子がCCRでの浮力コントロールに悩んでいる頃(まあ、今でもそうですが)、動的平衡という状態についても調べた。
(動的平衡)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%95%E7%9A%84%E5%B9%B3%E8%A1%A1
「物理学・化学などにおいて、互いに逆向きの過程が同じ速度で進行することにより、系全体としては時間変化せず平衡に達している状態」
「系と外界とはやはり平衡状態にあるか、または完全に隔離されている(孤立系)かである。」
よく似た概念に、定常状態というのがある。
(定常状態)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9A%E5%B8%B8%E7%8A%B6%E6%85%8B
「時間的に一定して変わらない状態」
系の内外での出入りが同じで、ある状態が保たれている。
(散逸構造)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%A3%E9%80%B8%E6%A7%8B%E9%80%A0
「熱力学的に平衡でない状態にある開放系構造を指す。すなわち、エネルギーが散逸していく流れの中に自己組織化のもと発生する、定常的な構造である。」
「生命現象は定常開放系としてシステムが理解可能」
この辺りになると、完全にお手上げだが、系の外部とのエネルギーのやり取りがある。
CCRだって、熱的には平衡ではない(ソフノライムも、人間も、発熱反応)。
物質としても、閉じた系ではない。
酸素使うし、ソフノライムも替えなければならない。
それでも、短期的、局所的に見れば、一定の状態を保つ仕組みだ。
我々は、普段の生活の中では気付きにくいが、陸上では常に一定濃度(さらに、山登りとかしなければ、概ね一定分圧)の酸素を吸い、吐いた二酸化炭素は、どこかで吸収されたり固定化されて減少する。
水中では、そうはいかないので、人工的にそういう環境を作ってやらなければならない。
考えてみれば、オープンサーキットだって、同じことをやっているわけだ。
適切な酸素濃度に調製したタンクを、その深度に合わせて交換していけば、PO2を一定の範囲に収めることが出来るし。
二酸化炭素については、陸上と同じように、環境にぶちまけてしまえばいい。
人間が水中で呼吸するという、不埒なことを可能にするのに、手段はいろいろある。
生体との出入りの部分で、一定の範囲に収まっていればいい。
潜水器とその系の外部とのやりとりがどうであれ、吸入するガスの品質の維持と、吐出したガスの処分さえ行えればいいのだ。
ダイバーは、状況に応じて潜水器を選択すればいい。
吐いたガスをもう一度吸うには、リアルタイムでそれなりの管理が必要だし、タンクに詰めたガスを吸うだけなら、陸上でチェックし、水中では吸う深度とか、タンクの違いに気を付ければいいだけだ。
CCRは、再呼吸という方法を選択をした器械なので、一定時間、人間の呼吸環境を管理し続けなければならない(医療器械と同じです)。
吸うガスも、あらかじめ決められているわけではなく、リアルタイムに水中で調製する(PO2の設定はしますが)。
要するに、不安定なのだ。
それを可能にするには、人間自らがセンサーを頼りに制御するか、コンピューター殿にお任せするかということになる。
二酸化炭素の除去については、センサーを付けまくったからといって、何が出来るわけでもない。
頃合いかな、と思ったタイミングで、交換するしかない(メーカーの運用基準は守りましょう!)。
そうやって、動的に構築された人工環境の元、水中で呼吸しているわけだ。
考えてみれば、ヤバイ話だ。
酸素を供給するソレノイドバルブの故障、酸素センサーの不具合、制御・駆動関係のバッテリー切れ、呼吸回路内の水没、二酸化炭素除去剤のトラブル、人間側のありとあらゆるミス・・・。
もちろん、持ち込んでいる酸素やディリュエントだって有限だから、枯渇することだってある。
CCRダイビングを成立させるためには、これらのややっこしい話を、「全て」クリアしなければならない。
