翻訳 ― 2014年07月30日 01:32
翻訳
このブログほど、翻訳のお世話になっている記事は少ないのではないか。
参照している記事や、資料として活用しているウィキペディアの大部分、手元の書籍やネットのネタは、殆どが何らかの形で翻訳されたものだ。
もちろん、日本語の文化で育った方の書かれたものも多い。
しかし、それも遠い昔に中国から伝わった言葉だったりもする。
現代はインターネットでの自動翻訳が手軽に出来る。
訳文は悲惨なものだが、まあ、なんとなく流れはわかるし、原文を参照しながら読めば、文学作品とかでなければ用は足りる。
やはり英語の原文が多いが、ハングルや中国語、フランス語、ドイツ語、チェコ語なども自動翻訳で読んだ。
もちろん、英語以外は素養がないので、原文を参照することが出来ない。
その英語にしても、読解力は中学英語に毛が生えた程度、会話能力は「単語2つ」並べるのがやっとである。
多言語を自在に操り、会話もこなす人々を見ていると、実に羨ましい限りだ。
今、リブリーザーのテキストを精読しているのだが、こんなもんを日本語に翻訳するというのは、とてつもない作業であるということが分かる。
特に、ダイビング技術の翻訳については、PADIが定めている(であろう)翻訳基準に則って訳出しないと、他のテキストの用語や概念と齟齬をきたす。
リブリーザー固有の用語についても、将来にわたって、その用語が使用され続けるという前提で訳さないといけない。
一例を挙げると、呼吸回路内へ水が浸入してくるという現象があって、テキスト内では、少量で制御可能な浸水と、一時に多量の水が入ってきて制御不可能な状態を区別している(まあ、当然ですが)。
さて、この二つをどう区別して訳すのか・・・。
浮沈子は、別に翻訳しようとしているわけではないが、他の言語に置き換える作業は、単に単語を訳せばいいという話ではない。
文法的に構文を当て嵌めればいいという話でもない(このテキストは、高校生くらいの構文解釈で、十分読めるようになっている)。
その言葉が説明しようとしている状況、背景、そして、他の言葉が説明している事柄との違いを理解し、概念的な矛盾を生じないように、注意深く置き換えなければならない。
しかも、技術用語の場合は、統一した単語を使わなければ誤解が生じて、場合によっては安全を損なう。
PADI語の場合は、内輪の用語統一も図らなければならない。
英語のまま、理解するのが正解だな。
80ページまでは、そんな感じで辿り着いた。
もう少しでチャプター1(第一章)が終わる。
もってまわった言い方をしているところがあったり、口語体が混ざる「This Happend」など、英語を非母国語とする生徒向けのテキストではないが、それでも、リブリーザーのテキストとして、できるだけわかりやすく書こうとしているのは分かる。
言語の壁よりも、伝えようとしている内容の壁の方が、厚く、高い。
浮沈子に言わせれば、リブリーザーの使用における中性浮力やホバリングなどは、言葉による説明を放棄しているとしか思えないな・・・。
まあいい。
後は、身体で覚えてもらおう。
限られた形容詞や副詞を駆使したって、実際に体験する状況を正確に表現することは困難だ。
それは、日本語を使っても難しい。
浮沈子が、このブログでCCRのことを書こうとして苦労しているのも、正にその点である。
しかも、CCRの方が経験本数が遥かに多く、オープンサーキットが新鮮に(異様に)感じる認識の中で説明しようとすると、余計困難を感じる。
レクリエーショナルレベルでのタイプRを用いた運用(特に基礎コース)は、浮沈子が知るIANTDでのインスピの運用とは異なるところもあって、その違いを咀嚼しようと努力しているが、それは、まあ、大したことはない。
何かあったらベイルアウトという、シンプルな対応も、初めてリブリーザーを使うということを考えると、それもアリかとは思う。
コンピューター殿に全てを委ね、人間はダイビングに集中するというのは、悪い選択ではない。
1分から少なくとも2分までの間に1回、液晶モニターを確認すればいいだけだ。
そのモニターには、コンピューター殿が翻訳した、リブリーザーの運用に関わる情報が表示されるというわけである。
何も表示されていなかったら?。
