ラプターエンジンはものになるのか2019年02月10日 20:09

ラプターエンジンはものになるのか
ラプターエンジンはものになるのか


いつまでたっても完成しないと思われていた(そうなのかあ?)スペースXのラプターエンジン。

(Raptor (rocket engine family))
https://en.wikipedia.org/wiki/Raptor_(rocket_engine_family)

「ラプターは、ある多段燃焼、メタン -fueled ロケットエンジンが開発中のSpaceX社。」(ワケワカの自動翻訳のまま:以下同じ)

まあ、何となく意味が分かるからいいか。

(姿を現した、イーロン・マスクの「月ロケット」のエンジン)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/02/post-11642.php

「ラプターは液体酸素とメタンを推進剤に使う。メタンは理論上、比較的高い性能が発揮しやすく、また低コストであるため開発や運用がしやすい。さらにススが発生しないため、エンジンの再使用もしやすいといった特長をもつ。」

「さらにラプターは、エンジンを動かす仕組みに「フル・フロウ二段燃焼サイクル」と呼ばれる技術を採用している。この技術は、理論上、最高の効率が得られるうえに、エンジンの耐久性や信頼性の向上も図れるなど、数々の利点がある。しかし、それと引き換えに複雑な構造、技術が要求されるため、これまでに実用化に成功した例はない。」

1970年代からソ連で開発が始まっていたが、究極のややっこしさのために、実用化は見送られてきた。

米国では、空軍の次世代エンジンプロジェクトに取り上げられているが、実用化に至ることなく中止されている(開発自体は続いているようです)。

パワーが足りなければ、デカいエンジン作ったり、燃費が悪ければ燃料を大量に積めばいいわけで、どーせ使い捨てにされるロケットエンジンに、そこまでややっこしさを求めなくてもいい・・・。

そう考えたのかどうかは知らないけど、再使用ロケットや再使用エンジン(ULAのバルカンとか)の構想が現実になり、ここにきてフルフロー二段燃焼サイクルは、にわかに注目を集めている。

我が国の次世代基幹ロケットのメインエンジンであるLE-9は、そういうややっこしさに背を向けて、もっと単純で低コストな方式を採用している。

(LE-9)
https://ja.wikipedia.org/wiki/LE-9

「現在の衛星打ち上げ市場において競争力を持つためには、ロケットの製造費用を下げて打ち上げ費用を下げることが重要である。このため、H3の1段目エンジンには従来の高価で複雑な二段燃焼サイクルにかわり、日本で最初に実用化された簡素で信頼性のあるエキスパンダーブリードサイクルを採用することにした。」

(エキスパンダーブリードサイクル)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB

「二段燃焼サイクルと比べて構造が簡素になること、ターボポンプ作用気体も低温となることから低コスト化が図れ、エンジン始動時の制御性と信頼性は格段に向上する」

高圧、高エネルギー、高温のロケットエンジンでは、性能と信頼性のトレードオフ(コストもですが)が重要で、ロケットに何を求めるかによっても、どの方式が望ましいかは変わってくるのかもしれない。

国威発揚なのか、技術的優位のアピールなのか、将来の有人ロケットに向けて安全性を取るのか、それとも単なるコスト削減なのか。

ちなみに、1基10億円といわれるH2AのLE-7Aの半額で作れるといわれているLE-9だが、騙されてはいけない。

H3ロケットを飛ばすには、サイテー2基、場合によっては3基必要になるといわれている。

三菱が損をするような選択肢はあり得ないわけか・・・。

まあ、どうでもいいんですが。

ニューズウイークの記事の時点では、ラプターエンジンの方は、まだ燃焼試験は行われていなかったわけだが、先日、1回目の試験が行われたと報じられている。

(マスク氏、スターシップの次世代エンジンの燃焼実験動画を公開)
https://sorae.info/030201/20190206_spacex.html

「「スターシップ(Starship)」のエンジン「ラプター(Raptor)」の画像および燃焼実験の動画を公開しました。」

さらには、追加の試験も行われたようだ。

(RAPTOR FIRED AT POWER LEVEL NEEDED FOR STARSHIP, SUPER HEAVY)
https://www.spaceflightinsider.com/organizations/space-exploration-technologies/raptor-fired-at-power-level-needed-for-starship-super-heavy/

「最初のテストから1週間も経たないうちに、SpaceXは再びRaptorの飛行エンジンを始動させ、その性能をStarshipとSuper Heavyに必要なレベルまで高めました。」(キャプションより)