そうでなければ、水中での正常な呼吸を維持できない。
APDは、インスピレーションシリーズに使っていた「バディ」というネーミングを止めてしまったが、ダイバーにとって、CCRのご機嫌を伺うというフィーリングからいえば、相棒というイメージは似合っていた。
生殺与奪に関わるという点では、それ以上かもしれない。
吐いた息を良きに計らって、再度、吸うことが出来るようにしてくれるだけだが、それが出来なくなれば死んでしまうわけだからな。
繰り返すが、水中という特殊な環境の中で、それに適した器材を選択するのは、ダイバーの役目だ。
トラブルに対応できるスキルを養い、代替手段を確保するのも同じである。
CCRは人を殺さない。
人が人を殺す。
概ね、自殺に近い感じだがな。
レクリエーショナルレベルでCCRを使うことについては、そうでない場合(減圧したり、混合ガス使ったり)と比べて簡単だといわれている。
いやあ、それでも、十分ややっこしい。
そういう器材だと、しっかり認識して選択し、使っていく必要がある。
医療器械と同等以上の複雑さがあり、メンテナンスも徹底しなければならない。
手間がかかるのだ。
そういう点でも、生き物くさいといえるかもな・・・。
クローズド・サーキット・リブリーザー(CCR)は、どこか生き物臭い。
えーと、前日にニンニク料理食って、においが呼吸回路に染みついて抜けないとか、そういう話ではないので、念のため。
吐いた息を循環させて、二酸化炭素を取り除き、消費された分の酸素を足すというのが、CCRの機能のコアな部分だ。
つまり、人間がその呼吸により産生する二酸化炭素を除去し、消費する酸素を加える。
表と裏との違いということで、これは、地球環境の中で光合成生物が行っていることと同じだ。
この機能を実現させるために、今は、とりあえず酸素センサーとか、ソフノライム(モレキュラー社の商品名)使ったりしているが、未来のCCRでは、人工葉緑素を高輝度なLEDで照らして、高効率な光合成によって達成するかもしれない(酸素センサーは、やっぱ必要かな)。
地球温暖化も、一気に解決だ。
現在は、そううまくはいかず、いろいろ苦労が絶えない。
二酸化炭素を化学反応によって除去するには、使い捨ての水酸化カルシウムが必要だし、反応する限界がきたら(来る前に!)交換しなければならない。
そっちは、全部取り除いてしまえばいいが、酸素はそうはいかない。
多すぎても、少なすぎても問題が起こる。
一定の値(分圧)を、常に維持しなければならない。
(恒常性)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%81%92%E5%B8%B8%E6%80%A7
「内部環境を一定の状態に保ちつづけようとする傾向のことである」
元々は、生物関係の用語だったが、最近は他でも使いまわされてるようだな。
浮沈子がCCRでの浮力コントロールに悩んでいる頃(まあ、今でもそうですが)、動的平衡という状態についても調べた。
(動的平衡)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%95%E7%9A%84%E5%B9%B3%E8%A1%A1
「物理学・化学などにおいて、互いに逆向きの過程が同じ速度で進行することにより、系全体としては時間変化せず平衡に達している状態」
「系と外界とはやはり平衡状態にあるか、または完全に隔離されている(孤立系)かである。」
よく似た概念に、定常状態というのがある。
(定常状態)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9A%E5%B8%B8%E7%8A%B6%E6%85%8B
「時間的に一定して変わらない状態」
系の内外での出入りが同じで、ある状態が保たれている。
(散逸構造)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%A3%E9%80%B8%E6%A7%8B%E9%80%A0
「熱力学的に平衡でない状態にある開放系構造を指す。すなわち、エネルギーが散逸していく流れの中に自己組織化のもと発生する、定常的な構造である。」