警告も、予告もなく、機械は突然壊れることがある。
その時、ガスの混合を管理していたはずのコンピューター殿は、業務を放棄してどこかへ行ってしまったのだ。
オープンサーキットがぶっ壊れる時は、ド派手な音がしてホースが裂けたり、Oリングがぶっ飛んで泡が景気良く漏れたりして、しかも、その結果、ガスが吸えなくなったりして、否が応でも故障したことに気付くが、リブリーザーは静かに壊れる可能性があって、気付きにくい。
しかも、あろうことか、ループ構造をした呼吸回路があるために、息ができてしまうのである!。
どこかに遮断弁かなんか付けて、故障したらそいつが閉まって、息が出来なくしてくれればいいんだが、そんな仕掛けをしたら、故障箇所が増えるだけかもしれない。
だいたい、そんな仕掛けが出来るなら、自動でオープンサーキットに切り替えればいいだけの話だ(そのうち、できるかも)。
故障したときに、気付かずに、危ないガスを吸い込んでしまうというのが、リブリーザーの構造に起因する最も危険な状況である。
リブリーザーがリブリーザーであることを止めない限り、避けようのない危険だ。
CPUを多重化したり、センサーを増やしたり、運用を工夫したりしても、この点だけは構造的欠陥(特性?)なのでどうしようもなかろう。
全体の信頼性を向上させていくより他に手はない。
閉じた回路内にガスを循環させ、二酸化炭素を除去して、酸素を加える。
これが、リブリーザーの全てであり、本質だ。
回路内の圧力を環境圧と均衡させるための仕掛け(ディリュエントガスやADV、ディリュエント側マニュアルインフレーター、OPV、マスクからの排気、マウスピースからの排気)、加える酸素の量を加減する仕掛け(酸素センサー、ソレノイドバルブ、CPU:コンピューター殿、酸素側マニュアルインフレーター)、二酸化炭素の除去を確認する仕掛け(二酸化炭素センサー、反応熱を測る温度計)などは、全てリブリーザーの機能を実現させるための付加的な要素に過ぎない。
PO2モニターの数字とにらめっこしながら、酸素を自分で添加するマニュアルコントロールをしていると、裸のリブリーザーを感じる。
この状態だって、酸素センサーの値が分からなければならないわけだし、それなりにハイテクではあるのだが、例えば別系統の酸素センサーを付けて、それ専用のダイコンでモニターすれば、本体のコンピューター殿がサボタージュ(というか、故障)していても、リブリーザーの機能は発揮できる。
PADIのリブリーザーのテキストでは、その辺りの話は省略されていて、出来合いのタイプRについて簡単な説明に留まっている。
構造を書いたイラストには、マニュアルインフレーターは載っていない・・・。
まあ、どうでもいいんですが。
浮沈子は、ある意味では、タイプRというのはリブリーザーの進化型かも知れないと考え始めている。
もう、コンピューター殿にお任せして、人間が弄る所は極力少なくして、マニュアル操作なんてとんでもない!。
自動車だって、オートマが殆どだし(あんま、関係ない・・・)。
ひょっとすると、タイプTのCCRなんて、そのうち消えてなくなるんじゃないのか。
あれって、マニュアル操作をすることと、減圧プログラムが組み込まれているだけで、他は何も変わらないわけだし。
タイプR(のCCR)は、その意味では、レクリエーショナルレベルのリブリーザーというより、未来のCCRなのかも知れない。
タイプRを、デュアルでサイドマウント化なんかして持ち込めれば、いうことはなかろう・・・。
まあ、もちろん、テキストには書けないだろうけど。
100年後に、マニュアルインフレーターが残っているかといわれれば、浮沈子には自信がないな。
大深度潜水でディリュエントガスをアウトボードのシリンダーと切り替える関係で、ディリュエント側だけ残っている可能性はあるが、マニフォールドでADVへつなげた方が運用は楽だし、マーク6やセブンのように、ディリュエントもソレノイドから噴くようになっていれば、そもそもそっちの方に繋いでおかなければならない(切り替える仕掛けは必要ですが)。
マニュアルインフレーターは、退化して消え去りつつある痕跡器官のようなものなのかもしれない。
(痕跡器官 (生物))