「テストがどのくらいの期間行われたのか、それともテストがフルパワーで行われたのかについて、Muskは述べていません。2月3日の燃焼はたった2秒で、出力は約60パーセントでした。しかし、彼は、後者の試験で257バール、つまり1平方インチあたり約3,700ポンドのチャンバー圧力と、「暖かい推進剤」を用いた場合の推定力約172メートルトンに達したと述べた。」

これは、現時点では十分な出力とされているようだ。

キンキンに冷やした燃料では、1割から2割増しになるという。

まあいい。

ウィキ(英語版)によれば、2013年10月時点で公表されていた計画推力は2,900 kNとあるが、今回の達成値(172メートルトン)がそれと比べてどの程度なのかはよく分からない。

(計算サイト:
指定された力を他の単位の力に換算します。
計算したい力と単位から他の単位の値を計算し表示します。:追加)
http://www.calc-site.com/units/force

「172000 重量キログラム を換算
単位名:値:単位
重量キログラム:172000:kgf:g × 1 kg
ニュートン:1686743.8:N:kg·m/s^2」

1687 kNというところか(当初計画値の6割以下)。

しかし、その後、計画値は大きく変動する。

・2014年2月:4,400 kN
・2014年6月:6,900 kN(海面)、8,200 kN(真空)
・2015年1月:2,300 kN
・拡大率40のラプター2016:3,285 kN
・膨張比200のラプター2016:3,500 kN
・2017年9月:1,700 kN(海面)、1,900 kN(真空)
・2018年9月:2,000 kN、
・2019年2月:2,452 kN(表中の値:これと比べても7割以下)

浮沈子的には、このエンジンがものになるには、あと10年はかかると見ている(そんなあ!)。

確かに、搭載するロケットの方が定まらない(ロケットのスペックは、毎年変わっています)と、エンジンの設計も出来ないというのは分かるが、そのためのクラスター化だからな。

言い訳は無用だ。

今回の情報にしたって、ツイッターでちょこっと出しただけ。

スターシップやスーパーヘビーが宇宙にちゃんと飛び立つまでには、更に長い年月を要する(再使用もしないとな)。

月周回なんて、2030年代にでもならなければ、実現は不可能だろう(そうなのかあ?)。

火星なんて、今世紀中に行けるかどうかも怪しい・・・。

一方、ブルーオリジンは、BE-4の製造工場の建設に入ったといわれているが、こっちの方こそ怪しい話だ。

(Blue Origin、ロケットエンジン製造工場をアラバマ州に建設)
https://gunosy.com/articles/a92ZE

「米国アラバマ州でロケットエンジン製造工場の建設に着手」

「新設工場で作られるBE-4エンジンは、ULAが開発中の大型ロケット「ヴァルカン」にも使われる」

間違ってはいけない。

工場だけで来ても、エンジンが出来るとは限らないのだ。

ブルーオリジンに至っては、メタン燃料エンジンも初めてなら、衛星打ち上げロケットに使われるエンジンも初めてだからな。

ニューグレンなんて、影も形もない。

浮沈子的には、今世紀中にエンジンが出来れば、上等じゃないかと考えている(そんなあ!)。

ULAがBE-4を選んだのは、バルカンロケットの開発の遅れを、エンジン開発の遅れのせいに出来るからではないかとみている(そうなのかあ?)。

ただ、スペースXについていえば、打ち上げながら開発を進め、改良を重ねて所期の結果を得るという開発手法だからな。

鳥嶋さんの記事にもこうある。

「まずはやや低めの性能を狙い(それでも月へ飛行するには十分な性能である)、ゆくゆくは設計の最適化や改良による性能向上を図るとしている。」

先日ぶっ壊れたホッパー(高度は、せいぜい5km)のテストに使える程度の出力でリリースし、ロケットのテストと並行して開発を進めると思われる。

とりあえず、燃やすところまではいっているようだからな。

配管の直径とかの性能が依存するところの設計の妥当性や、負荷をかけた時の影響とかを評価するための試験を行うところまではこぎつけたわけだ。

ものになるまでには、遥かな道のりが待っている。

どこかで技術的な壁にぶち当たれば、開発がストップすることだってあり得るからな。

大体、ロケットそのものの開発からして怪しい。

スターシップやスーパーヘビーというロケットがあってこそのラプターエンジンだ・・・。

いや、ひょっとしたら、大どんでん返しで、BE-4の開発次第では、ブルーオリジンとかにOEM供給するかもしれない。

敵に塩(エンジン)を送る。

民間企業だからな。

商売商売・・・。

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