「生命現象は定常開放系としてシステムが理解可能」
この辺りになると、完全にお手上げだが、系の外部とのエネルギーのやり取りがある。
CCRだって、熱的には平衡ではない(ソフノライムも、人間も、発熱反応)。
物質としても、閉じた系ではない。
酸素使うし、ソフノライムも替えなければならない。
それでも、短期的、局所的に見れば、一定の状態を保つ仕組みだ。
我々は、普段の生活の中では気付きにくいが、陸上では常に一定濃度(さらに、山登りとかしなければ、概ね一定分圧)の酸素を吸い、吐いた二酸化炭素は、どこかで吸収されたり固定化されて減少する。
水中では、そうはいかないので、人工的にそういう環境を作ってやらなければならない。
考えてみれば、オープンサーキットだって、同じことをやっているわけだ。
適切な酸素濃度に調製したタンクを、その深度に合わせて交換していけば、PO2を一定の範囲に収めることが出来るし。
二酸化炭素については、陸上と同じように、環境にぶちまけてしまえばいい。
人間が水中で呼吸するという、不埒なことを可能にするのに、手段はいろいろある。
生体との出入りの部分で、一定の範囲に収まっていればいい。
潜水器とその系の外部とのやりとりがどうであれ、吸入するガスの品質の維持と、吐出したガスの処分さえ行えればいいのだ。
ダイバーは、状況に応じて潜水器を選択すればいい。
吐いたガスをもう一度吸うには、リアルタイムでそれなりの管理が必要だし、タンクに詰めたガスを吸うだけなら、陸上でチェックし、水中では吸う深度とか、タンクの違いに気を付ければいいだけだ。
CCRは、再呼吸という方法を選択をした器械なので、一定時間、人間の呼吸環境を管理し続けなければならない(医療器械と同じです)。
吸うガスも、あらかじめ決められているわけではなく、リアルタイムに水中で調製する(PO2の設定はしますが)。
要するに、不安定なのだ。
それを可能にするには、人間自らがセンサーを頼りに制御するか、コンピューター殿にお任せするかということになる。
二酸化炭素の除去については、センサーを付けまくったからといって、何が出来るわけでもない。
頃合いかな、と思ったタイミングで、交換するしかない(メーカーの運用基準は守りましょう!)。
そうやって、動的に構築された人工環境の元、水中で呼吸しているわけだ。
考えてみれば、ヤバイ話だ。
酸素を供給するソレノイドバルブの故障、酸素センサーの不具合、制御・駆動関係のバッテリー切れ、呼吸回路内の水没、二酸化炭素除去剤のトラブル、人間側のありとあらゆるミス・・・。
もちろん、持ち込んでいる酸素やディリュエントだって有限だから、枯渇することだってある。
CCRダイビングを成立させるためには、これらのややっこしい話を、「全て」クリアしなければならない。
そうでなければ、水中での正常な呼吸を維持できない。
APDは、インスピレーションシリーズに使っていた「バディ」というネーミングを止めてしまったが、ダイバーにとって、CCRのご機嫌を伺うというフィーリングからいえば、相棒というイメージは似合っていた。
生殺与奪に関わるという点では、それ以上かもしれない。
吐いた息を良きに計らって、再度、吸うことが出来るようにしてくれるだけだが、それが出来なくなれば死んでしまうわけだからな。
繰り返すが、水中という特殊な環境の中で、それに適した器材を選択するのは、ダイバーの役目だ。
トラブルに対応できるスキルを養い、代替手段を確保するのも同じである。
CCRは人を殺さない。
人が人を殺す。
概ね、自殺に近い感じだがな。
レクリエーショナルレベルでCCRを使うことについては、そうでない場合(減圧したり、混合ガス使ったり)と比べて簡単だといわれている。
いやあ、それでも、十分ややっこしい。
そういう器材だと、しっかり認識して選択し、使っていく必要がある。
医療器械と同等以上の複雑さがあり、メンテナンスも徹底しなければならない。
手間がかかるのだ。
そういう点でも、生き物くさいといえるかもな・・・。
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