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%97%95%E8%B7%A1%E5%99%A8%E5%AE%98_(%E7%94%9F%E7%89%A9)
「退化によって本来の用をなさなくなった器官が、わずかに形だけがそれと分かるように残っているものをさす。ヒトの尾骶骨などがある。」
もちろん、タイプTの運用でマニュアルインフレーションを行うのは、21世紀初頭の現在は意味があるし、安全性の向上にも繋がっている。
しかし、それは、時間の問題で消えてしまうことなのかもしれない。
電気系統の故障率が、レギュレーターの故障率の100分の1以下になって、ワンチップでソレノイドバルブに酸素センサーと一体となってモジュール化して組み込まれれば、システムをモニタリングするという運用自体がなくなるかもしれない。
バッテリーさえモジュールに組み込まれて、ワンダイブ毎に使い捨てで交換される。
プレパッキングされたソフノダイブと、モジュール化された電装系(消耗品!)をセットして、プレブリージング(これは必要でしょう!)したら、潜るだけである。
使い捨てにすることで、品質管理をシンプルに出来るし、構造が簡単になってコストの削減にも繋がる。
ソレノイドバルブの接続の問題はあるが、ソフノダイブと一体になってしまう可能性もあるな。
そうすれば、使用期限が過ぎたソフノダイブを誤って使うこともない。
組み込まれたチップが、使用時間を管理しているからだ。
包装用のフィルムを剝いたときに、スイッチが入るようにしておけばいい(24時間以内)。
本体に組み込まれて、ソレノイドが作動した時間を管理すれば、反応した酸素の量から二酸化炭素の除去能力を推定できる。
うーん、コストさえ見合えば、これはいけるんじゃないだろうか。
浮沈子が、この辺のことをああでもない、こうでもないと考えているのには訳がある。
そう、将来そんなリブリーザーが出てくるようになれば、このクソマニュアル(失礼!)も、遥かにシンプルになって、210ページもいらなくなって、読むのに骨も折れず、翻訳とかも楽になるんじゃなかろうか、と考えているからだ。
マニュアルに書いてあるのは、パックを本体に挿入して、プレブリージングして潜るだけ。
上がってきたら、パックを交換しましょう!、以上終わりである。
まあ、浮力調整のところとかは同じだろうし、リブリーザーの本質は何も変わらないので、消毒したり、乾燥させたりといった部分は残るだろう。
その頃は、700気圧のタンクが当たり前になっているので、レクリエーショナルレベルでアウトボードを持ち込む必要は全くない。
タンク自体も、樹脂製になって軽くなっているだろうから、全体の重量も減っている。
こうなれば、標準的なダイビングギアとして、普及する可能性は高い。
故障率が十分少なくなれば、安心して使えるということになる。
まあ、700気圧のタンクで、オープンサーキットで潜った方が、シンプルですが。
リブリーザーのテキストを簡単にするためには、結構手間がかかるわけだが、それにしても、未来のリブリーザーからみると、現在のそれは、随分と大掛かりで複雑であることが分かる。
それは、人間という存在を噛ませて、チェック機能を働かせようとしているからに他ならない。
機械の動作を監視させたり、変なガスを吸い込んで気分が悪くなった時に、手動でオープンサーキットに切り替えさせるわけだ。
そのための液晶モニターだし、HUD(ヘッドアップディスプレー)なわけだ。
こいつを取っ払ってしまえば、メーカーのマニュアルや、指導団体のマニュアルも、相当シンプルになる。
オープンサーキットとの決定的な違いである、機器の使用の複雑さを、かなり改善できようというものだ。
まあ、液晶モニターは、他の情報も表示しているので、ダイコンの代わりに着けていてもいい。
定期交換部品を、消耗品と一体化し、信頼性を向上させるという方向性は、間違いなく将来のリブリーザーが目指すところだ。
あとは、組み立てと分解かな。
ええい、こうなったら、リブリーザー毎、使い捨てにしてしまえ!。
最後には、BCDと、レギュレーターと、タンクだけが残る。
おお、オープンサーキットとやっと同じになったわけだ。
改めて考えると、オープンサーキットのシンプルさ、簡便さは大したものだ。
手元のPADI・オープン・サーキット・ダイバー・マニュアルでは、39ページから68ページまでのたった30ページで、マスク、フィン、BCDを含めた器材の説明をしている。
リブリーザーは、既にダイバーとなっている生徒を対象としているのに、210ページのマニュアルを必要としている。
もちろん、器材だけの説明ではないが、その器材の特性を踏まえたダイビングをしようとすれば、これだけのボリュームが必要と判断したのだ。
仕組を説明し、組み立て、プレダイブチェックして、潜る。
ダイビングの最中も、浮力のコントロールを初めとした独特の運用を行い、エキジット後の分解、乾燥、メンテナンスが欠かせない。
さらには、消耗品や定期交換部品の交換、場合によってはメーカーによる点検も必要になる。
乾して転がしておけばいいレギュレーターだけ(?)のオープンサーキットとは訳が違う(こっちも定期的なメンテナンスが必要ですが)。
慣れれば、確かにどうということはない。
それでちゃんと動いて、ダイビングができさえすれば。
問題は、原因不明のトラブルで、リブリーザーでのダイビングが出来なくなることが少なくないということである。
マニュアルの42ページには、そんな時の対策までしっかり書かれていて、笑える(実際の状況は、笑えないんだが)。
リブリーザーが使えなかったときのために、オープンサーキットの器材一式を持って行けということだ。
しかし、これはある意味で、非常に有効な方法かもしれない。
全く動かないリブリーザーでダイビングすることはないとしても、一部具合が悪いリブリーザーを、騙し騙し使って潜ってしまって、重大なトラブルに巻き込まれるということからダイバーを守ることになるからだ。
完全でない器材でのダイビングは、水中という過酷な環境では、死に直結する。
人間は、水中では生きられないのだ。
オープンサーキットであれ、リブリーザーであれ、呼吸は全て陸上と同じ方法で、肺でのガス交換で行っている。
まあ、高気圧下という点ではことなるんだが。
翻訳という題名から、随分離れてしまったので、今日はここまで。
このブログほど、翻訳のお世話になっている記事は少ないのではないか。
参照している記事や、資料として活用しているウィキペディアの大部分、手元の書籍やネットのネタは、殆どが何らかの形で翻訳されたものだ。
もちろん、日本語の文化で育った方の書かれたものも多い。
しかし、それも遠い昔に中国から伝わった言葉だったりもする。
現代はインターネットでの自動翻訳が手軽に出来る。
訳文は悲惨なものだが、まあ、なんとなく流れはわかるし、原文を参照しながら読めば、文学作品とかでなければ用は足りる。
やはり英語の原文が多いが、ハングルや中国語、フランス語、ドイツ語、チェコ語なども自動翻訳で読んだ。
もちろん、英語以外は素養がないので、原文を参照することが出来ない。
その英語にしても、読解力は中学英語に毛が生えた程度、会話能力は「単語2つ」並べるのがやっとである。
多言語を自在に操り、会話もこなす人々を見ていると、実に羨ましい限りだ。
今、リブリーザーのテキストを精読しているのだが、こんなもんを日本語に翻訳するというのは、とてつもない作業であるということが分かる。
特に、ダイビング技術の翻訳については、PADIが定めている(であろう)翻訳基準に則って訳出しないと、他のテキストの用語や概念と齟齬をきたす。
リブリーザー固有の用語についても、将来にわたって、その用語が使用され続けるという前提で訳さないといけない。
一例を挙げると、呼吸回路内へ水が浸入してくるという現象があって、テキスト内では、少量で制御可能な浸水と、一時に多量の水が入ってきて制御不可能な状態を区別している(まあ、当然ですが)。
さて、この二つをどう区別して訳すのか・・・。
浮沈子は、別に翻訳しようとしているわけではないが、他の言語に置き換える作業は、単に単語を訳せばいいという話ではない。
文法的に構文を当て嵌めればいいという話でもない(このテキストは、高校生くらいの構文解釈で、十分読めるようになっている)。
その言葉が説明しようとしている状況、背景、そして、他の言葉が説明している事柄との違いを理解し、概念的な矛盾を生じないように、注意深く置き換えなければならない。
しかも、技術用語の場合は、統一した単語を使わなければ誤解が生じて、場合によっては安全を損なう。
PADI語の場合は、内輪の用語統一も図らなければならない。
英語のまま、理解するのが正解だな。
80ページまでは、そんな感じで辿り着いた。
もう少しでチャプター1(第一章)が終わる。
もってまわった言い方をしているところがあったり、口語体が混ざる「This Happend」など、英語を非母国語とする生徒向けのテキストではないが、それでも、リブリーザーのテキストとして、できるだけわかりやすく書こうとしているのは分かる。
言語の壁よりも、伝えようとしている内容の壁の方が、厚く、高い。
浮沈子に言わせれば、リブリーザーの使用における中性浮力やホバリングなどは、言葉による説明を放棄しているとしか思えないな・・・。
まあいい。
後は、身体で覚えてもらおう。
限られた形容詞や副詞を駆使したって、実際に体験する状況を正確に表現することは困難だ。
それは、日本語を使っても難しい。
浮沈子が、このブログでCCRのことを書こうとして苦労しているのも、正にその点である。
しかも、CCRの方が経験本数が遥かに多く、オープンサーキットが新鮮に(異様に)感じる認識の中で説明しようとすると、余計困難を感じる。
レクリエーショナルレベルでのタイプRを用いた運用(特に基礎コース)は、浮沈子が知るIANTDでのインスピの運用とは異なるところもあって、その違いを咀嚼しようと努力しているが、それは、まあ、大したことはない。
何かあったらベイルアウトという、シンプルな対応も、初めてリブリーザーを使うということを考えると、それもアリかとは思う。
コンピューター殿に全てを委ね、人間はダイビングに集中するというのは、悪い選択ではない。
1分から少なくとも2分までの間に1回、液晶モニターを確認すればいいだけだ。
そのモニターには、コンピューター殿が翻訳した、リブリーザーの運用に関わる情報が表示されるというわけである。
何も表示されていなかったら?。
警告も、予告もなく、機械は突然壊れることがある。
その時、ガスの混合を管理していたはずのコンピューター殿は、業務を放棄してどこかへ行ってしまったのだ。
オープンサーキットがぶっ壊れる時は、ド派手な音がしてホースが裂けたり、Oリングがぶっ飛んで泡が景気良く漏れたりして、しかも、その結果、ガスが吸えなくなったりして、否が応でも故障したことに気付くが、リブリーザーは静かに壊れる可能性があって、気付きにくい。
しかも、あろうことか、ループ構造をした呼吸回路があるために、息ができてしまうのである!。
どこかに遮断弁かなんか付けて、故障したらそいつが閉まって、息が出来なくしてくれればいいんだが、そんな仕掛けをしたら、故障箇所が増えるだけかもしれない。
だいたい、そんな仕掛けが出来るなら、自動でオープンサーキットに切り替えればいいだけの話だ(そのうち、できるかも)。
故障したときに、気付かずに、危ないガスを吸い込んでしまうというのが、リブリーザーの構造に起因する最も危険な状況である。
リブリーザーがリブリーザーであることを止めない限り、避けようのない危険だ。
CPUを多重化したり、センサーを増やしたり、運用を工夫したりしても、この点だけは構造的欠陥(特性?)なのでどうしようもなかろう。
全体の信頼性を向上させていくより他に手はない。
閉じた回路内にガスを循環させ、二酸化炭素を除去して、酸素を加える。
これが、リブリーザーの全てであり、本質だ。
回路内の圧力を環境圧と均衡させるための仕掛け(ディリュエントガスやADV、ディリュエント側マニュアルインフレーター、OPV、マスクからの排気、マウスピースからの排気)、加える酸素の量を加減する仕掛け(酸素センサー、ソレノイドバルブ、CPU:コンピューター殿、酸素側マニュアルインフレーター)、二酸化炭素の除去を確認する仕掛け(二酸化炭素センサー、反応熱を測る温度計)などは、全てリブリーザーの機能を実現させるための付加的な要素に過ぎない。
PO2モニターの数字とにらめっこしながら、酸素を自分で添加するマニュアルコントロールをしていると、裸のリブリーザーを感じる。
この状態だって、酸素センサーの値が分からなければならないわけだし、それなりにハイテクではあるのだが、例えば別系統の酸素センサーを付けて、それ専用のダイコンでモニターすれば、本体のコンピューター殿がサボタージュ(というか、故障)していても、リブリーザーの機能は発揮できる。
PADIのリブリーザーのテキストでは、その辺りの話は省略されていて、出来合いのタイプRについて簡単な説明に留まっている。
構造を書いたイラストには、マニュアルインフレーターは載っていない・・・。
まあ、どうでもいいんですが。
浮沈子は、ある意味では、タイプRというのはリブリーザーの進化型かも知れないと考え始めている。
もう、コンピューター殿にお任せして、人間が弄る所は極力少なくして、マニュアル操作なんてとんでもない!。
自動車だって、オートマが殆どだし(あんま、関係ない・・・)。
ひょっとすると、タイプTのCCRなんて、そのうち消えてなくなるんじゃないのか。
あれって、マニュアル操作をすることと、減圧プログラムが組み込まれているだけで、他は何も変わらないわけだし。
タイプR(のCCR)は、その意味では、レクリエーショナルレベルのリブリーザーというより、未来のCCRなのかも知れない。
タイプRを、デュアルでサイドマウント化なんかして持ち込めれば、いうことはなかろう・・・。
まあ、もちろん、テキストには書けないだろうけど。
100年後に、マニュアルインフレーターが残っているかといわれれば、浮沈子には自信がないな。
大深度潜水でディリュエントガスをアウトボードのシリンダーと切り替える関係で、ディリュエント側だけ残っている可能性はあるが、マニフォールドでADVへつなげた方が運用は楽だし、マーク6やセブンのように、ディリュエントもソレノイドから噴くようになっていれば、そもそもそっちの方に繋いでおかなければならない(切り替える仕掛けは必要ですが)。
マニュアルインフレーターは、退化して消え去りつつある痕跡器官のようなものなのかもしれない。
(痕跡器官 (生物))
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%97%95%E8%B7%A1%E5%99%A8%E5%AE%98_(%E7%94%9F%E7%89%A9)
「退化によって本来の用をなさなくなった器官が、わずかに形だけがそれと分かるように残っているものをさす。ヒトの尾骶骨などがある。」
もちろん、タイプTの運用でマニュアルインフレーションを行うのは、21世紀初頭の現在は意味があるし、安全性の向上にも繋がっている。
しかし、それは、時間の問題で消えてしまうことなのかもしれない。
電気系統の故障率が、レギュレーターの故障率の100分の1以下になって、ワンチップでソレノイドバルブに酸素センサーと一体となってモジュール化して組み込まれれば、システムをモニタリングするという運用自体がなくなるかもしれない。
バッテリーさえモジュールに組み込まれて、ワンダイブ毎に使い捨てで交換される。
プレパッキングされたソフノダイブと、モジュール化された電装系(消耗品!)をセットして、プレブリージング(これは必要でしょう!)したら、潜るだけである。
使い捨てにすることで、品質管理をシンプルに出来るし、構造が簡単になってコストの削減にも繋がる。
ソレノイドバルブの接続の問題はあるが、ソフノダイブと一体になってしまう可能性もあるな。
そうすれば、使用期限が過ぎたソフノダイブを誤って使うこともない。
組み込まれたチップが、使用時間を管理しているからだ。
包装用のフィルムを剝いたときに、スイッチが入るようにしておけばいい(24時間以内)。
本体に組み込まれて、ソレノイドが作動した時間を管理すれば、反応した酸素の量から二酸化炭素の除去能力を推定できる。
うーん、コストさえ見合えば、これはいけるんじゃないだろうか。
浮沈子が、この辺のことをああでもない、こうでもないと考えているのには訳がある。
そう、将来そんなリブリーザーが出てくるようになれば、このクソマニュアル(失礼!)も、遥かにシンプルになって、210ページもいらなくなって、読むのに骨も折れず、翻訳とかも楽になるんじゃなかろうか、と考えているからだ。
マニュアルに書いてあるのは、パックを本体に挿入して、プレブリージングして潜るだけ。
上がってきたら、パックを交換しましょう!、以上終わりである。
まあ、浮力調整のところとかは同じだろうし、リブリーザーの本質は何も変わらないので、消毒したり、乾燥させたりといった部分は残るだろう。
その頃は、700気圧のタンクが当たり前になっているので、レクリエーショナルレベルでアウトボードを持ち込む必要は全くない。
タンク自体も、樹脂製になって軽くなっているだろうから、全体の重量も減っている。
こうなれば、標準的なダイビングギアとして、普及する可能性は高い。
故障率が十分少なくなれば、安心して使えるということになる。
まあ、700気圧のタンクで、オープンサーキットで潜った方が、シンプルですが。
リブリーザーのテキストを簡単にするためには、結構手間がかかるわけだが、それにしても、未来のリブリーザーからみると、現在のそれは、随分と大掛かりで複雑であることが分かる。
それは、人間という存在を噛ませて、チェック機能を働かせようとしているからに他ならない。
機械の動作を監視させたり、変なガスを吸い込んで気分が悪くなった時に、手動でオープンサーキットに切り替えさせるわけだ。
そのための液晶モニターだし、HUD(ヘッドアップディスプレー)なわけだ。
こいつを取っ払ってしまえば、メーカーのマニュアルや、指導団体のマニュアルも、相当シンプルになる。
オープンサーキットとの決定的な違いである、機器の使用の複雑さを、かなり改善できようというものだ。
まあ、液晶モニターは、他の情報も表示しているので、ダイコンの代わりに着けていてもいい。
定期交換部品を、消耗品と一体化し、信頼性を向上させるという方向性は、間違いなく将来のリブリーザーが目指すところだ。
あとは、組み立てと分解かな。
ええい、こうなったら、リブリーザー毎、使い捨てにしてしまえ!。
最後には、BCDと、レギュレーターと、タンクだけが残る。
おお、オープンサーキットとやっと同じになったわけだ。
改めて考えると、オープンサーキットのシンプルさ、簡便さは大したものだ。
手元のPADI・オープン・サーキット・ダイバー・マニュアルでは、39ページから68ページまでのたった30ページで、マスク、フィン、BCDを含めた器材の説明をしている。
リブリーザーは、既にダイバーとなっている生徒を対象としているのに、210ページのマニュアルを必要としている。
もちろん、器材だけの説明ではないが、その器材の特性を踏まえたダイビングをしようとすれば、これだけのボリュームが必要と判断したのだ。
仕組を説明し、組み立て、プレダイブチェックして、潜る。
ダイビングの最中も、浮力のコントロールを初めとした独特の運用を行い、エキジット後の分解、乾燥、メンテナンスが欠かせない。
さらには、消耗品や定期交換部品の交換、場合によってはメーカーによる点検も必要になる。
乾して転がしておけばいいレギュレーターだけ(?)のオープンサーキットとは訳が違う(こっちも定期的なメンテナンスが必要ですが)。
慣れれば、確かにどうということはない。
それでちゃんと動いて、ダイビングができさえすれば。
問題は、原因不明のトラブルで、リブリーザーでのダイビングが出来なくなることが少なくないということである。
マニュアルの42ページには、そんな時の対策までしっかり書かれていて、笑える(実際の状況は、笑えないんだが)。
リブリーザーが使えなかったときのために、オープンサーキットの器材一式を持って行けということだ。
しかし、これはある意味で、非常に有効な方法かもしれない。
全く動かないリブリーザーでダイビングすることはないとしても、一部具合が悪いリブリーザーを、騙し騙し使って潜ってしまって、重大なトラブルに巻き込まれるということからダイバーを守ることになるからだ。
完全でない器材でのダイビングは、水中という過酷な環境では、死に直結する。
人間は、水中では生きられないのだ。
オープンサーキットであれ、リブリーザーであれ、呼吸は全て陸上と同じ方法で、肺でのガス交換で行っている。
まあ、高気圧下という点ではことなるんだが。
翻訳という題名から、随分離れてしまったので、今日はここまで。
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